『ウィッチャー3』、『ARK』、『コナン アウトキャスト』……ユニークな洋ゲーを展開し続ける秘訣は、情熱と友情! 仕掛け人・スパチュン飯塚氏に聞く

古くから“洋ゲー”ビジネスを展開しているスパイク・チュンソフト。ローカライズするタイトルの選びかたや、今後のローカライズ事業の展望を、同社の飯塚康弘氏にうかがった。

 『ウィッチャー3 ワイルドハント』のような大作RPGから、『テラリア』のようなコツコツ楽しむサンドボックスゲームまで、さまざまな海外産ゲームをローカライズしているスパイク・チュンソフト。先日、『メトロ エクソダス』のローカライズを同社が手掛けることが発表され、話題を呼んだのは記憶に新しい。
※『メトロ エクソダス』は、日本では2019年春、プレイステーション4&Xbox One向けに発売予定

 同社は以前より、いわゆる“洋ゲー”ビジネスを展開しているが、コンスタントに話題作を提供できるのはなぜなのか。ローカライズするタイトルは、どのように選んでいるのだろうか? 海外タイトルのローカライズ事業の責任者を務める飯塚康弘氏に、詳しく語ってもらった。

プロフィール

飯塚康弘氏(いいづか やすひろ)

スパイク・チュンソフト 執行役員。スパイク(当時)、ソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)を経て、現在、スパイク・チュンソフトの海外事業を担当。同社の米国現地法人のCFOも務める。

洋ゲー愛と人とのつながりが新しい作品との出会いを呼ぶ

――今回は、海外のゲームを買い付けるという点について、詳しいお話を伺いたいと思います。まずは、飯塚さんがこれまでに関わってきたタイトルから教えていただけますか?

飯塚僕自身が“洋ゲー”のビジネスに携わり始めたのは、大学を卒業して、スパイク(当時)に入った時点からなので、約20年くらいになりますね。入社したとき、『DRIVER 潜入!カーチェイス大作戦』(2000年発売)が発売間近でした。当時は電子メールはありましたけど、携帯電話はまだまだ普及していない時代で。海外のメーカーとデータを交換するにしても、ROMを郵送で送ってもらっていました。現地に行ったときも、Googleマップなんてものはなかったので、紙の地図を広げてオフィスを探したり。そんな時代からずっと、洋ゲーをやってきています。

――いまよりもずっと、ローカライズのハードルが高そうです。

飯塚当時のスパイクはレースゲームを中心にローカライズしていたのですが、それはテキスト量が絶対的に少ないからだと、前に当社の代表(スパイク・チュンソフト代表取締役社長 櫻井光俊氏)が言っていました(笑)。

――(笑)。レースゲームの後に手掛けたものとしては、どのようなタイトルがありますか?

飯塚僕はその後、一度スパイクを離れて、ソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)に入り、プレイステーション3の立ち上げに携わりました。そこでも洋ゲー担当で、『Heavenly Sword ~ヘブンリーソード~』と『モーターストーム』に関わりましたね。それからまたスパイクに戻り、『バイオショック』を担当し、それからはスパイクの洋ゲー事業をすべて僕が見ることになりました。

――レースゲーム時代と比べると、テキストの量がかなり違いそうです。そういったタイトルも手掛けられるくらい、ノウハウが蓄積されたということですね。

飯塚そうですね。どんどん洋ゲーがアツくなっていった時代に、いいパートナーさんと出会う機会が多くて、実績がどんどん増えていきました。なかでも大型RPGの実績として大きかったのは、やっぱり『ドラゴンエイジ』ですね。うちで発売させてもらえたことによって、BioWareの伝手で、『ウィッチャー』のCD PROJEKT REDといっしょに仕事もすることができて……。“友だちの友だちはまた友だちだ”みたいなところがあって、ずっとつながってきているんです。ある種、“運命”みたいなものですね。

――長年の積み重ねが、花開いていったと。

飯塚そうですね。継続して洋ゲーに携わっていることでやっと世界との強いつながりを築き上げることができました。最近では、既存のパートナーの皆さんが「日本のスパイク・チュンソフトはいい会社だから、話してみなよ」と売り込んでくれていて、新たなパートナーさんからのお誘いがすごく増えました。昔とはかなり状況が変わりましたね。

『コナン アウトキャスト』のローカライズも、“友だちの友だち”のつながりで決まったという。同作を手掛けるデベロッパー、Funcomの社長と飯塚氏は、ゲーム開発者向けの勉強会、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)の会場で落ち合い、その場で意気投合。スパイク・チュンソフトが日本販売を行うことに。

