『斑鳩』インタビュー 高田馬場ゲーセン・ミカドの池田稔店長、本作の魅力を語る!

2001年にアーケードゲームとして誕生し、いまや世代を越えて愛されているシューティングゲーム『斑鳩』。展示会初出展からゲームセンターで稼動し始めた時期をリアルタイムで見てきたこの方に、またまたご登場願い、『斑鳩』の魅力を語っていただいた。

 2001年にアーケードゲームとして誕生し、いまや世代を越えて愛されているシューティングゲーム『斑鳩』。展示会初出展からゲームセンターで稼動し始めた時期をリアルタイムで見てきたこの方に、またまたご登場願い、『斑鳩』の魅力を語っていただいた。

聞き手:ででお(本誌編集者)、藤川Q(本誌編集者)、みさいル小野(本誌編集者)、風のイオナ(本誌ライター)

※本インタビューは、週刊ファミ通2018年7月12日号に掲載されたものに増補改訂を行ったものです。

高田馬場ゲーセン・ミカド池田店長が語るシューティングの魅力と未来

東京は高田馬場にあるゲームセンター“ミカド”の池田店長。シューティングゲーム不遇の時代を経て、いまにつながるゲーセンとシューティングの歴史、そしてゲームセンターの視点から見たシューティングの魅力とその未来を語っていただいた。

プロフィール

池田稔氏(いけだみのる)

東京・高田馬場にあるゲームセンター“ミカド”のオーナー兼店長。(文中は池田)

『斑鳩』でやっとまともな3D表現のシューティングが出たと思った

──池田さん、今度は『斑鳩』のお話を聞かせてください! お願いします!

池田 あれ、また来たんですか? もちろんかまいませんよ。『斑鳩』、いいゲームですよね。

──2001年に『斑鳩』がリリースされたころの話からうかがいたいのですが、その当時はミカドができる前でしたよね。

池田 前の会社でゲーセンの店員をやっていたころです。『斑鳩』を最初に見たのはAOUアミューズメント・エキスポ(※1)に行ったときで、仕事で行っているのに『斑鳩』ばかりプレイしていました。会社に戻ってからプレイしたゲームのリポートを書いて提出しなければならなかったのですが、ほぼ『斑鳩』しか触れなかったから、ほかのゲームのリポートは同僚のを見せてもらったりしました。

※1……All Nippon Amusement Machine Operators' Unit。日本アミューズメント産業協会主催のアーケードゲームの展示会のこと。

──最初の話からおもしろいですね(笑)。

池田 それには理由があって、僕はもともとメガドライブが好きだったんですけど、とくにトレジャーさんのゲームにハマっていたんです。技術力もあるし音楽も格好いいしで、安定感抜群のブランドだったんですね。そのトレジャーがアーケードで『レイディアント シルバーガン』(※2)をリリースしたときに、ゲーム雑誌でも盛り上がっていました。その続編の『斑鳩』が出ると知って、2001年のAOU注目作は『斑鳩』一択となったんです。

※2……1998年にトレジャーからリリースされた縦スクロールのシューティングゲーム。3つのボタンを組み合わせて押すことにより、8種類の攻撃方法を使い分けられる。

──当時のトレジャーファンは、新作が出るというだけで飛びついていましたからね。

池田 そうですね。ゲーム業界って1990年代半ばくらいから、グラフィック表現がポリゴンに移行しましたよね。当時はまだ過度期だったからなんですけど、ポリゴンだけど60フレームでは動かないし、2Dより動きが悪いゲームが多いと感じていたんですよ。そうした中で『斑鳩』が登場して、「やっとまともな3D表現のシューティングゲームが出たな」と感動したのを覚えていますね。

海外プレイヤーからアーケード版『斑鳩』の問い合わせがくる

──ゲーセン店員時代に、『斑鳩』が稼動された当時のことって覚えていますか?

池田 はい。入荷してから4ヵ月くらい、インカム(※3)のいい状態が続いていました。それくらいのころから、ガッツリやり込むプレイヤーと、そうでないプレイヤーに分かれていきましたね。一部のコアなプレイヤーのあいだでは、スコア争いが異様に盛り上がっていました。

※3……Income(収入)。ゲームセンターで稼がれるお金のこと。

──なるほど。『斑鳩』については、属性切り換えというアイデアが斬新でしたよね。

池田 そうですね。トレジャーの『シルエットミラージュ』(※4)というゲームがあったんですけど、あのシステムをシューティングに置き換えたのが『斑鳩』だったんです。『斑鳩』は演出が映画みたいで、深いストーリーや設定も魅力的だし、たとえばプレイ動画がネットに上がっていたら、最後まで観てしまうくらいデキのいいゲームなんです。でも、僕がいちばん『斑鳩』を評価している部分はそこではないんです。

※4……1997年にESPからセガサターンで発売された、トレジャー開発のアクションゲーム。登場キャラクターには2種類の“属性”があり、操作キャラクターの向きによって属性を切り換えながら攻撃するシステムが特徴。

──では、いちばん評価しているところは?

