フリューと豪華スタッフが手掛ける『CRYSTAR -クライスタ-』。本作の開発に携わる林風肖氏、北尾雄一郎氏、久弥直樹氏にインタビューを実施。完全新作のRPGが誕生した経緯などを聞いた。

 2018年10月18日、フリューから“涙”をテーマにした異色のアクションRPGが登場する。その名は、『CRYSTAR -クライスタ-』(以下、『CRYSTAR』)。本作の企画・原案を務めるフリューの林風肖氏のもと、久弥直樹氏やリウイチ氏、ntny氏といった著名なクリエイターが集結。現世と死後の世界“辺獄”を舞台に、自身が殺してしまった妹を“ヨミガエリ”させるために奔走する主人公、幡田零の葛藤や成長、仲間との交流を描く意欲作だ。今回は、林氏とシナリオを手掛けた久弥氏、開発を担当したジェムドロップの北尾雄一郎氏にインタビューを実施。完全新作のアクションRPGが誕生した経緯などをうかがった。

林風肖氏(はやしふゆき)

フリューのゲームクリエイター。『CRYSTAR -クライスタ-』の企画・原案、プロデューサー兼ディレクターを務める。(文中は林)

北尾雄一郎氏(きたおゆういちろう)

開発会社ジェムドロップ代表取締役。プログラマーとして、数多くのRPG開発に携わる。『CRYSTAR -クライスタ-』では、開発プロデューサー兼、開発ディレクターを担当。(文中は北尾)

久弥直樹氏(ひさやなおき)

名作恋愛アドベンチャーゲーム『Kanon』の脚本などを手掛けたシナリオライター。『CRYSTAR -クライスタ-』のシナリオを担当。(文中は久弥)

最高の仲間と行うゲーム開発

――本作には、著名なクリエイターが多数参加していて、驚いた読者は多いと思います。どのような経緯で開発が始まったのか教えてください。

 僕は入社した当時から、ただおもしろいだけではなくて、プレイした人が前向きな気持ちになれるオリジナル作品を作りたいと考えていました。2016年の秋ごろに余裕ができたので、自分がやりたかったことを形にしたのが、この『CRYSTAR -クライスタ-』になります。

――林さんが長年温めていた企画だったのですね。名前の『CRYSTAR -クライスタ-』に込めた意味や思いは?

 『CRYSTAR -クライスタ-』は、泣くの“クライ”と星の“スター”を組み合わせた造語です。本作は涙がテーマの作品なので“クライ”を。“スター”は、辛い環境の中でがんばる主人公を、暗闇の中で輝く星に見立てて選びました。「クライスタ」と続けて読むと、“クリスタル”のような発音になるのも気に入っています。というのも、本作は登場人物たちにテーマとなる“石”を設定していて、ロゴも涙をクリスタルっぽくデザインしているんですよ。

――なるほど。確かにクリスタルに見えますね。

 このタイトルは最初に思いつきましたが、そのまま変わることなく、正式なタイトルに決まって。僕としては、これしかないという自信がありましたね。

――作品のテーマにピッタリのタイトルだと思います。本作は、著名なクリエイターが多数関わっていますが、彼らを起用した理由は?

 イラストレーターのリウイチさんは、僕が彼の描くイラストに惚れ込んでお願いしました。リウイチさんがキャラクターデザインを担当してくれれば、僕が長年やりたかったゲームを作れると思ったんです。リウイチさんに本作の企画を話したところ、快諾してくれたので、つぎは3Dモデルの制作で協力してくれる方を探しました。技術力のある方にぜひお願いしたいと考えて、僕が大好きな『シェルノサージュ 失われた星へ捧ぐ詩』やユニティちゃん(Unity Technologies Japanが提供するオリジナルキャラクター)を手掛けたntnyさんに相談したところ、彼も快諾してくれたんです。ビジュアルイメージが固まってから、メインコンポーザーを削除さんにお願いしました。じつは、リウイチさんと削除さんとはもともと親交があって。リウイチさんに削除さんの曲を勧めてもらったところ、「(作曲をお願いするなら)この人だ!」と直感しました。ある程度スタッフが決まってから、シャフトさんにも参加していただけることになったんです。

