MAGES.原作のテレビアニメ『LOST SONG』と、MAGES.のゲーム『シュタインズ・ゲート エリート』。そんな両作のコラボレーションCMが、2018年6月23日(土)の25時30分~26時00分(『LOST SONG』の放送枠)と、同6月27日(水)の25時35分~26時05分(テレビアニメ『シュタインズ・ゲート ゼロ』の放送枠)にて放映された(いずれもTOKYO MX)。
これにともない、ゲーム『シュタインズ・ゲート エリート』の企画・原作を始め、科学アドベンチャーシリーズの数々の作品を生み出したMAGES.代表取締役会長・志倉千代丸氏と、『LOST SONG』を手がけた森田と純平監督による対談企画が実現。作品視聴後の率直な感想から、コラボCM制作に関する裏話まで、つぎつぎに語られた貴重なやり取りをファミ通.comでお届けする。
志倉千代丸氏(しくら ちよまる)
ドワンゴ取締役兼MAGES.代表取締役会長であり、チヨマルスタジオ社長。『シュタインズ・ゲート』シリーズなど、さまざまな作品を手掛けるほか、楽曲の制作なども務めている。(文中は志倉)
森田と純平氏(もりたと じゅんぺい)
『LOST SONG』原作・脚本・監督。テレビアニメ『オカルティック・ナイン』のシリーズ構成やアニメ『信長協奏曲』各話監督などアニメに携わる仕事だけではなく、過去には『オデッサの階段』などのテレビ番組のディレクターを務める。(文中は森田と)
――おふたりが知り合われたきっかけを教えてください。
志倉 図書館の角でぶつかっちゃったんですよ。
森田と そうそう。そのとき、僕はパンをかじっていて……というのは冗談で。
志倉 萌え要素は必要じゃない?
森田と いやいや、いらないでしょう(笑)。じつは、もともと僕が、Xbox 360版の『シュタインズ・ゲート』をプレイしていて、作品の大ファンだったんです。それで、当時僕が手掛けていた『オデッサの階段』というドキュメンタリー番組に、ぜひ志倉さんにご出演いただきたいと、オファーをさせていただいたのがきっかけですね。キャスティング会議の際、ぜひ、志倉さんを呼びたいと言って。ゲームに詳しくないスタッフにも、「最高におもしろくしますよ」とプレゼンして企画を押し通しました。
志倉 『オデッサの階段』は、ドキュメンタリーでありながら、アート作品のような側面もある番組で。対象となる人物をただ追いかけるのではなく、視聴者の知的好奇心を満たすような、さまざまな要素もプラスされていたのがおもしろくて。この番組を作った人はクリエイティビティのある人だなと、僕も森田と監督に興味を惹かれたんです。『オデッサの階段』だけでなく、『アナザースカイ』も手掛けていて、ドキュメンタリー系の番組のプロフェッショナルな方だなと感じていました。
――そこから交流が始まったわけですね。
森田と 食事をしながら、志倉さんの構想を聞かせていただく機会が何度かあって。
志倉 『シュタゲ』のつぎの作品や未来の話を、僕は聞かれなくてもしゃべるので、それがおもしろかったみたいで。
森田と そうしたら、ものすごく軽いノリで「いっしょにやる?」という話になったんです。ちょうどそのころ、僕自身も新しいことに挑戦してみたいと思っていたので、ふたつ返事でごいっしょさせていただくことになりました。
――アニメの制作に興味を惹かれたと?
森田と ちょうどそのころ、アニメ版の『信長協奏曲』にコンテ演出で参加していて。それまではずっと実写畑にいたので、アニメの制作環境は新鮮でした。監督として携わるのは、今回の『LOST SONG』が初めてです。
――『LOST SONG』の企画は、どういった経緯でスタートしたのでしょう?
