声優、歌手として活躍する“ミンゴス”こと今井麻美さんのライブ“今井麻美 Live in TOKYO 2018”が、2018年10月8日、東京の恵比寿ザ・ガーデンホールにて開催された。

 2017年の年末から2018年にかけて開催された自身初のアコースティックライブツアーなど、ライブ活動自体は精力的に行っていた今井さんだが、バンド形式のライブは約1年3ヵ月ぶり。

 今回のライブでは、8月29日発売された19thシングル『World-Line』に収録された新曲3曲を含む、全20曲を披露し、会場に集まった“+A”メンバー(※今井さんを含むバックメンバーやファンなどの総称)とともに大いに盛り上がった。

多彩な歌声や楽曲で観客を魅了! “今井麻美 Live in Tokyo 2018”リポート_01

 開演時間になるとバンドメンバーがステージ登場。今井さんの影ナレーションでメンバー紹介を終えると、最後に「ボーカル、今井麻美でお届けます」と締め、いよいよライブがスタート。

 『World-Line』のミュージックビデオの衣装を身に纏って登場した今井さんは、『この雲の果て』、『Precious Sounds~風が残していった~』のアルバム表題曲を2曲連続で熱唱した。続く3曲目は、19thシングルに収録された新曲『アメノアトニ~Brighter Days Ahead~』。同曲は、4月に開催されたファンクラブイベント内で実施した、バンドメンバーによる公開楽曲コンペで、会場に集まったファンの投票によって選ばれた楽曲。作詞と作曲をドラムの“まこっちゃん”こと、大津惇さんが担当しており、これまでの今井さんの楽曲にはあまりなかったような曲調になっている。そんな同曲を今井さんは、力強く歌唱した前2曲とは違い、軽快なステップやダンスとともにキュートに歌い上げた。

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 MCでは、「世間では体育の日、でも、恵比寿では音楽の日としたいと思います。どうも、今井麻美です!」と元気いっぱいに挨拶した今井さんだったが、『この雲の果て』の際に少し動揺してしまったことを告白。その理由として『この雲の果て』は、サイリウムを思いっ切り振って盛り上がる雰囲気の楽曲ではなく、座ってじっくり聴く楽曲でもないため「(立つべき、座るべきか)皆さんのどうしたらいいんだろう? という空気を感じ取りました。でも、立ちたいという想いがジワジワと伝わってきて、すごくニヤニヤしました」と説明した。

 続いて、『アメノアトニ~Brighter Days Ahead~』について、CDでは今井さんが、帰国子女の大津さんから発音指導を受けながら収録したという英語のコーラス部分を、今回のライブでは特別バージョンとして大津さん自身が歌っていたのだが、「コーラスを歌ってほしい」と本人に伝えたのは、ライブ当日のリハーサルだったことが明かされた(※今井さんのライブでは、たまにこういった無茶ぶりをバンドメンバーが受けている)。感想を求められた大津さんは「(歌いながら演奏するのは)難しい楽曲ですね」と本音を吐露するも、「つぎは、男性パートが入った簡単な曲を作ってくださいね」(今井さん)と、つぎの楽曲でもコーラスを歌ってもらうことを前提とした返答をされ、会場は大きな笑いに包まれた。

 また、その話を聞いて笑っていたギターの中村天佑さんに対しても「笑ってられないからね。天ちゃん(※中村天佑さんの愛称)」とすかさずツッコミを入れる今井さん。というのも、中村さんも公開楽曲コンペに参加しており、そのときは惜しくも大津さんの楽曲に敗れてしまったのだが、今井さんは「天ちゃんの曲もすごく人気で。正直、私もすごく好きで早く歌詞が付いたものを聞いてみたいとずっと思っているんですけどね」と想いを伝えた。さらに、その後にも「ほかのメンバーも気を抜かないでね」と宣言したり、バンドメンバーとの仲のよさがうかがえる、アットホームなMCとなっていた。

 そして、つぎに歌唱する楽曲について、「(志倉)千代丸さん(『シュタインズ・ゲート』を代表とする科学アドベンチャーシリーズの企画・原作を務める)の楽曲ということで、プレッシャーが半端なかったですが、多くの方に気に入っていただけたようで、私もホッとしています」と心境を語った後、「……と言いながら、これで『Blue Feather』を歌ったらビックリするよね?」という冗談で会場を温めつつ、『World-Line』を披露。

 同曲は、約2年振りに発売したシングルの表題曲であり、今井さんが牧瀬紅莉栖/アマデウス紅莉栖役として出演した、テレビアニメ『シュタインズ・ゲート ゼロ』の後期エンディングテーマ。バンドアレンジによって、パワフルさが増した楽曲に負けないほどのアツいパフォーマンスで観客を魅了した。続いての『星屑のリング』でも、間奏中に観客を煽ったり、ラストサビのタイミングでは見事なジャンプを決め、会場のボルテージをどんどん上昇させていく。

