PC用オンラインRPG『Tree of Savior』で出会った男女が恋に落ち、結婚した。「祝福しましょうよ!」と運営会社のネクソンを焚きつけたら大ごとになりました。

まずはこちらの画像をどうぞ。

 結婚式に参加した。

 式場は祝福の言葉であふれ、すごく幸せな時間を過ごせた。

 ネクソンが運営するPC用オンラインRPG『Tree of Savior』(以下、ToS)での話である。オンラインゲームで出会った男女が恋に落ち、結婚した。すてきな話だ。

 たまたまTwitterでご本人の発言を見つけたとき、声を出して喜んでしまった。パーティーを組んだことすらない赤の他人だが、それでもゲーマーが幸せになってくれるのはシンプルにうれしい。

 オンラインRPG界隈には、昔からゲーム内で結婚式を挙げるという文化がある。僕もゲーム内結婚式に参列したい。

 祝福気分がどんどん高まっていく。がまんできなくてネクソンを焚きつけたら、大ごとになってしまった。

ファミ通.comのPCオンラインゲーム担当、ミス・ユースケと申します。いろいろあってウェディングフォトを撮影するスタジオに来ています。

知らず知らずのうちに仲人みたいな立場に

 せっかくだから本気で祝福したい。素直にネクソンの力を借りるべく、PR担当さんに電話で相談する。

 おふたりの結婚の話はネクソンにも届いていた。PR担当さんの反応は「すてきですね。やりましょう!」

 話が早くて助かる。リアル結婚式をプレゼントするのはどうですか、無理ですよねー、あはは。電話ではそんな冗談を言い合った。

 それから数日後、

 ネクソン会議室で結婚式の打ち合わせをするメティスさん(新郎)とロザリーさん(新婦)と僕がいた。ゲーム内結婚式を実施することになったのだ。

 スムーズに話が進んだのは、ネクソン側も祝福したかったからだと思う。お祝いしたいが特別扱いはできない。そういう葛藤でせき止められていた気持ちが、僕の提案でぐわーっと決壊した。あふれ出す祝福パワー。

僕としては、メディアから相談されたら断りにくいだろうという打算もあった。

 打ち合わせではプレイ歴やなれそめを聞いた。ふたりともオープンβテストからのプレイヤーで、仕事の都合もあって休止を挟みながらも楽しんでいるそうだ。

 思い出の地はインスタンスダンジョン“大地の塔”。メティスさんのパーティー募集にロザリーさんが参加したのが、出会いのきっかけだ。ボイスチャットをするまで、メティスさんはロザリーさんが女性だと知らなかったとのこと。

 「お前、女だったのか!」パターンである。マンガみたいだ。

 ネクソンからのプレゼントはもうひとつあった。ウェディングフォトを贈るという。これにはふたりとも面食らっていた。新婦のロザリーさんはとくに。女子は準備に時間がかかるものなので、動揺するのもわかる。

 急に言われても困るみたいな雰囲気だったので、「今年度内で好きな日時を指定してもらえればいいですよ」とフォローした。いちばん関係の薄い僕が言うことではないが。

 それと、話の流れで僕が祝辞を読むことになった。親友や恩師の役割だと思うのだが、そういう疑問は飲み込む。仲人になったつもりで全員泣かせてやる。

この日はネクソン来訪記念の写真を撮ったりして解散。

ウェディングフォトの撮影にもついていく

 打ち合わせからおよそ1ヵ月後、写真撮影の日がやってきた。場所はワタベウェディング新宿フォトスタジオ。

 僕にとってPCオンラインゲーム好きはみんな友だちか親戚みたいなもの。「あいつが嫁さんをもらう日が来るなんてな……」と、勝手に新郎を幼い頃から知るおじさん気分に浸る。

 なお、会うのはこのときで2回目である。

新郎・メティスさんは緊張でふだんより早く目が覚めたと言っていた。男は落ち着かないよな。

 撮影はスムーズに進行した。

 何度かドレスやタキシードを試着して選び、スタジオ内のセットで100カット以上を撮影。終了後にお気に入りの写真を選んでアルバムを作成する。

 聞けばご両親にはウェディングフォトを撮ることは伝えていないらしい。サプライズ的に見せるのだそうだ。

 「あのメティスが親父を喜ばそうとするなんて」。心の中の親戚がどんどん成長している。こいつそろそろ思い出を肴に酒を飲みだすぞ。

スタッフさんから丁寧な説明を受け、さらに緊張が高まっていく。
およそ40着の中から希望のドレスを選ぶ。
カラードレスもきれい。
ロザリーさんが試着する様子を見に行くメティスさん。この後、にこにこしながら戻ってきた。すごくきれいだったとのこと。

