『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(以下、『スマブラSP』)の発売に先立って2018年11月下旬に実施した、本作のディレクター桜井政博氏へのインタビューをお届けします。

本作が完成したのは“奇跡”です

 ついに2018年12月7日に発売となった、シリーズ最新作『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(以下、『スマブラSP』)。発売に先立って2018年11月下旬に実施した、本作のディレクター桜井政博氏へのインタビューをお届けしよう。
 新ファイターのデザインコンセプトは? 各モードの意図は? esportsへの考えは? などなど、ファン必見のインタビューとなっているので、ぜひ最後までご覧いただきたい。

桜井政博氏(さくらい まさひろ)

ソラ代表。『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ全作品でディレクターを務めたスゴイ人。そのほか、『星のカービィ』、『新・光神話 パルテナの鏡』などヒット作多数。

うれしい誤算? スイッチは意外と○○だった

――まず今回の最大の特徴は“全員参戦”というところだと思いますが、そこは最初から、それありきで考えられたのでしょうか?
桜井もちろん、“全員参戦”ありきですね。
――『スマブラSP』の詳細が正式にお披露目された“Nintendo Direct: E3 2018”は、現地で映像をメモしながら見ていたのですが、だんだんメモが追いつかなくなってきて、海外メディアも含めて苦笑が漏れ始めて、最後はみんなメモを諦めてひたすら喜んでいました(笑)。
桜井あのときはウケてよかったです(笑)。わたしはE3会場で、ライブ放映の準備をしていたのですが、遠くから任天堂スタッフを含めて、観ていた人たちの歓声がワーっと聞こえました。“全員参戦”という言葉が漏れてしまうと台なしですから、発表内容はスタッフにさえ伏せていたんです。けっこう、セキュリティレベルは高かったと思います。

――本作は前代未聞のボリュームで、制作はそうとうたいへんだったのではないかと思います。シリーズの中でもいちばん、というレベルだったのではないですか?
桜井いや、たいへんさはどれも変わらないです。いつもそのときにできる全力でやろうとしていますから、今回だけが特別にたいへんということはありませんでした。
――本作の企画書ができたのは2015年12月だそうですが、開発が本格的にスタートしたのはいつごろなのでしょうか?
桜井“本格的に”と言うなら、『スマブラfor』の追加コンテンツ(以下、DLC)が終わってからと見るべきでしょうね。最後にカムイやベヨネッタが配信されたのが2016年2月なので、そのあたりからだと思います。
――桜井さんの頭の中では、『スマブラfor』のDLCファイターも『スマブラSP』も、並行して作ってらっしゃったわけですよね。
桜井そうですね。ただDLCを作っている期間というのは、ふつうの開発をしている期間よりもちょっとラクにはなります。それまではスタッフが何百人規模で、その何百人の仕事を見ている毎日だったのが、DLCの制作では数十人に限られるわけですからね。
――そのときには、もうニンテンドースイッチ(以下、スイッチ)の仕様も、ある程度把握されていたのですか?
桜井はい。スイッチについては、設計段階といいますか、かなり前の段階から見せていただいて、ちょくちょくお話を聞きにも行っていました。
――では、最初からそれ専用の『スマブラ』を、という感じで考えていたわけですね。
桜井ただ、ハードの性質に依存した部分というのは、そんなに多くはないんですよ。たとえばレールからコントローラーが2本抜けるといっても、それは『スマブラ』の遊びを変えるものではありませんしね。
――スイッチでは、本体の画面を使って、4人がテーブルモードで遊ぶケースも多そうです。それが、たとえば画面レイアウトに影響を与える、といったことはありましたか?
桜井それはあまり考えていませんね。企画書の段階では、携帯機と据え置き機に対する棲み分けのようなことを節々で書いていました。それがどんどんなくなっていったのは、スイッチの液晶画面が思ったよりもキレイで、テーブルモードでそのままの画面を見た場合でもぜんぜん問題なかったから、というのがあります。
 携帯モードやテーブルモードとTVモードで画面レイアウトを変え始めたりすると、いろいろなものを二重で作っていかなければいけないことになりますから、その必要がなかったというのは、大きかったですね。
――そういう点では、ニンテンドー3DSで作ったときのようなご苦労はなかったのですね。
桜井3DS版では、ポリゴン数を削らなければいけなかったり、色が正しく出なかったりと、いろいろな調整をする必要がありましたから。それと『スマブラSP』では、ふっとばしたとき、最初にかなり高速で飛び、いきなり急減速するというふうになっています。これはもともと『スマブラfor』の段階でやりたかったことのひとつではあるんです。キャラクターが硬直していて操作できない時間は短いほうがいいですからね。
――確かに硬直が長いと、ストレスに感じますね。
桜井でも3DSの小さな画面でそれをやってしまうと、キャラクターを見失いやすすぎてたいへんなので、前作では見送りました。とはいえスイッチでも、そうした問題は発生すると思います。そこで、飛行機雲をちゃんと残して、その飛行機雲を追えばなんとかキャラクターを追えるようにするなど、そういう要素も考えながら作っています。

