2018年8月12日、サイバーコネクトツー代表取締役社長の松山洋氏のトーク&サイン会イベントが開催された。その模様をお届けしよう。

会場には貴重な資料の数々を一挙に展示!

 サイバーコネクトツー(CC2)が開発を手掛けたゲームの資料や設定画を展示する“サイバーコネクトツーアートワークス展”が、2018年8月9日〜27日の期間、東京都内のササユリカフェにて開催中だ。期間中には同会場で、CC2代表取締役社長の松山洋氏によるトーク&サイン会イベントが3回実施されるが、第1回となるイベントが2018年8月12日に開催された。その模様をお届けしよう。

 展示会場となるカフェには、『.hack』シリーズ、『テイルコンチェルト』、『Solatorobo(ソラトロボ) それからCODAへ』、『アスラズ ラース』など、同社を代表する作品の貴重な設定資料のほか、イベント用に作られた開発スタッフ直筆の色紙も展示。また物販コーナーには、設定資料集などの書籍のほか、グッズの数々も並べられ、その場で購入することができた。

壁面一面に飾られた、設定資料の数々。
原画の数々は、ファイルでの展示も実施。自由に閲覧することができる。
イベント会場内には、書籍やグッズが並ぶ物販コーナーも用意。
来店したファンが自由に描き込める寄せ書きノートも。

 ちなみに会場となったササユリカフェは、スタジオジブリにも在籍したことのある元アニメーターの方がオーナーを務めるカフェ。アニメの原画展などのイベントを行うことも多く、その業界では有名なお店だが、ゲーム関連のイベントは、今回のCC2とのタッグが初となるそうだ。

イベント用に開発スタッフが用意した、イラスト入りの直筆色紙。

1枚のイラストから始まった『テイルコンチェルト』

 ファン注目の第1回トークイベントのテーマは、“『テイルコンチェルト』から20年! ケモノ愛は業界屈指!? サイバーコネクトツーが歩んだケモノ道”。CC2の処女作となる『テイルコンチェルト』から『Solatorobo(ソラトロボ) それからCODAへ』に至るまでの開発エピソードや、さらにケモノビトをテーマとした“リトルテイルブロンクス構想”の今後についてが語られていった。

松山氏と来場者の距離が近い、アットホームな雰囲気の会場。
軽妙なトークで開発エピソードを語ってくれた松山氏。

 最初の話題は、“『テイルコンチェルト』誕生秘話”。本作は、1996年にわずか10名のスタッフにより福岡で誕生した(CC2の前身となる会社)サイバーコネクトが最初に手掛けた作品だが、松山氏は当時はいちグラフィックデザイナーとして製作に参加。最初に登場する街のステージを、マスターアップまでに4回作り直したという。
 「まあ各方面から怒られましたね。でも納得いくまで直した、執念のタイトルであったような気がします」と語る松山氏。発売は1998年なので、ちょうど20年前のことになる。独立して会社を設立してからはゼロのスタートで、販売メーカーに認めてもらうのにはとても苦労したそうだ。

 このトークの最中、松山氏が会場の片隅にいた人物に「お前もここに来いや!」とアピール。その人はサイバーコネクトツー 東京スタジオ取締役である新里裕人氏で、松山氏とともに前身のサイバーコネクト創設メンバーのひとりだ。以降のステージでは、松山氏と新里氏がやり取りをしながらトークが展開する形となった。

ケモノをテーマとした作品についてトークを展開。
途中からは、会社設立時からのメンバーである新里氏も参加。

 新里氏が参加すると、『テイルコンチェルト』についての話は一気にヒートアップ。同作については当時のスクウェア、エニックス、バンダイ、ナムコ、コーエー、コナミなど、ひととおりのメーカーに企画書を送り、最終的にバンダイに決まった経緯があったという。そしてそもそも『テイルコンチェルト』の企画がどこから始まったかというと、1枚のイラストがきっかけだったそうだ。
 「なかなかいい企画が出なくて、みんなで集まって話していたときに磯部(磯部孝幸氏:CC2開発者)がラクガキを描いていたんです。『未来少年コナン』的なロボットと、イヌ・ネコが絡んでいるような絵で、「これ、いいんじゃない?」と。そのカット1枚で、みんなの心がひとつになったんですね。それが始まりでした」(新里氏)。
 「シナリオ、キャラクター、システムなど、いろいろな要素が先行してゲームの方向性が決まる場合がありますが、『テイルコンチェルト』に関しては、たった1枚のラクガキからスタートしたんですね。そこから世界観や設定を作っていきました」(松山氏)。

 ゲーム制作については限界ギリギリの状況で、最後は全員でデバッグをする日々。やり残したことも多かったと松山氏は振り返る。
 「契約した制作費用や期日をはるかに超えていて、なんとか仕上げるのが精一杯でしたね。ゲーム自体は、単にプレイするだけなら5、6時間以内というボリュームだったかな? やり込み要素なんて、考える余裕はまったくなかったです」(松山氏)。
 「写真のカケラを探すとか、せいぜいそれくらいしかオマケは入れられなかったですね」(新里氏)。

