2018年7月24日、SNKより発売されたNEOGEO mini。SNKスタッフが収録タイトルの思い出を振り返る!

 2018年7月24日に、SNKより発売されたNEOGEO mini。SNKが誇るNEOGEOタイトルが40本も収録された、ファンにとってのマストアイテムだ。
 本記事では、それらのタイトルが開発された当時のことを知るスタッフにインタビュー。『餓狼伝説』や『ザ・キング・オブ・ファイターズ』(以下、『KOF』)などSNKの屋台骨を支えるタイトルから、『バーニングファイト』、『風雲黙示録』のような色モノまで、当時の思い出をたっぷりと語ってもらった。

安部直人氏(あべ なおと)

デザイナー。おもな担当タイトルは『麻雀狂列伝』、『バーニングファイト』、『風雲黙示録』。

田中和宏氏(たなか かずひろ)

デザイナー。おもな担当タイトルは『メタルスラッグ』、『メタルスラッグ2』、『メタルスラッグ3』。

黒木信幸氏(くろき のぶゆき)

デザイナー。おもな担当タイトルは『餓狼伝説』シリーズと『龍虎の拳』シリーズ。

麻中秀樹氏(あさなか ひでき)

サウンド担当。おもな担当タイトルは、『リアルバウト餓狼伝説』、『リアルバウト餓狼伝説2 THE NEWCOMERS』、『KOF』シリーズ。

NEOGEO mini
SNK/2018年7月24日発売/11500円[税抜](12420円[税込])

当時の開発環境は合宿のようなノリ

――皆さんには、NEOGEOで当時ゲームを開発されていたときの思い出を、存分に語っていただきたいと思います。

麻中この中では安部さんがいちばん古いんですかね?

安部僕かな。いま振り返ると、あのころの開発環境はたいへんだったなぁ~と思います。

黒木皆さんも“焼いて”いました?

麻中焼いていましたよ。

――「焼いていた」とは?

安部当時の開発環境では、専用の開発機材で各担当が絵や音などを作り、それを素材にプログラマーがゲームを作るという流れだったのですが、開発途中で実際にROMにデータを焼き、それを1枚1枚基板にはめ込んで開発の出来栄えを確認していたんです。

田中ROMを焼くのに、かなり時間がかかるんですよね。

黒木各担当がデータを作ったROMを集め、コンパクトにして量産したものが、当時のMVS(当時のSNKのアーケード基板とアーケードゲーム筐体の名称)だったわけです。

安部当時使えたいちばん小さいROMが4メガの容量で、“4M”って書いてあったんですよ。それを先輩が「この4Mってどういう意味か知ってるか? ……40000(円)や」って脅すくらい高価なものだったんですよね。

当時のMVS筐体。中には複数のROMが入っており、プレイするゲームを選択することができた。

――大阪っぽいギャグですね(笑)。

安部で、キャラクターデータの場合は、デザイナーがドット絵を描いたあとに、それを16×16ドット単位でバラバラにした状態でROMに焼くんです。それを開発基板で読み込み、バラバラにしたドット絵を復元して、そこからプランナーが当たり判定とか攻撃判定をつける、という流れですね。

田中キャラクターのアニメーションは、実際にROMに焼いて読み込まないとわからなかったんですよね。

安部そもそも、作っているのがパソコンじゃなくて、アートボックスっていう自社開発のツールでした。

田中モニターもブラウン管だったので照明の照り返しで正しい色が見えなくなるから、ダンボールで画面を囲って作業したりしていましたね(笑)。

――当時のゲームセンターは照明の照り返し対策で店内を暗くしていたものですが、開発環境も、照明との戦いだったんですね(笑)。

黒木いまの時代では考えられないですよね。

――NEOGEOは、ずっとその環境でゲームを作られていたのでしょうか?

