石原章弘氏、齊藤祐一郎氏、中原顕介氏――サイゲームスで新たな一歩を歩むクリエイターたちにインタビュー

週刊ファミ通6月28日号(2018年6月14日発売)にて、サイゲームスの“いま”を探った、“総力特集 Cygames解体新書”という特集記事を掲載した。今回、同記事内に掲載した、サイゲームスに所属する3人のクリエイターへのインタビューの完全版を、ファミ通.comで掲載。

 週刊ファミ通6月28日号(2018年6月14日発売)にて、サイゲームスの“いま”を探った、“総力特集 Cygames解体新書”という特集記事を掲載した。同記事では、サイゲームスが誇るモーションキャプチャースタジオや3Dスキャンスタジオの潜入取材から、社員や他社クリエイターからのコメントから明かされる“サイゲームス伝説”の紹介など、さまざまな角度からサイゲームスという会社を掘り下げた。今回、同記事内に掲載した、サイゲームスに所属する3人のクリエイターへのインタビューの完全版を、ファミ通.comで掲載。

サイゲームスで飛躍するクリエイターたち

 サイゲームスが持つ最大の“財産”は、すなわち“人材”である。会社設立からわずか7年で、従業員数は約2000人にまで増え、オフィスは月単位で拡張を続けているほどだ。ゲームの開発や運用、アニメの制作、そしてそれらを支える広報宣伝や総務、人事、経理、法務など、さまざまな才能を持つ人材がサイゲームスを支えている。そしてここ数年で、かつて家庭用ゲームを始め、エンターテインメント業界で名を馳せた実力者たちもつぎつぎに集まってきている。彼らはなぜサイゲームスで働く道を選んだのか? また、急成長を支えているものは、いったい何なのか? ここからは、2015年以降にサイゲームスに加わった、『アイドルマスター』の石原章弘氏、『ダンガンロンパ』の齊藤祐一郎氏、『ブレイブリーデフォルト』の中原顕介氏の3人のクリエイターにインタビューを実施。入社の経緯や実際の労働環境などについて、忌憚のないところをそれぞれにお話しいただいた。

プロフィール

石原章弘氏(いしはらあきひろ)

サイゲームスのプロデューサー。『アイドルマスター』の総合ディレクターとして10年以上活躍。現在は『ウマ娘 プリティーダービー』プロジェクトのコンテンツプロデューサーを手掛ける。(文中は石原)

齊藤祐一郎氏(さいとうゆういちろう)

サイゲームス所属のプロデューサー。『ダンガンロンパ』シリーズなどを手掛けた後、2017年より現職。白黒ツートンカラーのヘアスタイルでもおなじみ。(文中は齊藤)

中原顕介氏(なかはらけんすけ)

サイゲームス所属のディレクター。カプコンやゲームリパブリック、シリコンスタジオなどを経て、2015年入社。代表作には『ブレイブリーデフォルト』(スクウェア・エニックス)などがある。(文中は中原)

先頭を走り続けるという覚悟 石原章弘氏

 アイドルから競走馬――。誰もが驚いた電撃移籍から、予想外のテーマでの新プロジェクトを発足。そしてゲームよりもアニメよりも先に、CDやライブプロジェクトを展開し成功させるなど、つねに新たな手法を模索し、実行し続けてきた、石原章弘氏。そんな彼が第二の戦いの場としてサイゲームスを選び、ともに歩もうとするその理由とは? そして、ゲーム業界のトレンドの先頭を走り続けるために、彼が「足りない」と感じているものとは……。『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、『ウマ娘』)の現状や、『ウマ娘』後の目標など、ファンが気になる話も合わせてうかがってきた。

――現在は“コンテンツプロデューサー”として、いろいろな現場で辣腕を振るう石原さんですが、出発点であるゲーム業界にはどんな形で入ったのでしょうか?

石原 就職活動中、記念に応募してみようと思ってナムコ(注:当時。現在のバンダイナムコエンターテインメント)を受けたら、なんだか受かりました。

――いきなり爆弾発言が出ましたが!

