『テリトリーモンスターズ』クリエイターインタビュー完全版 新たな位置情報ゲームがスマホゲーム界に旋風を巻き起こす!

週刊ファミ通2018年5月24日号(2018年5月10日発売)では、2018年4月27日にAndoroidとiPhoneでサービスが開始された、オンライン位置情報ゲーム『テリトリーモンスターズ』の企画・開発陣インタビューを掲載した。その完全版をお届け!

 週刊ファミ通2018年5月24日号(2018年5月10日発売)では、2018年4月27日にサービスが開始された、オンライン位置情報ゲーム『テリトリーモンスターズ』の記事を掲載。本稿では、記事内で実施した企画・開発陣へのインタビューの完全版をお届けする。

プロフィール

栢孝文(かやたかふみ)

『テリトリーモンスターズ』企画・原案 栢孝文氏(文中は栢)  1999年にセガ・エンタープライゼスに入社し、『チューチューロケット!』の企画原案とディレクションを担当。2002年にSignalTalk Corporationを設立し、オンライン麻雀ゲーム『Maru-Jan』を開発。

日野昭宏(ひのあきひろ)

『テリトリーモンスターズ』開発・運営 日野昭宏氏(文中は日野)  1989年に日本アートメディアを設立し、ゲームボーイ版の『アレサシリーズ』や『SDガンダムGNEXT』のディレクションとメインプログラムを担当。その後、日本アートメディアを退社し、フリーランスで培った経験を活かして月島ファクトリーを設立した。

いままでのゲームにはなかった感覚を味わえる位置情報ゲーム

――『テリトリーモンスターズ』のアイデアを思いついたきっかけは何だったのでしょうか?

 モンスターを集めることが、ゲームの主目的ではなく、「昆虫採集のようにモンスターを並べて鑑賞したり、自宅や街に配置してモンスター軍団を作って、ほかのプレイヤーと戦う、そんなゲームを作ったらおもしろいだろうな」と思ったのがきっかけでした。

――共同プロジェクトの相手として月島ファクトリーを選んだ理由を教えてください。

 月島ファクトリーのオリジナリティーのある作品を開発する姿勢と、100万人規模の人数を捌けるサーバーの技術を持っているところに惹かれました。

日野 一度お会いしただけで決めてもらえたので、正直驚きました。栢さんの企画を聞いたときは、単純におもしろいなと思いました。『テリトリーモンスターズ』のプロジェクトが決まってからは、社内でAR(拡張現実)のソーシャルゲームを遊び込んでARゲームの内容を把握しつつ、栢さんの企画の内容を実現するためにチームを作りました。

──開発にあたって苦労したところや工夫したところを教えてください。

 地図上に好きなモンスターを並べるからには戦わせたいと思ったんです。でも単に戦闘があるだけではおもしろみに欠けるので、陣地の取り合いという要素を入れて、自宅や会社、学校で陣地を取り合う、いわゆる縄張り意識みたいなものを感じ取れるものにしました。あとは、ライトにプレイする方が遊ぶときに、複雑で難しいルールだととっつき辛いので、“相手より陣地を多く取る”、“囲めば大ダメージ”といったシンプルな遊びかたを軸に企画を立案しました。

日野 開発面で苦労したのは、“地図データをいかにコストを抑えて表示するか”と、“リアルタイムで大人数を対戦させるためのサーバーの準備”の2点でした。地図は、ゼンリン地図やグーグルマップなどを考えていたのですが、企業が使うと莫大なコストがかかってしまうので、オープンストリートマップというものを採用しました。ここはオープンライセンスなので、コピーライトを入れるだけで使えるんです。対戦サーバーは、モノビットエンジンのスタッフの知り合いにお願いして、モノビットエンジンで独自にプログラム組んで対戦サーバーを構築しました。この2点は、本作の要であり、クリアーしないと栢さんの企画を実現できないので、そこのハードルを超えるのにだいぶ苦労しました。それと開発中に驚いたのが、チェックの頻度です。

日本全国の地図上で陣地を奪い合うことができる。

──チェックが多かったということですか?

日野 いえ、その逆でチェックがまったく入らなかったんですよ。わたしが経験した受託の開発だと、週1回の頻度でゲームのチェックが入るのですが、栢さんの場合は月1回程度でした。

 ときどきダウンロードして、チェックするぐらいでしたね。

日野 でもチェック頻度が少ないほうが、プレッシャーがかかって、いつも以上に一生懸命作ることができたと思います。ある意味、新しい受発注の形だと思いました(笑)。

──あえてプレッシャーをかけるのが狙いだったんですか?

 狙いというか、私の悪い癖で、関わるとものすごく細かいところもまでチェックして、全部コントロールしたくなるんですよ。できれば数時間おきに関わりたいぐらいです(笑)。でも今回は、それぐらい密にチェックしてしまうと、私の色に染まってしまい、月島ファクトリーの持ち味を阻害してしまうかなと思い、チェックを月1回程度に抑えることにしました。

──プレッシャーはかなりのものになりそうですね。

日野 もちろん、プレッシャーはありましたが、それだけ栢さんがわたしたちを信頼してくれているということなので、わりと自由に作らせていたただきました。でも自分たちが作ったことがないものを作るときって、成功させるために、ほかのゲームと似通った要素を取り入れる誘惑にかられるんです。

──「わかりやすいから、○○のゲームのようなシステムを入れたい」みたいな感じですか?