森田と プロデューサーから、歌をテーマにした壮大なスケールのアニメを作りたい……というお話をいただきまして。そこから、深夜枠であることは気にせず、幅広い層が楽しめる作品になるようプロットを考えて、打ち合わせを重ねて。比較的スムーズに準備は進められた気がします。
志倉 僕は話を聞いた瞬間、「歌で世界を救う? 歌姫が登場する? どこかで聞いたことがある設定だな」と思いました。毎回、彼の顔を見るたびに「どこが違うの?」って聞いていたよね。
森田と まだ全体像が固まっていなかったときですね。顔を合わせるたびに、突っ込まれていました(苦笑)。
――歌を中心にストーリーを構成していくうえで、苦労した点はありますか?
森田と 僕は音楽の専門家ではありませんが、バラードを聴けば悲しい気持ちになったり、アップテンポな曲を聴けば楽しくなったりと、以前から歌には、人の心を動かす魔法のような力があると思っていたんです。そうした歌の、感情に訴えかける部分を具体化していくことで、おおよそのストーリーラインは見えてきて。そこがしっかりと定まってからは、世界観やキャラクターの造形はスムーズに進みました。
志倉 企画の全体像を見てみると、歌はもちろんライブビジネスも視野に入れたプロジェクトなんだなと感じました。そういうビジネスを展開していくには、どんな作品に仕上げたらいいのか? そういったプロデューサーの意図を汲んだうえで、各要素をストーリーの中に盛り込んでいったように、僕の目線からは見えましたね。
――企画の段階から、ビジネス面での展開も視野に入れて準備を進める……という方法は、よくあることなのですか?
志倉 もっとも注目して欲しい要素から逆算して、その要素が際立つシーンを考える。続いて、そのシーンがクライマックスになるように、ストーリーライン全体プロットの流れをイメージし、シナリオへ……といった具合です。エピソードを時系列に作っていくのではなく、とあるシーンを先にイメージして、そこに向けた物語を積み重ねて考えていくという手法ですね。意外とビジネスでも同じような考えかたをする機会はよくあります。それは決して、悪いことではなくて、作り手側からしても見せたいポイント、注力したいポイントが最初から明確になっているわけで、クリエイティブの面でも、いい効果をもたらす場合が多いんですよ。たとえばプロジェクトチーム全体が同じ方向にあるゴール地点を共有しやすかったり。まさに、歌と星の運命が交錯するように、ビジネスとクリエイティブが交錯する……というわけです(カメラ目線)。
森田と そういうまとめかたをしてくるんじゃないかと、嫌な予感はしていました(笑)。
コンセプトは80%のファンタジーと20%の科学
――『LOST SONG』にも、MAGES.の代名詞である科学アドベンチャーシリーズを彷彿とさせる要素が多数見受けられますが、これに関してはおふたりのあいだで、どのようなやり取りがあったのでしょう?
志倉 作品そのものが、科学アドベンチャーシリーズのパクリみたいなものですよ。いや、オマージュかな(笑)。森田と監督には、もともと科学アドベンチャーシリーズのメンバーとして参加してもらい、『オカルティック・ナイン』ではシリーズ構成も担当してもらっていたので、科学要素に対する見解とか趣味では共通する部分が多くて。王道ファンタジーとしてスタートして、ファンタジーのまま終わるようでは捻りがないよね……という話は、企画の初期段階から共通認識としてありました。
森田と 以前、志倉さんが、科学雑誌『ニュートン』とオカルト情報誌『ムー』が混在した世界観が好きだとおっしゃっていて。僕も同じ感覚なんですけど、志倉さんはどちらかというと『ニュートン』寄り、僕は『ムー』寄りの設定が好きで。そうした違いが、科学アドベンチャーの要素を含みながらも趣の異なる、『LOST SONG』の世界観に反映されていると思います。
志倉 科学アドベンチャーのキャッチコピーは“99%の科学と1%のファンタジー”だけど、『LOST SONG』の場合は“80%のファンタジーと20%の科学”といったところかな。
――科学になじみがない人にとっては、それくらいが入り込みやすい比率なのかもしれないですね。
森田と 歌に関しても、“魔法のような力”というあやふやな捉えかたではなく、奇跡を起こす仕組みについて科学的な設定を用意してあります。作中では描かれませんが、“反響装置”や“歌奏兵器”といった兵器についても、ものすごく細かい設定があるんですよ。
志倉 僕が見ていて気になったのは、そうした設定の説明がほとんどないところかな。歌の設定にしても、“歌がどうして魔法につながっていくのか?”という科学的根拠を持ったアドバイスもできたんですよ。音は波。波形。その波形と僕は20年以上戦ってきているわけです。たとえば、フォルマウントやループといった、音に関するうんちくをセリフの中に盛り込んだり。すべてとはいかなくても、ちょっとした専門用語を、(『LOST SONG』に登場する発明好きな少年の)アルやドクター・ヴァイゼンに言わせるだけで、作中の科学にリアリティが増して、知的好奇心だってくすぐられるじゃないですか。
――ほかにも、自分が監督ならもっとこうした……と思われる部分はありますか?
