エヌ・シー・ジャパンが提供するPC用オンラインRPG『リネージュ2』。本作は日本でのサービスインから14年目を迎え、現在は新たな物語やシステムが随時追加されて変化し続ける“ライブサービス”と、サービスイン当初のプレイフィールを楽しめる“クラシックサービス”の2種で運営されている。
2018年6月7日、双方同時に大型アップデートが実施される。今後の大きな分岐点となる要素も含まれているとのこと。詳細を『リネージュ2』統括プロデューサーの新井友和氏に伺った。
実機でアップデート内容を実際にプレイすることもできたので、氏のお話とプレイインプレッションを交えてお伝えしていく。
新井友和(あらいともかず)
『リネージュ2』統括プロデューサー。プレイヤーとしても本作と長く関わり続けている。
豊富な追加のライブサービスと、大きな分岐のクラシックサービス
――まずは6月7日のアップデート概要を教えてください。
新井ライブサービスでは2017年10月に登場した“エティス バン エティナ”という大型レイドがありまして、そのエピッククエスト版に関連した“GATHERING of WOLDHEROES 光明のリオナ”と題したアップデートが実施されます。
そのほか、インスタントダンジョンのリニューアル、レイドボスについては新たな“極限戦”やボスアクセサリーの追加や狩場のリニューアルなども実施します。
新井クラシックサービスにおいては、ライブサービスとクラシックサービスの分岐点となるアップデートを行なうと以前より申し上げてきましたが、その到達点のひとつとなるアップデート“Aden Crossroad”が実施されます。
――分岐点というと、ライブとクラシックの間に大きな違いが生まれると?
新井新たに“属性システム”がクラシックサービスに導入されます。すでにライブサービスにも属性システムは存在しますが、こちらのシステムは武器や防具に火・水・風・地・聖・闇の属性を付与し、5すくみから7すくみとなる、ダメージ計算式の単純な一要素です。
クラシックサービスではこれをさらに進化させ、関係がよりわかりやすい、4つの属性を用意しました。
新井この4属性は武器や防具ではなく、キャラクター自身に付与されるため、わずかにクールタイムこそありますが、UI上で自由に切り替えられます。各属性は属性の専用狩り場で経験値を溜めることで1段階につきレベル10までパワーアップし、3段階まで育てられます。
段階をアップグレードするには、各属性のレイドボスの討伐クエストを攻略すると手に入るアイテム“進化石”が必要になります。
新井各属性のレイドボスも、クラシックサービスだけのオリジナルボスとなりますので、その点でも新鮮に楽しんでいただけるかと思います。
韓国ではすでに“Aden Crossroad”の内容は実装されていて、2回に分けてアップデートされました。ユーザーの皆さんに成長要素と目標、目的となる要素を一度に押し付けず分ける必要があったのと、初めてのシステムとなるため、ある程度のテストが必要だったためです。
――対して、日本では一度に全要素を実装することになるようですが。
新井日本と韓国ではプレイヤーの皆さんの成長スピードが異なりますし、成長と目標を同時に設定しても問題はないだろうと判断したためです。ただ、属性レイドボスについてはかなり手強い相手ですので、事前に属性を育成して、相反する抵抗力や攻撃力を上げつつ、ある程度の人数集まらなくてはならないとなると、少々たいへんかと思います。
――具体的には、どれくらいの人数が必要になりそうでしょうか。
新井1パーティーで9人編成のところを、2~4パーティーは集めることになりますが、それだけ集まっても難しいとは思います。属性レイドボスはレベル70以上のカテゴリーに属する、最上位に近い敵となりますので。
ほかにも細かなアップデートはありますが、クラシックサービスのアップデードの軸となるのはこの属性システムと属性レイドのふたつですね。
――属性狩り場には懐かしい名前が並んでいますね。エヴァの水中庭園とか。
新井そこには本来、水竜パプリオンがいるはずなんですよね。韓国では2018年3月にパプリオンの存在を匂わせるような“クロフィン”アップデートが実施されました。パプリオンはどうなんでしょうかね!?
