地元酒蔵でゲーム大会! 北陸初のプロesportsチーム設立!!富山県でesportsがやたらと盛り上がっているって、本当(ホンマ)け?

 記者(堅田ヒカル)の故郷・富山県で、にわかにesportsが盛り上がっていると聞いた。なんでも、定期的にesportsイベントが開かれたり、北陸初のプロチームが結成されたり、サイゲームスが協賛する大会も開かれたと報道されている。「おらっちゃの地元が、ホンマにそんながになっとんがけ!?」思わず出るお国言葉とともに、その仕掛け人を直撃した。

  • 富山県eスポーツ協会の活動(抜粋)
  • 2016年9月:日本eスポーツ協会(当時)の加盟団体として設立
  • 2016年12月:Toyama Gamers Day初開催
  • 2017年4月:Toyama Gamers Day 地酒“若鶴”の大正蔵で開催。開催時間を26時間に延長
  • 2018年9月:北陸3県初のプロチーム“TSURUGI”結成
  • 2018年12月15日:Toyama Gamers Day 2018 Winter 開催予定

堺谷陽平氏(さかいだに ようへい)

富山県高岡市で、ゲーム好きが集まれるBAR“JOYN”を経営し、富山県eスポーツ協会会長として“Toyama Gamers Day”を主宰するオーガナイザー。自身も“PUSHMAN”として、e-Sports日本選手権2011の『Call of Duty:Black Ops』部門3位など数々の入賞経験を持つ。写真は高岡駅の万葉線乗り場。

酒蔵で行われるesports大会 なんだそれパラダイスか

――最近、「富山でesportsが盛り上がっている」というニュースをWeb記事などで目にするんです。 まずはその実態というか、富山のesportsイベントの仕掛人である富山県eスポーツ協会が、どのような活動をしているか、教えてもらえますか。

堺谷年に3~4回、“Toyama Gamers Day”というゲームイベントを開催しています。ただ、イベント言っても、パッと想像するような大掛かりな大会ではなく、ゲーマーどうしの交流の場所というか、参加者の方々が自分の遊びたいゲームやハード、モニターなどを持ち寄って、自由にワイワイと遊んでいるという感じなんです。前回は、会場に30台くらいのモニターが並んでいたのですが、じつは協会側が準備したのは、ステージに設置されているモニターだけなんですよ。おもに北陸にいるゲームコミュニティーの皆さんが、自分たちで持ってきてくれるんです。

――Toyama Gamers Day2017 Springが行われた、この会場というのは?

酒蔵での大会や北陸初のプロesportsチーム設立など、富山県でesportsがやたらと盛り上がっている!? 地方にesportsの風を吹かせる仕掛人を直撃_02
Toyama Gamers Day 2017 Springの模様

堺谷富山の地酒を作っている、若鶴酒造さんの“大正蔵”という、酒蔵の中にある建物なんです。若鶴酒造さんには本イベントを協賛してもらっていて、会場で日本酒を振る舞ってもらったり、販売してもらったりします。

――酒蔵でesportsイベントというのは珍しいですね! ニュースになるのも納得です。

堺谷最初にイベントを開催したときは、ふつうの会議室みたいなところでやったのですが、そこに100人以上が集まり、半分くらいは県外からの参加者だったんです。 話を聞くと、「明日は富山の魚を食べに行く」と、観光も目的で来られていた。せっかくなら富山のいいところも知ってもらいたいなと、広い酒蔵の会場で開催することになりました。

――なるほど。でも、その酒造会社も、「esportsのイベントをやりたいんだけど……」と言って、よく会場を貸してくれましたね。企画趣旨の説明などがかなりたいへんそうです。

堺谷じつはそれは、協会設立にも関わってくる話になるのですが……。

――きっかけと言いますと?