 ロザリーさんはスカートがふわりと広がったプリンセスラインのドレスを選択した。かわいい。

 華やかな女子に対して、男は王道を選びがちだ。チャコールグレーやシルバーのタキシードは人気が高い。しぶい光沢のあるタキシードはたしかにかっこいいが、もっと冒険してもいいと思う。

ロザリーさん「うーん、悪くはないと思うんだけど……」。

 ここで、ロザリーさんがいいアシストをした。「ピンクは?」

 『ToS』のコスチュームには薄ピンクの礼服があるのだ、その名もどきどきウェディングコスチューム。

 これが大当たりだった。写真の雰囲気は明るくなるし、『ToS』感もある。何よりメティスさんに似合っている。

 「あいつにもメティスの晴れ姿を見せてやりたかったな……」。おい、心の中の親戚! 何があった!

ブーケに紛れるポポリオン(序盤のモンスター)。

 衣装を選び終わったらメイクと撮影。プロに任せて僕とネクソンスタッフ陣は見守るのみ。

最初は表情が硬かったが、撮り進めるにしたがって自然な笑顔になっていく。
想像以上に背景パターンが多く、見学していて飽きなかった。最後はポポリオンもいっしょに。

 撮影後は写真選び。メティスさんもロザリーさんもにこにこ楽しそうに選んでいる。

 ふたりからはマイナスイオンみたいなものが出ていた。森か滝並みのリフレッシュ効果である。こういう空気はそうそうないので、こっそり深呼吸をした。

こういう場に居合わせられること自体が幸せだ。

結婚式には正装で参列

 2018年11月26日、結婚式当日がやってきた。

 メイン会場はジェミナサーバー8chのクラペダ(初期の拠点)だ。僕も多少は『ToS』を遊んでいるが、ジェミナには自キャラがいないことに気づいて前日に慌てて準備した。

僕の中で、仲人のイメージは落ち着いた男性。そこで、“ダンディ”という名前の髪型にした。
使ったことのないクラスにしたくて、サッパー(罠使い)を選んだ。仲人が罠使い。何かの暗示だろうか。

 結婚式の模様はPeriscopeで配信。ゲーム画面にスタジオでのトーク音声を載せる形式で、僕も出演した。

配信席の様子。

 配信画面には映らないが、結婚式なので正装だ。僕はスーツで、司会進行のGMケッピーさんはきれいめなワンピース。ふたりとも全力で祝いに来ている。

 ちなみに、写真には写っていない配信スタッフさん、イベント進行を別室からサポートするGM陣にも正装してもらっている。祝福力を計るスカウターがあったらボンッと壊れているのは確実だ。

『ToS』には飛び出す絵本みたいな背景を置ける“ポップアップブック”というアイテムがある。ウェディングポップアップブックで式場を生成した。

 クラペダで準備をしていると、少しずつ人が集まってきた。GMケッピーさんがウェディングポップアップブックを開いたら、両サイドに並んで花道を形成。こちらから誘導したわけではないのに。やさしい。

