“ゲーム業界へ就職する”。関西にある大阪成蹊大学では、そんな将来を目指す若者を対象に、2019年4月にゲーム・アプリケーションコースを開設する。本コースの特色は、現役のクリエイターが教鞭を執って“生きた授業”を行うことだという。専門学校ではなく、大学でゲーム作りを学ぶ意義とは? 本コースのキーマンである門脇英純氏と川和夕記氏を取材した。

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大阪成蹊大学 芸術学部 学部長 門脇英純氏(文中は門脇)
2003年に大阪成蹊大学の教員になり、2016年に芸術学部の学部長に就任。前職では一般企業の制作会社に所属し、プランナーとしてさまざまな業務に携わった。
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大阪成蹊大学 芸術学部 コース主任准教授 川和夕記氏(文中は川和)
『ファンタシースターオンライン』や『ギルティギア』などの開発を経て独立。アートディレクションやコンサルティングを行いつつ、後進の育成にも力を入れる。

大学だからこそできること その強みを活かしたい

――2019年4月からゲーム・アプリケーションコースが開設されますが、本コースが開設にいたった経緯からお聞かせください。
門脇 時代の変化とともに、学生が興味を持つ分野も変ってきています。本大学では、マンガ・ デジタルアートコース、アニメーション・キャラクターデザインコースをこれまでも新規で立ち上げ、多くの方に志望していただきました。マンガ、アニメと来て、ゲームのコースを作るのは自然の流れだったんですね。

――今年行われたオープンキャンパスで、学生さんからの反応はどうだったのでしょうか?
川和 ありがたいことに、好感を示してくれる志願者の方が多かった印象です。ゲーム業界で現役で働いている人間が教鞭を執る大学って、じつは非常に少ないんです。大阪成蹊大学は、その貴重な体験が提供できる場なんだというメッセージを受け取ってくれたのかなと思います。

――ゲーム業界を目指すときに、専門学校という選択肢もありますが、大学と専門学校の明確な違いとはどこになるのでしょうか?
川和 私は専門学校で生徒さんを教えていたこともあります。そんな私の実感として、大学には教員の研究室がある……つまり常勤していることだと思います。授業に関わらず、場合によってはコースの垣根を越えて学生のフォローができるのは、大学という大きな組織の強みです。

――なるほど。では、どんな学生さんに、本コースを志望してほしいですか?
川和 クリエイティブで勝負していく、そういう強い意志を持っている本気の学生を歓迎したいです。ゲーム業界の仕事って、“外からはすごく見えにくい”と自分が働いていて感じるんですね。情熱を持った学生が、本校で勉強しながら「ゲームって、こんな仕事もあるんだ」と多岐にわたるデザインの業務を知ることで自身の適性を見極め、より夢中になれる仕事を見つけてもらえたらなと思っています。

門脇 僕も川和先生と同様の意見です。あえて視点を変えるとすれば、“冒険ができる人”に来てほしいし、育てていきたいです。型にはまらず、新しいことにチャレンジできる人間を業界に送り出したいですね。

――ゲーム・アプリケーションコース開設後の展望もお聞かせください。
川和 私はよく「ゲーム作りはゲームみたい」と言っているのですが、ゲームを作るプロセス自体が楽しいものだと思っています。ゲームの作りかたを知って、それに夢中になれたら、後はもう勝手にがんばりますよね(笑)。本人が“やらされている”と感じているうちは、やっぱりうまくいかないと思っていて、いかに夢中になれる適性を学生皆に見つけてあげられるかが私個人の展望としてはあります。

門脇 本校に入っていただいて、4年後にどんな人間になっているかが、いちばんの大学の成果です。そのひとつの基準となるのは、どんなところに就職したかや、就職率ですよね。「大阪でゲーム業界を目指すなら大阪成蹊大学だ」 と言われるような結果を出し続けたいです。

関西で屈指の就職率を誇る大阪成蹊大学
 創立85年の歴史を持つ学校法人 大阪成蹊学園が設置した大学で、マネジメント学部、芸術学部、教育学部の3学部と、教育学研究科(大学院)で構成される。学生が能動的、協働的に学べる実戦型の“アクティブラーニング”に力を入れており、昨年度は99%の就職率(2018年3月卒業生) を達成。社会に多くの人材を輩出している。

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記者の目[つねに証明し続ける、現役であるという意味]
 一般企業から大学の教員という異色の経歴を持つ門脇氏と、現役のクリエイターでありながら後進の育成に邁進する川和氏。教育機関としての堅さがない両氏とのインタビューで感じたのは、“現役クリエイター”だからこそできる教育の在りかただ。トレンドが移り変わりやすいゲーム業界だからこそ、それを教える立場の人間はつねに現役であり続けなければならないと川和氏は言う。また、大学自体についても、「教員の教育活動、研究活動のレベルを向上させることに、非常に熱心です」と門脇氏。教員みずからが社会や最先端の技術などに触れる環境にいるからこそ、高い人間力を兼ね備えた学生を社会に輩出できるのだろう。大阪成蹊大学の取り組みで、どういったクリエイターが生まれるのか。それは少し時間を経ないと結果が見えないことかもしれない。でも、だからこそ同大学の取り組みに、今後も注目したい。