黒木そうですね。NEOGEOで作っている限りは環境を変えられなかったので、ずっとそのままでした。

麻中Windowsが導入されたのは、『ART OF FIGHTING 龍虎の拳 外伝』からだったかと。

『ART OF FIGHTING 龍虎の拳 外伝』

――なるほど。それで『龍虎の拳 外伝』はそれまでのゲームと比べて、ちょっと変わった出来栄えになっていたんですね。

黒木あのゲームはモーションキャプチャーでゲームを作るというコンセプトだったんです。キャプチャーをするのにWindowsのPCが必要だったんですよ。

――あのヌルヌルしたグラフィックは、モーションキャプチャーを使ったから実現したものだったと。

黒木使ってはいますが、キャプチャーしたデータをどんどんいじってキャラクターのアニメーションをブラッシュアップしていったので、キャプチャーしたデータはほとんど残らなかったという(笑)。

安部当時はキャプチャーをする施設がなかったので、アメリカに飛んで、1~2ヵ月かけて収録したんですよね。

田中そんなに苦労したのに、ほとんど残っていないって(笑)。

黒木でも、そのモーションキャプチャーの元データがあったから、あれだけヌルヌル動くグラフィックにできたんです。

田中データもそうですけど、昔の資料って本当に残っていないですよね。

安部いまの環境だと作った素材はデータとして残りますけど、当時はほとんど紙でしたし、開発ツールも独自のものを使っていたから、残っていたとしても読み込めないんです。

田中たまにBMP形式で画像データが残っていたりするものもあるんですけどね。自分が『メタルスラッグ』で作ったデータの一部は現在のPCで開けるものがあるのですが、久しぶりに自分で描いたものを見ると、「なんだ、このすごいドット絵は!?」って思いますね(笑)。

麻中いま考えると、本当に根性で作っていたんだなって思います。

田中意地になって作っていました(笑)。

安部当時はね……。いまだと労基的に絶対NGですが、机の下に布団があって、そこで寝泊まりしていた人が多かったですね。

――ゲーム開発者さんの昔話ではよく聞くエピソードですね(笑)。

安部とくにプログラマーさんは過酷で、「2~3日寝てない」っていう話はよく聞きました。

田中それ以外の人間も、本当に家に帰りませんでしたよね。帰ればいいのに帰らない。

黒木そうそう。

田中家で風呂に入ってきて、また会社に戻ってくるんですよね。

麻中当時はここにいる全員若かったので耐えられていたんでしょうね。毎日がお泊まり会というか部活動の合宿みたいな感じで、楽しかったですね。

安部時間が0時を回ったら、「じゃあ、夜食を買いに行こうか」とか。もちろん、いまはちゃんとしていますので、そこはしっかり書いてくださいね!(笑)

――はい(笑)。でも、あのころは業界全体としてそういう風潮はありましたよね。

安部業界も我々も若かったので。ゲーム開発はたしかにたいへんでしたが、悲壮感みたいなものはありませんでしたね。

――いまのゲーム開発はグラフィックやサウンドなどが完全に分業になっているパターンが多いですが、SNKさんは当時から分業をしていたのでしょうか。

麻中基本は分業です。ゲームを完成させるマスターアップの日の1ヵ月前くらいに“キャラマスク”というキャラクターのデータの締切タイミングがあるのですが、それでデザイナーは“上がり”。その後は定時に帰るようになるんですよね。でもそれ以外の人はまだまだ作業が残っているわけで……。あれは見ていてなかなか……。

黒木それは、しかたないでしょ(笑)。

麻中すごく解放感に満ち溢れた顔をして。

田中でも、けっきょくデバッグをする人が足りないから、だいたい最後まで残っていましたよ。

――デバッグも社内でされていたんですか?

安部現在だと専用のチームがあったり、専門の会社に任せたりしていますが、当時はそんなものなかったですから、プランナーだったり空いているスタッフだったりが担当していましたね。バグを直すのはプログラマーなので、バグを見つけたら報告用紙に書いてプログラマーに報告するのですが、終盤になるとプログラマーがすごい殺気立っているんですよ。だから本当にやばい開発終盤のころは、プログラマーの逆鱗に触れないように、報告用紙をそーって机に置くんです。

黒木そういうことするから、プログラマーに気づかれなかったバグが残るんですよ!(笑)。

『メタルスラッグ』だけはやりたくない!

安部手が空いている人員は、ほかのチームの手伝いにいくこともありましたね。自分は『KOF』とか『サムライスピリッツ』のサポートをした記憶があります。ただ、『メタルスラッグ』だけは無理ですね……。

『メタルスラッグ』

黒木そう、あれは正気の沙汰じゃない。

―― グラフィックが、ということですか?

