『フォールアウト』の世界観をボードゲームの中で再現した『フォールアウト ボードゲーム 日本語版』がどんな内容なのか紹介!

国内で2018年6月(海外では2017年末)に発売となった『フォールアウト ボードゲーム 日本語版』。日本のボードゲーム愛好家にも注目された本作が、いったいどんな内容なのか紹介しよう。

みんなでいっしょに遊べるのは『Fallout 76』だけじゃない!? 『フォールアウト ボードゲーム 日本語版』レビュー

 オンライン専用となったことで大きな話題となっているシリーズ最新作『Fallout 76』だが、じつは今年、もうひとつの『Fallout』が日本で発売されたのをご存じだろうか。それがこの『フォールアウト ボードゲーム 日本語版』だ。国内で2018年6月(海外では2017年末)に発売となったのだが、話題が話題を呼んで予約でほぼ完売状態。9月末に再出荷されてようやく店頭に並ぶようになった。それだけ日本のボードゲーム愛好家にも注目された本作、どんな内容なのか紹介しよう。

『フォールアウト ボードゲーム 日本語版』を実際にプレイしているところ

4つあるシナリオで最大4人までプレイ可能

 ホビージャパンより好評発売中の『フォールアウト ボードゲーム 日本語版』はひとりから4人まで遊べるボードゲームで、対象年齢は14歳以上、プレイ時間は2~3時間、定価は7000円[税抜]という商品だ。パッケージはおなじみのパワーアーマーなので、ひと目でそれだとわかる。

 中を開けると、以下の写真のようにたくさんのタイルやらコマやらが入っている。

 カードだけでもこんなにある。

 ゲームシナリオは4つ用意されており、その中からひとつ選んでプレイする。

シナリオは4種類。マップ構成や2つの勢力の説明が書かれている

ゲームスタート、という状態。箱から出してセットアップ完了まで30分くらい

 シナリオによってマップ構成や敵対勢力の設定が違う。下の写真はシナリオ“連邦”でセットアップした状態。

キャラクター(サバイバー)は5種類、それぞれ特徴がある。スタートプレイヤーから選択していく

 昨今のボードゲームブームにより、多少なりともこういうゲームを遊んだことがある人ならピンとくると思うが、いわゆるサイコロを振ってコマを進めて、というスゴロクタイプのものではない。

 本作は『フォールアウト』の世界観をボードゲームの中で再現、プレイヤーどうしは敵対するわけではないが、勝者はひとりなので協力するわけでもない。スタートプレイヤーから順番に、自分の番になったらエリアを移動したり探索したり戦闘したり……とさまざまなアクションをこなし、勝利条件を満たすため行動していく。

 シナリオごとにふたつの勢力が存在し、彼らも勝利に向かってゲームが進行しているため、途中でどちらかの勢力が最大の影響力を得てしまったらそこでゲームが終了。プレイヤー全員が敗北となってしまう。誰も勝利することなくゲームオーバー、という展開もありえるのだ。

少しずつマップのタイルがオープンになっていき、どんな世界か見えてくる。最初からオープンになっているマップタイル以外はすべてランダムで配置する

勝利条件は影響力を獲得すること

 では、何がどうなれば勝利なのか。勝利条件から逆算するようにゲーム内容を説明していきたい。

 プレイ人数にもよるのだが、4人で遊ぶ場合の勝利条件は“8影響力”を獲得すればいい。下記のサムズアップマークが書かれているのは指針カードと呼ばれるもので、基本的にこれ1枚で1影響力を獲得できる。

 指針カードには、カードごとにいろんな条件で追加の影響力が明記されている。その条件はほかのプレイヤーには秘密にしておくので、「まだあいつは指針カード3枚しか持ってないから勝利にはほど遠いな」なんて思わせておいて、じつはもう6点でまもなく勝利条件を満たす、なんてこともある。

 また、前述したふたつある勢力の差がそのままポイントになることもあり、特定の勢力に加担して一気に影響力ポイントをゲットして勝利する、なんてこともできるのだ。

指針カード。カードにはさらに影響力をゲットできる条件が書かれている

 指針カードに書かれた追加の影響力をどうやって稼いでいくかが大きなポイントであり、本作のおもしろさでもあると言っていいだろう。お互い腹の探り合いなので、あまりにもわかりやすい行動をしていると、「あれ? Aくんはさっきからこっちの勢力に味方するような行動ばっかりしてない? もしかして……!?」なんてバレてしまうので注意が必要だ。

 ということで、指針カードをゲットすれば勝利に近づく、ということはわかっていただけたと思う。ではそのこの指針カードはどうやって入手するのか。

 これは手番時に行うことができるアクションのひとつ、“クエスト”で入手する。ゲーム中に公開されているクエストカードの中から1枚選んで、そのクエストを実行することで、“結末”に書かれた状況が展開される。