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 MCでは、そんな会場の熱気で汗だくになっていた、ベースの“りゅうくん”こと川村竜さんを見て「りゅうくんのこと笑えないくらい汗をかいちゃって……いや、やっぱり笑えるわ(笑)」と、ライブ初参加となる新メンバーでも、容赦なくイジっていく。

 しかし、川村さんも負けてはおらず、今井さんから「りゅうくんは、いろいろなところで活躍されているということですが、ふだんはどんなことをされているんですか?」という質問に「家で『ストリートファイターV』を遊んでいます」と、予想外過ぎる回答で観客を笑わせた。さらに、今井さんの無茶ぶり(?)は続き、なぜか中村さんに川村さんがふだん何をしているのか質問するという展開も。

 なお、川村さんがプロデュースしているのは、声優・歌手の岩男潤子さん。岩男さんと今井さんは何度か共演していることから、川村さんとも以前にお会いしており、その際に「ミンゴスさんのライブで演奏したいので、よろしくお願いします」と熱烈なアピールがあり、ようやく実現したことが明かされた。

 続いて披露されたのは、『オーロラの音』、『海月 ~Jellyfish~』、『路地裏のプラネタリウム』の3曲。『オーロラの音』、『海月 ~Jellyfish~』では、今井さんのやさしくも力強い歌声が会場を包み込み、開幕から上がりっぱなしだったボルテージをクールダウン。逆に、『路地裏のプラネタリウム』では、楽曲に合わせて左右に手を振ったり、手拍子をしたり、会場が一体となって盛り上がった。

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 一時はライブ当日に台風が来ることが心配されていたが、台風の進路から外れ、真夏を思わせる天気になったことについて、今井さんは「どうも、晴れ女です!」と自信満々にアピール。しかし、すぐに「あんまり調子に乗っていると、ここぞというタイミングでどうにもならなくなったときに、私はステージで土下座をすることになるんでしょうね……(苦笑)」と不安を口にしつつ、「最近、野外でライブをやっていないので、やりたい気もします」と意気込みを語っていた。

 その後には、バイオリンのAiさんのことを「立っていても座っていてもかわいい」と語ったり、逆に体が大きな川村さんには、「大きな楽器が近くにあっても小さく見える」とツッコミを入れたり、ライブ当日が誕生日だったキーボードの西村奈央さんには、みずからバース―ソングを演奏してもらい会場の全員でお祝いするなど、バンドメンバーとの交流を楽しんだ。

 ライブでの披露は久しぶりとなった『DEPARTURE』では、飛び跳ねたり、こぶしを突き上げたり、パワフルなパフォーマンスを魅せた。つぎの『追憶の糸車』では、歌詞に合わせて、糸車を巻くような仕草を見せるなど、楽曲の世界を全身で表現した。

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 バンドメンバーによるinstrumentalが終わると、白のドレスに着替えた今井さんがステージに登場。そのまま、アコースティックアレンジされた『夢のMAHOROBA』、『Sunny Place』を情感たっぷりに歌い上げた。

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 MCに入ると、客席から「かわいいー!」という声が上がり、今井さんはうれしそうな表情を見せていた。その後も、「リハーサルのときに、りゅーくんの近くに行くのがすごく嫌だったの……絶対にアレ(コントラバス)高いから」とリラックスムードだったが、つぎの曲は集中力が必要ということで、それまで流れから一転して精神統一に入る。そして、『花の咲く場所』の1番をアカペラで披露。静まり返った会場を今井さんの歌声だけが包み込む幻想的な雰囲気の中、2番からはバンドメンバーの演奏も加わり、会場をさらにアツくさせた。その勢いは留まることはなく、『シャングリラ -ballad ver.-』でも、伸びやかな歌声を響かせ、観客を圧倒。

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 圧巻のパフォーマンスだった歌唱中とは打って変わって、MCに入ると「入り込み系の曲を聞いていただいちゃったので、ちょっと恥ずかしい感じ(笑)」と、急にスイッチが切れたように恥ずかしがる今井さん。その後も、ハマっているという某ドラマの魅力を熱弁したかと思いきや、またすぐに気持ちを切り換え、ラテン系の楽曲である『Hasta La Vista -Blanco llama ver.-』をフラメンコ風のダンスとともに情熱的に熱唱。続いての『遠雷 -Piano Ballad ver.-』では、やさしいピアノの音色とともにしっとりと歌い上げた。このようなMCと歌唱中のギャップや、楽曲によってさまざまな表情を魅せる歌声も今井さんのライブの魅力のひとつ。