黒木そうです。クオリティーがすごすぎる。「こんなの手伝えるわけないやん……」って、はたから見てて思いました。

田中(笑)。

――『メタルスラッグ』を作られていた田中さんご自身としては、いかがですか?

田中まあ、根性でやっていました(笑)。機械がヌルヌル動くのが『メタルスラッグ』の魅力ですが、ポリゴンみたくカクカク動かすんじゃなくて、生き物みたいな躍動感を持たせてアニメーションさせたほうが存在感が出るんじゃないかと思って、ああいったグラフィックとアニメーションにしているんです。

黒木『メタルスラッグ』の機械は、本当に生きているようですからね。

安部そもそも、開発初期は、戦車が主人公のゲームでしたよね?

田中そうそう。最初は戦車が戦うシューティングだったんですけど、途中から戦車に人間が乗り込むっていう設定に変わりました。

安部ある程度ゲームができたときに、社内で『メタルスラッグ』のアニメーションを見せてもらったのですが、機械なのに喜怒哀楽が表現されていて、これはすごいなと。

田中ここはこういうふうに動くのかなとか、ここはこう変形するのかなとか、いろいろ考えながら作っていました。ただ、元絵がかなり精密なので、1ドット変えるだけで全体のバランスが崩れてしまうから、もっと細かく描くような気持ちで。

安部『メタルスラッグ』は人間のサイズが小さいから、難しかったんじゃないですか。

田中そうですね。1ドット動いたら顎が外れて見えたりしちゃうので、本当に“0.5ドットを打つ”って感じでした。

――その“0.5ドットを打つ”というのは……?

田中隣接するドットの色を微妙に変えたりすることで、人間の目で見ると0.5ドットくらいズレて見えるようにするテクニックです。

――なるほど。あの密度と大きさのドット絵を、そこまで緻密に描いていたのですね。麻中さんは音楽を制作されていますが、どのように開発をされていたのでしょうか?

麻中SNKの場合は、サウンドチームに開発が降りてくるのが、マスターアップの4~5ヵ月前くらいなので、ゲームがわりと形になった状態で見ることができていました。それを見つつ、プランナーからの指示でBGMを作り始める感じですね。

――曲を作る際は、どのようなリクエストがあったのでしょう?

麻中「こんな感じで」というくらいで、けっこう勝手なことをしていましたよ。ほかの開発者からは「なんやねんこいつら」って思われていたんじゃないですかね(笑)。

黒木思ってないですよ(笑)。

麻中サウンドチームは15人くらいいて、それぞれ得意とする音楽のジャンルが違っていました。『KOF』のサウンドがバラエティー豊かなのは、そういったスタッフが多く関わっていたからですね。

『KOF’94』

――音楽のフェスのような感じですよね。

麻中ただ、みんな音楽が好きでサウンドスタッフになったけど、好みの音楽ジャンルが違いすぎて、音楽の話ができなかったのが辛かった。本当に趣味が合わなくって(笑)。

――ちなみに、当時は社員がキャラクターボイスを担当することも?

麻中『KOF』は最初から声優さんでした。

安部『餓狼伝説』は、第1作がスタッフで、『2』からは大阪の劇団員の方にお願いしていた記憶があります。

麻中なんで『2』からだったんですか?

安部『餓狼伝説』でスタッフが声を担当していたことに、社長が激怒したんですよ。

麻中そんなことが(笑)。

安部「なんやこの声は!」ってめちゃくちゃ怒られて、それからは本職の人にお願いすることになったと。

麻中ちなみに、NEOGEOは同時に出せるのが7音までだったのですが、SEとかボイスを含めての話で、BGMは4音までしか同時に使わないという制限をかけて作っていました。

――4音はBGMでそのほかが3音という。そうなると、少ない音色でBGMを作るテクニックが必要になりそうですね。

麻中そうですね。0.5ドットの話に似ていますが、1音のすぐ後ろに小さい音を入れて、エコーがかかっているようにするとか。そういう細かいテクニックは使っていました。でも、やりすぎると容量を食うので、ほかとの兼ね合いもありましたが。

――やはり、容量との戦いが?