石原 あ、別にゲームが嫌いだったからとかじゃなくて、受かるってぜんぜん思っていなかっただけです。僕にとって当時のナムコは神のような会社だったので(笑)。

――ナムコに入りたいと思ったのは、どういう理由があったのでしょうか?

石原 学生時代からゲームセンターに通っていたので、『リッジ』、『鉄拳』、『子育てクイズ』(※1)と、オールジャンルでおもしろいゲームを出すナムコは憧れでした。ロゴの“n”のカーブが好きでしたね(笑)。

※1:『リッジレーサー』、『鉄拳』、『子育てクイズ マイエンジェル』のこと。いずれもアーケードで人気を博し、家庭用ゲーム機でもリリースされた人気シリーズ。

――憧れの会社に入社できたのは幸せでしたね。

石原 入社した後、どうして僕を採用したのかを聞いてみたんですが「おもしろかったから」という理由だけでした(笑)。実際、目を疑うようなおもしろい先輩がたくさんいらっしゃって、ゲーム作りにみんなが真剣でした。“最高のコンテンツを作る”というサイゲームスのビジョンと雰囲気は、その当時を思い出すことがあります。

――なるほど、両社にはそんな共通点があったわけですね。その後、どんなキャリアを重ねていったのでしょうか。

石原 企画職で入社してからは、10年くらいアーケードゲームの開発部門にいました。最初は子ども向け乗り物の企画だったんですけど、子ども向けゲームは難しいんです。親御さんとお子様に第一印象で「おもしろそう!」と思ってもらえないと見向きもしてもらえない。でも、ようやく遊んでもらえたとしても、難易度が高かったりすると、2度と遊んでもらえない。

――かと言って、100円で何時間も遊ばれてしまっても困るわけですよね。

石原 ナムコ時代は“楽しい時間”を売ることを重要視していました。100円で1分しかプレイできなくても、30分プレイできても同じような満足感を得てもらう。こういう“おもてなしの心”は当時学んだいちばん大切なことです。いまもリアルイベントなどでは、必ずお客様の顔を見るようにしています。

――アーケード部署での経験が、現在の石原さんの礎になっているということですね。

石原 そうですね。ユーザーの反応を見ることのできる現場にいたことはとても幸運でした。

――でも、ある日いきなり家庭用ゲームを担当することになると。

石原 そうですね。『アイドルマスター』はもともとゲームセンターのゲームだったんですけど、「家庭用ゲームに移植するので異動して」と言われて。まあ、何事もチャレンジだなって思って、異動しました。

――ただ、その後『アイドルマスター』の総合ディレクターとしてゲームだけではなく、ラジオやCD、ライブなどさまざまな方面で活躍されてその名を轟かせていくことになるわけですが……。

石原 僕はお客様を満足させるためには“五感”を刺激することが必要だと考えています。たとえばゲーム(視覚、触覚)や、ラジオ、CD(聴覚)、イベント(嗅覚・視覚・聴覚)というように、メディアが持つ特性を使い分けながら、それぞれ違うアプローチでファンに興味を持ってもらう。感情が動いたときに初めて、そのコンテンツに興味を持つ。まあ、ゲームセンターのゲーム同様、実際は触ってもらうまでがたいへんなんですけど、そこは情報出しのタイミングで、起点となる日を作るようにしています。そういった考えかたは、いまも『ウマ娘』でやっています。

――そんな石原さんがサイゲームスで働くことになったのは、どういった経緯があったのでしょうか?

石原 もともと、サイゲームスとは『アイドルマスター シンデレラガールズ』をいっしょに開発していたのですが、前の会社を辞めると挨拶に行ったら、うやむやのうちにここにいることになりました(笑)。

――“決め手”になったのは、いったい何だったのでしょうか?

石原 サイゲームスは「こういうことやりませんか?」と提案したら「いいですね、やりましょう(この間5秒)」という会社で、行動力の速さはピカイチです。それがクロスメディアでコンテンツを大きくするこれからの時代に合っていると思ったからです。

――そんなことあるんですか!?

