ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)の次期大型アップデートのパッチ4.4が、2018年9月18日に公開される。これに先立ち、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏にインタビューを実施。注目の新規コンテンツやジョブ調整のポイントのほか、吉田氏の若手スタッフ育成に向けた思いと取り組みについても詳しくうかがった。

吉田直樹氏(よしだなおき)

スクウェア・エニックス 開発担当執行役員 第5ビジネスディビジョン・ディビジョンエグゼクティブ。『ドラゴンクエスト』初のアーケードタイトルである『ドラゴンクエストモンスターバトルロード』シリーズのゲームデザインとディレクションを担当。2010年12月に『ファイナルファンタジーXIV』のプロデューサー兼ディレクターに就任。

タイトルの“狂乱”は今後の展開の激しさを暗示

──まずは、パッチアートのコンセプトからお聞かせください。

吉田直樹氏(以下、吉田) パッチアートはweb用の広告にも使うので、いつもはもう少し一般ゲーマーを意識したものや、見た人に明るい印象を抱いてもらえる絵柄にしようかと考えるのですが……。新生編、蒼天編、紅蓮編とメインシナリオが進んできた中で、イシュガルドとドラゴン族の争いに決着がつき、帝国の支配領だったアラミゴとドマの解放も成し遂げられたいま、我々としてもガレマール帝国というキーワードに触れざるを得ない状況になってきました。そこで、今回は大きな衝撃の第一歩目を踏み出すということで、明確にキーになる帝国側の人物を集めて“戦記もの”ぽくデザインしてみようかなと。男性キャラクターを描くのが得意な茂木(茂木雄介氏。リードコンセプトアーティスト)に、「ガレマール帝国が総登場するようにして」とお願いしました。

──マキシマが思ったよりも前列にいるなという印象を受けました。

吉田 帝国も決して一枚岩ではない、といったところを強調するためにあの位置を指定しました。また、影の狩人とアルフィノだけをパッチアートに登場させると「マキシマさんが死んじゃったの!?」みたいな話にもなりかねないという理由もあったりします(苦笑)。マキシマが活躍するかどうかは別問題ですね。

零式3層の“ひっくり返し”の真相、ジョブ調整、ロールアクションなど、バトルを深掘り! 『FFXIV』パッチ4.4 吉田P/Dインタビュー_01
今回のパッチアートは、前回の欧州ファンフェスティバルのステージプログラムに登場した茂木氏が手掛けた。

──(笑)。タイトルにある“VIOLET”の文字は、ストーリーに紐づけられているのでしょうか?

吉田 今回は新しい物語の“ゼロ話”という位置づけですし、つぎのパッチにタイトルをリンクさせている面もあるので、“PRELUDE”のほうはわりとすんなり決まりました。ここから先、さまざまな要素が急展開するため、日本語版に“狂乱”という文字を選択しました。でも、“狂”という単語は最近あまり使われない文字ですが、今回はあえてです。

──言われてみればそうです。

吉田 日本語は察しの言語でもあるので、表現にさまざまな含みを持たせることができます。“狂乱”というキーワードひとつでいろいろ連想できるのですが、英語はそのものズバリを示す単語で成り立つ言語です。そのせいか、“狂乱”という含みを抱かせる言葉が存在しなかったため、今回のメインシナリオの雰囲気や空気感を連想できる別の単語を選択することにしました。ガレマール帝国の主要人物たちが着ている鎧の色は、真っ黒ではなく、どこかに紫っぽさが入っていますよね。

──確かに。

吉田 赤でもなく黒でもない……どことなく、不安を感じさせる色合いです。そこからインスピレーションを得た英語版チームが「“VIOLET”が空気感をうまく伝えてくれると思います」という意見を寄せてきたのを受けて、最終的に決定した感じです。とくにいまは、蒼天編の青、紅蓮編の赤ときていることから、色にも注目が集まっているはず。いろんな意味も込めて「“VIOLET”でいいよね」という話になりました。べつに(色をタイトルに含めるという)ルールを決めているわけではないんですが(笑)。

──そうしたキーワードが提示されはじめたいま、今後の展開に向けて妄想を膨らませることがすごく楽しい時期に入ってきたと思います。吉田さんの中で、もっとここに目を向ければ妄想が捗るよ、みたいな部分はありますか?

吉田 そこはトレーラームービーを観ていただくのがすべてかなと。僕も妄想型の人間なので、「この要素を出したらアレコレ議論するのが楽しくなるよね」という作りにはしたつもりです。

──アシエンに関しても、いろいろ妄想が広がりますが……いまの段階ではお話いただけませんか?

吉田 これから先、アシエンはかなり明確に答えが見えてきます。だからこそ、いまはお話できません。(会話のシーンを)見るだけで、あまり想像の余地がないくらいの答えを出していくつもりです。彼らは何者たちなのかといったところが、これからどんどん判明していきます。

──いわゆる4.Xシリーズで、それがわかるのですか?

吉田 時期までは明言しませんが、数年先などの遠くではないと思います。

──影の狩人や“刀を手にした闘士”など、すでに死んでいるはずの人が生き返っているように見えるという点に、モヤモヤしたものを感じています。この部分を解き明かすヒントのようなものが、今回のシナリオで提示されるのでしょうか?