クエストカード。ゲームスタート時は1~3枚だが、ゲーム進行で増えたり減ったりする

 クエストカードに2種類の“目的”が書かれており、どちらか一方を選んで実行することで、“結末”に書かれた状況を得ることになる。

 この“結末”でアイテムをもらえたり、念願の指針カードをゲットできる。これはクエストカードごとに決められているので、必ず指針カードを入手できるわけではない。

 クエストカードは100枚あり、個別に番号が振られている。クエストをクリアーすると新たに指定されたクエストカードが公開され、それによって物語が進行していく……というようなイメージだ。

これはシナリオ"連邦"におけるルートで出てくるクエストカード。"1"か"2"かいずれかの内容を行ったら、その結果を実行する。ほとんどのクエストカードはどちらかの目的を達成した時点でプレイから破棄(除外)される。

 このクエストカード、基本的に選択肢がふたつあって、それによって物語が分岐していく。このシナリオだけでもかなり気になるし、おもしろい。『Fallout』の世界観がしっかり表現されているので、シリーズファンならいちばんのお楽しみポイントかもしれない。

影響力をゲットするには戦闘を、戦闘するならレベルアップを!

 クエストカードをクリアーするには、どうしても避けて通れないのが戦闘だ。変異したクリーチャーや略奪者、敵対勢力などと戦うことで、目的達成となるクエストも多い。

 戦闘に勝つためには、一般的なRPG同様に“レベルを上げて”、“武器を装備”する必要がある。

マップ上に置かれた敵との戦闘は、すべてダイスで勝利か否かを判定する。弱点とされる部位の目が規定数出れば勝利となる

 まずはレベルアップについて説明しよう。レベルは数値で表されるのではなく、戦闘により溜めた経験値(XP)が一定値まで溜ると、『Fallout』ではおなじみのS.P.E.C.I.A.Lトークンを得ることができる。1文字ずつ“S”、“P”、“E”、“C”、“I”、“A”、“L”のS.P.E.C.I.A.L.トークンが用意されており、ゲームスタート時にふたつ持っていて、レベルアップでひとつだけ入手できる。

 こうしてトークンを揃えることで、本作のキモとなるダイス判定時において、“ダイスを振り直すチャンス”が増える仕組みになっている。

各個人ごとに用意されているプレイヤーボード。現在のHPや獲得したS.P.E.C.I.A.L.トークン、装備したアイテムカードが配置される

 クエストや戦闘の判定をするとき、V.A.T.S.ダイスと呼ばれる3つの特殊ダイスを同時に振って、その出た目の結果で判定する場合がある。一発勝負のダイスでそんな判定はシビアじゃないか……と思うかもしれないが、じつはレベルが上がってS.P.E.C.I.A.L.トークンをたくさん持っていることで、振り直しのチャンスが生まれるのだ。

 クエストや戦闘のダイス判定は、たとえば「合計で3以上を出せ。ただし“E”を持っていれば好きな個数だけダイスを1回振り直せる」というふうに、持っているS.P.E.C.I.A.L.トークンの種類によって振り直しができる。

 この条件は“EとL”というように複数条件の場合もあり、この場合は「EかLかいずれかひとつ持っていれば1回だけ振り直せて、ふたつとも持っていれば2回振り直せる」ということになる。

 つまり、S.P.E.C.I.A.L.トークンとひととおり揃えられれば、それだけダイス判定が行われるクエストや戦闘が有利になるのだ。

 どのボードゲームでもそうなのだが、本作の場合もやはりダイス判定が熱い。自分の番でなくても全員が注目し、「成功しろ!」「失敗して!」と見守る。その結果で全員が一喜一憂するもんだから、楽しくて戦闘やクエストをたくさんこなしたくなってしまう。こうしたランダム要素による判定は、ボードゲームにおいてじつにいいスパイスとなっているのだ。

判定に使われる3個のV.A.T.S.ダイス。人の形をしたマークは戦闘時に、●のようなマークは戦闘時とクエスト判定時に使う

 武器の装備についても説明しよう。ゲーム中、特定のエリアに入るとショップがあるのだが、そこで買い物をして武器などを装備することができる。武器にも同じようにS.P.E.C.I.A.L.トークン同様のアルファベットが書かれているので、その武器を装備していれば戦闘時のダイス判定で前述と同じように振り直しができる。

この装備カードの場合は、「S」か「A」を持っていればダイスの振り直しができる

 ここまで説明したところで、改めてゲーム展開をまとめてみよう。

 移動しながらウェイストランドを探索し、戦闘で経験値やお金を入手しつつ、装備やS.P.E.C.I.A.L.トークンを充実させてダイス判定を有利にし、クエストを達成して指針カードをゲットし、目標となる影響力の入手を目指す……といった感じだ。

