コーラス・ワールドワイドから2018年11月8日に配信されたNintendo Switch用のアドベンチャーゲーム『ジェットメロ:ヒーロー・オブ・ザ・ユニバース』。同作の目的は、記憶喪失の巨大ロボット“ジェットメロ”を操作し、9つの星系に多数存在する惑星を探索しながら失われた記憶を取り戻していくというもの。
自分のルーツを辿る一種のミステリのような謎解き要素と独特のビジュアルが相まって、何とも言えない切なさが込み上げてくる作品に仕上がっているだけに、気になっている読者も多いのではないだろうか。
そこで、今回の記事では『ジェットメロ』のユニークなポイントについて語らせていただく。ストーリー的なネタバレは公式サイトレベルに留めているので、作品にビビッときた人は試しに読んでみてほしい。
唯一の使命は「モンスターから人類を救う」
プレイヤーが操作するのは、巨大ロボットのジェットメロ。記憶がまったくなく、自分が何者なのかもわからない状態でゲームはスタートする。記憶を失っているせいなのかはわからないがヨタヨタとおぼつかない足取りと、一見ポンコツな風貌のおかげで何となくかわいく見えてしまうのがずるい。物理演算で動いているとのことなので、ヨタつき具合も何だかより本格的な感じがする。
本作でプレイヤーのメインとなる遊びは惑星の探索。9つある星系をワームホールで移動しながら多種多様な惑星を巡っていく。惑星にはクリスタルが落ちていて、拾ってエネルギーを溜めることでジェットパックで宇宙を自由に飛べるようになるという仕組みだ。
探索と言っても何ら難しいことはなく、最初に取り戻した記憶である「モンスターから人類を救う」という使命をまっとうするだけ。詳しくは後述するが、各星系には必ずボスモンスターが1体潜んでおり、コイツらを探して倒すごとにストーリーが進展していくようになっている。
探索する惑星は、基本的にあっと言う間に一周できてしまうくらいのサイズ感。それだけジェットメロが巨大ということなのだろう。惑星には湖があり、森があり、砂漠がある。宇宙から見ると色が違うだけに見えるが、降りてウロウロするといろいろなオブジェクトが発見できてけっこう楽しい。高層ビル群、未来都市、火山、雷雲、列車、飛び去っていくロケットなどなど。人類そのものは視認できないが、さまざまな建築物や広大な自然に目を奪われるのは間違いない。
ジェットメロがそれらの建築物に接触してしまうと、当然ながら破壊されてしまう。ゲームスタート直後のジェットメロはそれがいいことなのか悪いことなのかも判然としない有様で、人類に必死の抵抗を受けてしまうこともしばしば。大好きな人類に嫌われてしまう展開は、物語にはよくあることだがやっぱりちょっと切なくなる。なお、あまりにしつこく抵抗されるために逆ギレして破壊の限りを尽くしたことも当然ある(笑)。腕を振り回したり踏みつけのアクションを繰り出すことができるため、破壊神のごとく振る舞うことも可能だ。一応言っておくと、破壊神と化したとしてもゲーム的には何も影響はないので大丈夫。まあ、一度くらいは存分に暴れまわってみてほしいところだ。
惑星探索のお楽しみのひとつとしてパーツの収集がある。パーツとはジェットメロの装飾用アイテムで頭、腕、体、足の4部位を自由に付け替えることができる。見た目が変わるだけのアイテムではあるが、かなりの種類があって気分を変えてプレイするのにちょうどいい。パーツをランダムに選んでくれる機能もあるので、組み合わせを全部お任せにしてみるのも一興。アホっぽいデザインはもちろん、かっこいいもの、破壊兵器になりきれるものもあっておもしろい。ちなみにパーツは、地表で電波を発している赤い塔のようなものがある場所で、足踏みすることで飛び出してくる。
惑星を逍遥して風景を堪能し、クリスタルやパーツを拾ったら探索は終了。宇宙へ繰り出して、またつぎの惑星を目指して飛び立つ……というのが、探索の一連の流れとなる。未探索の惑星は星系マップからひと目で確認可能で、おのずとつぎの目的地がわかるようになっているのも親切だ。
真相が気になるミステリのような物語
惑星を渡り歩いて探索を繰り返していると、不意に巨大なモンスターと遭遇することがある。そいつこそがジェットメロの使命「モンスターから人類を救う」を達成するために倒すべき敵。エンカウントすると特殊な戦闘モードに突入し、直接対決をすることになる。