麻中ありましたね。メインで使う曲は最初に作るのですが、だんだんと容量がなくなっていくので、最後のほうはすでにある音源を流用して作ることも多かったです。キャラクターが増えるとボイスも増えるので、そうなるとBGMの容量を圧縮しないといけなかったりというせめぎ合いもありました。

安部でも、ほかのセクションとの容量の取り合いはありませんでしたよね。

黒木僕が会社に入ったころは、容量を使え使えという状態でしたよ。むしろゲームのコピー対策で容量をギリギリまで使えって言われていたので、容量をわざと増やすために写真を撮って、それをスキャナーで取り込んでROMに入れたりしていました。

――まったく使わない無駄なデータを(笑)。

麻中でも、NEOGEO CDのときは苦労されていましたよね。

NEOGEO CD

安部あれはしんどかったですね。

黒木NEOGEO CD用のデータを削るのって安部さんが担当されていましたよね?

安部そうそう、NEOGEO CDのほうは、MVS版よりもグラフィックだったりサウンドだったりを削らないといけなかったんです。でも、作っている人はそんなこと気にもしていないので……。

黒木僕らがアホみたいに無駄に容量を使っていたのを、安部さんがキチッと。

安部NEOGEO CDに入れようとすると、キャラクターは1体3メガくらいの容量にしないといけなかったんです。でも、ギースはモーションがかなり多かったので、このキャラクターだけいつも10メガを超えていたんですよね。不知火舞も"揺れるパーツ"があって、容量が大きかったので大変でした。

――NEOGEO CDと言えば、ロードの長さも伝説的ですが……。

黒木あれはプレイするのもそうですが、デバッグをするのもつらかったですよ。眠いときだとあのロードが長くて長くて。ロード画面に出てくるサルは若干トラウマですね(笑)。

ロード画面のサル。

愛着があるから個性が際立つ

――SNKのゲームに限らないと思うのですが、当時の対戦格闘ゲームはいい意味で大味な能力のキャラクターが多かったイメージがあります。

黒木大味にするつもりはなかったのですが、『リアルバウト餓狼伝説』でいうと、デザイナーが自分で作ったキャラクターに愛着がありすぎて、よかれと思って活き活きと描いたポーズがキャラクターの強さに結びつき、結果的に大味に感じるようになってしまったのかもしれません。

安部自分が手掛けたキャラクターがかわいいので、結果的に強くなってしまうんですよ。

黒木カッコいいと思ったポーズが、めくり(相手の後頭部に攻撃を当てて、ガード方向を逆にさせる攻撃方法)やすくなったり、手足が実際の長さよりも長くなってしまったり。企画担当が意図した攻撃になっていなかったかもしれません。こういうアバウトな作りかたではダメだと反省して『餓狼 MARK OF THE WOLVES』では、きちんとしたんです。

『餓狼 MARK OF THE WOLVES』

田中(きちんとするのが)遅いなぁ(笑)。

黒木当時はドット絵で、デザイナーの個性が出やすかったのかもしれません。ある意味、自由な制作環境だったからこそ、20年以上が経っても愛される、個性的なキャラクターが生まれたんだと思います。

安部アニメーションの中割(ポーズとポーズのあいだのモーション)なども、デザイナーの感覚によるところが多かったので、不自然に強いキャラクターがいたかもしれません。

――なるほど(笑)。

黒木『餓狼伝説』シリーズだと、ロケテストをすると、だいたいテリーが使用率1位になります。人気だからしかたがないのですが、ほかのデザイナーはテリーを超えるキャラクターを作ろうとして、より愛情を込めるわけです。結果的に、バランスよりも個性が際立ったものになってしまったかもしれません。

田中グラフィックと言えば、いまは設定画をもとにゲーム内のグラフィックを作りますよね。でも、当時のSNKは逆でした。

黒木そうそう。まずはゲームの開発部隊が簡単な資料を作って、グラフィック担当がドット絵を作る。そして、ゲームのグラフィックが完成したらデザイン室に持っていって、宣伝用などのキレイなイラストを描いてもらう、という流れでしたね。

『真サムライスピリッツ』のイラスト。

田中『メタルスラッグ』のときはドット絵ありきで資料を作っていたから、「イラストを描くために資料ください」って言われたときに、資料用に初めてイラストを描いたっていうこともありました。

安部違う人間が担当しているので、ゲーム内のグラフィックとイラストで差異があることもけっこうありましたね。きちんと整合性を取ろうって言い出したのは、『餓狼 MARK OF THE WOLVES』が最初だっけ?