 ゲームに勝利することを考えれば、とにかく指針カードを手に入れることを最優先で行動する必要がある。そのためにはクエストをこなさなければならない。クエストは全員共有なので、戦略としては指針カードをゲットできないクエストは、ほかのプレイヤーに任せてもいいかもしれない。

 だが、指針カードがもらえない場合でもアイテムなど重要なものがもらえる場合もあるので、無視するわけにもいかない。クエストカードは1回目的を達成するとゲームから除外されてしまうものがほとんどなので、黙って見ているだけでは、ほかのプレイヤーにレベルも影響力もどんどん差をつけられてしまう。

 クエストや戦闘をちゃんと成功させるには、ダイスの振り直しができるかどうかは超重要だ。そのため、レベルを上げなければならない。レベルを上げるには戦闘をこなさなければならず、戦闘で勝利していくには装備も大事で……と、「指針カードをゲットする」までの下準備はそれ相応に時間がかかる。この「あれをするためにはこれをしないと……でもそのまえにこっちの準備も……」なんていう過程は、何だかとてもRPGっぽくもあり、『Fallout』っぽさも感じる。

1回だけの特別効果なPerk、シリーズの特徴であるRADも!

 まだまだ『Fallout』らしい部分はたくさんある。

 レベルアップ時にゲットできるS.P.E.C.I.A.L.トークンはランダムなので、手にしたトークンがすでに持っている場合もある。その場合はトークンではなくPerkカードを入手することができる。

 デジタルゲーム版『Fallout』におけるPerkは特殊能力として装着できるものだったが、本作の場合は使い切りの超強力カードとして機能する。

【アクションガール/ボーイ】追加のアクションを2回実行する
【ナイト・パーソン】マップ上のどの位置にでも移動できる

 ……など、どれも強力なものばかりだ。レベルアップ時にすでに持っているトークンと取ってしまった場合の代替アイテムではあるが、十分すぎる見返りのカードだ。むしろこっちがほしい場合もある。

Perkカードは14枚ですべて効果は違う

 そして核戦争後を舞台とした『Fallout』ではおなじみ、RAD(放射能)ダメージも存在する。これはRADマークのついた敵と戦闘したときや、放射能汚染エリアを歩いたときにRADを受けてしまう。プレイヤーの体力にも影響を与え、最悪の事態ではゲームから脱落し、そのプレイヤーはゲームオーバーになってしまうので、ある程度受けてしまうのはしょうがないが、受けすぎには注意したい。

緑色のペグがRAD値(写真ではまだゼロ)。戦闘や放射能汚染エリアでこの数値が上がっていく

 戦闘システムやショップ、遭遇、属性など本作で説明すべき要素はたくさんあるのだが、細かい説明をし始めるとキリがないのでこのへんにしておく。ゲーム内容としては『フォールアウト ボードゲーム 日本語版』というタイトルに嘘偽りはなく、かなり本気な『Fallout』のボードゲームである、ということは間違いない。

 『Fallout 76』はオンライン専用になってほかのプレイヤーとの関わりが増すものとなっているが、「『Fallout』の世界観をみんなでいっしょに遊ぶ」という本作もじつはその雰囲気に近いのかもしれない。

 本稿を執筆するにあたり、デジタルゲーム版『Fallout』経験者およびボードゲーム全般を嗜んでいるプレイヤーを集めて遊んでみた。どちらかと言えば重量級(ルールが複雑でプレイ時間が長い)の部類だが、各種設定の『Fallout』っぽいさも相まって、仕事でプレイしていることも忘れて「あともう1回!」と立て続けに3回プレイし、6時間以上がっつり遊んでしまった。

 「やべー、またダイス判定で目的達成できなかったよ」
 「このオリヴィアって子のクエスト、気になるよね。この先どうなるんだろう?」
 「またRADなんですけど! 汚染が半端ない……」

 こんな感じで楽しく会話が弾んでいくのもとくにクエストが進行していく過程は、みんなでテーブルトークRPGをしている感覚に近いかもしれない。指定された人がカードの文面を読み上げる場面もあり、だんだん朗読のような雰囲気になってきて、ずっと笑いと興奮が収まらなかった。

 さらに参加者のひとりが「雰囲気が盛り上がれば……」と『Fallout 4』のサントラまで用意してくれたので、すっかりゲームの世界観に引き込まれたのもよかった。

 16ページのマニュアルが2冊(“プレイ方法”と“ルールガイド”)と、ルールを覚えるだけでもそこそこヘビーだ。とくに初めて遊ぶときはルール説明で1時間、実際のプレイで3時間の合計4時間はみておいたほうがいい。できれば休日の午後を使って、じっくり遊んでほしい。