戦闘はアクションではなく、制限時間内に表示されるコマンドを素早く入力していくというバトル。入力に成功すると相手の放つ光線を少し押し返すことが可能で、完全に押し返せば勝利となる。逆に自分が光線を押し込まれてしまうと敗北となり、宇宙空間へと吹き飛ばされることになる。ただし、それ以上のペナルティーはないため、すぐに再戦を挑んだとしても問題ない。バトルの難度はオプションで変えられるので、難しく感じたら難度をさっさと変更してしまうのもアリだろう。
戦闘に勝利すると、ジェットメロは記憶の断片データを手に入れることができる。ただし、このデータは暗号化されているため、ちょっとしたパズルを解かなければ真相がわからないようになっている。やりかたは簡単で、めちゃくちゃな並びになってしまった文章をLスティックで調整して、すべて正しい並びにすればオーケーだ。少しずつスティックを動かしながら、総当たりで正解を導き出すといった方法も可能なので、とくに詰まることはないだろう。
パズルを完成させると、ジェットメロや人類の過去が少しずつ明るみになっていくのだが、これが非常に興味深いストーリーになっている。 どちらかと言えばのほほんとした雰囲気のあるジェットメロとは対象的に、シリアスな物語が展開するので思いがけずグイグイと引き込まれてしまうのだ。惑星探索が平坦に進行していく印象なので、これが感情を揺さぶる非常にいいアクセントになっているともいえる。
このミステリのような一連の謎解き要素は、「なるほどそうだったのか」というカタルシスがあり、ちょっと考えさせられるような問題提起もある。すべてが終わったあかつきには、良質の短編SF映画を見終わった後のような軽い放心状態に陥ること請け合いだ。
ストーリー部分だけをピックアップするとテキスト量もめちゃくちゃ少ないのだが、メニューの“バックナンバー”からまとめて読むと、けっこう来るものがあった。クリアー後にまとめて読んでみるのをおすすめする。
見た目をガラッと変えて遊ぶ
本作には“フォトモード”が搭載されている。これはゲームをポーズ状態にした後、カメラを自由に動かしたり、キャラクターに好きな格好をさせたりして自由に撮影を楽しめるという定番のモードだ。最近の流行なのか、さまざまなゲームで頻繁にお目にかかれるようになっている。本作もご多分に漏れず、バッチリと搭載しているというわけだ。
ひと通りいじくってみて、すごいなと思ったのはフィルターの種類。フィルターなしも含めると、その数はなんと40種類にも及ぶ。そのうえ、それぞれのフィルターでカラーや度合いなどを細かく調整可能となっており芸が細かい。
LEDであればドットの数を変えられたり、デジタルノイズ風のグリッチであればノイズのブレ幅的なものを変えられるという具合だ。ほかにも黒板、絵の具、ラフスケッチ、ペンシルクレヨン、ポップ、ファニーミラーなど、いろいろ取り揃っているため、取っ替え引っ替えしているだけでも楽しくなってくる。
とくに注目してもらいたいのは、本作ではフィルターをかけた状態のままでゲームプレイが続行可能な点。これがなかなかどうして素晴らしい! たいていのゲームでは、フィルターはフォトモード時のみ有効なのだが、『ジェットメロ』はフォトモードを解除してもフィルターはそのままになる。フォトモードを搭載するゲームはたくさんあっても、フィルターを掛けたまま遊べるゲームは数少ない。とてもレアな体験ができると言っても過言ではないだろう。
ポリゴンからテクスチャーが剥がれ落ちたような3Dシェードで遊んだりすれば、もはや世界は電子顕微鏡で見たような不思議な景色が広がる。スクリーンショットを撮影するだけでなく、さまざまなフィルターをかけてゲームプレイを楽しむのもアリだろう。いや、むしろこちらをメインにしてもいいくらいかもしれない。それくらい本作のフォトモードには価値がある。
サクッと楽しめるボリューム感
『ジェットメロ』がどんなゲームなのか何となくわかってもらえただろうか。ジェットメロは恐ろしく頑丈にできているため、やられてゲームオーバーということもなく、本作はのんびりと楽しめる仕上がりになっている。
「モンスターから人類を救う」SFという題材のストーリーに少しでも惹かれたなら、ぜひ体験してみてもらいたい。ボリーム的にも一気に最後まで楽しめる、3~4時間ほどの内容なのでお手軽と言えるんじゃなかろうか。クリアー後もやり続けられるようになっているので、パーツ収集の要素も心配ない。週末あたりに、ユニークな世界設定とビジュアルに浸ってみるのも悪くないだろう。