 ちなみに当時、同じタイミングでニンテンドー64の『スーパーマリオ64』が登場。ゲーム業界に3Dゲームのお手本を示した作品で、サイバーコネクトの開発陣も『スーパーマリオ64』をプレイしながら『テイルコンチェルト』を作り込んでいたという。
 「『スーパーマリオ64』がなかったら、『テイルコンチェルト』は完成していなかったかもしれませんね(笑)」(新里氏)。
 「そういう意味では『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』も同様ですよね。あれでまた、同じ事件が起きました(笑)。クリエイターの多くが、オープンワールドのゲームはこうやって作るのか! って。それくらい、任天堂さんのパイオニア的なセンスと業界に与える影響はすごいと思います」(松山氏)。

待望のシリーズ第3弾を鋭意制作中

 続いての話題は、『Solatorobo(ソラトロボ) それからCODAへ』開発に移る流れについて。本作は『テイルコンチェルト』より10年経ってからの発売となる。続編を要望するファンの声が多かったこともあっての制作だったそうだが、初作が大ヒットとはならなかったこともあり、リリースに向けては難航したとのこと。
 「前作で、ビジネスとしての実績が作れませんでした。赤字ではないものの、ヒットとは言い難い。だから次回作では10年ほど苦労しました」という松山氏。当時、版元メーカーであったバンダイからは「二ッチな条件がそろいすぎている」と、3つの点を指摘されたそうだ。それは、「ロボ」、「ケモノ」、「浮島のような世界」。ロボやケモノでファン層は狭くなったうえ、浮島ものでヒットした作品もないという分析だ。
 「この3つのうち、どれかひとつは諦めろと言われ続けて、それでも諦め切れずに作って実現したのが『Solatorobo(ソラトロボ) それからCODAへ』です」とは松山氏。ただこのタイトルについても、じつはひと悶着があったらしい。

 「ファミ通に載った第1報では、『Solarobo』というタイトルでした。でもその後、同じ「ソラロボ」という商標が、ドローン的なマシンにあったことがわかって、変更したんです。ちなみにもともとの予定タイトルは、サブタイトルとなっている“それからCODAへ”。これから発売予定の3作目も含めて、シリーズのタイトルにはすべて音楽用語を使っています」(松山氏)。

こちらが週刊ファミ通編2010年4月1日号に掲載されていた、『Solarobo(ソラロボ) それからCODAへ』の速報記事の誌面。

 ここで松山氏は、『テイルコンチェルト』後に『Solatorobo(ソラトロボ) それからCODAへ』へ至るまでの、デザインラフを手に取って紹介。最初はキャラクター設定が人間で、紆余曲折があったものの、最終的にケモノになったという経緯が語られた。
 「売れなさそうだから変えるのは、やっぱり違うだろうと。自分たちが信じている世界で勝負しよう、ということですね」(松山氏)。

 第2弾となる『Solatorobo(ソラトロボ) それからCODAへ』も、なかなか販売メーカーは決まらなかったが、最終的にバンダイに決定。その条件としては、当時盛況を極めていたニンテンドーDSでリリースすることだったそうだ。ただここでは「前作で評価されたところ、足りなかったところを全部チェックして、思い残すところのない作品になりました」(松山氏)という。ただ売り上げ的な結果としては前作同様、大ヒットとはならなかった。
 「シリーズがそんなに売れたわけではないのですが、世界中にファンがいるし、なにより自分たちがこの世界が好きなんです。あきらめたくないし作りたい。だったらこの先は、ほかを頼らず自分たちでなんとかしようということです」(松山氏)。

10年越しの続編が生まれるまでは、紆余曲折があった。

 そして、シリーズ第3弾の新作として紹介されたのが、現在自社パブリッシングタイトルとして開発が進められている『戦場のフーガ』だ。こちらは、“リトルテイルブロンクス構想の”最新作として、ワールドワイドでの世界同時発売が予定されているが、詳細はまだ明らかにされていない。
 「近いうちに情報をお出しできるかと思います。じつはこの作品は、福岡在住のフランス人がプロジェクトリーダーなんですよ。そして国内とモントリオールスタジオのスタッフが強力タッグを組んで制作を進めていますので、ぜひご期待ください」(松山氏)。

『戦場のフーガ』は、“リトルテイルブロンクス”シリーズ20周年記念作品となる。

過去2作品の設定資料集の電子書籍化も決定!

 トークイベントはこれにて終了となり、最後は告知コーナー、そしてサイン会が行われた。ここで発表された注目のトピックスは、『テイルコンチェルト』と『Solatorobo(ソラトロボ) それからCODAへ』の設定資料集が、電子書籍化されて今秋に販売されるということ。いずれもいまは紙媒体での入手は難しい状況なので、ファンにとっては嬉しいニュースだ。

グッズ販売店でポストカードがもらえるキャンペーンを実施中。
8月10日に放送されたWEBラジオ番組に、松山氏がゲストで出演。
展示会の期間中には、ササユリカフェで多彩なグッズが購入可能だ。
貴重な設定資料集が、再販はかなわぬものの、電子書籍という形で復活する。
キャラクターが勢ぞろいしたイラストシートが来場者全員にプレゼントされ、最後はサイン会となった。

 なおイベント終了後に、松山氏と新里氏に感想などをお聞きすることができた。そのコメントを最後に紹介して、レポートを締めくくろう。

−−イベントを終えてみての感想はいかがですか?

