『Hacknet』、『Hollow Knight』のクリエイターがインディー制作の現場を語るセッションを実施【BitSummit Volume 6】

2018年5月12日・13日に京都勧業館 みやこめっせで開催されたインディーゲームの祭典“BitSummit Volume 6”。同イベントの初日に行われたセッション“Indie Heroes”で、現代主流となっているインディーゲームデザインと、プレイヤーが何を望んでいるのかといった議題をもとにしたトークセッションが行われた。

 2018年5月12日・13日に京都勧業館 みやこめっせで開催されたインディーゲームの祭典“BitSummit Volume 6”。同イベントの初日に行われたセッション“Indie Heroes”で、現代主流となっているインディーゲームデザインと、プレイヤーが何を望んでいるのかといった議題をもとにしたトークセッションを開催。

 本セッションのゲストは、『Hacknet』を手掛けるインディーゲームデザイナー/開発者のマシュー・トロッビアーニ氏と、『Hollow Knight』を手掛けるインディースタジオ、Team Cherryに所属するアリ・ギブソン氏、ウィリアム・ペレン氏の3名。いずれの作品も、インディーシーンで高評価を得ている作品だが、これらの作品のアイデアやコンセプトはどこから出ているのか? ゲスト陣に質問が投げられたところでトークセッションがスタートした。

写真左:ウィリアム・ペレン氏、写真中央:アリ・ギブソン氏、写真右:マシュー・トロッビアーニ氏

 この質問に対しアリ氏は「ゲームのアイデアを生み出すきっかけですが、まずはゲームジャムに参加するという方法があります。また、自分たちが大好きな作品を振り返ってみて、自分が遊んでみたいものを考えることもあります」と回答。マシュー氏もおなじように「ゲームジャムはゲームのインスピレーションを得るうえで、すごく役に立ちます」とコメント。続けて「そこで生まれたアイデアを、時間をかけて磨いていくことで、より洗練されたゲームになっていくはずです」と、両氏ともにゲームジャムへの参加が、大きなインスピレーション発見の場になっていると説明していた。

 続いての質問は、インディー作品の開発では当初想定している時間よりも長い時間がかかる作品が多いが、『Hacknet』と『Hollow Knight』は、スケジュール通りに進行したのか? といったもの。
 『Hacknet』は、制作に3年ほどかかったそうだが、時間をかけるほどにいい作品になっていったので、スケジュールの延長に関してマシュー氏はあまり気にしていないとのこと。『Hollow Knight』については、当初は8ヵ月でのリリースを想定していたものの、そこからよりよい作品にするためキックスターターでクラウドファンディングを実施。結果的に制作期間は2年ほどかかったそうだが、マシュー氏と同じように作品の仕上がりに満足しているそうだ。

 つぎに質問者から投げられたのは、昨年Steamが導入した新たなゲーム販売システム“Steam Direct”について。司会者は、この“Steam Direct”によって、製作者はSteamのマーケットにタイトルをリリースしやすくなったが、その反面タイトル数が増え、自分の作品が埋もれやすくなってしまうのではと指摘。そこで、自分の作品をどのように目立たせるのかを聞いてみたところ、マシュー氏は「これが適切な回答かはわかりませんが、最終的にはいいゲームを作ることです」と回答。「自分が作った作品と似たものがたくさんあるかもしれませんが、その中でもいい作品でさえあれば、最終的に視認性もあがり、売上に繫がると思います」(マシュー氏)と、もっともな答えを披露。
 ウィリアム氏もこの意見に同調のようで「私たちはゲームを作るだけでなく、遊ぶことも大好きなので、“Steam Direct”で遊べる作品が増えているのはうれしいですね。この中で、視認性を高めるためには、やはりいい作品を作るしかありません。これは“Steam Direct”が始まる前でもあまり違いはなかったと思います」と、やはり第一に優れた作品を作ることが、市場の中で目立つことに直結するようである。

 今度は、ゲームのストリーミング配信に関しての話題。現在はゲームのストリーミングが流行っており、有名実況者が大きな影響力を持っているが、この現状についてどう思っているのか。アリ氏は、「私たちは非常に小さなチームで開発をしており、メディアにも取り上げられることがなかったのでストリーミングをやっている友人にお願いして、多くの人に知ってもらうことができました。また、友人以外の配信者も話に乗ってきてくれた」と、話題を集めるうえでストリーミングは有効な手段であったと力説。
 反対にマシュー氏は「『Hacknet』はほとんどがテキストベースでゲームが進行する作品なので、ストリーミング配信をしてもあまりおもしろくないかもしれません。ただ、配信を見る人がいなくてもゲーム自体は成功しているので、ほかにもプロモーションの手段はあるということを覚えておいてください」と、ゲームの性質によってはストリーミングに向かず、ほかの手段を模索する必要があることを指摘していた。

 最後に、インディー作品を開発するうえで気をつけるべき点について質問がなされると、「いちばん大きな落とし穴は、自分のゲームが好きすぎて欠点が見えなくなること」とマシュー氏。「長い時間をかけてゲームを作っていると、その作品が好きになりすぎて、悪いところが気付きにくくなります。結果、そのままリリースしてダメになってしまうという話をよく聞きます」と、俯瞰的に自分の作品を見て、必要があれば大胆に作り直す必要もあること、そのための判断を的確にすることだと指摘。
 ウィリアム氏は、「最初から長大な作品を作ろうとするのは、あまりよくないかもしれません。私たちは最初はコンパクトな作品を作ろうとしていましたが、予算と労力が余っていたので、途中から大きな作品にシフトしていきました。ただ、どの段階で止めても、それなりの作品はリリースできていたと思います」と、実現が困難そうな目標値は設定せずに、自分たちの開発時に準え、状況に応じて対応をしていくやり方がいいのではと語っていた。
 いずれも共通しているのは、盲目的に作品作りにのめり込んでしまわないようにすること。何でもいいからゲームを作ってリリースすればいいということではなく、途中で状況判断をして、必要があればやり直したり方向転換をする勇気も必要であるということだ。大きな会社での開発と異なり、チェック機構をもたないインディー開発だからこそ、自信が俯瞰的な立場で作品を見渡せることが、優れたインディータイトルを送り出すために必要なことなのかもしれない。