日本のクラシックサービスでは、まだ地竜アンタラスしかボスとして登場していませんからね。先の話にはなってしまうかと思いますが、楽しみにしていただければ。
サーバー改編の意図とは? プロデューサーの熱意を訊く
――アップデートとは別のお話になりますが、5月にライブサービスでサーバー改編が行なわれましたよね。
新井はい。ライブサービスでは12サーバーを3サーバーに改編し、新サーバーをひとつ追加するという大きな変更をいたしました。お客様のご要望に応えるため、というのがおもな理由です。
『リネージュ2』には100人規模で行なう大型レイドも多いんですね。そこに参加者が集まりやすくするハードルの緩和と、野良パーティーの活性化ができれば、と考えました。
――サーバーの“改編”という表現には何か意図があるのでしょうか。
新井“改編”という単語には、昔のしがらみなどがすべてリセットされた状態で、いちから『リネージュ2』を楽しんでほしい、という願いも込めています。
――ただサーバーをくっつけるだけの話じゃありませんからね。改編という言葉は、大げさではないかと思います。
新井昨今の技術的にはメガサーバーでチャンネル化する選択肢も出てきていますが、『リネージュ2』はさすがに14年前のゲームですので、根本から対応させるのはさすがに無理でして。
――開発当初はメガサーバー化なんて考慮していないでしょうしね。
新井まずはお客様に不便をかけないという大前提から考えた結果、ある程度の痛みを伴う改編となってしまうことは承知の上での決断となりました。
痛みというのは、やはり14年で培われたサーバーごとの文化を壊してしまう、という点が挙がるかと思います。
――データ的にはそのまま移動できても、プレイヤーの皆さんが生み出したサーバーごとの空気までは、さすがに持ち込めないですよね。
新井『リネージュ2』にはPvPやPKの要素もありますから。PvPがあるからこそ生まれる楽しさというものもあります。ただ、PvPをやっているところとは組みたくないとか、PvE専用サーバーを作ってほしいといったご意見はつねにいただいているのも事実です。
――PvPがある場所で、自然とプレイヤー同士でマナーやルールが生まれていく課程もオンラインRPGの醍醐味なんですよね。
新井改編後の各サーバーでは、サーバーごとの文化を1から作り直すため、いま現在は掲示板などにびっちりとルールが書き込まれているんですよ。それこそ法律みたいに。
それを面倒くさいと感じるなら、『リネージュ2』には血盟戦システムがありますから、宣戦布告してPvPで決着という手段もあるわけです。(先日行った)生放送の際にも質問が多かった点ですね。
あと、キャラクターが各サーバーに7体までしか作れないので、改編後にそれ以上の人数となる場合、レベルで優先順位をつけて削除されてしまうという点には、私としましては申し訳ないという気持ちでいっぱいでした。
――14年もプレイしていれば、全サーバーに99レベルのキャラクターがいる人もいたでしょうしね。
新井育成し直す場合も手慣れた人ならすぐ99レベルにはできます。作り直しでは補えない部分は極力フォローさせていただきました。オリンピアードの英雄維持回数の保存やアイテムなどですね。あと、改編後にキャラクターの名前が被ってしまうこともありますので、名前の変更対応はいまも継続して行なっています。
お陰様で、いまのところプレイヤーの皆さんから大きなクレームの動きなどはなく、さらに改編前と改編後では数千人規模の新規や復帰者の皆さんが加わったため、接続者数は1.5倍から1.8倍まで増加しました。思った以上の反響で、改編時のメンテナンストラブルなどもなく、胸を撫でおろすばかりです。
新井攻城戦とオリンピアードのシステムは止まっている状態でしたが、オリンピアードは6月1日、攻城戦も6月のアップデート後の6月17日に再開されます。1回目の攻城戦はNPC所有から始まりますので、大事なスタートダッシュとして大いに盛り上がるかと思います。
――数千人規模の戦いになりますし、かなり重くなりそうですね(笑)。
新井それはもう、カックカクになると思います。昔のPentium 4マシンで『リネージュ2』をプレイしていた時代のようになるんじゃないでしょうか。
――まさかいまの時代に、あのカックカクを体験することになろうとは……ある意味、懐かしいですね。
新井私も昔は渋谷のネットカフェで、超絶カックカクの攻城戦をずっとプレイしていました。当時はネットカフェのマシン以上のスペックのマシンなんて滅多にありませんでしたから、これがスタンダードだったんですよね。
もちろん、いまはUIや同時表示の環境設定などが大きく改善されていますので、設定次第でスムーズに動かすことも可能かと思います。
――当時、ゲームがカクカクしたときは、むしろ興奮していましたね。そこまでの人数のプレイヤーが、同じゲームをプレイしているんだなぁと目に見えてわかりますから。
新井サーバー改編後のいまは全盛期を彷彿とさせる状況ですね。プレイヤーの皆さんが、いちから楽しみ、がんばってくださっているのを運営側としては維持、還元しつつ、イベントなど新たな楽しみもどんどん提供していければと考えています。
『リネージュ2』昔と未来のお話。なぜ新サーバーは1レベルスタートだったのか
――ちなみに、いまのプレイヤーの年齢層はどのようになっていますか?
