いま語られる、神宮寺三郎の過去――『ダイダロス:ジ・アウェイクニング・オブ・ゴールデンジャズ』プレイレビュー

アークシステムワークスより、2018年12月13日にNintendo Switch、プレイステーション4、Steamで発売が予定されている『ダイダロス:ジ・アウェイクニング・オブ・ゴールデンジャズ』のプレイレビューをお届け。

 アークシステムワークスより、2018年12月13日にNintendo Switch、プレイステーション4、Steamで発売が予定されている『ダイダロス:ジ・アウェイクニング・オブ・ゴールデンジャズ』。30年ものあいだ愛され続けているハードボイルドアドベンチャー『探偵 神宮寺三郎』シリーズの最新作でありながら、従来作にはない斬新なシステムの数々を採用した、この冬注目の作品だ。本稿では、発売日に先駆けてのプレイレビューをお届けする。

 特徴的なユーザーインターフェースや演出群を始め、導入されているシステムも従来作では見られないものばかり。まさにシリーズ“新章”と言っていい本作は、大学生時代の若き神宮寺三郎を主人公に、彼の過去が語られる内容だ。しかし、それだけではよくある過去編なわけで、注目すべきは同シリーズ中でも屈指の名作である『夢の終わりに』の前日譚である点。加えてシナリオを担当するのは、『夢の終わりに』を手掛けた稲葉洋敬氏本人というのだから期待できないわけがない。大まかなあらすじはこうだ。

 神宮寺三郎最愛の祖父であり、私立探偵でもある神宮寺京助が、遠くニューヨークの地で何者かに殺された。三郎は自分の気持ちと思い出を整理するために、単身ニューヨークへと渡る。旧友たちとの再会を喜ぶのも束の間、三郎は京助が“ダイダロス”という言葉について調べていたことを知る。ダイダロスとは? なぜ京助は殺されなければならなかったのか? まだ探偵と呼ばれる前の、若き神宮寺三郎は、ニューヨークにて哀しき事件を解決せんと動き始める――。

 数々の難事件を解決に導いた名探偵・神宮寺三郎。その彼が、過去にどのような人生を歩んできたのかは、ファンならずとも気になるはずだ。……といったところで、プレイレビューへ。

神宮寺三郎
 ニューヨークで探偵業を営んでいた神宮寺京助の孫。京助の死をきっかけに渡米し、事件の背後に隠された真実を追い求める。大学生。

青年期

少年期

神宮寺京助
 神宮寺三郎の祖父。私立探偵として活動する、自由奔放な老人。自分を慕う三郎のことを溺愛している。

少しずつ加速していく物語と、生き生きと描かれている登場人物たち

 ストーリー構成は章立てになっており、各章ごとにひとつの大きな事件を解決すると、つぎの章へと進み、その過程で全体の大きな物語の構造も明らかになっていく仕組み。ストーリーについては、ちょっとしたことでもネタバレにつながりそうで、おいそれと書けないのがもどかしくて仕方がないが(随所にある“小ネタ”を見つけるのも楽しみのひとつなのでなおさら)、徐々に勢いを増していく感じがとても心地よい、とだけは言っておきたい。単なる大学生だったはずの三郎が、ひとりの“探偵”として覚醒していく様は、見ていて気持ちがいいと同時に、ある意味で従来の“神宮寺らしさ”も感じられた。

ゲームの超序盤から、ひとつだけ小ネタを投下。若かりし頃の三郎は、タバコにまったく興味がなかった様子。ゆえに本作では、シリーズおなじみの“タバコ吸う”のコマンドも存在しない(未成年なので当たり前だが)。現代ではあんなにヘビースモーカーなのにね。

 ひとりひとりのキャラクターが細かく、そして生き生きと描かれているのも本作の特徴であり、大きな魅力のひとつだ。三郎や御苑洋子、その旧友たちなどのメイン級キャラクターは当然として、わりとチョイ役のキャラクターにいたるまでが個性豊か。わずかなセリフでも存在感を出すテキストが見事なら、そんな登場人物たちを演じ切った演者たちも見事というほかない。