 花道を通って新郎新婦が入場した。ウェディングポップアップブックの上に到着すると、牧師を務めるGMぱーちなさんが登場。チャットで誓いの言葉を読み上げる。

 誓いの言葉はカタカナ混じり。外国人牧師という設定だそうだ。配信上ではGMケッピーさんが片言で代読した。

参列者が作った花道の端でスタンバイする新郎新婦。
参列者から送られる「いいね!」の嵐。
誓いの言葉にはちょいちょい『ToS』ネタが盛り込まれていた。

 この後は誓いの口づけ、結婚宣言と続く。配信スタジオの僕とGMケッピーさんは大盛り上がりだった。

 きゃーきゃーうるさい友だちや親戚は結婚式にひとりくらいいるものだ。たいてい「きれいなお式だったねー!」と感極まって泣く。

エモーション機能を使ってキス。ひゅー!
新郎のメティスさんによる結婚宣言。堂々としていてかっこよかった。

 結婚式を締めくくるのは僕からの祝辞。文面にはうまく『ToS』感を盛り込めたつもりだ。せっかくなので全文掲載する。

【祝辞】

メティス(新郎)さん、ロザリー(新婦)さん 誠におめでとうございます。

ファミ通.comでToSを担当しているミス・ユースケと申します。

僭越ではございますが、少しばかりご挨拶を。

飲み物を取りに行くならいまがチャンスですよ。

さて、僕がおふたりのことを知ったのは今年の7月のこと。

「ToSで知り合った方と籍を入れた」というメティスさんのTweetをたまたま目にしました。

ゲーマーはみんな僕の友だちのようなもの。

嬉しくて、すぐにRTをしました。

参列しているみなさんも同じ気持ちだと思います。

ToSが好きな仲間だから祝福したい。

そんな優しいプレイヤーに支えられるゲームだからこそ、ふたりは出会えたのだと思います。

メティスさん、晴れて「恋人」から「夫」に転職できましたね。そこに上位互換の「良き夫」を加えるのがおすすめビルドです。

ロザリーさん、男というのはいつまでも子どもで、バカなものです。どうか、巨人のルーンのような大きな心で受け止めてあげてください。

オンラインゲームはみんなで協力して進めていくもの。ご夫婦で協力しあい、『人生』という名の傑作オンラインゲームを楽しんでください。

飲みものの件でひと笑い取れただろうか。

 結婚式の最中、別チャンネルからお祝いメッセージがいくつも届いた。式に参加できなかった人からだ(ひとつのチャンネルに入れるのは100人まで)。離れたところから気持ちを届けるということは、電報みたいなものか。

 別チャンネルにメッセージを送るには課金アイテムの“メガホン”が必要。わざわざ課金してまで祝福したい人が何人もいたのである。聖人だらけだ。

メガホンを使ったシャウトは画面上部に流れる。やさしい人ばかりだ。
みんなで記念撮影。

 結婚式のつぎは披露宴。

 披露宴の定番プログラムと言えば初めての共同作業・ケーキ入刀だが、『ToS』は仲間たちと協力して作り上げていくもの。趣向を変えて、みんなの共同作業・ボスモンスター討伐が執り行われた。

 ターゲットは“黄金のストーンホエール”。この討伐イベントはジェミナ以外のサーバーでも実施され、10分以内に討伐したサーバーには取得経験値アップなどのバフが贈られる。

どがががが!

 みんなの共同作業は、これぞイベントバトルといった感じだった。わーわー攻撃しているうちに討伐完了。

 興奮冷めやらぬ中、おかわりバトルがスタートした。GM陣が呼び出したのはワールドボス・魔将レキシファー。容赦のないセレクトである。結婚式でテンションが上がったのかもしれない。

「ガチじゃないですか」、「WB(ワールドボス)やんけこれえええ」などの絶叫が響き渡る。笑うしかない。
爆竹でお祝いするお祭りみたいなものかもしれない。

 僕のキャラではまったく歯が立たないので、別チャンネルに移動。そこも幸せな空気に包まれていた。

 みんながあらゆることを祝ってくれる。誕生日おめでとう。大阪万博決定おめでとう。僕が「会社が引っ越したんですよ」と言ったら、我先にとばかりに「新社屋おめでとう!」である。

 祝福が暴動を起こしている。

こんなに祝福されるなんて、引っ越しを決めた弊社上層部もうれしいだろうな。
新郎新婦も難を逃れてこちらの会場に到着したので、再び記念撮影。

 時間はかかったものの、何とか魔将レキシファー討伐も完了して披露宴は幕を閉じた。混乱を収めてくれた強者のみなさん、ありがとうございます。

 史上まれに見る幸せな企画だったと思う。結婚式の後にはロザリーさんから祝辞に対するお礼メッセージが届いた。こっちがありがとうと言いたい気分だ。

 ネットの世界では手厳しいことや小難しいことを言ったほうがウケると思っていた。だが、それはおそらく過去の話だ。これからは祝福の時代である。ピュアに「おめでとう!」と言ったらめちゃくちゃ気分がよかったから。

 2019年はどんどんお祝いしていこうと思います。

GM陣と集合写真。「おめでたいイベントの後なので元気よく撮りましょう」と言ったら、すしざんまいポーズになった。

 結婚式の模様はこちらの配信をご覧ください。

取材協力
ワタベウェディング
https://www.watabe-wedding.co.jp/