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“取り残された日本の挑戦”がテーマだった昨年から、状況一変!

 2018年9月13日、都内にて“AMDシンポジウム2018 激闘eスポーツ! ~世界をめざす新産業 日本の挑戦~”が開催された。デジタルコンテンツを扱う企業の団体である、一般社団法人デジタルメディア協会(AMD)の主催によるもので、内閣府幹部から現役選手まで、国内でesportsに取り組むさまざまなパネリストが登壇。日本のesportsについての最新報告や、展望についてのディスカッションが行われた。

 開会に先立ち、AMDの襟川恵子理事長が挨拶。昨年開催された同シンポジウムのテーマが“世界を席巻するesports ~取り残された日本の挑戦~”であったと回想し、1年前にはまだ国内でesportsの認知度が低かったこと、そんな状況下でもそのリポート記事がネットニュースランキングで数日間にわたり1位を獲得し、関心の高さが伺えたことを振り返った。

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襟川恵子氏(一般社団法人デジタルメディア協会 理事長)

 また、AMDがesports振興のために活動中であることを紹介。その一環として、2019年1月に開催される“日本・サウジアラビアeスポーツマッチ”にて、清水建設、大和証券、三菱地所といった企業の協力を仰ぎ、サウジアラビアの拠出分も含めて3000万円相当の賞金総額を実現したことを説明した。

 続いて、総務省 大臣官房総括審議官の安藤英作氏が来賓として挨拶。情報通信行政が、次世代の移動通信システムである5Gの導入を目指していることと、その実現によりesportsをはじめとするデジタルコンテンツビジネスがさらに大きく発展をしていくだろうとの期待を述べた。

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安藤英作氏(総務省 大臣官房総括審議官)

 今回、モデレーターを務めたのは、フジテレビ“情報プレゼンター とくダネ!”のコメンテーターとしてもおなじみ、慶應義塾大学大学院 特別招聘教授の夏野剛氏だ。「去年のシンポジウムは冷え切っていた。海外すごいねー、って話でほとんど終わってしまった。それが状況一変。アジア大会で日本代表選手が優勝したり、esportsが文化として根付き始めている。ゲーム大国の日本がesportsに進出するのは、世界にとっても刺激になるのでは」と、シンポジウムをスタートさせた。

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夏野剛氏(慶應義塾大学大学院 特別招聘教授)

2019年の茨城国体でesports選手権を実施

 シンポジウムは2部制で、第1部のテーマは“世界をめざすプレイヤー戦略”。esports競技で日本の選手が活躍するための提言だ。

 最初に登壇した茨城県知事 大井川和彦氏は、2019年秋に開催される“いきいき茨城ゆめ国体”の文化事業として、全国都道府県対抗esports選手権を開催することを紹介した。都道府県の魅力度ランキングで5年連続最下位である、茨城県のイメージアップも目指しての導入だという。

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大井川和彦氏(茨城県知事)

 現在までに開催が決定している競技タイトルは『ウイニングイレブン2019』。年齢や性別、ハンディキャップの有無に関わらず対等に競い合えるというesportsの特徴を打ち出し、誰でも参加可能なオープンの部も設けた。本大会は来年だが、今月行われるプレ大会には「サッカー部の男子をやっつけたいという文化部の女子高生がエントリーしている」そうだ。

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アジア大会『ウイイレ』で日本金メダル! 感動の表彰式

 つぎに、一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)副会長の浜村弘一氏が登壇。今年1月にJeSUが設立されたこと、昨年9月に14.4%だった国内でのesports認知度が今年3月には34.6%に上昇したこと、これまでに119名にプロライセンスを発行してきたこと、第18回アジア競技大会 ジャカルタ・パレンバンにesports日本代表選手団を派遣したことなどを説明した。

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浜村弘一氏(一般社団法人日本eスポーツ連合 副会長)

 浜村氏は、アジア大会『ウイニングイレブン 2018』部門決勝大会を会場で観戦したとのこと。「ゴールのたびに、選手がユニフォームの袖に描かれた日の丸をアピールしていて、日本のために戦っているんだと。すごく感激した」とコメント。君が代が流れる表彰式の映像も紹介された。