――昔は、向こうからオファーされるのではなく、自分からタイトルを買いに行っていたのでしょうか。

飯塚以前はE3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ。世界最大級のゲームの見本市)が買い付けのタイミングでした。その場でアポイントメントを取って、こちらの会社名を伝えても、「うーん、まあ機会があれば……」くらいの反応で、メールの返事がなかったり、ドタキャンされたりして。でも、会ってみるといいヤツだったりするんですけど(笑)。

――(笑)。

飯塚いまはE3前にはほぼ話が決まっていて、会場では挨拶や進捗の確認をするという感じに変わってきていますね。昔は、こちらがタイトルを自由に選べない時期があったんですよ。「このタイトルが欲しいなら、別のタイトルもいっしょに発売して」と言われたり……。

――先方としても、できるだけ多くの自社タイトルを日本で発売したい、と思ったのでしょうね。

飯塚それを請け負っても、結果が出なければ、両社のリスクを増やし、当社のビジネス評価が下がってしまいます。それでは誰もハッピーになれないと思い「日本では、このタイトルに注力して、たくさん売ったほうがいい。信じてほしい」と説得したり、「これを任せてくれれば、絶対に成功させます」と、情熱と正直さを持って訴えかけたりし続けてきた結果、ようやく理想の洋ゲーを扱わせていただけるメーカーになれたのかなと思っています。僕らが自信を持ってタイトルを出すことができて、たくさんのユーザーの皆さんにすごく楽しんでいただけて、評価されることによって版元さんに恩返しができる。すごくいいサイクルになっています。

スパイク・チュンソフト流タイトルの選びかた

――いまは、多くの海外メーカーからお誘いがあると思いますが、タイトルを選ぶ際、重要視していることは何でしょうか。

飯塚大事にしているのは“即決”ですね。タイトルを見せてもらって、ダメだと思ったら、もう、その場でお断りします。

――持ち帰ることもなく、即断ですか。

飯塚そうすれば、彼らはすぐに、ほかのところと商談できるかもしれませんから。自分で「このタイトル、いいな」と思って話を持ち帰っても、ほかのスタッフに「難しい」と言われることだってよくあるのですから、「ダメだ」と思ったものは持ち帰れません。きびしい言葉になることもありますが、早く答えを出そうと、いつも思っています。

――ほかに、意識していることは?

飯塚洋ゲーでは、最近はインディー系の作品が多いのですが、基本、お断りしています。僕らが関与することで、その作品が2倍、3倍売れるかというと、そうではないと思っているので。けれど、誤解しないでほしいのですが、可能性があると思ったらとことんやるのも僕らです。例えば『テラリア』、『ホットライン マイアミ』、『How to Survive』とか。

『テラリア』は、「よりユーザーに届けやすいパッケージ版を作り、プロモーションをすれば、もっと成功できる!」と可能性を感じ、ローカライズを行ったという。

――いいゲームだと思っても、あえて断っているのですか?

飯塚インディー系のロープライスな作品は、自分たちでパブリッシングしたほうが絶対にいいです。僕らが関与してしまうと、利益を分配せざるを得ませんので。ローカライズの術がないのであれば、そのための環境をどうすれば得られるのか、教えるようにしています。

――コンサルティングのようなことも、やっていらっしゃるんですね。

飯塚海外のクリエイターは、日本の市場や日本の文化が大好きなので、日本で売りたいと思ってくれるんです。でも、夢を見て日本で出したものの、ぜんぜん売れないなんてことになれば、彼らの夢を壊してしまいます。そうならないよう、アドバイスすることは結構多いですね。

――スパイク・チュンソフトは、多彩なジャンルの海外産ゲームを発売していますが、タイトル選考の基準はあるのでしょうか。

飯塚プレイしているところを後ろで見ていて、おもしろいかおもしろくないか、というのがひとつの判断基準です。おもしろいゲームって、自分で遊ばなくても、他人がプレイしているのを見ているだけでおもしろいんですよ。

――確かに。そういうゲームは、実際に触ってみるとおもしろいですしね。

飯塚当然、自分でもプレイはしますけどね。『ARK:Survival Evolved(アーク:サバイバル エボルブド)』も『Conan Outcasts(コナン アウトキャスト)』も、僕自身、けっこうプレイしましたし。『OVERKILL's The Walking Dead(オーバーキルズ ザ・ウォーキング・デッド)』は、数年前にE3で発表された時点で、「絶対やりたい!」と思っていました。いやぁ、もう完璧じゃないですか。4人の協力プレイでゾンビと戦うゲームなんて、つまらないわけがない!