「地元でesportsの仕事を」きっかけは海外放浪経験

堺谷そもそも協会の設立にいたる経緯をお話ししますと、僕は高校卒業後に県外の学校に行き、その後東京で仕事をしていたのですが、そのとき、フィリピンに留学したんです。当初は1ヵ月くらいで帰ってくるつもりだったのですが、予定外にタイやベトナムなど東南アジア地域をバックパッカーとしてウロウロすることにハマりまして、半年くらい留学というか、旅行というか……放浪していました。

――放浪。

堺谷 そうしているうちに、「バンコクみたいな中央都市ってじつは日本とそう変わらない都会が多くて、そういう都市よりも、村落や、地方のほうが魅力的で、おもしろいな」と思ったんです。そこで、地元の富山で何かできないかなと思い、Uターンすることにしました。

――海外での経験で考えかたが変わったと。

堺谷それで富山に帰り、竹林の整備をしたり炭を作ったりするボランティア団体で活動していたのですが、後継者不足で若い人がいなくて、僕が代表を務めることになったんです。僕も森に入って毎日山仕事をしていましたよ(笑)。そうしたら、そこで知り合ったビジネスの大先輩たちというか……お爺ちゃんたちと知り合い、「お前は何かやりたことないがか?」と聞かれて、僕はゲームが好きだったし「esportsの仕事がしたい」と答えたんです。そうすると「ならやってみい」と、お店のテナントを借りられたり、若鶴酒造さんを紹介してもらえたりしたんです。

――グローバルな海外トークから転じて、ものすごい地元密着コネクションが! でも、そういう“顔の見える”つながりって大きくモノを言ったりしますよね。

堺谷本当に助けられています(笑)。そうしてオープンしたお店で『シャドウバース』のES大会(※)を開き、イベントや大会を開催する中で、日本eスポーツ協会(当時)の富山支部として協会を立ち上げることになりました。

※ES大会…… 店舗などサイゲームス以外が主催となり催す、“Shadowverse Event Support”の対象となる大会・イベント。

――そうして実績を作っていき、じょじょに規模も大きくなっていったということなのですね。それにしても、協賛に北日本新聞(地元新聞社)や富山テレビ(地元テレビ局)が入っているというのは、すごいですね。

堺谷 ええ。ありがたい限りです。やはり両社のお名前が入っていると、新たにスポンサーのお願いに行った際も、信用度と言いますか、話を聞いてくれる感じが違ったりしました。そうそう、スポンサーと言えばひとつお話しておきたいことがあるんです。

――なんでしょう。

堺谷 ふつう、esportsに限らず“何かのスポンサーになる”というときは、費用対効果というか「〇〇円払うから、どれだけの露出は確保してくださいね」っていう、それは当然なのですけど、ビジネスライクな話になることが多いと思うんです。でも、我々の活動にご協力いただいている皆様って、非常にあたたかいというか、ひたすら「若い人が何かがんばっているみたいだから、手伝ってあげよう。応援してあげよう」という気持ちでご支援いただくことが多いんです。

――おお、いい話ですね……。2018年9月には、プロチーム“TSURUGI”も設立されました。これはどういう狙いで?

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esportsチーム“TSURUGI”発足(2018年9月9日)。

堺谷単発で終わるイベントのほかに、それ以上のものをやりたかったんです。地元のプレイヤーたちにとって目標になるものを作りたいと。これまでのイベントを北陸のプレイヤーたちに作り上げてもらった、協力してもらった恩返しもしたいなと。きっと、僕が試行錯誤しながら、手探りでもやることで、今後、さまざまな地方でマネしやすくなるんじゃないかと思うんです。いろいろやってアウトプットする。そうして地方も、esportsも盛り上がってくれたらいいなって思っています。

ーーこれからも富山がespotsで盛り上がっていくことに期待します! ありがとうございました。

 なお、2018年12月15日(土)に富山県魚津市・新川文化ホールにて“Toyama Gamers Day2018 Winter”が開催予定。お近くの方はぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。詳しくは公式サイト(http://tgd.jespa-toyama.org/tgd18winter/)をご参照ください。