志倉 山のようにあります(笑)。たとえば現代パートで、(田村ゆかりさんが演じるヒロインの)フィーニスが女子高生に扮するくだりがあるんですけど、セリフだけで、肝心のフィーニスの姿が映らないんですよ。そこはしっかり描かないと!
森田と そこでダメ出しを食らうとは思いもしませんでした。
志倉 ほんの1カットでも、女子高生に必死に扮しながらも、学園生活を送っているフィーニスの姿が映れば、いかにもさまざまな時代をわたり歩くなかで、ときにはこんなこともあったんだと、想像を膨らませることができる。そうした演出の積み重ねでキャラクターの幅も、より広げることができるんです。
――たしかに、異なる時代で暮らしているフィーニスの日常は気になるところですね。
森田と こんな風に観てもらって、意見を言っていただけるのはありがたいです。現代パートにしても、設定やストーリーはめちゃくちゃ細かく考えていたので、尺さえあればいくらでも描けるんですよ。
志倉 いろいろな時代を少しずつ描いていますが、僕はやはり、現実世界と非常に近い現代パートの物語を、もっと見たかったなあ。
森田と 『オカルティック・ナイン』の制作時にもよく言われましたが、志倉さんは「自分たちの住んでいる世界と地続きの物語じゃないと、入り込めないし、おもしろくない」という考えかたですよね。
志倉 本作の舞台となる星は、地球じゃないんですよ。そんな星に危機が訪れて、人類が滅んでしまうかもしれない……といった描写があるんですけど、僕からすると、掘りかたが違うんだよなあ。
――どういった部分が、しっくりこないのでしょうか?
志倉 ニューヨークのような街並を描いて、地球っぽく見せてはいるけど地球じゃない。つまり、本作に出てくるのは、僕たちと地続きの世界の住人じゃないので、極端な話、無数にある星のひとつが滅んでしまっても、いまいち響かないんですよ。リアリティがなければ人の死が軽くなってしまう……というのが、僕の持論です。そういう意味では、地球外ファンタジーの世界観で人の死を扱うのはとても難しいんです。たとえば第1話で村が襲われても、カメラはメインキャラの近くばかりを追いかけるものだから、特定のキャラクターしか映さない。広い視野での被害状況がわからず、多くの人の悲しみや、慣れ親しんだ街全体としての悲しみが伝わってこない。それで悲しいと言われても、やっぱりもうひとつ足りない。しかもまったく知らない遠い別の星のお話ですよ?(笑)。
――第1話終盤のエピソードですね。
志倉 そうした演出に関する話をすると、まだまだ言いたいこともあるんです。自分の作品を棚に上げて、あくまでも個人的な意見としては、ですが(笑)。でも、あの育ての親であろうお爺さんと敵の将軍のやり取りは、第2話以降に続く伏線としてはよかったね。
森田と リンの育ての親であるタルジアと、王都軍の将軍・バズラのやり取りですね。ふたりに因縁があることを匂わせつつ、その直後に悲劇が起きて、第2話へとつながっていく構成になっていて。そうした伏線の考察を楽しんでくださる方も多く、放送終了後は毎回、視聴者の皆さんどうしで盛り上がっていただけたのも、うれしかったところですね。
志倉 そうやって、ファンどうしでワイワイ考察するのが楽しいのに、この人は毎回、ツイキャスで自分からしゃべっちゃうんですよ。
森田と だって、聞かれちゃうから。せっかくツイキャスに来てくれたのに、答えないのは申し訳ないじゃないですか。
志倉 伏線に関して言うなら、AパートとBパートのあいだに挿入されるCM自体が、ものすごい伏線だなぁと思って見ていました。話が進むにつれ、物語自体はどんどん不穏な空気になっていくけど、CMではリンとフィーニスが仲良く並んでめちゃくちゃ熱唱しているんですよ。まったく接点のないはずのふたりが、こうして最終的に何らかの脅威に対し共闘する。毎回、CMを見るたびに、そこに至るまでの経緯が気になる。狙っていたならうまい仕様になっていたと思います。
