『ドラゴンクエストX オンライン』開発・運営の舞台裏をまとめた解説書『ドラゴンクエストXを支える技術――大規模オンラインRPGの舞台裏』。その刊行を記念して、都内書店で開催されたトークセッションをリポートする。

 『ドラゴンクエスト』シリーズでは初のオンラインRPGとして、2012年8月2日よりWii向けに始まった『ドラゴンクエストX オンライン』(以下、『DQX』)。以降、プラットフォームを拡大しながら6年以上もオンラインRPGで第一線を走り続け、その人気は衰えを知らない。

 そんな『DQX』においてテクニカルディレクターを務め、現在は齊藤陽介氏の後任として2代目のプロデューサーを務めているスクウェア・エニックスの青山公士氏が、『DQX』開発・運営の舞台裏を詳しくまとめた解説書『ドラゴンクエストXを支える技術――大規模オンラインRPGの舞台裏』(以下、本書)を、技術評論社より2018年11月14日に刊行した。その発売前日となる11月13日、東京のジュンク堂書店・池袋本店にて、本書の発売を記念したトークセッションが開催された。

『ドラゴンクエストXを支える技術――大規模オンラインRPGの舞台裏』(技術評論社/2018年11月14日発売/定価:本体2680円+税 ※電子版も同日、同価格で発売)
ジュンク堂書店・池袋本店では、関連書も含めて大きく展開中。来店者をホイミスライムがお出迎え。Amazon.co.jpではベストセラー入りしているほど、注目されている。

 トークセッションは、本書の著者である青山公士氏、『DQX』のWebテクニカルディレクターを務める縣大輔氏、そして『DQX』でディレクターを務めていた齋藤力氏が進行役として参加。

写真左から齋藤力(さいとう・ちから)氏、青山公士(あおやま・こうじ)氏、縣大輔(あがた・だいすけ氏)。

 青山氏は『ファイナルファンタジーXI』などで使用されるネットワークサービス“PlayOnline”の設計・ディレクションを担当しており、国内のMMORPGにおいて多大な影響を与えた開発者のひとり。そんな青山氏が、数十万人を超えるアクティブユーザーを誇る巨大なMMORPGを開発・運営するにあたって、どのような課題に取り組んできたのか、そしてどのようにユーザーと向き合ってきたのか。以下の目次を見ていただければ、本書のおおまかな内容がわかるだろう。

本書目次

  • 第1章 ドラゴンクエストXとは何か──ドラゴンクエストかオンラインゲームか
  • 第2章 開発・運営体制──ドラゴンクエストXを支える人々
  • 第3章 アーキテクチャ──クロスプラットフォームMMORPGの基本構成
  • 第4章 開発と検証──並走する追加と保守のサイクル
  • 第5章 メモリ管理──MMORPGのボトルネック
  • 第6章 ゲームクライアントグラフィックス──魅力的な絵を描画する工夫
  • 第7章 ゲームサーバプロセス──機能ごとに分離して負荷分散
  • 第8章 キャラクター移動──移動干渉による押し合いへの挑戦
  • 第9章 ゲームDB──ワールド間の自由移動を実現する一元管理
  • 第10章 ゲーム連動サービス──ゲーム内とつなげるための工夫と力技
  • 第11章 運営と運用──リリースしてからが本番!
  • 第12章 不正行為との闘い──いたちごっこ覚悟で継続対応

 本書は、青山氏のこだわりにより、プログラミングやゲームそのものの知識がなくても読み進められるよう、丁寧に開発技術をまとめた解説書である。上記の12章で構成されており、第10章「ゲーム連動サービスーーゲーム内とつながるための工夫と力技」は縣氏が執筆を担当した。同じく技術評論社より約3年前に発刊された『WEB+DB PRESS Vol.90』に青山氏が寄稿した“ドラゴンクエストX 開発ノウハウ大公開”に大幅加筆・修正を加えたものだが、技術書としては珍しくカラー図版も含まれており、非常に読みやすいものとなっている。

 今回のトークセッションは会場を訪れた観覧者に加えて、同時配信されたYouTube Liveを大勢の『DQX』ファンが視聴。「開発・運営でとくに苦労したポイントは?」、「プログラムを覚えるうえで、たいせつなことがあれば教えてください」など、さまざまな質問が寄せられ、それらに登壇者たちが答えていく……といった形式で、セッションは展開した。

 質問の中には「おふたりがゲーム開発に興味を持たれたきっかけを教えてください」といったものもあり、これに対して縣氏は「子どものころから家にパソコンがありまして。自分でゲームを作れたら楽しいだろうな……という、漠然とした思い付きから、プログラミングに興味を持つようになりました」と回答。

 青山氏は「中学生のころ、CPUを自作しようと思い、本格的に勉強を始めたのですが、あまりにも難しくて、ぜんぜん理解できなくて……。それが半年後くらいに、急に理解できた瞬間があって。そのときは“これで俺はコンピューターを自在に操れる! 世界を支配できる!”という気持ちでしたね(笑)」と話し、会場を沸かせた。

 なお、今回のトークセッションの模様は、2018年内の期間限定でYouTubeにて視聴できるようになっている。

 ゲーム開発や運営のノウハウを知りたい人はもちろん、『DQX』の舞台裏に興味のあるシリーズファンが見ても楽しめるので、気になる人は本書と併せて上記の動画もチェックしてみてはいかがだろう。

トークセッション終了後はサイン会も開催された。