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 また、今月開催される東京ゲームショウで“日本・サウジアラビアeスポーツマッチ”の日本代表選手が決定することを説明。『ストリートファイターV』『鉄拳7』『ウイニングイレブン2019』が競技タイトルとなる。

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スポンサーロゴだらけのユニフォームに「F1みたいだ」

 代わってステージに上がったのは、国内のプロesportsチームDetonatioN Gamingをマネジメントする株式会社Sun-Gence代表取締役の梅崎伸幸氏。DatonatioN Gamingは、フルタイム給与制を導入し、また、「プロ野球の助っ人にあたる」チーム所属外国人選手がアスリートビザを取得したことなどがニュースとなり、世間でも注目を集めてきた。

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梅崎伸幸氏(株式会社Sun-Gence代表取締役)

 梅崎氏によると、現在、国内のプロesportsチームは45団体ほど。昨年に比べ、2倍近く増えたという。そんななか、約50名の選手を擁し、国内プロチームとしては最多の5つのプロリーグに参戦するDetonatioN Gamingを紹介。チームスポンサーは16社を数え、ロゴだらけのユニフォームはよく「F1みたいだ」と言われるのだとか。

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 DetonatioN Gamingのマネジメントについては、プロスポーツチームとほぼ同様のことが行われていると梅崎氏。練習環境を整えたり、海外チームとの練習試合を組んだり、若手選手の発掘にも力を入れているという。選手のケアも全般的に行ない、大会でのサポートはもちろん、SNSでの発言についてアドバイスしたり、プライベートの相談にものるそうだ。

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板ザン選手は『ストV』で「ゲーム一本でもやっていける」

 そのDetonatioN Gaming所属の現役選手として、板橋ザンギエフ氏も登場した。大学生時代に『バーチャファイター』シリーズで名をあげ、『ストリートファイターIV』時代に海外から招待されるなどの経験をした板橋選手は、『ストリートファイターV』で「シーンが加速した」と実感したそう。大会の規模や開催数、賞金が増え、「この状況ならゲーム一本でやっていけるんじゃないかと思った」ことを打ち明けた。プロゲーマーの定義については、「ゲーミングスキルをもってゲームシーンを牽引していける選手」と考えているとのこと。

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板橋ザンギエフ選手(DetonatioN Gaming所属)

 現在の活動は、格闘ゲームでの大会出場がメインだ。年間10回以上の海外遠征をこなしつつ、今年2月の『ストリートファイターV アーケードエディション』闘会議GP大会で優勝するなど、国内でも活躍。ほか、チームスポンサーであるauの新サービスや、『シャドウバース』などのゲームのプロモーションを行なうなど、タレント的な役割も多くなっている。

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esportsが国体やオリンピックの正式種目になるには?

 第1部の最後には、登壇者4名によるパネルディスカッションが行われた。進行役の夏野氏が持ち出したテーマは、esportsが国体やアジア大会、オリンピックの正式種目に採用されるための道筋と課題。浜村氏は、いずれの場合も「まずはデモンストレーション競技として実施される必要がある」と説明した。アジア大会ではその段階を無事クリアーし、次回2022年の中国杭州大会では正式種目に昇格する見込みとなっている。

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 では、オリンピックはどうか。ゲームをスポーツとすることへの世間の抵抗など、さまざまな課題が挙げられたが、浜村氏は「まずはesportsの国際競技団体が、IOCに公認されなければならない。現在はイギリスと韓国の団体がIOCと交渉中」と、現在の状況を解説。まだ道のりは長そうだが、夏野氏は2020年の東京オリンピックで文化プログラムとして採用される可能性を示唆した。

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 一方、国体について大井川氏は、「茨城国体では、文化事業という並列したイベントとしての位置づけ。今後の国体でどうなるかは、今回の成果を見て検討されるのかもしれない」としながら、どういう形であれ「国体でやるのは“裾野を広げる”という意味がある」と意見した。

