ボスとの死闘を重ね、戦うほどに――“弱くなる”!

 ボスバトルはゲームの華だ。ステージの最奥でプレイヤーを待ち受けるボスとの一騎打ちにまさしく手に汗を握って挑んだ経験は、ゲームを終えた後も思い出として残り続ける。何十回、ときに何百回と挑むボスの姿は私たちの脳に強く記憶される。

 そして、また新たなボスを記憶に刻みつける時が来た。この記事ではライター脳間寺院が2018年10月18日よりNintendo Switchで配信が開始された3Dアクション『SINNER: Sacrifice for Redemption』(プレイステーション4、Xbox One、PCでも配信予定) のプレイレビューをお届けする。

『SINNER: Sacrifice for Redemption』プレイレビュー。戦うほどに“弱くなる”『ダークソウル』ライクな3Dアクション_01

ゲームの基盤は『ソウル』 シリーズ

 本作は海外のインディースタジオDark Star Game Studiosが開発し、中国・香港のパブリッシャーAnother Indieが販売を手掛けるタイトルであり、熱心なアクションゲームファンの注目を集め、長らくリリースが待ち望まれてきたタイトルだ。

 本作の映像や画像を見て、『DARK SOULS(ダークソウル)』(以下、『ソウル』)シリーズを想起した人は多いのではないだろうか。『ソウル』シリーズと言えば、何度もゲームオーバーになりながら進めていくことを前提とした難易度設定や、不気味なダークファンタジーの世界観が話題を呼び、アクションRPGに新たな金字塔を打ち立てたフロム・ソフトウェアの人気作だ。
 じつは『SINNER: Sacrifice for Redemption』 は、世界観から操作感まで、ゲームの大部分で『ソウル』 シリーズへのオマージュを感じる仕上がりとなっている。

『SINNER: Sacrifice for Redemption』プレイレビュー。戦うほどに“弱くなる”『ダークソウル』ライクな3Dアクション_02
ファランクス(密集陣形)を形成する敵には、火炎瓶が有効かもしれない。

 ひと言で表現するなら、本作は『ソウル』シリーズからボスバトルだけをピックアップしたようなゲームだ。プレイヤーはゲームを始めて短いチュートリアルを終えてから、7つのステージに繋がる空間へと足を運ぶ。この空間は『DARK SOULS』と同じくフロム・ソフトウェアが手掛けた『Demon's Souls』で言う楔の神殿にあたるものだが、そこからステージに侵入するとすぐにボスバトルが始まる。

 武器は“片手剣と盾”か“両手剣”の二種のみで、戦闘中でも状況に応じて武器を切り替えることができる。戦いの基本はヒット&アウェイだ。ボスの猛攻はローリングによる回避か、タイミングよくガードすることで発生するカウンターで凌ぐ必要があるが、 カウンターの受付時間は『ソウル』 シリーズよりも猶予があるため、積極的に狙っていける。『ソウル』 シリーズのパリィは上級者向けの技だったが、本作のカウンターはクリアーにほぼ必須のテクニックだ。

 消費アイテムは、回復ポーション・火炎瓶・炎エンチャント・投擲槍の4種類。一度の戦闘で使える数は限られているが、死んでコンティニューしたり別のボスに挑む際にはアイテム数はリセットされるため、アイテムはもったいぶらずに使える。

 『SINNER: Sacrifice for Redemption』 のボスは強力だ。武器やステータスを強化できない分、シンプルにプレイヤーが上達することを求められる。ボスの体力は高く、まぐれ勝ちは許されない。

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勝てば勝つほど弱くなる「レベルダウン」システム

 『SINNER: Sacrifice for Redemption』 では、ボスのいるステージに侵入するために、ステータスダウンという“犠牲”を払わなければならない。

 本作には七大罪を象徴する七人のボスが登場し、ボスごとに犠牲にするステータスは異なる。ボスごとの犠牲について紹介しよう。

  • 強欲なるフェズ・ティラス……体力とスタミナの上限が下がる
  • 傲慢なるロデス……攻撃力が低下する
  • シャネルの色欲……ガードクラッシュ時に盾が破損する
  • 嫉妬深きレヴィン・アンドック……アイテムの使用可能回数が減る
  • 暴食のカンバー・ルス……ポーションの使用回数が減り、回復速度が低下する
  • 怠惰なるヨルド……スタミナが減ると脱力状態(一定時間操作不能)になる
  • 憤怒のアグロン……防御力が下がり、自然回復しなくなる

 『ロックマン』シリーズで、どの順番でステージを攻略するか試行錯誤するように、本作でもどの犠牲を先に払うかはよく考える必要がある。もっとも『ロックマン』 は進めるほどにパワーアップするのに対し、こちらは進めるほどに主人公は弱くなっていくのだが。

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周回プレイにクリア後のやりこみ要素もお忘れなく

 ボスと連続で戦うというゲームの仕様上、本作は周回プレイに適している。マルチエンディングかつ、クリアー後に新たな武器の解放という要素も存在するほか、ボスラッシュ形式の戦闘でクリアータイムを競うチャレンジモードも解放される。鬱陶しいボスまでの道のりは存在せず、心ゆくまでボスバトルに浸れるのは、アクションゲーム好きにはうれしい仕様だ。

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ごまかしの効かない本格アクションゲーム

 『SINNER: Sacrifice for Redemption』はソウルシリーズ を踏襲しながらも、主人公が徐々に弱くなっていくレベルダウンシステムによって斬新なゲーム体験を提供してくれた。一部のボスは戦闘に多少の単調さを感じたが、『ソウル』シリーズのボスを彷彿とさせるボスの見た目やアクションは魅力的なものがほとんどだった。装備やレベル上げでのごまかしが効かないからこそ、否応なしにゲームプレイの腕前を求められる『SINNER: Sacrifice for Redemption』 は、かつて“人間性を捧げてきた”すべてのゲーマーにおすすめできる作品だ。

文●脳間 寺院(のうま・じいん):京都生まれ、ポケモン育ち、ボンクラオタクはだいたい友達。ブログ「オレにゲームをやらせろ。」でもゲームのよもやま話を発信中。Twitter:@noomagame