黒木我々の『餓狼伝説』チームでは、そのタイトルが最初ですね。

麻中最初で最後……(笑)。

一同 (笑)。

『KOF』のデザインには『餓狼伝説』チームもビックリ?

――そもそもSNKがNEOGEOを作ることになったきっかけは、なんだったのでしょうか?

安部SNKは最初、アーケードやファミコンでゲームを作っていたのですが、アーケードゲームがブームになったときに、アーケードと家庭用で、互換性のあるハードがあるといいのでは? というコンセプトから誕生したのが、NEOGEOでした。アーケードと家庭用を同じハードにしてしまえば、アーケード用に作ったものをそのままのクオリティーで家庭用に出せることになりますよね。

――SNKはNEOGEOでいろいろなジャンルのゲームを作られていますが、対戦格闘ゲームに注力していったのは、やはり当時の“格ゲー”ブームがあったからなのでしょうか。

安部そうですね。MVSは、ひとつの筐体で複数のゲームを切り換えて遊べるので、当初はいろいなジャンルのゲームを揃えていました。対戦格闘ゲームもその中のひとつでしかなかったのですが、対戦格闘ゲームがとくに人気だったので、徐々にメインになっていましたね。

――SNKのゲームのキャラクターは、初期はかなり濃いイメージがありましたが、社内ではそういった指示があったのでしょうか。

黒木とくに方針や方向性があったわけではないのですが、単に濃いのが好きな人が多かっただけだと思います(笑)。ただ、『KOF』のキャラクターデザインを見たときは、率直に「すげえ!」と思いましたね。

―― と、言いますと?

黒木「主人公で学ラン!?」とか「腕、細っ!」とか。『餓狼』チーム的には、格闘家はマッチョっていう前提があったので。

『KOF』シリーズの初代主人公である草薙 京。

麻中でも、テリーも格闘家らしい格闘家ではなくて、スタイリッシュな印象ですけど。

安部革ジャンにジーパンっていうのはあるけど、でもやっぱりマッチョだから。

黒木僕らは筋肉をいかにカッコよく描くかって研究をしていたんです(笑)。ですので、真逆の『KOF』が出てきたときは驚きました。

――ですが、『餓狼 MARK OF THE WOLVES』のロックやテリーはカッコいい系ですよね。

黒木あれは、ゲームの開発初期に、チームでずっと話をしていたんですよ。「俺たち(のセンス)は古い!」って(笑)。その前の『リアルバウト餓狼伝説』とかを振り返ってみると、ヒゲのオッサンかマッチョのキャラクターしかいないじゃないですか。これはまずいと。

――(笑)。

黒木だから、『餓狼 MARK OF THE WOLVES』では濃さを少し抑えて、市場が求める要素も入れていこう、ということになったんです。

――『KOF』の存在もあって、そのあたりからSNKには女性ファンも増えてきましたよね。

黒木『餓狼 MARK OF THE WOLVES』の開発中は、ちょうど世間で“萌え”という言葉が使われ出したときで、「萌えを取り入れたいけど、萌えってなんだ!?」って四苦八苦していた時期でもありました。幸い、社内に萌えに詳しいスタッフがいたので、彼にレクチャーを受けつつ作ったのが、ほたるなんです。

『餓狼 MARK OF THE WOLVES』に登場するほたる(画面左)とロック(画面右)。

――そう言われると、とてもしっくり来ますね。妹キャラですし。『餓狼 MARK OF THE WOLVES』は、エンディングで続きがあるような終わりかたをしていましたが、『2』は想定されていたのでしょうか?

黒木これはけっこう聞かれることなのですが、私はシナリオを知らないんですよ。企画の人たちも知らないんじゃないですかね。

安部えっ? 私、『2』のシナリオ見たことがありますよ?

一同 えっ!?

安部エンディングまでシナリオがあるはず。

麻中黒木さんは『2』で外される予定だったんじゃないですか?(笑)

黒木いやいや、シナリオは知らないんですけど、ゲームの中身は作ってたから!

