“JeSU”はこれからどう動くのか?……日本のesportsシーンとJeSUの今後について、岡村会長に聞く

2018年5月10日、日本eスポーツ連合(以下、JeSU)の公式サイトに“ジャパン・eスポーツ・ライセンス”規約が公開された。それを受けて、JeSUの岡村秀樹会長にインタビューを行ったので、その模様をお届けする。

 2018年2月1日に発足した、一般社団法人日本eスポーツ連合(以下、JeSU)。「日本におけるeスポーツの振興を通して国民の競技力の向上及びスポーツ精神の普及を目指し」(JeSU設立趣旨より)、その一環としてプロライセンスの発行と大会認定などを行うということで、ゲーム業界の内外から大きな驚きと反響があった。その後開催された“闘会議2018”や各種公認大会、JeSU設立以降のさまざまな意見などを参考に、今回、改めてプロライセンス規約が明文化された。そこで、JeSUで会長を務める岡村秀樹氏に、日本のesportsシーンの現状について、また設立から約3ヵ月が経過したJeSUの取り組みや今後について話を聞いた。
(聞き手:週刊ファミ通編集長・林 克彦)

※本インタビューは、週刊ファミ通2018年5月24日号(2018年5月10日発売)に掲載した内容に、加筆・修正を施したものです。

一般社団法人日本eスポーツ連合 会長
岡村 秀樹氏

esportsが産業として成功するため、しっかりとした基盤整備を

―― JeSU創立から約3ヵ月、“闘会議”でプロライセンスが発行され、“セガフェス”で『ぷよぷよ』が新たに公認タイトルになるなど、さまざまな動きがありました。国内外からさまざまな反響があったのではないでしょうか。
岡村秀樹氏(以下、岡村) 反響は非常に大きかったですね。海外でesportsが盛んだという情報は流れてきましたが、国内でまとまったニュースとして取り上げられることは、あまりなかったと思います。JeSUの誕生は、esportsがひとつのスポーツジャンルとして、本格的に始動するととらえられたのではないかと考えています。

―― JeSUはその成り立ちが、海外等と比較して特殊なことでも注目を集めています。
岡村 そうですね。日本のIP(知的財産)ホルダーのほぼ9割が所属しているCESA(一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会)とJOGA(一般社団法人日本オンラインゲーム協会)の両団体が全面協力し、もともと存在していたesportsの3団体が統合されたのがJeSUです。IPホルダーと事業推進者が一丸となってひとつの団体を作ること自体が異例なので、海外でプレゼンを行った時なども非常に驚かれました。今年、ジャカルタで開催されるアジア競技大会では、参考種目としてesportsが採用されますし、esports業界としてだけでなく、新しい産業が勃興することに向けた、大きな転換点を迎えていると言えるかもしれません。

―― JeSUの立ち上げ時、きびしい声も聞こえてきたと思いますが、そのあたりはどのように捉えていらっしゃいますか?
岡村 我々がまずやろうとしていることは、esportsという産業が今後しっかりと展開していくための基盤整備です。日本で産業として進めていくのであれば、日本の法令などに対して完璧に問題のない状態であることが非常に重要です。基本的なルールを定めていき、社会的にふつうだと思われるような一般化、普遍化を進めていきたい。その理解には、ある程度時間もかかると考えています。

―― そういった活動方針の理解を、これから浸透させていくわけですね。
岡村 プロライセンスに関しても、いまは賞金付き大会のハードルをクリアーするためのライセンスだと理解されているケースがありますが、決してそれだけではありません。“プロ”という概念は、秀でた技量を持った人に与えられるわけですから、その実力を証明するためのものです。また、国際大会に選手団を派遣する際に、ライセンスによってJeSUが強化選手を把握できるということも、とても重要なことです。そういった賞金以外の目的に対する理解も広めていきたいですね。

―― 実際に選手と話をする機会もあったかと思いますが、反応はいかがですか?
岡村 「わかりやすくなった」と言っていただける方が多かったです。これまでは、海外で大会があっても、現地法の制約で日本から参加できないことがあったのですが、JeSUができたことで日本代表が参加できるようになり、すごくうれしいという話も聞いています。「ライセンスによって技量が認められたことが単純にうれしい」という方もたくさんいらっしゃいました。