池田 『斑鳩』のアーケード版はNAOMI (※5)で動いているのですが、NAOMIは電源を入れたときにGD-ROM(※6)のロード時間がかかる基板なんです。たとえば、プレイをミスして電源を切って再起動させようとすると、再びプレイできるまでにかなり待たされるんですね。でも、『斑鳩』はそれを想定しているのか、再起動がすごく速い。おそらく井内さん(※7)がそこまで考えて設計したんだと思いますよ。

※5……セガ(現セガ・インタラクティブ)が開発したアーケードゲーム基板。『斑鳩』のアーケード版には、NAOMI版(2001年)とNESiCAxLive版(2013年)がある。

※6……セガとヤマハが共同で開発した光ディスクメディア。ドリームキャストなどに使われた。

※7……井内ひろし氏。『斑鳩』の企画、ディレクター、背景グラフィック、音楽を担当したゲームクリエイター。

──ゲーセンの店員目線だからこそわかる、『斑鳩』の優れている部分なんですね。

池田 それと『斑鳩』って、海外人気も高いゲームなんです。ミカドにも海外の方から、「『斑鳩』は置いているのか?」っていう問い合わせがよく来たんです。海外ではNESiCAxLive(※8)が展開されてないこともあって、アーケード版を遊びたいっていう海外のファンが多いんですね。だから、言うなれば伝説みたいなゲームになっていますね。芸術の域まで達しているというか。

※8……“ネシカ クロス ライブ”。タイトーが運営する業務用ビデオゲーム筺体のダウンロードコンテンツシステム、およびサービスの名称。

──そうなんですか! 海外のファンからも熱狂的な支持を受けているというのは驚きました。

池田 それまでトレジャーのゲームってキャラクターがポップでコミカルな印象のゲームが多かったんですが、『斑鳩』ではそれらの要素を排除してダークなイメージを打ち出してガラッと変わったじゃないですか。そこも良かったですよね。

プレイヤーだけじゃなく、ゲームクリエイターにも人気がある『斑鳩』

──『斑鳩』ってゲームクリエイターからも人気が高いゲームですよね。

池田 そうなんですよ。以前タノシマスの木村(※9)さんと『斑鳩』の話をしたことがあるんですが、3面ボスをNAOMI基板の性能でどう再現しているのかわからないんだそうです。奇跡レベルのことが内部で行われているんだと思いますよ。だから『斑鳩』ってゲームクリエイターからも人気があるんです。僕らはふつうに「『斑鳩』の3面ボス、すげえよな!」なんて話をしますけど、クリエイターに言わせると「いやいや、あれふつうじゃ表現できないから!」って話になるみたいなんですよ(笑)

※9……木村浩之氏。タノシマス代表取締役兼プランナー。2017年にリリースされた『アカとブルー』では、敵キャラのデザイン、3Dモデリング、シナリオなども担当。

──実はヨコオタロウ(※10)さんも池田さんと同じことを言っていました。1990年代後半にポリゴンが主流になったとき、多くのシューティングが個人的に残念な感じがしていたけど『斑鳩』だけは違ったって。

※10……ブッコロ代表取締役社長。『ドラッグ オン ドラグーン』シリーズや『NieR』シリーズなどを手掛けたゲームクリエイター。

池田 やっぱりそうなんですね。僕は当時「『斑鳩』がダメだったらシューティング界が終わる」と思っていました。だから、展示会でも自分の目で見ないといけないと思ったし、実際にプレイしたら「超カッケー!」となって。あのとき、『斑鳩』がシューティング界を救ったと思います。リリースから15年以上経っているのに、いまだに最新機種に移植され続けているんですから。

──今年もニンテンドースイッチとプレイステーション4でリリースされていますし、それだけ需要があるということなんでしょうね。

池田 間違いないと思います。『斑鳩』はリメイクして機体を増やすとかステージを増やすとか、続編を出すという必要がまったくないんですよ。もっと言うと、無理なんです。あのままでいいんです。だから『斑鳩』が好きな人もこれから始める人も、この『斑鳩』を一生楽しんでほしいですね。

──ちなみに、ミカドでもNAOMI版の『斑鳩』を稼動させることはあるんですか?

池田 もちろんあります。そうすると、昔ハマっていたプレイヤーがまた遊び始めるんです。でもパターンを忘れているから、チャプター2でミスしちゃったり(笑)。それでまた、しばらく熱中してプレイしてしまうという状況が生まれるんです。

──そういうサイクルで遊べるアーケードゲームって、なかなかないですよね。

池田 ないですね。『麻雀』とか『上海』みたいな定番ゲームみたいなところがありますよ。もう『斑鳩』っていうジャンルのゲームですよね。改めて『斑鳩』を作ったトレジャーってメーカーはすごいと思いますよ。ゲームが好きな人でトレジャーが嫌いな人っていないんですよ。僕はメガドライブのころからトレジャーのゲームを遊んでいましたけど、『ダイナマイトヘッディ』にしても『エイリアンソルジャー』にしても1本もハズレのゲームがない。安心してゲームを買えるメーカーだったんです。今ってなかなかそういうメーカーはないですよね。