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 instrumentalの後には、ライブTシャツ&黄色いスカートに衣装チェンジした今井さんがステージに姿を現し、19thシングルに収録された新曲『Blue Feather』を歌唱。同曲は、作曲を濱田貴司さん(今井さんの楽曲では、『サ・ヨ・ナ・ラ』、『AQUAMARINE』などの作曲や編曲を担当)、作詞を今井さん自身が担当した楽曲。歌詞には、今年、西日本で起きた大規模な水害での嘆きや悲しみなど“人の心の痛み”をテーマにしつつ、希望の想いを込めた楽曲ということで、ひと言ひと言を噛み締めるように歌い上げ、詞や曲に込めたメッセージを歌声に乗せて、観客に届けた。

 MCでは、『Blue Feather』へ込めた想いを改めて語っていたのだが、急に“マニュアル免許を取ったのは、災害が起きたときに、マニュアル車しかなくて運転できなかったら困るから”、“いざというときのために準備してある非常袋に入っている食料の賞味期限が切れているような気がするけど、食べられるだろう”と自由なトークを展開。さらに、そのまま「そんな想いを込めた楽曲です」とまとめようしたところ客席から冷静なツッコミが入り、笑いが起きるというひと幕も。

 続いての楽曲は、『クレッシェンド』の歌詞を変えた別バージョンとして、ファンクラブ会員向けに限定CDも販売されている『虹』。同曲の編曲を担当した牧戸太郎さんの“音楽で虹を架ける”という想いを、今井さんの歌声、バンドメンバーの演奏、会場のライトで表現した。そして、最後に今井さんがやさしく「ありがとう」とつぶやくと、観客から大きな拍手が贈られた。

※『虹』や『Blue Feather』が生まれた経緯などは以下のインタビューをチェック

 感動の空気に包まれる会場だったが、つぎの『Dear Darling』で状況は一変。同曲は今井さんの楽曲の中でも、とくに明るくキュートな曲調ということで、会場はピンクのサイリウムに染まる。そして、おなじみの「L・O・V・E ラブリーミンゴス 東京エンジェル プリティーミンゴス」のコールも決まり、うれしそうな笑顔を見せる今井さん。その後も、楽しさを全身で表すように、飛んだり、跳ねたり、踊ったり、さまざまなパフォーマンスで観客を魅了した。

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 ライブは、そろそろ終了の時間に。ここで、今井さんが来年、声優20周年&歌手10周年を迎えることを報告。さらに、2019年1月から放送開始のテレビアニメ『ぱすてるメモリーズ』のオープニングテーマを担当することを発表すると、客席からは「おめでとう!」の大歓声が上がる。なお、曲名は『Believe in Sky』(作詞:森由里子さん/野村勇輔さん、作曲/編曲:野村勇輔さん)となっている。

 そして、昨年発売した100曲入りのコンプリートアルバムの表題曲『rinascita』を全身全霊の想いを込めて歌い上げた。最後に「いつ発売になるのかはわかりませんが、つぎのシングルが記念すべき20枚目になります。こんなに発売できるなんて感無量です。皆さんがこれからも私のライブに来たいと思っていただけるように、それなりにがんばります!」と、今井さんらしいメッセージをファンに贈り、ライブを締めくくった。

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 約1年3ヵ月ぶりのバンド形式のライブとなった“今井麻美 Live in Tokyo 2018”。自身初のアコースティックライブツアーなどを経て、いままで以上に表現の幅が広がり、さらにパワーアップしているような印象を受けた。11月18日にも香港で、初の海外単独公演が行われたり、つねに新しいことにチャレンジする今井さんだからこそ、つぎのライブでは、どんな表情の歌声が聴けるのか楽しみで仕方がない。また、来年は声優20周年&歌手10周年という記念すべき年ということで、どんな1年になるのか目が離せない。

“今井麻美 Live in Tokyo 2018”セットリスト

  1. この雲の果て
  2. Precious Sounds~風が残していった~
  3. アメノアトニ~Brighter Days Ahead~
  4. World-Line
  5. 星屑のリング
  6. オーロラの音
  7. 海月 ~Jellyfish~
  8. 路地裏のプラネタリウム
  9. DEPARTURE
  10. 追憶の糸車
  11. 夢のMAHOROBA
  12. Sunny Place
  13. 花の咲く場所
  14. シャングリラ -ballad ver.-
  15. Hasta La Vista -Blanco llama ver.-
  16. 遠雷 -Piano Ballad ver.-
  17. Blue Feather
  18. Dear Darling
  19. rinascita