 また、「国体で『ウイイレ』をやるなら、高校の授業で『ウイイレ』が採用されることになるかも」という夏野氏に対し、大井川氏は株式会社ドワンゴ取締役として通信制高校のN高等学校を担当していた経歴を明かし、「N高には『ウイイレ』だけをやるサッカー部があって、アジア大会金メダルの相原翼選手はその部員だった」と紹介。相原選手は茨城国体でも優勝を目指しているそうだ。

日本が強くなるためには若手とコーチの育成が急務

 高校の話が出たところで、梅崎氏は「海外ではすでにesportsの授業がある」、浜村氏は「国内でも専門学校ではesportsを取り上げるところが結構出てきている」と、若手選手の育成について触れた。板橋選手は「格闘ゲームの選手層の厚さは、アーケードゲーム文化があり、コミュニティーもあった日本がいちばん。でも、世界もだんだん追いついてきている」という状況を踏まえ、「現状は、反射神経に優れる若手より、やりこんで経験値のあるおじさんプレイヤーのほうが強い(笑)。長年のノウハウを、若手に伝えていけたらいい」とコーチへの興味を示した。

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 それを受けて梅崎氏は、「『リーグ・オブ・レジェンド』などチームで戦うタイトルは戦術性が高く、ひとりでは勝てない。また、1週間に1度のアップデートでキャラの能力値が変わり、それを研究する必要もある」と、格闘ゲーム以外でのコーチの重要性も解説。「日本ではまだまだ現役プレイヤーが多く、コーチが足りない。DetonatioN Gamingでは選手だけでなく、コーチにも報酬を払っている」と梅崎氏。日本が強くなるためには、コーチの育成が急務であることを訴えた。

政府の“知的財産推進計画2018”にesportsが盛り込まれた

 続く第2部のテーマは“市場を生み出すビジネス戦略”。esportsを産業と捉え、行政や民間企業の動向を確認する時間となった。

 内閣府 知的財産戦略推進事務局長の住田孝之氏は、政府が策定した“知的財産推進計画2018”に、esports発展のための環境整備が盛り込まれたことを紹介。クールジャパン戦略として、ヒーロー的esports選手が日本から生まれたり、日本製のタイトルが競技種目として選ばれたりして、世界から共感を得られることに期待していると説明した。

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住田孝之氏(内閣府 知的財産戦略推進事務局長)
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 また、同計画に内閣府 知的財産戦略本部委員会座長として関わった、慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科教授の中村伊知哉氏も登壇。昨年、「2018年を日本のesports元年に」と提言したことを、行政の動きやJeSU設立によるプロ化もあり実現したと結論付け、新たに「2020年には日本がesportsで輝く存在に」との目標を提示した。

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中村伊知哉氏(慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科教授)

 現在、4K・8Kパブリックビューイング会場を全国に整備中という中村氏。2020年の東京オリンピックはもちろん、esports観戦への活用が期待される。中村氏はまた、2019年から創設される新たな学校制度“専門職大学”であるi大の新設を進めており、「ITの大学なので、最初からesportsを扱う。N高と連携して、将棋の藤井聡太さんのようなesportsのスターを生みたい」と語った。

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建設会社や証券会社もesportsを応援

 民間企業からは、清水建設株式会社代表取締役社長の井上和幸氏と、大和証券株式会社代表取締役副社長の松下浩一氏がステージに。両社とも、AMDを通じて“日本・サウジアラビアeスポーツマッチ”に協賛している企業となる。

 井上氏は、清水建設が国立代々木競技場や2019年完成予定の有明体操競技場などのスポーツ施設を数多く手がけてきたこと、月面基地や海上都市といったフロンティア開発も進める先進的な企業であること、障がい者スポーツを支援していることなどを挙げ、「当社はesportsと関わるところは意外と多いのではないか」との考えを示した。

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井上和幸氏(清水建設株式会社代表取締役社長)
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 松下氏は、大和証券を「高みを目指す団体、人々に対して協賛活動を実施してきた」企業だと紹介。具体例として、日本ラグビー協会や将棋の名人戦への協賛を挙げ、「esportsも応援していきたい。“日本・サウジアラビアeスポーツマッチ”も大和証券として協賛予定」と語った。ビジネス的に「証券業界のお客さまは高齢の方が中心。若い方に知ってもらうことが難しいなか、esportsの若年層に対する訴求力は魅力的」とのことだ。

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松下浩一氏(大和証券株式会社代表取締役副社長)
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esportsは超高齢化社会のツールとなる!?