――その熱い想いが実を結んで、スパイク・チュンソフトから発売されることになったんですね。

飯塚一方で、ビジネスライクな視点で考えることもありますよ。『シティーズ:スカイライン』は、僕としては得意なジャンルではないんですけど、こういうジャンルが好きな人は欲しいだろうなと思ったんです。当社のプロデューサーの片方祐介が、もう毎日のようにPC版を遊んでいましたから(笑)。“いま市場にないものを出す”という着眼点でも、タイトルを探しています。

――海外メーカーと、開発の初期段階からタッグを組むことと、海外で発売済みのタイトルを買い付けること、どちらが多いですか?

飯塚シティーズ:スカイライン』のような、だいぶ後から日本発売を決めるケースはまれです。世界同時発売を目指すことが、成功の法則のひとつだと思っていますので、発売時期のラグはあまり作りたくないですね。他国のユーザーとプレイ経験に差が出てしまうと、ゲームバランスが崩れてしまうこともありますから。

――最近は、“世界同時発売”を、ユーザーも当たり前のように受け入れていますが、作業はかなり過酷ですよね……?

飯塚けっこう、しんどいです(笑)。「日本のファンが待っているんです」と熱意を伝えて、それをパートナーさんにも理解してもらって、なんとか世界同時発売を実現できていますが。当社は、その洋ゲーを開発している企業のグループ会社ではなく、あくまでライセンスを受けたパートナー会社ですから、とくにたいへんですね。だからでしょうか、ライセンスタイトルを積極的にローカライズしているメーカーさんは、最近は少ないですよね。タイトルは増えているのに。うちとしても、もっともっとローカライズしたいのですが、同時に手掛けられる数にはやはり限りがありますので、そこは歯がゆい思いをしています。

――たいへんかとは思いますが、スパイク・チュンソフトさんには、ぜひこれからもどんどんローカライズを進めていただきたいです。ローカライズタイトルの展開について、今後、予定していることはありますか?

飯塚つぎのステップとしては、日本を含む、アジア展開を考えています。事実、多くのパートナーさんからは、日本だけではなくアジア地域も含め、スパイク・チュンソフトに取り扱ってほしいとオファーがあります。『ARK』に関してはダウンロード版のみですが、アジア展開をしています。また、このたび『オーバーキルズ ザ・ウォーキング・デッド』では、当社初となるアジア地域に向けたパッケージ版の発売をさせていただけることとなりました!!(中国と韓国を除く) いろいろと忙しくなると思いますが、日本で培った経験を活かしつつ、アジアを盛り上げ、さらに日本も盛り上げて行こうと思います。いままでよりも、もう一歩踏み込んでがんばっていきます。

発表当時から飯塚氏が目をつけていた『オーバーキルズ ザ・ウォーキング・デッド』(2019年2月7日発売予定)。インタビューにて語られている通り、日本だけではなく、アジア(中国・韓国を除く)でも展開予定(パッケージ/ダウンロード版)。アジアのユーザーにも、「スパイク・チュンソフトはおもしろいタイトルを持ってくる」と思ってもらいたい、と飯塚氏。

――2017年12月に、スパイク・チュンソフトの現地法人がアメリカに設立されましたが(Spike Chunsoft, Inc.)、これもローカライズ事業に関わってくるのでしょうか。

飯塚ゆくゆくは、海外のパートナーさんからローカライズのお話を受け付ける窓口にすることも考えています。ですが、現地法人を作った大きな理由は、「スパイク・チュンソフトはこういう会社だよ」と、アメリカの皆さんに向けて発信していく拠点にするためです。まずは日本のタイトルを、クオリティーを大切にしながらローカライズして、アメリカのユーザーに伝えていきます。それがやがて、パートナー会社さんにも伝わって、事業全体にプラスに働くのではないかと思っています。

――スパイク・チュンソフトの名がより広まって、より多彩なタイトルがローカライズされることを期待しています。

飯塚オーバーキルズ ザ・ウォーキング・デッド』を始め、まだまだスパイク・チュンソフトらしいタイトルが控えていますので、ご期待ください。皆さんから「スパチュン!GJ!」と言われるようメンバーともども、がんばります!「こういうゲームがやりたいな」とご意見をいただければ、こちらも検討させていただきますので、いつでもご連絡ください。また、洋ゲーが好きで好きで仕方のない方は、ぜひ僕たちといっしょに働きませんか? 興味があれば、ぜひお問い合わせください。

スパイク・チュンソフトがローカライズを担当することが発表された『メトロ エクソダス』。詳細は、週刊ファミ通2018年11月22日号(2018年11月8日発売)にて紹介している。ぜひチェックを!

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