――シナリオを久弥さん、開発をジェムドロップさんにお願いした経緯も教えてください。

 僕はもともと久弥さんの大ファンなんです。心が病んでいたとき、久弥さんがシナリオを手掛けた『Kanon』(“泣きゲー”と呼ばれるジャンルの先駆けとなった感動作)をプレイして救われたこともあって、いつかいっしょにお仕事をしたいと考えていました。久弥さんとは、本作の企画が動き出す半年くらい前からやり取りをしていて、本作のテーマに久弥さんの書くシナリオがピッタリだと思い、担当してほしいと相談をしたんです。

久弥 企画書を見せてもらったときに、すぐに林さんが好きなものだけを詰め込んだ作品だなと思いました(笑)。ただ、好きなものを形にするというのは、本当にたいへんなんです。僕自身、過去に苦労した経験があったので、自分のシナリオが少しでも林さんの力になればいいなと思い、今回の依頼を受けました。

 続いてジェムドロップさんにお願いした経緯ですが、ジャンルはRPGにしたいと考えていたので、これまで数々のRPGを制作しているジェムドロップさんに声をかけさせていただきました。

北尾 林さんから本作の企画を聞いたとき、林さんがやりたいことをうまく形にしながら、我々の持ち味をどのように加えていくのか、難度は高いですが、とてもチャレンジしがいのあるタイトルだと思いました。それに、林さんたち若い世代と、僕や久弥さんのような上の世代がチームを組む試みはおもしろいなと。若い子たちがやりたいことを我々上の世代が形にする機会はなかなかないので、そういう意味でもやりがいを感じています。

 おふたりとは年齢が離れていますが、僕の人となりをよく理解してくれているので、とても意見が言いやすくて非常に助かっています(笑)。

――著名なクリエイターが多数参加していますが、全体でしっかりと連携が取れているのですね。

 僕を支えてくれるおふたりの人柄もありますが、いろいろな方にお願いをしているぶん、密に打ち合わせを行うようにしています。それに、昨年の早い段階で主題歌ができあがっていたのも、作品のまとまりがよくなった要因のひとつだと思います。というのも、主題歌は久弥さんのプロットをもとにやなぎなぎさんに作詞してもらったので、歌詞の内容が作品のイメージにピッタリなんですよ。本作は参加しているクリエイターの個性が強いですし、開発に加わった時期もバラバラでしたが、やなぎなぎさんの主題歌を聴きながら開発を進められたので、お互いに作品のイメージをうまく共有できました。それぞれの個性を活かした作品になっていると自負しています。

――確かに、やなぎなぎさんの主題歌のイメージにぴったりですね。

 女の子が多く登場する作品なので、主題歌は女性のアーティストにお願いしたいと考えていました。今回、やなぎなぎさんの曲をもとにオープニング映像をシャフトさんに制作していただいて、実際に映像があがってきたときには見事にハマっていて感動しましたね。やなぎなぎさんに主題歌をお願いして大正解でした。

零はとっても残念な女の子!?

――ストーリーや登場人物たちの見どころは?

 人間が泣くのはどんな状況かと考えたときに、大切なものを自分の手で壊したときではないかと思いました。そこから、最愛の妹を自分の手で殺してしまった主人公の幡田零が、悪魔と契約をして妹を蘇らせるために奮闘するストーリーを考えたんです。妹を生き返らせるためとはいえ、零は人間の魂が異形の存在となった“幽者”や“幽鬼”を倒さなければいけません。零がいくつもの葛藤を乗り越えて、自分なりの考えを導き出すのは、作品のテーマであり、見どころのひとつです。