石原 もちろん、実際行動に起こしてからは問題にぶち当たることもあります。ただ、リスク回避のために石橋を叩いて叩いて……そして壊すという企業が多いなか、いきなり躊躇なく踏み出すことができるのはクリエイターにとっては最高の環境といえます。

――いまは、何でもリスクを抑えることを第一とする傾向にありますよね。

石原 安全策は企業にとっても大切なことです。しかし、リスクをとってでも冒険できる環境は、若いクリエイターにも味わってほしいですね。

――機材なども、必要であれば何でも揃えてもらえると伺いましたが……。

石原 企業としてのバックアップ体制はすさまじいです。「最高のコンテンツを作る」という言葉に嘘はなく、最高のものを作るための最高の環境は準備してもらえます。

――“結果を出さないといけない”というプレッシャーも強くなりそうですね。

石原 適度なプレッシャーは、いいモノを作るために必要なものです。ゲーム業界は徐々に大切なものが“予算”→“納期”→“おもしろさ”の順番になってきている気がします。でもエンターテインメント企業は“おもしろさ”を第一にすべきです。この言葉に共感する人なら、サイゲームスは良い環境かと。言葉で「おもしろいものを作ろう」と掲げることは誰にでもできますが、設立当時からそれを実践しているのはサイゲームスだけではないでしょうか。

――お話を聞く限り、クリエイターにとっては、考え得る最高の環境にも思えるのですが、それでも足りないものはあったりするのでしょうか?

石原 人材です(笑)。

――具体的に、どんな人材が足りないのでしょうか?

石原 あらゆる職種です。サイゲームスのやりたいことは、まだまだあります。プロデューサー、企画、グラフィック、3DCGアーティスト、アニメーションデザイナー、サウンド……まだまだ、人材を募集しています。いいコンテンツを作るために、より多くの方に門を叩いていただきたいですね。

――どれだけ本気なのかが伝わってきました! それとは別に、サイゲームスには多彩なクリエイターが集まってきていますが、いっしょに仕事をしてみたい人はいらっしゃいますか?

石原 『ウマ娘』で『うまぴょい伝説』の作詞作曲を手掛けた本田晃弘さん(※2)。いい意味でぶっ飛んでいる人で、できればもう一度、密に仕事をしたいと思っています。あとは『グランブルーファンタジー』の福原さん(※3)とも、何かやれるとおもしろいですね。

※2:本田晃弘氏。コナミデジタルエンタテインメントにて、『メタルギア ソリッド』シリーズなどの楽曲制作を手掛ける。

※3:福原哲也氏。『グランブルーファンタジー』のディレクターとして活躍。

――いま名前も出てきましたが、現在鋭意開発中の『ウマ娘』についてお聞かせいただけますか?

石原 (2018年)4月より放送中のアニメもとても好評なので、いまは多くの期待に応えるものを作ろうと、大勢のスタッフが鋭意調整中です。予想は裏切り、期待は裏切らないようにしたいですね。

――最高のものをお待ちしております! 話は変わって、将来的な目標や「こんな作品に挑戦してみたい」というものはありますか?

石原 箱庭ものをやりたいなと思っています。世界中のユーザーを対象にして、見た目もわかりやすく、言葉がわからなくても誰もが楽しめるものを作ってみたいですね。

――最後に“人材”が足りないということでしたが、同じクリエイターに伝えたいことは?

石原 ゲーム業界は主要ハードの移り変わりや流行するゲームスタイルなどが、めまぐるしく変わっていきます。スマホゲームひとつ取ってもこの数年で驚くほど状況が変わってしまいました。1度歩みを止めたら、もうそのスピードに追いつくのが難しくなるくらい。だから、この業界の人間は自分が常にいちばん先を走り続ける覚悟でないと考えています。サイレンススズカみたいに先頭を走ることは気持ちいいものです。いっしょに走ってみようという方は、ぜひ1度、サイゲームスの門を叩いてみてください。