なぜセガが突如としてたい焼きを売り始めたのか
2018年4月、池袋に新たなお店がオープンした。大型ゲームセンターの一角に佇むそのお店の名前は、“セガのたい焼き”。そう、文字通り、セガが運営するたいやき屋さんだ。最近では、閉店しそうになった北海道の納豆屋さんとコラボをするなど、何かと話題になっている。
しかし、なぜ、生粋のゲームメーカーであるセガが、たい焼きを売っているのだろうか。
この疑問を、担当者に直接ぶつけてみることにした。
横沢与志香(よこさわよしか)
セガ エンタテインメントオペレーレション統括本部 運営企画部 部長
――ずばり、なぜセガがたい焼きを売り始めたのでしょうか?
横沢 よく聞かれます(笑)。以前から、セガのゲームセンター“池袋GiGO”の一角にはフードを販売するお店があったのですが、そのメニューは、お箸を使って食べるものだったんですね。そこで、「クレーンゲームを遊びながらでも片手で食べられるようなものはないの?」という要望が出てきたのが企画の出発点です。
――いろいろなメニューがある中、たい焼きにしたのはなぜですか?
横沢 企画当初はたい焼きのほかに「唐揚げはどうだろう」とか「たこ焼きは?」というアイデアもでていましたが、たい焼きにきまったのはプロデュース・監修で協力いただいている、くりこ庵さんのポテンシャルによるところが大きいですね。その場で作るライブキッチンという環境や、あんの種類が60種類以上あったり、くりこ庵さんは“コイキング焼き”をやられていたり、エンタメ性があることも理由です。
――あのお店を運営されているところなのですね! でも、そこで、くりこ庵にテナントを貸し出すのではなく、“セガのたい焼き”と銘打ち、ご自分たちで運営されているのはなぜなのでしょうか。
横沢 おっしゃるように、これまでは他社さんに場所を貸し、我々はテナント料をいただくというビジネスでした。ですが、5年ほど前から会社的に新たなビジネスの模索もしており、新しい業態・収入源を模索する流れがあるなかで、今度は自分たちでやってみようということになりました。くりこ庵さんであれば、しっかりとご協力もいただきつつ、セガのIP(知的財産)を使ったコラボ焼きなどもできるのではないかと。
――くりこ庵の協力というということは、店舗では、くりこ庵のスタッフがたい焼きを焼いているという形ですか?
横沢 いえいえ、みんなセガのスタッフです。くりこ庵さんには、今年オープン時の機材のご提供やメニューの監修、それに、セガのスタッフの研修などでご協力いただいています。スタッフは、1週間から長くて3週間ほどくりこ庵さんの店舗で研修させていただいてから、セガのたい焼きで働いています。
――とても丁寧に研修を受けているのですね。
横沢 やはり、基礎を大事にしたいと思っています。あと、たい焼きに決まった理由としては、この池袋が持つ土地柄という理由もあります。
――池袋の土地柄と言いますと?
横沢 かなり女性客を意識しているんです。お店からはいわゆる“乙女ロード”も近いですし、スイーツがいいかなと。
――ああ、なるほど!
横沢 週末にはイベントも多く行われていますし、歩いている中で目に触れてくれるだけでもね。1階と地下1階に女性向けのプライズを入れたクレーンゲームなども設置していますので、どちらかに引っかかって、もう一方にも目を止めてくれればという狙いもあります。
――“セガのたい焼き”は、Twitterでも話題になることが多いですよね。ゲームメーカーとしてのセガを詳しく知らない若い女性層などへ、認知度を高めるという波及効果もありそうです。Twitterへのバズりや、これまでセガにあまり触れてこなかった客層への訴求効果も狙って、このたい焼き事業を始められたのでしょうか?
横沢 じつは、まったく狙っていなかったです(笑)。もともとは、池袋GiGOというハコがあり、飲食店ができるスペースもあるので、GiGOを訪れてくれるお客さんの満足度をより高めようというところが出発点ですから、Twitterでバズってくれるのはうれしい誤算といいますか、予想以上の反響ですね。オーソドックスなメニューのほかに、期間限定で“チリドック味”や“ボロネーゼ味”などの惣菜系や、“チョコミント味”のような変わり種も販売しているのも話題になってくれる理由かもしれないです。
――納豆味、食べてみたかったです……。お店は4月にオープンされましたが、今年は猛暑もあり、夏場は売上も落ちてしまうのではないですか?
横沢 そうですね、やはりくりこ庵さんに聞いても、季節によって売上の変動はあるらしいのですが、逆に、きびしい夏場を乗り切れるなら、きっと秋冬も大丈夫なのかなと(笑)。
――(笑)。セガのたい焼きに関して、今後予定している新展開などはありますか?
横沢 全国チェーン化! ……は、未定ですが(笑)、セガのIPを使った“○○○○焼き”なども予定しています。また、今後は缶バッジのようなオマケを付けるといったアイデアも考えたいですね。池袋GiGOでもよく行っているコラボカフェのスタンド版と言いますか。いろいろと考えていますので、ぜひ楽しみにしてください!
――最後の質問になりますが、こちらの“セガのたい焼き”に、“セガらしさ”というものがあるとしたら、どのような点でしょうか?
横沢 ふたつありますね。ひとつは“基本にこだわる”。まず、たい焼きそのものを決してないがしろにせず、その場にある鉄板で焼いてお渡しするというスタイル。これからもし多店舗展開したとしても変えずにやります。もうひとつは“IPにこだわる”ということ。売るとなったらみんなでその商品を深く理解してやろうと。これらの強い“こだわり”というのが、ゲームにも、たい焼きにも共通する“セガらしさ”というところではないかなと思います。ウチのゲームもそうなのですが、やはり皆さん細部にものすごくこだわるので(笑)。クリエイターだけではなく、プレイヤーの方もそうですから。
●セガのたい焼き
大型ゲームセンター“池袋GiGO”1階部分に生まれた新店舗。大きめのたい焼きはふっくらと焼き上げられて、ボリューム満点! 定番の“小倉あん”(150円)や、栗の入った“くりこあん”(190円)に、“プレミアムクリーム”(170円)のほか、期間限定メニューも豊富で、2018年8月8日から9月30日にはセガのロゴをかたどった“セガロゴ焼き”(300円)を販売、池袋を訪れた際はぜひチェックしてみよう。
●店舗情報
東京都豊島区池袋1-21-1
TECH35ビル(池袋GiGO)1F
3月29日オープン
営業時間:11時~23時
価格:小倉あん150円[税込]~
公式サイト https://tempo.sega.jp/tnsb/sega_taiyaki_ikebukuro/
※メニュー、金額などの情報はすべて取材時のものです。