久弥 誤解を招くかもしれませんが、零は本当に残念な女の子なんです。引きこもりで、家事全般がダメ。料理は妹に任せっきりなのに、偏食家でわがままを言うんです。妹を蘇らせると覚悟を決めて悪魔と契約した後も、本当にこれでいいのか何度も悩むんですね。そして悩んだ結果、仲間に冷たい態度をとってしまい、壁を作ってしまう。正直、主人公らしくないですが(苦笑)、物語を通していちばん成長するキャラクターなので、最終的には主人公だったと感じてもらえると思います。

 そうですね。各章が終わるときに、零の成長を感じてもらえると思いますが、ベースはとにかく悩む、等身大の残念な女の子です(苦笑)。

――そこまで残念なキャラクターと言われると、気になりますね(笑)。では、妹のみらいは?

久弥 みらいは、とにかくお姉ちゃんが大好きなキャラクターです。零のために料理を作ってくれますし、おそらくほかの家事も、すべてみらいがやってくれているのではないでしょうか。

 みらいは、純朴でかわいい素直な性格の女の子です。どの声優さんもイメージ通りでしたが、とくに千本木さんはみらいにぴったりで、セリフを聴いたときに彼女の魅力がグッと増しました。冒頭には、みらいが怖がるイベントがあるのですが、皆さんの庇護欲がかき立てられると思います。

――プレイするのが楽しみです! メフィスとフェレス、ヘラクレイトスについてもお願いします。

久弥 メフィスとフェレスは辺獄の管理者です。ふたりとも怪しい雰囲気ですが、見た目と声、セリフが一体になったときに、かわいい女の子だと感じてもらえるようにストーリーを考えました。

 声の収録が終わりましたが、久弥さんの狙い通り、ふたりともかわいくなっていますよ。彼女たちは零の導き役として、ゴールに向かって楽しく導いてくれるので、お楽しみに。最後に守護者のヘラクレイトスですが、零の保護者のような存在で、困ったときに声をかけてくれます。

久弥 仲間の守護者には人格はありませんが、なぜか零のヘラクレイトスには人格があります。守護者に性別はありませんが、女の子の仲間が多いので、父兄のようなイメージで書いています。

 まだ公開していませんが、ほかにもクセの強いキャラクターがたくさん登場しますし、ストーリーには数々の伏線が散りばめられています。やり込むほどに楽しめる要素も実装していますので、じっくり楽しんでもらえる作品になるという手応えを感じています。

――ヘラクレイトスには、いろいろ秘密がありそうです。

 秘密というほどではありませんが、キャクターの名前にも意味があります。たとえばヘラクレイトスは、同名の哲学者からとっています。彼は「万物は流転する(=パンタ・レイ)」という言葉を残していますが、この“パンタ・レイ”を文字って幡田零の名前を考えました。

――おもしろいですね(笑)。先ほど異世界の辺獄の名前が出ましたが、辺獄がどのような場所かもお聞きしたいです。

久弥 一般的に知られている、カトリック教会の辺獄という名前を使っていますが、本作の辺獄は実際の意味や場所とは異なるものになります。

 本作の世界では、人が死ぬと輪廻転生して生まれ変わります。辺獄は死んだ者の魂が、輪廻転生するまでさまよう世界で、上から下にいくつかの階層に分かれていて、下にある“再生ノ歯車”に触れると、輪廻転生ができるというわけです。

――辺獄は、階層ごとに見た目の雰囲気が大きく変わるのも、大きな特徴だと思います。

北尾 辺獄のデザインは、林さんと久弥さんが考えた設定をもとに、当社にてビジュアル化しました。一般的な死後の世界は、暗くておどろおどろしいイメージが強いですが、本作ではあえてファンタジー調に仕上げています。それと、各階層はバスや学校など、登場人物たちのトラウマになったものをモチーフとして描いているんですよ。

久弥 北尾さんたちが辺獄のデザインを描いてくれたおかげで、シナリオ作業がはかどりました。文字だけの設定資料では、世界観を細部までイメージするのは難しいですし、先ほど北尾さんが説明した通り、キャラクターのトラウマをデザインのモチーフに取り入れるなど、ストーリーと辺獄のデザインは、密接に関係していますから。