森田と ふたりの出会いがターニングポイントになるので、そこに行きつくまでは、時間をかけて丁寧に描いたつもりです。ちなみに、「歌うほどに命を削ることになる」と話した直後に、CMでフィーニスが熱唱していたときは、視聴者の皆さんからめちゃくちゃツッコミをいただきました(笑)。
志倉 そんな回もあったね。とはいえ、そのターニングポイントに行きつくまでが、ちょっと長かった気もするなぁ。これはあくまでも僕の考えかたなんですが、物語は歌に近いものだと思っていて、各話のストーリーラインや、シリーズ全体の構成にもAメロ、Bメロ、サビがあるんですよ。サビにたどり着くまで、十分引っ張りたい……という気持ちもわかるけど、昨今のアニメファンには、ド頭にサビとおなじくらいの衝撃を用意しておかないと、興味を持ってくれないんですよね。最初に大きな事件を描いて、中盤でそこに至るまでの伏線を回収。そうして最後に、さらに大きな出来事を描きつつ、議論・考察ができるように、いくつかの伏線は残したままで終了する。科学アドベンチャーシリーズをアニメ化する際は、毎回、この流れに沿って物語を構成しているんです。サビを頭に持ってくる音楽って多いでしょ?
森田と いろいろな要素を盛り込むうちに、中盤の伏線回収の時点で8話までかかってしまいました(全12話)。僕自身も、ちょっと長すぎたなと反省するところがあり、そういったご意見も多数頂戴しているのですが、それでも見続けてくださった方からは、ご好評をいただきまして。ありがたい限りです。
――初監督作だけあって、盛り込みたい要素も多かった……というわけですね。
森田と 要所ごとに細かく散りばめました。セリフもひとつひとつ吟味して、すべての言葉に意味を持たせています。なかにはおバカな掛け合いもありますが、見返すたびに見えかたが変わるアニメにしたかったので、そのあたりはうまくいったと思います。ふつうに見ていると、破綻が起きているように感じる部分もありますが、8話以降の展開を知ってから見返すと、「そういうことだったのか」と思っていただけるはずです。
志倉 いやいや。僕から言わせると、それでもツッコミどころは満載です。「後で細かい反省会な!」という冗談はさておき、もちろんアニメ作品としては評価しているんですよ。「言いたいことがたくさんある作品」というのはとてもいいことで。そもそも、いまどきのアニメ業界トレンドに迎合しない、このチャレンジ精神溢れるオリジナルな物語や設定は全体としてかなり僕好みです。8話の裏切りが3話くらいに出てくればもっと最高でしたが(笑)。
ストーリーと志倉氏による楽曲の歌詞がシンクロ
――改めて、作中における“歌”の重要性についてお聞きしたいのですが、演出面で気をつけられたポイントを教えてください。
森田と 歌は、本作において根幹となる要素なので、プロットの時点から、つねに物語の中心に据えて考えていました。挿入歌やBGMではなく、キャラクターの感情を表すもの、歴史を物語るものとして扱っています。作詞の畑亜貴さんにも、台本や設定資料をすべて読んでいただいて。非常に物語性の強い歌詞を書いていただきました。
志倉 僕は個人的には、1話でリンが歌っていたミュージカル調の曲が好きですね。日常生活と歌が融合していて「あ、こういうテイストで描いていくのか!」と思って感心していたら、2話以降、そういうシーンはいっさい出てこない(笑)。
森田と 本当はすべてのエピソードに、ミュージカル調のシーンを入れたかったのですが、さまざまな事情で実現できなくて……。ごく自然に、歌が物語の中に溶け込んでいて、さまざまな情報やキャラクターの感情も、そのシーンを見ているだけで理解できる。そういった描写をもっと盛り込みたかったですね。