―― プロライセンスという形で自分の実力が認めてもらえると、選手側もプロとしての誇りが持ちやすくなりますね。
岡村 そうですね。それから、JeSUの目標のひとつに、JOC(日本オリンピック委員会)への加盟があります。加盟することによって、スポーツカテゴリとして、社会からesportsが正式に認められることになります。そうすれば、esportsに関わる選手たちの社会的な地位向上にも絶対に役立つと思っています。我々の使命は、利益を追及することではなく、esportsに関わる事業者や選手たちがつぎの新しいステージに行くための手伝いをすることなのです。そのためにはJeSUとして何をすればいいのか、具体的な方法を考えて、実行していきたいと思っています。

―― これまで公開されていなかった規約がJeSUのホームページに掲載されました。そもそも最初に規約がすべて公開されていなかったのはなぜでしょうか?
岡村 物理的に間に合わなかっただけです。実際には、“闘会議”などですでにライセンスも発行されていて、そこに関わる人たちには、当然ながらきちんとした説明をしています。とくにIPホルダーを中心に、大会を主催する人たちに対しては、しっかりと説明をしてきました。ただ、規約というのは、選手やIPホルダーの要望も聞きながら、公正さを保ちつつ、ブラッシュアップを重ねて完成度を高めていくものです。そういう部分で少し時間をいただきたかったことがあって、諸々調整した結果が今回公開した規約となっています。

“闘会議2018”では、初日の2月10日に岡村会長と浜村弘一副会長によるトークショウが行われた。

<JeSU ライセンス規約> ※抜粋

●プロeスポーツ選手およびプロライセンスの定義
プロeスポーツ選手とは、ゲームプレイヤーにおけるプロフェッショナルであるという自覚を持ち、スポーツマンシップにのっとり、国内eスポーツの発展に寄与し、ゲームプレイの向上に日々精進努力をするものである。
プロライセンスは、上記の条件に制約するものに、発行されるものとする。
●ライセンスの種類と名称
・ジャパン・eスポーツ・プロライセンス……15歳以上で、義務教育課程を修了し、20歳未満は保護者の同意が必要。チーム内に一人でもライセンス保持者がいれば、プロチームとして賞金付き大会に参加できる(※ただし、賞金はライセンス保持者にのみ授与される)。
・ジャパン・eスポーツ・ジュニアライセンス……13歳以上15歳未満で、義務教育課程を修了していないが、プロライセンスを発行するに値する選手には、保護者の同意のもと、ジュニアライセンスを発行。プロライセンス保持資格年齢に達した場合、本人と保護者の意思確認のうえ、プロライセンスを発行する。ジュニアライセンス保持者には、賞金は渡せないものとし、賞品を渡すことができる(※ただし、金券類は不可)。
・ジャパン・eスポーツ・チームライセンス……法人格があり、かつIPホルダーが推薦したチームの中から、ライセンス発行妥当と認めたチームに、チームライセンスを発行する。チーム内にライセンス保持者の有無は問わない。
●ライセンス保持者について
プロとしてJeSU公認大会に出場する資格を有する。プロとして出場した大会において、プロとしての特典(賞金など)を獲得できる。アジア大会など、JeSUが公認大会において日本代表として、国際大会に出場する資格を有する。
●ライセンスの発行方法
大会規約に基づき、ライセンス取得資格を持った選手に授与する。例外として、IPホルダーは、過去実績を含め、国内外の大会で優秀な実績を残した選手のうち、ライセンス取得にふさわしい選手を特別枠として推薦できる。その中から、JeSUが妥当と認めた選手はライセンス取得資格を有する。また、海外の大会において、事前にIPホルダーと相談のうえ、ライセンス発行が適当な大会と判断した場合、プロライセンスを発行することも可能。
プロライセンス申請時に、反社会的勢力の排除等に関する誓約書を提出。また、ドーピングの禁止、納税方法、競技におけるスポーツマンシップなど、eラーニングによる講習を義務付ける。
ライセンス発行時には、発行手数料を支払う。※プロライセンス:5000円、ジュニアライセンス:3000円、チームライセンス:5000円×チーム内の人数ライセンスの更新は、発行から2年ごとに行い、更新時には、発行手数料と同額の費用を支払う。
ライセンス発行の対象は、“国籍を問わず、日本在住者である”とする。

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