――辺獄のデザインは、巨大な剣も印象的ですが……。

北尾 デザインに剣が取り入れられているのもきちんと意味があって。トラウマを消すために剣が存在していて、トラウマなどを処理している過程など、正確なものが不確なものに変化していっている意味合いも含め、剣や背景のデザインなどにモザイク模様や、幾何学的な模様をあえて取り込んでいます。

 ゲーム内で触れることはありませんが、久弥さんと話し合って、さまざまな設定を考えています。実現できるかどうかまだわかりませんが、ゲーム内に用語集を作るなどしてフォローできるといいですね。

――辺獄では、“幽者”や“幽鬼”と呼ばれる異形の敵と戦いをくり広げますが、本作の戦闘は、いわゆるシンボルエンカウントで始まるのですか?

 敵と接触して戦闘画面に移行するのではなく、アクションゲームのようにフィールドを徘徊する敵を直接攻撃して戦いをくり広げます。戦闘中は、ひとりのキャラクターを操作して戦いますが、敵に応じて操作キャラクターを変えることもできますよ。

北尾 本作はストーリーがメインの作品なので、RPGやアクションが苦手な方でも、クリアーできるように遊びやすく調整しています。もちろん、アクションが好きな方でも、しっかり楽しめるシステムを実装しているのでご安心ください。操作に慣れるとダッシュで敵の攻撃を回避して反撃したり、空中に浮かせた無防備な敵に追撃したり、仲間と交代しながらバトルをガンガン進めるといったこともできます。

――間口の広い作りになっているのですね。

北尾 はい。主人公の零は、いわゆるオールラウンダータイプに調整しているので、まずは零を操作して爽快感のあるバトルを体験してもらえたらと。仲間になるキャラクターは、アクションがユニークなキャラクターも用意しているので、操作キャラクターを切り換えながら異なるアクションを堪能してもらえるとうれしいです。

久弥 僕はアドベンチャーゲームに関わることが多かったので、動いているキャラクターを初めて見たときは感動しました。この作品に携われて本当によかったと思いましたし、モチベーションがさらに上がりました。

北尾 そのときにお見せしたバージョンは、我々からするとまだまだ調整前のものでしたが、久弥さんたちにすごく喜んでいただいて、うれしかったのを覚えています。「もっとこうしてほしい」という前向きな意見もたくさんいただき、励みになりました。

――開発者冥利に尽きますね。ほかに特徴的なシステムはありますか?

 あとは、“泣いて強くなる”システムを実装したのも本作の特徴です。強い敵を倒すと入手できる“断末魔の思念”を持ち帰ると、部屋で泣いて装備品が手に入ります。また、戦闘中に泣いてゲージを溜めると覚醒し、守護者を召喚できます。ちなみに、泣き言はキャラクターごとに30パターン以上収録しました。段階ごとに、より感情的な泣き言が聞けるので、美少女が泣いている姿にグッとくる方はお楽しみに(笑)。

――泣くのが楽しくなりそうですね(笑)。

北尾 泣くのは、もともとネガティブな行動ですが、本作では積極的に泣きたくなるようにデザインしています。先ほどお伝えしたように、レベル上げさえすれば先に進めるRPGの構造にしてありますので、アクションが苦手な方でも誰もが楽しめるよう開発を進めています。久弥さんや、削除さん、リウイチさん、ntnyさんなどのファンの皆さん、できるだけ多くの方に遊んでもらえるとうれしいです。

久弥 辛いイベントが多い作品ですが、零たちは悲劇を体験してどんどん強く成長していきます。悲劇の先にある結末に、ぜひご期待ください。

 美少女の泣いている姿にグッとくる方や、1990年代のダークな雰囲気の作品が好きな方にはとくに刺さると思うので、応援よろしくお願いします。