ファン感涙の復活劇ッ!
フォワードワークスの新作アプリで、事前登録受付中のRPG『ワイルドアームズ ミリオンメモリーズ』(以下、『WAMM』)が、2018年9月26日に、いよいよ配信開始となる。
往年のゲームファンには、プレイステーションの『ワイルドアームズ』シリーズの新作と言えば「おおおッ!」という反応が返ってくる人気タイトルである。当時、筆者も大いにハマって全作品を涙が涸れるまでやり込んだものだ(ドライアイ的な意味で)。
当然、思い出補正も加わって、『WAMM』にはかなりの期待感がある。その一方で、「期待と違うものだったらどうしよう」、「思い出はキレイなままにしておきたい……」という乙女のような気持ちもあるのも否定できない(我ながら気持ち悪い)。公式サイト(→こちら)の振り返り企画を読んだりして気分は盛り上がっているのだが、本当に知りたいのは「『WAMM』自体がどうなのか?」なのである。
そんな折、『WAMM』の開発中バージョンをプレイする機会をいただいた。いわゆるひとつの“渡りにシップ(船)”というやつだ。だが、あくまでこれは仕事である。本記事では、冷静な視点からのプレイレビューをお届けしていく。本当だぞ!
ストーリーはダイナマイト!
『WAMM』は、これまでのシリーズ作品の歴代主人公キャラクターが一同に会したら……という展開を描く、オールスター要素を取り入れた新作である。
と言っても、彼ら彼女らがどんな人物なのかはイチから描かれていくし、原作のオマージュこそあれど序盤から完全オリジナルの展開が続くので、シリーズをプレイしたことがない人や、「正直、けっこう忘れちゃっているかも(笑)」というウッカリさんのように、原作を知らなくてもまったく問題はない。元ネタに気づいてニヤニヤできる要素が減るくらいだ(それが悔しい人は、配信中のゲームアーカイブスなどで予習・復習をしよう)。
また、シナリオ構成や育成要素など、バトル以外はスマホRPGではオーソドックスなタイプのシステムになっており、ふだんスマホでゲームを遊んでいる人にはとっつきやすいはず。
バトルについては後述するとして、ひとまず序盤(第4章まで)をプレイしての印象をまとめてみよう。
すでにムービーが公開されているが、プロローグでいきなり“ロディ(声:鈴村健一)が裏切る”という衝撃の展開からゲームは始まる。ロディと言えば第1作の主人公であり、シリーズにおいては“主人公オブ主人公”とも言うべき、象徴的な存在だ。いきなりこんな展開をブッコんでくるあたり、制作側は本気である。
「いったい、どうして!?」とその理由を知りたいと思うのが人情だが、プロローグムービーを挟んで始まったのは、時間や場所がまったく異なる(?)ストーリー。直前に裏切ってくれちゃったはずのロディや、ARMなど古代の遺失技術を巡る旅をしている“ブルーキャラバン”の少女ブリトニー(声:東山奈央)たちの出会いと彼らの旅路が描かれていく。
『ワイルドアームズ』と言えば、主人公サイドは勧善懲悪に全力で邁進し、敵サイドは悪行に全力で突き進む、わかりやすくも王道な展開を全力で描き切る、潔くアツいストーリーが特徴であるが、本作でもそのDNAは健在。セリフの言い回しなども含め「これぞ『ワイルドアームズ』!」が楽しめる。
会話時には大きくキャラクターイラストが表示されるのだが、表情の変化やカットインといった細かい演出が盛り込まれており、原作よりもキャラクターの演技がわかりやすくなっているのも、とくに原作ファンには注目してほしいところだ。
また、シリーズファンでもほとんど知らないであろう“もう一匹のカゼネズミ”、フィールが序盤から大活躍する。カゼネズミと言えば、初代『ワイルドアームズ』の主人公のひとり、ザックの相棒でもあるハンペンが唯一の生き残りと言われていたが、じつはもう一匹いたのである。
じつは彼女、初代『ワイルドアームズ』の体験版でメモリーカードにセーブしたときのセーブアイコンに表示されるキャラクター(20年以上の時を経て明かされるトリビア……!)。なお、フィールというのは彼女が名乗っている通り名で、本名は……。メインストーリーにて、ハンペンが明らかにしてくれるぞ。
なお、メインストーリーは章立てになっており、1章につき8~10程度のクエストで構成されている。クエストにはストーリーのみの“Scene”と、専用のフィールドで行われる“Battle”の2種類があり、だいたい半々かSceneが少し多いくらい。Battleはボス戦のあるなしにもよるが、おおよそ2~3分で終わるようになっている。
ちなみに、スマホゲームでよくある、ゲームプレイに必要な“スタミナ”は『WAMM』には存在しない。時間と根性の続く限り、ゲームを遊び続けることができるのだ。
スタミナなしとともに、『WAMM』におけるスマホゲームとしてはめずらしい特徴が、“プレイアブルキャラクターはガチャではなくストーリー進行による自動加入で増えていく”ということである。
キャラクターのステータスアップに大きく影響する“ARM”や“ギア”といった装備品こそ、強力なものはガチャで入手するシステムになっているが、キャラクター自身は全員が無料、自動で加入するというのは、制作側のこだわりが感じられるところ。スマホゲームの課金システムには賛否両論あるようだが、少なくとも『WAMM』のこうした姿勢は高く評価したいと思う。