志倉 楽しそうに即興で歌うシーンと、魔法を使うために気持ちを込めて歌うシーン。そうした対比を見せることで、歌の存在感はより際立ちますからね。ちなみに、本作のストーリーなんだけど、全話を見終わったとき、ものすごく既視感があって。よくよく考えたら、“純情のアフィリア(※1)”の『この世界に魔法なんてないよ』という曲の歌詞と、すごくシンクロ率が高い気がしたんですよ。いつも歌詞を書くときに、まずはそのベースとなる物語として“リリックノート”というテキストを書き殴るんですが、今日はその全文を持ってきました。個人的には、あのメガネのがんばり屋さん、アルの心情と重なる部分があるような気がして。
※1:志倉氏がプロデュースする女性アイドルグループ。2017年にグループ名を“アフィリア・サーガ”から“純情のアフィリア”に変更。現在、14人体制で活動中。
純情のアフィリア「この世界に魔法なんてないよ」Afilia MusicClip FullVer.
志倉 純情のアフィリアはもともと、“アフィリア・サーガ”というユニット名で、メンバーも全員、魔法使いという設定で活動していたんですけど、ユニット名の変更にともない、私たちは魔法使いじゃないし、魔法なんて存在しない。そう、所詮は魔法使いごっこなんだ。と、ものすごく自虐的で、これまでの活動を否定するような歌を用意したんです。その歌詞を読み返すと、「魔法なんてあり得ません」と言いながらも、歌でさまざまな奇跡を起こすヒロインのリンを支えてきた、アルの心情とものすごくシンクロしていたので、我がことながら驚きました。プロットを書くとき、勝手にノートを見たりしていないよね?
森田と 見てないです!(苦笑)。僕もいま、この歌詞を見てビックリしています。
――たしかに、アルとリンの関係は、歌詞の中で描かれているファンとアイドルの関係とリンクしていますね。
志倉 現実を突きつけられて、しょせん歌は歌だって割り切ろうするものの、それでもいままで自分を勇気づけてくれたこの歌は、僕にとっては魔法だったのかもしれない……という。アルの視点から物語を追っていくと、この歌詞とものすごくマッチするので、よかったらぜひ、純情のアフィリアの楽曲も聴いてみてください。あ、まるで宣伝のようだ(笑)。
ダルは『LOST SONG』を見ていた!? コラボCM制作秘話
――続きまして、このたび実現しました『LOST SONG』とゲーム『シュタインズ・ゲート エリート』のコラボCMについてお聞きします。『シュタインズ・ゲート エリート』のキャラクター・ダル(橋田至)が、『LOST SONG』の再放送を告知する……といった内容ですが、どういった経緯でこちらの形にまとまったのでしょう?
志倉 『シュタインズ・ゲート エリート』は現実と地続きの世界の物語なので、登場人物たちが『LOST SONG』を見ていてもおかしくないんですよ。そう考えると、同作のキャラクターの中では、ダルは間違いなく『LOST SONG』を見て、「フィーニスたん、ハァハァ」と言っているはずなので。そこからアイデアを膨らませて、CMの形にまとめました。まゆしぃなら、「フィーニスのコスプレ衣装は作るのがたいへんだよー」とか言うでしょうね。
森田と 僕としては単純に、ダルも『LOST SONG』を観てくれていたんだ。ありがとう! という気持ちです。でも改めて考えると、他作品のキャラクターでありながら、“実際に観ていてもおかしくない”と思わせる、ダルの存在感ってすごいですよね。
志倉 ほかにも、鈴羽が「この世界線を変えられるのは、オカリンおじさんだけだよ」と言っているところに、ダルが入ってきて、「その歌は星の運命さえ変えるお」と言い放つバージョンも考えたりしました。深掘りすれば、いくらでも別バージョンのコラボCMも作れてしまいますが、やり過ぎ注意ですよね。
――ぜひ、それらのCMも見てみたいです! ちなみに放送終了後、すぐに再放送が始まる……というパターンは珍しいですよね?