新井ライブサービスでは、プレイヤーの皆さんの平均年齢は40歳前後です。クラシックサービスでは、35歳前後となっています。もちろん若いプレイヤーの方もいらっしゃるんですが、10代のプレイヤーさんは少ないですね。
ライブサービスはいまは新サーバーだと基本無料でプレイできるということで、そちらでの年齢層はまったく異なります。
――クラシックサーバーの方は、安定して30代以上が中心となっている感じですかね。
新井クラシックサービスは昔ながらの歯ごたえのある『リネージュ2』がプレイできるサービスですので、年齢層は高めになりがちですね。血盟戦も活発なので、PvPを嫌うプレイヤーさんが避けるというのもあります。
――昔ながらのMMOならではのエモさを求める層は、確実に存在しますからね。そこに新たなシステムや戦いが実装されるとなると、かなり興味が湧いてきます。
新井突然PKされたり、街でそのことをほかのプレイヤーに話したらPKKに向かってくれたりするあたりですね。いまどきでは感じ取れないエモさかも知れません(笑)。
ただ、いろいろなプレイヤーさんに話を聞いてみるとPK側の心理というのも教えていただけることがありまして。俺ツエーをやりたいというだけでなく、「なぜお前はそんな貧弱な状態でこんな狩り場にいるんだ」と教えてあげたい、みたいな人も意外といるんです。単なる嫌がらせでやっているという人はむしろ少ないんですよね。
――話してみると、案外ちゃんとしている人っていますよね。
新井初心者に将来の敵、ライバルに育ってほしいと考えている人もいますね。バトルマンガのような話ですけど、実際にいるんですよ。現実では楽しめないロールプレイですね。
ただ、こうした話があってもやはりPvPを受け入れられないというプレイヤーさんも多いことは確かなのですが、『リネージュ2』はなんでもできるからこその『リネージュ2』だと私は考えておりますので、それを制限することは今後もないかと思います。
――そこがなくなってしまうと、それこそコンシューマーゲームと変わらないでしょうしね。コンシューマーとはまた別の盛り上がりにこそ、期待しています。
新井改編後はお陰様で盛り上がっておりまして、そこにアップデートの情報も入ってきて、皆さん必死に経験値2倍の期間中にレベルアップしているところですね。
経験値といえば、ライブサービスでは経験値テーブルに日本独自の調整を入れ、育成しやすい環境を作ろうとしております。基本無料でプレイできる新サーバーもオープンした運営側の意図としては、新たに来てくださったプレイヤーの皆さんが流入先に困ったり、古参の人と一緒にコミュニケーションを取りつつ楽しむのは難しかったりといった場合もありますから、新規・復帰の方の受け口にもなっています。
――いきなり古参の皆さんと肩を並べるのは抵抗もあるでしょうしね。興味が出てきてから、改めて古参サーバーでプレイしてみてもいいわけですし。
新井無料期間は2018年7月31日までなんですが、経験値ボーナスなどもあるため、いまの段階ですでにレベルがかなり上がった方も多く、無料期間が終わった後は、そのまま他サーバーと同じ軌道に乗っていくかと思います。
若い新規プレイヤーと、それを導きたい古参の皆さんとで盛り上がったり、新たな楽しみかたも体験してみていただきたいですね。
――親子で『リネージュ2』を楽しむ、なんてのもおもしろそうですね。
新井また、『リネージュ2』には“次元攻城戦”という全サーバー対抗の攻城戦が用意されています。新サーバー・パプリオンの皆さんでも参加できるような育成プログラムが組まれていますが、装備の差はいかんともしがたい状態です。バランス調整も進めていますが、すべてに行き届くほどではないかと思います。
――がんばってきたほかのサーバーの皆さんにいきなり新サーバーが追いつくというのもおかしいでしょうしね。
新井ほかのタイトルをプレイすることも多くありますが、ほかでは全プレイヤーが同じレベルに調整されたり、最初から高レベルのキャラを作成できるシステムがあるんですよね。『リネージュ2』にも改編前には“ヴァルタス騎士団”という同様のシステムがありました。でも、新サーバーではこれらのシステムは導入しませんでした。
――そのため、新サーバーではいちからキャラクターを育成しなくてはならなくなりましたが……。
新井理由としましては、レベル1からコミュニケーションをとっていくからこそのオンラインRPGだから、という考えがあります。『リネージュ2』では育成のハードルが高いため、85レベルからスタートできるようにした方がいいのでは、という意見も私の方へ多くもらったのですが、やめましょうと。
――たしかに、成長過程も楽しんでこそのオンラインRPGだとは思います。
新井ジャンプアップのシステムを入れなかったことで、新サーバー・パプリオンでは血盟などのコミュニティーが広がっていまして、血盟に入る方も想定以上に多い状態です。新サーバーのオープンから1週間ほど観察したところ、当初は皆さん、血盟には入らないんですよね。
――様子見しているわけですね。
新井ただ、オープン後初の土日となると、血盟が作られてその方針が決まっていって、そんな血盟なら入ってみよう、という方が一気に増える。接続者数自体も日に日に増えているんです。
――なるほど、いい傾向ですね。
新井さらに、新サーバーではライブサービスのアップデートがすべて他サーバーと同様に実施されます。また、オリンピアード関連の新たな大きな動きも検討されておりまして、詳細はまだお話しできませんが、ほかにもさまざまな施策を検討しています。楽しみにしていただければと!