 本作は全体を通して登場人物がかなり多いが、その中で個人的なお気に入りは、少年期の三郎だったりする。神宮寺三郎という人物から、成年男性としての分別やら理性やらを取り除くとああなるんだな……という感じ。まぁはっきり言ってしまうと“クソガキ”なので(笑)、犯人に同情したくなりましたよ。

現代では三郎の助手として働く、御苑洋子。三郎と洋子は、本作で初めて出会うことになる。……が、第一印象はあまりよろしくないようで。

ゲームに違和感なく溶け込んでいるシステム

 本作は、文章を読み進めていく、いわゆるテキストアドベンチャーゲームだが、その枠にとらわれない、斬新なシステムもいくつか導入されている。以下で、それらのシステムについて軽く解説、及び触れてみた感想を書き添えておく。

探索(360度ビュー)

 証拠や聞き込みを行う探索時には、360度自由に周囲を見渡すことができる。かなり滑らかに、グリグリとカメラを回せるため、その場にいるかのような臨場感が味わえる。また、“SEACH MODE”を利用すれば、未調査の部分がわかりやすく光るため、延々同じ場所を探し続けることにならないのもいい。

 なお、会話中などでも、画面上部に“360°FREE CAMERA”の表記があれば自由に見渡せるので、ついつい視点を動かしてしまうおもしろさがある。ちなみに、サラウンド音声により、音声の聞こえてくる方向がちゃんと変わる。細かい!

スタンスチェンジシステム

 登場人物との会話中に、態度(スタンス)を変える(チェンジ)ことで、相手から異なる情報を引き出せるシステム。たとえば、怒っている相手に同調してなだめたり、さらに逆上させて相手の口を滑らせたり、といった具合だ。何気ない会話で終わることもある一方で、事件のカギを握る会話内容へと発展する場合もあり、いざスタンスを選ぶタイミングになると、かなり迷ってしまう。しかも選択によってはゲームオーバーになることもあり(!)、気が抜けない。

思考の樹

 三郎の思考を具現化したもの。探索や聞き込みなどで集めた証拠や証言が自動的にまとめられていき、整理できる。情報が集まるごとに樹木は成長し、やがて“思考の果実”が実り、犯人や重要参考人を問い詰める“解明フェイズ”へ移行する仕組み。いったん樹木が出現した後は(※ゲーム中はある程度情報が集まった段階で樹木が出現する仕様)、任意でいつでも集めた情報を確認できるので、事件の流れをつかみやすい。逆に、あえて思考の樹の利用を控えるという縛りを設けるのもおもしろいかもしれない(会話中も一切の聞き漏らしが許されなくなるが(笑))。

 これらのシステムは、非常にうまく画面デザインの中に溶け込ませてあるのもポイント。テキストアドベンチャーではあるのだが、あまりそれを遊んでいる気がしない、不思議な感覚になる。システムそのものも軽快でレスポンスがよく、気持ちよくゲームが進められると同時に、ストーリーにも没頭しやすいのが好印象。

これからへの橋渡しとなるであろう、“神宮寺・新章”

 確かに見た目や操作した感触はかなり異なる。加えて主人公の神宮寺三郎が若く、人当たりなども目に見えた違いがあるのだが、プレイを続けるうちに「やはりこれは『探偵 神宮寺三郎』シリーズだ」と思えてくるのが心地よく、そして楽しい。記事冒頭にも書いた通り、ストーリー内容について多くを語れないのが歯がゆいが、どちらかと問われれば、これまでのシリーズをプレイしてきた身として、間違いなく“おもしろかった”と答えたい。

 しかも、本作の360度ビューは、とてもおもしろいうえに応用が利くシステムでもあるので、少々気が早いとは思うが、一ファンとしては今後にも期待がかかってしまう。やっぱりねえ、現代の新宿、歩いてみたいんですよ。探偵・神宮寺三郎として、ね。



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