志倉 なかなかないですよね。しかも、局は変わらずTOKYO MXでの再放送ですから。作中の時間の流れが“円環”に近い形になっているので、後半から見始めて、再放送でもういちど1話から見直す……という見かたでも、十分楽しめると思います。もし、3度目の連続再放送があるようなら、物語はリアルに円環してるわけですし(笑)。そのあたりの演出も、あらかじめ相談してくれれば、いろいろ仕込めたはずなんですけどね。再放送と見せかけて……って、これはもうシュタゲでやりましたね(笑)。再放送するたびに微妙に変化があるっていうのは、おもしろいんだけどアニメスタジオはたいへんですね……。
森田と 作中に詰め切れていない情報が、まだまだたくさんあるので、それらを追加する形で終盤に変化をつける……というのは、おもしろいですね。それと今回、監督を経験させていただきまして、改めてゲームとアニメの演出の違いを認識することができました。ゲームの場合、進める速度はプレイヤーが自由に決められる、逆にアニメの場合は時間的な制約があるので、情報の量も調整する必要があるんです。それを勉強できたのは大きな収穫ですし、もっと技術を磨いて、つぎにつなげていきたいと考えています。
志倉 いま、ゲームの話が出たけど、僕からすると『LOST SONG』の演出は、すごくゲームに近いんです。というのも、物語はほぼすべてリンの視点で展開していて、合間にフィーニスやヘンリーのエピソードが挿入される形になっている。これは、アドベンチャーゲームに近い見せかたなので、「ゲーム化も視野に入れているのかな?」と感じましたね。
――今後の展開として、ゲーム化もあり得るのでしょうか?
森田と いやいや。ぜんぜん考えていなかったですよ。でもそう言われると、やりたくなってきますね。物語の構成上、ストーリーはいくらでも分岐できるし、どこを切り取ってもエピソードは充実しているので、もし機会があるのなら前向きに検討したいです。
――『LOST SONG』のゲーム化、期待しています! それでは最後に、本作のファンの皆さんに向けて、ひと言ずつお願いします。
志倉 アニメはひとまず完結を迎えますが、まだまだ掘り下げられる部分は山のようにある作品なので、それらを何らかの形で、発信していけるといいなと考えています。本当に、現時点ではゲーム化の話は出ていませんが、アニメの素材は大量にあるし、エピソードはいくらでも増やせるので、考えてみるのもアリですね。そのあたりについては、森田と監督のやる気次第ですが、もし本格的に動き出すなら、そのときはもっと口を出します! そうなると恐らくタイトルも幻想科学ADV『LOST;SONG』になってますね(笑)。
――その場合、力を入れたいポイントはありますか?