──トレジャーのゲームは遊んでいると開発者側のこだわりが見えてくるんですよね。

池田 そうなんですよ。だからすべての中小ゲームメーカーはトレジャーを目指してほしいですね。そうすれば、ハズレのゲームがなくなるわけですから。

──以前、前川(※11)さんとお話しする機会があったんですが、新ハードが出るとそのハードの限界に挑みたくなるスタッフしかいなかったそうなんですよ。ニンテンドー64で『爆裂無敵 バンガイオー』を作ったときも画面に何発弾が出せるか、みたいに挑んで「まだ出せる! まだ出せる!」という感じで作っていたらしいです。

※11……前川正人氏。トレジャー代表取締役社長。

池田 ゲーム開発に対してすごくストイックなんですよね。でもそういった姿勢がユーザーにもしっかり浸透しているっていうのが、トレジャーの魅力だと思います。まさに「全てのゲームメーカーはトレジャーたれ」ですよ。

──いまインディーゲームを開発している方のなかから、トレジャーみたいなゲームメーカーが出てきてほしいですよね。

池田 本当にそう思いますね。まずは画面に弾を何発まで出せるか、みたいなね(笑)

──まずはそこからだと(笑)。それで、そういったメーカーを池田さんが注目してexA-Arcadiaのプロジェクトでゲームを作ったらおもしろいですよね。

池田 そういう流れが作れたら本当におもしろいですよね。そうそう、あと『斑鳩』の魅力ってゲームのルールは同じなのに各モードがまったく違うゲームになっているとこだと思うんです。攻略映像を見てもイージー、ノーマル、ハード全部攻略法が違う。そういった部分がいつまでも遊び尽くせない『斑鳩』の魅力になっているんです。

──イージーだから簡単というわけじゃないんですよね。イージーでクリアできるようになってもノーマルでまたパターンを作らないといけないという。

池田 だからもう別のゲームなんですよね。『斑鳩』にしても『バトルガレッガ』にしても『怒首領蜂 大往生』にしても『ケツイ』にしても、伝説になるシューティングってどう作られていくんだろうって思いますよね。開発者の熱意や環境、それと意地といったすべてが奇跡的に組み合わさったときに生まれるんだろうなって思います。

──そうしたゲームが伝説になっていく過程を現場で体感できるのが、ゲーセンのいいところですよね。ツイッターのリツイートで知ったとかではなく、現場の異様な熱気でそれを感じる、というような。

池田 音楽にも似た部分がありますよね。バンドでたとえるとインディーズ時代はとくにソリッドですごい曲を作ったりするじゃないですか。

──『斑鳩』にはその雰囲気がありますよね。無駄がなくて贅沢な感じがしないというか。

池田 わかります。僕らには理解できない部分で仕様への不満や制限だったり、リリースする際の最低ロット数のハードルの高さとか、いろいろなものを跳ね返してやるっていう気持ちが、伝説のゲームを生んできたんでしょうね。もちろん、僕らの推測に過ぎない部分なんですけど。

──池田さん的に、いまのシューティングシーンでトレジャーに近いものを感じているメーカーってありますか?

池田 先ほども話に出ました、『アカとブルー』を作っているタノシマスさんです。プログラマーの藤岡さんという方が天才肌で、クリエイターとしてのスキルが非常に高い。彼だったら何かやってくれるのではという雰囲気を感じますね。そしてそれをプランニングしている木村社長もつねにお客さんのことを考えてゲームを作っていますから、今後おもしろいことになると思っています。

──まさに“トレジャーに近い匂いを感じる”と!

池田 そういうことです。実際、彼らは「目指すのはトレジャーだ」と明言していますから。

シューティングが苦手でも『斑鳩』の1コインクリアに挑戦してみてほしい

──『斑鳩』は稼ぎプレイやパターンがわかりやすいゲームだと思いますが、そういうプレイをゲーセンでしている人がいると見入ってしまいますし、その後で自分でもやってみようという気になるんですよね。

池田 『斑鳩』はアドリブでもプレイできないことはないですが、どちらかというと『沙羅曼蛇』や『イメージファイト』のようにパターンをしっかり作っていくゲームですからね。まだ『斑鳩』をプレイしたことのない方はランクは何でもいいのでとにかく1コインクリアを目指して遊んでみて欲しいんです。そこで得られる達成感は極端な話、東大合格に匹敵するものがあると思うんですよ。ふだんシューティングをプレイしない方も『斑鳩』をプレイしてみて欲しいと思っています。

──シューティングに苦手意識がある方に遊んでもらうのには『斑鳩』はちょうどいいゲームですよね。

池田 白黒ハッキリしていますからね!

──確かに(笑)。そういえばミカドではいろいろなゲームの大会をやっていますけど『斑鳩』の大会も開催してほしいです。まさに白黒ハッキリさせるという!

池田 いいですね! じつは『斑鳩』ってふたり同時プレイだと、お互いをジャマし合えるんですよ。だから、いつかミカドでも『斑鳩』対戦会をやってみたいですね。チャプター2とか、壮絶なことになりそうでおもしろそうじゃないですか。

──『マリオブラザーズ』みたいな(笑)。

池田 そうそう(笑)。



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