 第2部でも、4名が登壇したところでパネルディスカッションを開催。ここでは、「健全性の確保がesportsの課題」であるとした松下氏の指摘から、「八百長や賭博への対策をどうするか」という話題が取り上げられることに。中村氏は「すでにesports業界でも、どうするかという話は出ている。ただ、新しい分野が成長するときに、先に規制から入ってしまうと成長の度合いが落ちてしまうので、盛り上げつつもうまい具合に不正の芽を摘んでいかなければ。JeSUが中心になってやっていく必要があるだろう。ルールで取り締まるのか、AIで不正を検知するのか、啓発のようなものでソフトにやっていくのか」と意見した。

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 また、「esportsの観客を若年層からほかの年齢層にも広げていくには」というトピックを入口に、今後日本が迎える“超高齢化社会”へと話が及んでいく。住田氏は「これからの高齢者は、子供のころにゲームをやっていたひとたちの割合が増えていく。そういう人たちを観る側としてどんどん取り込み、また、手軽に参加できるタイトルもあって団体戦などもできれば……高齢者の新しい楽しみ、ひとつのジャンルになっていくと、esportsは超高齢化社会における一種の社会的ツールにもなる」と考えを巡らせた。進行役の夏野氏が、昼間のゲームセンターには高齢者が多いと話すと、「世の中全体がダイバーシティ。障がいのある方も含めて、高齢の方が楽しめる施設が少しでも増えるということが非常に大事で、社会全体の活力につながっていくのでは」と井上氏。

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働き方改革でもesportsが鍵となる!?

 中村氏は「日本は超高齢社会を世界に先駆けて迎えるので、先に市場を作っておいて世界に輸出するというのは戦略としてアリ。同時に、今後はAIとロボットの労働で人間がヒマになる。その時間はゲームやスポーツにあてるので、超エンタメ社会になると思われ、確実に大きくなる産業だ」と、“働き方改革”の方向へ話を進めた。また、中村氏は韓国における政府をあげてのesports振興に触れ、日本でもクールジャパン戦略はもちろん、スポーツ庁、高齢者対策で厚生労働省、プログラミング教育で文部科学省、5Gで総務省……といった官民一体の取り組みを、と住田氏にリクエストもしていた。

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 働き方改革について、松下氏は「銀行・証券業界は、昔は23時、24時まで働くのが当たり前だったが、何年も前から必ず19時までに帰るように指示を出している。時間ができて、我々だったら飲みにいくところだが、若い人たちは何をやっているんだろうと思って聞いてみると、結構ゲームをやっている人が多い。関連会社の大和ネクスト銀行では、社内交流でesports競技会を開催しようとしていて、参加者がすごく集まっているようだ」と、大和証券グループのケースを紹介。井上氏の清水建設では「副業はダメですかと聞いてきた社員がいる」そうで、夏野氏は「esportsプレイヤーを副業とする社員が出てくるかも」と笑った。住田氏は「私は前職で、あまり評判がよくないプレミアムフライデーというのをやっていた(笑)。たとえば、プレミアムフライデーはesportsの日、として大会を開いてもらえれば、どんな企業の方も参加できるし、盛り上がればプレミアムフライデーをもっと増やしてといういい循環が生まれて、プレミアムフライデーの旗を振る役人も堂々と参加できる(笑)」と提案した。

 意外な方向への話題の広がりを見せ、シンポジウムは閉会。選手やチーム、大会主催者といった現場と、産業として関わる行政・企業の両面から、日本のesportsのつぎのステージを探った2時間30分となった。