吉田 今後ズバリ答えが出ます。その部分に関しては、もともと長く引っ張るつもりではありません。パッチ4.2と4.3のシナリオで、勘が鋭い人はおおむねわかっているのではないかなと。もちろん、以前に仕込んでおいた伏線を回収するシーンも登場します。つぎの大きなスタートに向けてしっかりと答え合わせをしたうえで、つぎの謎に進んでいく形です。今回と次回のパッチで、いったん色々な答えが出ると思います。

零式3層の“ひっくり返し”の真相、ジョブ調整、ロールアクションなど、バトルを深掘り! 『FFXIV』パッチ4.4 吉田P/Dインタビュー_02
“ゼノスの顔を持つ男”の正体が明かされる日も近い……?

──永久焦土 ザ・バーンがメインシナリオに関連して登場するということは、帝国に向かうのかどうかは別として、光の戦士はアルフィノの後を追うのでしょうか?

吉田 トレーラームービーで「兄や仲間の危機を前にしても」と話していたように、アリゼーは必死に抑えていますが、ものすごく兄を心配しています。アルフィノの動向にまつわる続報は、当然彼女にももたらされるので、それに対して行動を起こすところは間違いなくあるかと思います。今回のメインシナリオは二転三転と言いますか、シーンの切り替わりや緩急が激しいうえに、まさかのサドゥが登場したりもするので、そのあたりの展開は読めないはずです。

次元の狭間オメガ最終章の物語は“涙もの”

──次元の狭間オメガのこれまでのストーリーを通じて、いくつかの謎が提示されてきました。たとえば、ミドガルズオルムが宇宙からやってきた経緯や、アルファ君が光の戦士に味方する理由などが、今回キレイに明かされるのでしょうか?

吉田 明かされます。もちろん想像する余地を残している部分はありますし、いまそれを明かしたところで意味がないところはあえて語られません……オメガとアルファ、そしてミドガルズオルムの2体の因縁などは、キレイに答えがわかると思います。シドとネロに関してもそうですし、何よりオメガ自身にもしっかりとした結末が訪れます。そうしたところにも、ぜひご注目いただければと。

──すごく楽しみです。

吉田 第46回プロデューサーレターLIVEでもお話しましたが、今回のレイドのシナリオをプレイして、ほんとうにボロッと泣けてしまいました。それが心に刺さるのかどうかは人によるとは思いますが、僕はすごくいい話に落ち着いたと感じています。

零式3層の“ひっくり返し”の真相、ジョブ調整、ロールアクションなど、バトルを深掘り! 『FFXIV』パッチ4.4 吉田P/Dインタビュー_03
ここまでの物語がどのように感動の結末を迎えるのか、目が離せない!

──次元の狭間オメガ零式:アルファ編(以下、オメガ零式:アルファ編)は、今回もパッチ4.4と同時公開ですか?

吉田 全体のゲームバランス上、レイドコンテンツの実装時期をパッチ4.4からずらすと、新式装備をリリースするタイミングや、週制限のあるアラガントームストーンの実装時期がどうしても難しくなります。しかも、アイテムレベルのあらゆる設計に影響を及ぼしたりもするので、以前からお話してきた通り、パッチサイクル中は、零式の実装時期をずらすことができないのです。

──やはりそうですか。

吉田 以前からフィードバックをいただいてはいるものの、それをやってしまうと全体のゲームバランスを壊してしまいます。いまは、設計を引き直すタイミングではないので、どうしてもパッチ4.4と同時公開にせざるを得ません。そのうえで申し上げるのは心苦しいのですが、いわゆる“零式勢”の方々も、できれば(リリース当日の)火曜日だけはノーマル版のシナリオをゆっくり楽しんでいただきたいなと。

──週制限が存在することもあって、どうしても「乗り込め!」になってしまいがちです。

吉田 ノーマル版だけをクリアーしようと思っている人は、べつにそれでもいいと思います。一方で、「オメガ零式:アルファ編を初週に3層まで攻略だ!」みたいに意気込んでいる方はぜひ……(苦笑)。

──イベントシーンを飛ばすのは、もったいないと思います。

吉田 それを言うと「だったら実装をずらして!」という話になってしまいますので、あまり無理にお願いはできないのですが。とはいうものの、今回はシリーズの完結編でもあるので、ぜひイベントシーンも見ていただけるとうれしいのは確かです。

──何時間も掛かるわけではないですからね。

吉田 そうですね。シドとネロの友情物語も含めて、ご注目いただければと。

──次元の狭間オメガ:シグマ編ではネロががんばったので、今回はシドの番ですか?

吉田 前回のシナリオでネロが「つぎはお前の番だ」と言っていますからね。シドのほうも、若干ですが過去の自分と向き合うシチュエーションが出て来たりします。

──次元の狭間オメガ:アルファ編にカオスが登場すると発表されました。大方の予想を裏切り、初代『FF』のキャラクターがモチーフとして用いられるわけですが、このあたりで何かお話いただけることはありますか?

吉田 すでにトーナメント戦(オメガが生み出した空想上の存在による戦い)は終了しつつあるので、“個体しか残っていない”という状況です。スタート時の組み合わせをさかのぼっていくと、あと何体残っているのか計算できるはずです。

──トーナメント戦なので、確かに計算がつきそうです。

吉田 決勝戦に進出した光の戦士らアルファグループは、逆のブロックから勝ち上がってきた集団と激突する状況にあります。オメガはその結果を見て、本来の目的である自己強化を行おうとしているわけです。そこからさらに自身を強くするべく、最終的に(光の戦士と)戦うことになるのだろうとは思います。次元の狭間オメガ:デルタ編とシグマ編のトーナメントで戦った存在は(ゲーム内で語られていない部分も含めて)大半が負けてしまっており、その中から勝ち上がってきた1体がカオスです。