松山 これから3週間、ササユリカフェというすてきな場所で展示会をやることになりますが、一発目で「こういう趣旨で、こういうイベントを開きます」と説明できたので、よかったと思います。『テイルコンチェルト』は、当社の始まりのタイトルですし、『Solatorobo(ソラトロボ) それからCODAへ』、『戦場のフーガ』と、“リトルテイルブロンクス”に我々がこだわっているという、一発目にふさわしいトークができたのではと思いますね。

新里 ファンの方々と直に触れ合うことはあまりないので、近い距離でお会いできるのはいい機会だと思っています。『テイルコンチェルト』は20年ほど前の作品ですが、自分と年齢が近い方々がいるのを見ると「ずっと前から追いかけてくれているんだな」といったことが実感できて、すごく嬉しかったです。

−−ファンの熱量がすごく伝わってきましたね。

松山 我々が作ってきた『テイルコンチェルト』や『Solatorobo(ソラトロボ) それからCODAへ』はお話させていただいたとおり、ある意味執念で作ってきたところもあります。その熱量がお客さまにも伝わっているからこそ、すごく応援してくれる方々が多いのでしょう。“ロボ”、“ケモノ”、“浮島世界”という、いろいろな大人たちからは否定されがちなコンセプトではあるのですが(笑)、こうやって応援してくれるお客さまに勇気をもらって、つぎの新作も力を入れて作っています。本当に嬉しいですね。

−−その新作、『戦場のフーガ』はどんな作品になりそうですか?

松山 10年、20年、それぞれの節目でやってきて、いままでの結果に満足しているわけじゃないし、「ああしなきゃ、こうしなきゃいけない」ということをいつも考えています。今回の『戦場のフーガ』に関しては、いままでの『テイルコンチェルト』や『Solatorobo(ソラトロボ) それからCODAへ』とはちょっと違う切り口で、もっと切れ味の鋭い世界観で戦争での生き死にを描くといいますか、そういうイメージのゲームシステム、世界観にしています。もちろん、“リトルテイルブロンクス”の世界観として、子供たちの無邪気な明るい部分や日々の生活といった温かさや懐かしさは併せ持っていますが、いままでの印象のまま平行線で作ってしまうと、いままでと変わりませんからね。『テイルコンチェルト』や『Solatorobo(ソラトロボ) それからCODAへ』の反省から、さらにもう一歩を広げるための新しい一手というものを仕込んでいます。シリーズのファン、そしてこの作品から入ってくるお客さまも含めて、いまから反応を楽しみにしています。

新里 最初の作品あたりは、ただ「好きなものを作る」だけだったんですけど、今回明確に違うなと思っているのは、ターゲットとして世界を狙っているということです。あとは、いままではかわいいキャラクターが出てくるファンタジーというイメージがあったんですけど、今回はけっこうリアルなものを描こうとしている部分があります。そういうところでも、切り口の違いを感じていただければと思います。

−−このトークイベントは2回目、3回目が行われますが、最後にファンの方に向けてのメッセージをお願いします。

松山 イベントの2回目は『.hack』の話を中心に。いままで触れてこなかったアニメーションの話や、監督の西見さんにもご登壇いただき、ここでないと聞けない情報がまちがいなく飛び出すので、ぜひ期待してほしいなと思います。3回目は、いままで我々が作ってきたタイトルと、そしてこれからのサイバーコネクトツーに関して、これもここでないと聞けない話を用意しています。ぜひ、会場にもお越しください。

新里 松山は開発スタッフであり、外に対する営業でもあり、という形ですが、外部と交渉したことを、社内で説明しないこともあるんですね。だから現場の開発スタッフにとっては生々しいというか、言ってはいけない話は喋らなかったりしていると思うんですよ。そういった話がトークショーでは赤裸々に語られるので、本当にディープな情報が聞けると思います。ぜひ楽しみにしてください。

最後はイベントに訪れたファンとともにフォトセッション。

 インタビューの最後に話したように、“サイバーコネクトツーアートワークス展”では、松山洋氏のトーク&サイン会の第2回と第3回を開催。詳細はサイバーコネクトツー公式ニュースページ(http://www.cc2.co.jp/cc2news/?p=14917)を参照しよう。

◇トークイベント第2回
実施日:8月16日 19時00分〜
テーマ:西見祥示郎監督×CC2 松山洋『.hack//Link』オープニング映像制作秘話

◇トークイベント第3回
実施日:8月25日 15時00分〜
テーマ:独自IPを生み出してきたサイバーコネクトツー これからの野望

◇ササユリカフェ
TEL:03−6913−7615
https://sasayuricafe.com