両サービスの他アップデートをまとめてチェック!
以下、インタビュー当日に実際にプレイできたものも含めて、ライブサービスとクラシックサービス、それぞれの2018年6月7日アップデートの要素をダイジェストで紹介していく。多岐に渡るコンテンツの中で気になるものがあれば、ぜひ実際にプレイして確かめてみてほしい。
・ライブサービス:新規エピソードクエスト
“アスタチン精製所”“ヘリオス:没落した皇帝の玉座”“エティナ大神殿インスタントダンジョン”の3つを対象とした、セブンサイン最終章が展開する。このエピソードクエストを完了すると、新たに1パーティー向けのエティナ大神殿インスタントダンジョンに挑めるようになる。
・ライブサービス:新狩り場の追加とリファイン
ライブサービスに追加される新狩り場“アスタチン精製所”(入場制限なし、推奨レベル103~105)では、キャラクターの特性やソロ、パーティーといったプレイ形式に合わせて選べるエリアが複数用意されている。狩りを続けていると一定確率で“アスタチン エネルギー”が発声し、ソロ専用のレイド(3種類からランダム)に挑戦できるようになる。
もうひとつ、いままで目立たなかった狩り場“サイレントバレー”にはリファインが実施され、デーモン族のノンアクティブモンスターが主体の狩り場に生まれ変わる。推奨レベルは95~96だ。巨人族と魔法生物で構成されていた以前と比べ、効率のいい狩り場になるとのことだ。
・ライブサービス:新規インスタントダンジョン追加&リファイン
上記のエティナ大神殿に加えて、新たなインスタントダンジョンとして“フレヤ極寒戦”、“フリンテッサ:最後の王陵”、“ヘリオス:没落した皇帝の玉座”の3つのインスタントダンジョンの追加とリファインが行なわれる。なお、フレヤとフリンテッサからは、新アクセサリーの天使のネックレスを入手できる可能性がある。
・ライブサービス:“胞子の海”の大幅リファイン
胞子の海のマップが大きくリファインされ、ソロ向け、パーティー向け、レイドエリアの3つで構成される、推奨レベル106以上の高難度マップとなった。フィールドレイドの“オルフェン”にも大きな変更が入り、天使のイアリングをまれに手に入れられるようになっている。
・ライブサービス:勢力拡張
勢力ランクと勢力クエストが拡張され、新規のデイリークエスト2種と、1回限りのクエスト3種が追加される。さらに新たに“勢力レイド”が追加され、その討伐報酬として勢力の友好度を上げられるようになった。
・ライブサービス:その他
上記のほかにも、さまざまなインスタントダンジョンやレイドボスなどに細かな調整が入る。その内容は、以下の通りだ。
シーレンの祭壇
(入場レベルを101から103レベルに調整、入場レベルの上昇に伴いモンスターのレベルをアップ)
メッサリア城砦内郭
(入場レベルを低下、メッサリア城砦外郭と同じ100レベルに調整)
エンブリオ軍団指揮所
(一部モンスターの攻撃力とスキル使用確率の低下)
ミスティック酒場
(各ボスの攻撃力と防御力の低下)
スパシア極限戦
(入場レベルを103から104レベルへ調整)
ワールドレイド エティス バン エティナのバランス調整
(ボスを含むすべてのモンスターのバランス調整)
経験値テーブルの調整
(99レベル以降の経験値テーブルの緩和が行なわれ、より育成しやすく調整)
・クラシックサービス:セブンサイン
前回のアップデートで追加されたセブンサインダンジョンの一部に引き続き、ライブサービスではおなじみの“リリス”と“アナキム”が登場する。また、封印されていたダンジョン“凶星のカタコム”と“使徒のネクロポリス”が実装される。
・クラシックサービス:ザケン インスタントダンジョン
前回実装されたアンタラスのインスタントダンジョンに続き、ザケンのインスタントダンジョンが追加される。1週間に1回挑戦できるこちらのダンジョンで出現するザケンは、ワールドレイドと行動こそ同じだが、攻撃力と防御力は低くなっている。
・クラシックサービス:ゴダード 領地開放
“ゴダード領地”の4つの狩り場が開放され、いずれも78~82レベルの高レベル向けの狩り場となっている。
・クラシックサービス:スキルバランス調整
さまざまなスキルにバランス調整が入り、基本的には上方修正ばかりとなっているため、各キャラクターとも今までよりも戦いやすくなっている。こちらは非常に多岐に渡るため、公式サイトでチェックしていただきたい。