基本はシンプル、上級者向けの要素もあるバトル
さて、ここからはバトルをチェックしてみよう。
これまでのシリーズ作品ともっとも大きく異なるのが、ターン制のコマンドバトルではなく、アクション要素を取り入れたリアルタイムバトルになったこと。これまでもダンジョン探索ではかなりアクション要素が強めだったが、イメージとしてはそちらに近い。
最大3人のパーティーを組んで、その中からひとりを操作し、フィールドを進みながら道中で強制的に発生するバトルをこなしていき、最奥でのバトルに勝利すればクリアーとなる。操作していないキャラクターは、少しずつHPが回復していく仕組みになっているので、操作キャラクターのHPが減ってきたら積極的に交代し、回復を図るのも手だ。
クエストには、助っ人としてほかのプレイヤーのキャラクターをひとり連れて行くことができるようになっている(操作は自動)。それがないと実質ひとりで数体の敵を相手にすることになるため、かなり大きな助けとなる。
バトルの基本操作は以下の通り。
・スワイプ……移動
・タップ……通常攻撃
・長押し……チャージ(溜め)攻撃
・フリック……緊急回避。
そのほかにも、“キャラチェンジ”や“フォースアビリティ”、“ARM攻撃”といった要素も用意されている。
フォースアビリティはバフ効果や補助効果、ARMは超強力な技“アクティブスキル”(攻撃がメインだが、回復系などもある?)というイメージでいいだろう。それぞれ発動にはゲージを満たすなどの条件が必要なのだが、ふつうにバトルを進めていれば発動できるようになるはず。
バトルの操作自体はシンプルでそれほど難しくはないのだが、とくにボス戦など敵の攻撃はけっこう厄介。基本的には、通常攻撃連打と敵の攻撃をかわすフリックのふたつの操作に集中しながら、ゲージが溜まったらフォースアビリティやARMを発動する、というパターンで行動すればいい。
この“連打&ARMドーン!”はけっこう気持ちいい。思い起こせば、シリーズ作品でもダンジョンでは発砲音が気持ちよくてムダに発砲しまくりながら走り回っているのが楽しかったものである。『WAMM』のバトルも、思想としては似たようなものかもしれない(笑)。
一方、敵の攻撃をギリギリのタイミングで回避すると発生する“ジャスト回避”や、敵の攻撃に合わせてチャージ攻撃を当てるとダウンさせられる“チャージカウンター”など、テクニカルなアクション要素も用意されている。通常なら使わなくても問題ないのだが、使いこなすことでより攻略しやすくなる、上級者向けの要素と言える。
生半可なマニア自慢は火傷する! 信頼の厚いスタッフが作り上げたストーリー
最後に、育成要素について。
各キャラクターには“ARM”と“ギア”、ふたつの装備カテゴリが用意されている。ARMを装備すると、ARMごとに設定された強力なアクティブスキルが放てるようになり、ギアは“パーソナルスキル”と呼ばれるバフ効果などを得られるようになる。
さらに、ARM、ギアともに装備すると装備者の能力を引き上げる効果があり、とくにARMでは大きな上昇が見込めるので、新たなARMを入手したら、とりあえず効果を確認するといいかもしれない。“おすすめインストール”、“おすすめ装備”というオート装備機能も活用したいところ。
ARMにはシリーズ作品のキャラクターや名シーンが描かれており、シリーズファンにはそれらを収集し鑑賞するという楽しみも。また、ARM、ギアともに余ったものを使って強化を行うことができるので、ダブったものなどはそうやって有効活用しよう。
『WAMM』はバトルシステムがシンプルなぶん、キャラクターの能力が大きくものを言う。そのため、キャラクター自身のレベルや装備の強化はつねに気をつけておきたい。“レベル上げ”のような、懐かしのRPG要素も必要になってくることもある。
今回のプレイを総括すると、キャラクターのノリやさまざまなお約束などをしっかりカバーしつつも、システム面で現代のトレンドを取り入れた“いいとこ取り”をうまく行っているという印象。正直、『ワイルドアームズ』をまったく知らなくても何も不自由しなさそうだ(それはそれでファン的には寂しい……)。
産みの親である金子彰史氏が“制作総監修”という怪しげなポジションであることに、一抹の不安を覚えているファンもいるかもしれないが、週刊ファミ通2018年9月27日号(9月13日発売)でのインタビューでも本人が明らかにしているように、本人と信頼できるスタッフによって『WAMM』は作られており、実際にプレイした印象でも、少なくともシナリオ面に関してはまったく不安はない。
むしろ、フィールの件など玄人ファンをもうならせるようなネタも投入されており、ヘタにマニアづらをすると火傷をしてしまいそうな気も……。
9月26日の配信スタートまでのカウントダウンもいよいよ。各ストアでは日付が変わると先行ダウンロードができることがある。サービスの開始は午後からとのことなので、ダウンロードして開始を待とう。ロディ裏切り問題など、胸をザワつかせる要素もまだまだあるが、まずは期待をもって、サービスインを迎えたい。