志倉 現代パートをもっと増やします。衛星がぐるぐる回って、やがて星にぶつかるというくだりを、もっとキャラクターたちに議論させたい。それと、各キャラクターの人物像はまだまだ掘り下げられるので、とことん深掘りしたいですね。そうしてキャラクターの魅力が確立すれば、大きな事件は起きなくても、ただリンやフィーニスたちが会話するだけでもおもしろくなると思うんですよ。
森田と 明るい未来の話も出てきて、うれしい限りですが、僕自身の制作欲求も、まだぜんぜん満たされていないので、可能であれば継続して、『LOST SONG』を展開していきたいです。科学アドベンチャーファンの方もきっと楽しめる要素があると思います。7月からは再放送が始まりますし、Netflixなら好きなだけ見放題ですので、これらで視聴しつつ、今後の展開にも期待していただければ。2019年の2月11日(月・祝)には、パシフィコ横浜にて本作の後日談を描くイベントも開催予定ですので、そちらにもぜひ、遊びに来ていただけるとうれしいです。まだまだ『LOST SONG』は終わりませんので、これからも応援、よろしくお願いいたします。
志倉 王都とは横浜のことだったのか……(一同笑)。
【TVアニメ『LOST SONG』】
TOKYO MX:2018年7月6日(金)より毎週金曜26:10~再放送
Netflix:全12話配信中
※公式サイト
※公式Twitter
<キャスト>
リン:鈴木このみ/フィーニス:田村ゆかり/アル:久野美咲/ポニー・グッドライト:たかはし智秋/ヘンリー・レオボルト:山下誠一郎/アリュー・ルックス:瀬戸麻沙美/モニカ・ルックス:芹澤優/コルテ/メル:茅野愛衣/バズラ・ベアモルス:小山剛志/ルード・ベルンシュタイン4世:鈴木裕斗/ドクター・ヴァイゼン:小形満/タルジア・ホークレイ:糸博
<スタッフ>
原作・監督・脚本:森田と純平(MAGES.)/キャラクター原案:福田知則(MAGES.)/アニメーションファシリテーター:櫻井親良/メインキャラクターデザイン:金子志津枝/サブキャラクターデザイン:原修一・藤澤俊幸/デザインワークス:バーンストーム・デザインラボ/美術監督:大久保錦一/背景美術:でほぎゃらりー/色彩設計:大西峰代/撮影監督:山本弥芳/作詞:畑 亜貴/音楽:白戸佑輔(Dream Monster)/音楽制作:MAGES. /制作:LIDENFILMS×ドワンゴ(共同制作)
【イベント『LOST SONG~星歌祭~』】
日時:2019年2月11日(月・祝)
会場:パシフィコ横浜 国立大ホール
出演:鈴木このみ、田村ゆかり、久野美咲、たかはし智秋、山下誠一郎、瀬戸麻沙美、芹澤優、茅野愛衣、鈴木裕斗
作・演出:森田と純平監督(MAGES.)
内容:TVアニメ『LOST SONG』に登場する歌や世界観をお楽しみいただけるイベント
チケット:Blu-ray BOX封入の「イベントチケット優先販売申込券(初回生産限定封入特典)」にてお申込いただけます。(1名様分のチケットを確約で購入でき、更に最大4名様分のチケットを抽選で申込みできます)
※出演者は都合により変更となる可能性があります。
【LOST SONG Blu-ray BOX ~Full Orchestra~】
発売日:2018年9月26日(水)
価格:36,000円(税別)
収録話数:全12話
内容:本作を全話収録したBlu-ray BOXが9月26日(水)にリリース!
Blu-ray BOXには、2019年に開催となる『LOST SONG~星歌祭~』の1名様分のチケットを確約で購入でき、更に最大4名様分のチケットを抽選で申込みできるイベントチケット優先販売申込券のほか、アニメ第1話に登場した『想いの翼』や『青く清き水の歌』をはじめ、ここにしか収録されない全劇中歌・劇伴を80曲以上収録したサウンドトラックCD3枚組や、監督・キャストによる全話オーディオコメンタリー、未公開のコンセプトアートや背景美術・キャラクター設定等を集めた2冊組・合計200Pを越えるフルカラー設定資料集、キャラクターデザイン金子志津枝による描き下ろしデジパックケースジャケットなど豪華10大特典を予定しています。
【『LOST SONG』再放送記念拡散キャンペーン】
キャンペーン期間:2018年6月28日(木)~7月8日(日)23:59まで
内容:[1]ツイッターアイコン、壁紙の配布/[2]公式ツイッターをフォローし、期間中に指定ハッシュタグを付けてツイートした方から抽選で10名様に非売品ポスターをプレゼント
指定ハッシュタグ:#LOSTSONG #再放送でまた会えるお
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