―― すでに開発をされていたんですか?

安部確かキャラクターは完成していたんですよね。新キャラクターも含めて。

黒木ロックやジェニーの新技なども作った記憶があります。

――それは初耳でした。

黒木開発途中で旧SNKがなくなってしまったので、残念ながらお蔵入りに。小田(泰之氏。『KOF』や、『SNKヒロインズ Tag Team Frenzy』などの開発に携わる)も定年までには作りたいと言っています。ファンの皆さんの声があれば、開発が実現するかもしれません。

――いちファンとしても、遊んでみたいです。そのほか、『バーニングファイト』とか『キング・オブ・ザ・モンスターズ』、『風雲黙示録』とかもめちゃくちゃ濃いタイトルですよね。

『バーニングファイト』の主人公3人。

安部『バーニングファイト』とかのアクションゲームは、難度も高いですしね。

――本当にヤバいくらい難しかったですよ。

安部まあ、『バーニングファイト』は私も開発に加わっていましたけど……。

――マタンカイ!

安部いや、あの難度にしたのは企画担当なので……。NEOGEOは家庭用に移植するのが前提のゲームとはいえ、100円でずっと遊べたのではゲームセンターが困ってしまいますよね。それで、1面はまあクリアーできて、2面から少しずつ難しくなっていって。

田中最終面は、物理的にクリアーできればいいだろうという感じでしたよね(笑)。

――そんなコンセプトだったんですか……。あのゲームは、いろいろな部分に既視感を覚えるデザインになっていますよね。

安部まあ、流行りには乗っていこうという考えがあったのかもしれません。映画の『ブラック・レイン』に影響を受けていたような。『風雲黙示録』の世界観は、『ブレードランナー』に影響を受けていた気がします。

――いや、そんなに似ていないのでは!?

安部あのごった煮感を出したかったのですが、あらぬ方向へ行ってしまいました(笑)。

『バーニングファイト』の2面。イッチバーン!

――『風雲黙示録』は、とくに強烈な世界観でしたよね。

安部あれは、対戦格闘ゲームがとくにブームになっていたときに作ったゲームで、『キング・オブ・ザ・モンスターズ2』などのアクションゲームを作っていたチームが手掛けたものなんです。『餓狼伝説』や『龍虎の拳』の拳の殴り合いとは異なる特色を出そうとして考えられたのが、ブーメラン+空手とか、ボクシング+剣術といったスタイルで戦う対戦格闘ゲームでした。当時、ゲームの開発期間は1年くらいが相場だったのですが、『風雲黙示録』は2年くらいかかってしまって。

――超大作ですね(笑)。そんな皆さんが作ってきたゲームが入っているNEOGEO miniですが、現物をご覧になっていかがですか?

田中飾っておくだけでもいいですよね。

黒木本当によくできていると思います。でも、最初にNEOGEO miniのコンセプトを聞いたときは、「それってMVS miniじゃん!」って思いましたけど(笑)。

―― 確かに(笑)。

黒木NEOGEOと聞いていたもので、黒いNEOGEOがミニになったものを想像していましたが、「こっちか!」って驚きました。

安部これは、当時を知っている人は懐かしく遊べると思いますし、知らない人はこんな理不尽なゲームがあるのかと、ある意味新鮮な体験ができると思います(笑)。だから、たくさんの人にプレイしていただきたいですね。

田中『メタルスラッグ』が発売されてからもう20年以上になるんですかね。当時、一生懸命魂込めてドットを打っていました。ドット絵というものにあまりなじみのない人も、こういうのがドット絵なんだなということを深く知っていただく意味で、隅々まで見て楽しんでいただければと思います。

黒木『餓狼伝説』シリーズは当時のチームが寝食を忘れて作った作品ばかりなので、そういった熱意みたいなものを感じてもらえたら、うれしいですね。あとは、『餓狼 MARK OF THEWOLVES』でちょっと反省したんだなというのを見ていただけるとありがたいです(笑)。

麻中NEOGEO miniは対戦格闘ゲームがメインですけど、本当にいろいろなジャンルのゲームが入っているので、ふだんは遊ばないジャンルにも手を出していただきたいです。“NEOGEO”というアイテムを、ぜひ楽しんでもらえたらなと思います。