――今回、画面外にもレーダーが出るようになりましたが、これも視認性を重視してのことなのでしょうか?
桜井それはどちらかというと、いろいろなステージがある中で、ずっと端っこに隠れている人などをあぶり出すためという意味もありますね(笑)。
――ああ、いますねそういうタイプの人!(笑)
桜井まあ、ルーペが出るので、すぐにわかるといえばわかるのですが、その位置関係までもはっきりさせたほうがいいかなと思いまして。自分が下のほうにいるのか上のほうにいるのか、わかったほうが対処はしやすいですからね。
――今作では全体的に、スピードアップをしている印象がありますが、これはどんな意図で調整されたのでしょうか?
桜井テンポアップというのは枷になっているところもあり、じつはオンライン対戦を作るうえでは不利なんですね。たとえば攻撃や着地のスキを何フレームか縮めようとすると、そのあいだのラグを加味できないといいますか、クッションにできないという問題があるんです。
 3DS版では、そんなにリッチな機能はなかったですし、画面も小さいのであれくらいのスピードに調整しましたが、とにかく今回はテンポをよくすることに振っているところは確かです。それはオンライン対戦の整合性を難しくする要素でもあるのですが、それでもやろうとしたのは、オンライン対戦よりも、とにかく“ワーッと集まって遊ぶ”ということを至上目的にしたいということがあったからです。
――なるほど。確かに、みんなで遊んだときのドタバタ感、大乱闘らしさはより強くなっていると感じます。
桜井とはいえ、なんでもゲーム的に楽しければ正解かというと、じつはそうではないことも多いんですね。ふっとぶスピードがアップしたことも、反面で、見失いやすさにつながったりもします。『スマブラX』を作ったときには、Wiiで新しくゲームをやっていない人がいきなり増えて、いろいろなユーザー層が生まれたときに、『スマブラDX』のスピード感であっていいわけはない、という考えがありました。
 機種の背景や時代をいろいろと考慮して、いまはこのようにしています。だから「テンポアップしよう」といった単純な話ではなく、最適化といいますか、「いまの規模感と遊びではだいたいこのぐらいがちょうどいい」ということを考えながら作っているということですね。

スピリッツがもたらした未曾有のコラボ

――新機軸のひとつ、スピリッツですが、キャラクター数もすごいし、アドベンチャーのマップも広大だし……すごすぎませんか!?
桜井なんなんでしょうね、あれ(笑)。
――スピリッツの登場作品やキャラクタ-は、どのように選ばれていったのですか?
桜井基本的にはまずスピリッツチームに候補を出してもらって、シリーズの多さなどの要素を考慮しながら調整していきました。
――「コレが出てくるんだ!」というスピリッツも満載で、ビックリしました。
桜井やっぱりキャラクターは、それぞれの人たちの喜びなんですよね。ユーザーの人たちは、本当にキャラクターが好きで、愛を持っている。ですので、どのキャラクターもおざなりにできないと思いながら作っています。
 いままではそれがファイターやアシストフィギュアとして作るところまででしたが、今回は本当にいろいろな作品とコラボすることができ、それだけでもたいへんに価値があることじゃないかな、と思っています。
――桜井さんのことですから、「この作品を取り上げるなら、やっぱりこの人はいないとダメです」みたいな、指摘もされたりしたのですか?
桜井あるにはあります、はい。
――なかなかあれだけの作品の知識を持っている人は、そうそういないと思いますが……。
桜井まあでも、スピリッツチームも、しっかり作品を調べたりはしていましたし、調べたからこそ出ているわけですしね。でも……、Nintendo Liveでもプレゼンをしましたが、そういうことにも備えて、ちゃんとスピリッツ全部を説明できるように再確認はしています。

2018年11月3日、Nintendo Live東京大会の1日目に実施されたプレゼンテーションステージでは、桜井氏がステージに登壇。スピリッツボードに表示された10体のスピリッツについて、出典作品や、どんなキャラクターなのか、といった情報を完璧に解説していくひと幕があった。スピリッツボードは完全にランダムで、何が出てくるか事前に予習することもできないというのに……恐るべき知識量! プレゼンの模様はアーカイブ映像で視聴可能(スピリッツボード解説は6分25秒あたりから)。

――“超化”するスピリッツは、どういうふうに選定されたのでしょうか?
桜井シリーズをまたいで登場して、作品によって別の姿を持っている人などは選びやすかったですね。あとは、第2形態があるボスや、シリーズの中でもぜんぜん違う役割で出てきた人だったり。そういう人が比較的選ばれやすかったかなと思います。
――いままさに、強いスピリッツに苦戦している読者も多いと思いますが、スピリッツモードの上手な戦いかたについてアドバイスをいただけますか?
桜井やはり、地道に自分のレベルを相手に合わせて、ちゃんと稼ぐということは大事になると思います。一足飛びにがんばろうとしないで、しっかりキャラクターを強く育てながら戦うことが、とりあえず当面の目標になるでしょう。