『Detroit: Become Human』などを手掛けるフランスの開発会社Quantic Dream。2003年にQuantic Dreamに参加して以来、約15年にわたってスタジオの成長を間近で見守ってきたギョーム氏に、現在ではともに共同CEOを務めているデヴィッド氏の印象や、これまでスタジオが歩んできた歴史について、たっぷりとうかがった。

 『HEAVY RAIN -心の軋むとき-』(以下、『ヘビーレイン』)など、インタラクティブに物語を体験するアドベンチャーゲームを手掛けてきたフランスの開発会社Quantic Dream。彼らが総力を挙げて作り上げた最新作『Detroit: Become Human』(以下、『デトロイト』)がいよいよ2018年5月25日に発売される。ファミ通では、世界中から高い期待を集める本作の発売に先立ち、Quantic Dreamへ訪問し、独占取材を行った。

 スタジオの細部までお届けするスタジオツアーについては、週刊ファミ通2018年5月31日号の52ページにおよぶ総力特集を読んでいただきたいが、今回、ファミ通.comでは、『デトロイト』の発売前後に合わせて、Quantic Dreamの主要スタッフへのインタビューを連日お届けしていく。その第一弾となるのは、Quantic Dreamの共同CEOであり、『デトロイト』のエグゼクティブプロデューサーも務めるギョーム・ド・フォンドミエール氏。ゲームの制作から会社の運営までこなし、スタジオを幅広く支えるキーマンは、これからのQuantic Dreamをどう見ているのだろうか。

ギョーム・ド・フォンドミエール(文中はギョーム)
2003年にそれまで運営していた3DCG会社Arxel Tribeを売却し、2003年よりQuantic Dreamに参加。現在は創業者のデヴィッド・ケイジ氏とともに共同CEOを務める。『デトロイト』での役職はエグゼクティブプロデューサー。

15年にわたって築き上げたデヴィッド氏との関係性

――デヴィッドさんとは長年いっしょにゲーム制作に携わっていらっしゃいますが、ギョームさんから見たデヴィッドさんは、どのような人なのでしょうか。

ギョーム デヴィッド・ケイジという人間は、大きなビジョンを持ったゲームクリエイターだと思いますし、ストーリーテラーだと思います。彼のすばらしいところは、強いビジョンを持っているところです。そして……あれほどずっと仕事をしている人には、あまり出会ったことがありません(笑)。やりたいことを突き詰めて、あそこまでの地位に上り詰めているので、ともにチャレンジしていく気概がないと、いっしょに仕事をすることは難しいとも言えますね。

Quantic Dream創業者にして、ギョーム氏と共同CEOを務めるデヴィッド・ケイジ氏。作品のディレクションやシナリオも手掛けている。

――パートナーとして興味を持った部分はどこでしょうか?

ギョーム 私はQuantic Dreamに参加する前に、それまで運営していた会社を売却したのですが、その後は自分で別のゲーム開発スタジオを作るつもりでいました。だから、最初にデヴィッドからスタジオに誘われたときも、「Quantic Dreamには興味がない」と伝えていて。しかし、デヴィッドと何度も話しているうちに、「何かとてもおもしろいことができそうだ」と感じて、いっしょに仕事をすることに決めたんです。実際、彼と仕事をしているだけでいい刺激を受けられるので、間違ってはいませんでしたね。

――デヴィッドさんのようなこだわりが強い方ですと、仕事のうえで衝突することもあるのでは?

ギョーム デヴィッドと私は得意なことは異なるものの、とてもいいマッチングではないかと思っています。たとえば、一生懸命に努力をするところはお互い似ていますが、私は合理的な考えをするタイプなのに対して、彼は本当の意味でのクリエイターで、決して枠には収まりません。私にはない何かを発明する可能性を持っています。もちろん、意見がぶつかることもありますが、お互いに一歩引いたり、相手の意見を受け止めたりするので、争うことは多くはありませんね。とある目標があった場合に、どのようなプロセスを経てたどり着くか、というところでは、お互い異なる意見を出したりしますが、つねに健全な意見の交換ができているので、最終的にどこに行きたいかという目標は、完全に合意しています。

トレーラー制作からサポートまで

――ギョームさんは、ゲーム開発ではどのような業務を担当されているのでしょうか?

ギョーム 各チームのリーダーとミーティングをして、提案されるアイデアを吟味する立場です。ゲーム制作と少し離れたところでは、プロジェクトを実現するための大部分と、経営の部分を担当しています。パブリッシャーに対して、社員全体の状態を含めた会社のことを説明するのも私の業務です。

――では、外部のクリエイターとの交渉もギョームさんが直接行っているのですね。

ギョーム ええ。クリエイターどうしの関係を維持するのも自分の役目なので、役者さんや作曲家などを手配することもありますよ。トレーラーも私が作っています。

――えっ! ギョームさんが、トレーラーの制作にも関わっているのですか。

ギョーム トレーラー制作は非常にクリエイティブな仕事であり、プロモーションにおいても大切です。だからこそ、自分にとって重要な役目だと感じています。映像の編集からクレジットまで、すべて私が監修を行っていますね。

――……あらためてうかがってみると、ものすごく多岐にわたる作業を担当されているのですね。

ギョーム たしかに……そういう意味では、私はQuantic Dreamきっての便利屋だと言えますね(笑)。

――それにしても、会社のCEOが、映像の編集といった作業まで兼任されているのは珍しいケースなのではないでしょうか。

ギョーム 小さい会社なので、毎日お金まわりのことだけを見ていたら飽きてしまって(笑)。気付いたら、いろいろなことに手を伸ばすようになりました。ゲーム作りが好きなんでしょうね。この業界で25年仕事をしてきたので、その経験を活かして、従業員にアドバイスをすることもあります。たとえば、外注の担当者は自分のすべきことを理解していますが、正しい外注のプロセスや選びかたまでは気が回っていないこともあります。そうしたときに、助言をするんです。

――円滑にするための立ち回りもされているのですね。

ギョーム 役者とスタッフの関係性を構築していくことも重要になってきますから、外注のやり取りは重要になるのです。キャスティング自体は、ディレクターであるデヴィッドが深く関わりますが、私には役者さんの事務所とのやり取りについての経験がありますし、失敗したこともたくさんあるので、その立場からアドバイスができるわけです。

――そうなると、さらにスーパーバイザーの肩書きも付いてしまいそうですね。

ギョーム 起こりうる問題を事前に対策しながら、うまく進めていくのが好きなんですよ。ゲームみたいでしょう(笑)。

Quantic Dreamのスタジオに飾られているマトリョーシカ。ギョーム氏とデヴィッド氏のイラストが描かれ、中には歴代作品のイラストが描かれた小さなマトリョーシカが入っている。