日野 そうです。売上を確保するためや、大きな失敗を起こさないためにも無意識のうちにそういう思考が生まれてくるんです。本作の開発では、そこを極力考えないようにし、ほかのゲームに左右されずにオリジナリティーを貫き通すことを意識して開発に臨みました。

 日野さんならオリジナルなものに仕上げてくれるだろうと思っていたので、開発された『テリトリーモンスターズ』を見たときは、月島ファクトリーを選んでよかったと思いました。

──『テリトリーモンスターズ』と既存の位置情報を使ったゲームとの違いを教えてください。

 自分で育成したモンスターを自宅や学校、会社の周りに配置し、守りを固めて城のようなものを作り、陣地を奪おうとする敵と戦うことになります。ひとり、または友人や同僚といっしょにその場所を守って遊ぶことで、場所への思い入れが生まれることが本作の魅力であり、特徴だと思います。

日野 モンスターにはアタッカー、ディフェンダー、サポーターというタイプがあり、それによって攻撃力や防御力などのステータスが変化します。さらに、戦闘を有利に進められるさまざまな効果のスキルも存在します。プレイヤーは、フィールドの戦況に応じて、タイプとスキルをうまく組み合わせながら陣形を構築し戦っていくという、シミュレーションゲームのような楽しさも本作の魅力です。

 また、移動ルートを考えてフィールドのマスを自軍の色に塗り換えながら、敵をせん滅していくというパズル的な楽しさもあります。敵モンスターを囲むことで発動する、テリトリーブレイクを使った戦略を考えるのもおもしろいと思います。

プレイヤーは赤、青、緑の3つの国いずれかの勢力に所属し、同じ国のプレイヤーといっしょに協力しながら、現実世界の地図上で陣地を奪い合っていく。

フィールドにいる敵勢力のモンスターをすべてせん滅すると勝利となる。さらに、フィールドを移動してマスを自国の色に塗り換え、ひとつでも多くのマスを確保するとそのブロックを占領できる。

──配置したモンスターが敵と接触すると、自動でバトルが発生するのでしょうか?

 キャプチャーされている場所以外での戦闘はすべてオートで行われます。自分で操作できるのは、現在キャプチャーされているエリアの戦闘のみです。

日野 配置したモンスターが負けると、体力がゼロの状態でプレイヤーのもとに帰ってきます。 しかし、モンスターは戦闘で勝利することで経験値を獲得するので、帰ってきたモンスターも経験値を獲得している場合があります。

──キャプチャーできるエリアはどれくらいなのでしょうか?

日野 縦横5ブロックずつの計25ブロックに分かれていて、そのブロックひとつひとつを陣地として奪い合うことができます。

──自分のいる場所と異なる地域をキャプチャーすることはできるのでしょうか?

日野 キャプチャーできるエリアは、自分がいる場所のみですが、新たにキャプチャーを行わない限り、そのエリアでずっと遊ぶことができます。

 その場所に行かないと遊べないのが、位置情報ゲームのおもしろいところですが、ゲームによってはその場所に居続けないと遊べないものもあります。本作の場合は、自分の好きなタイミングでその場所を訪れてキャプチャーすれば、ほかの場所に移動してもキャプチャーしたエリアでいつでも自由に遊ぶことができるのが強みだと思います。

日野 たとえば、通勤や通学で新宿駅を通過するときに、キャプチャーしておけばその場所にいなくても新宿駅周辺でつねに戦うことができます。もちろん戦況もリアルタイムで表示されます。

──リアルタイムということは、敵の動きかたによって戦略が大きく変わってくるのでしょうか?

 そうですね。回復モンスターのまわりに攻撃力と防御力の高いモンスターを置いて、城砦のような配置を築いたり、移動力の高いモンスターで包囲陣を展開したり、端にモンスターを置いて囲まれないような布陣を作ったりと、将棋や囲碁のような戦略が生まれると思います。

日野 ゲームに慣れてくると、どうすれば効率よく戦えるか、陣地を奪えるかという考えが生まれると思います。そこでさまざまな戦略を生み出し、それを駆使して全国のプレイヤーとしのぎを削るのも本作のおもしろいところです。

 プレイヤーの皆さんは、我々が想定している以上の戦略や遊びかたを編み出すと思います。以前『チューチューロケット』を担当していたときに、プレイヤーが作ったパズルを投稿してもらうという企画があったのですが、わたしが想像している以上のクオリティーと難度のパズルが全国から送られてきて、驚かされたことがありました。恐らく本作でも我々が想像できないような戦略が生まれる気がします。

──インターネットを介して、さまざまな戦略の情報が飛び交うでしょうね。本作では、テリトリーブレイクという要素があるので移動力がかなり重要な気がするのですが、どうなのでしょうか?

日野 たしかに重要ではありますが、移動力が高いモンスターは攻撃力などのステータスが低いため、移動力が絶対というわけではありません。そこはほかのモンスターと組み合わせて弱点を補いながら、または長所を伸ばしながら戦っていくことになると思います。

 ちなみにテリトリーブレイクは、正方形で囲む必要はありません。敵の配置に応じてさまざまな形でテリトリーブレイクが発動します。

──相手の動きを見てから移動したほうが有利な気がするのですが……。

日野 いえ、積極的に動かしていったほうがいいと思います。モンスターを移動させると待機時間が発生しますが、その時間は非常に短いので、どんどん動かして陣を展開していくほうが待つよりもすぐに反撃の態勢を取れると思います。

敵を移動ルートで囲むと、その範囲内にいる敵を一斉に攻撃するテリトリーブレイクが発生し、大ダメージを与えられる。しかもテリトリーブレイクで囲ったマスはすべて自国のものになるのだ。

──なるほど。それなら積極的に動かしたほうがいいかもしれませんね。ですが、けっこう忙しくなりそうですね。

 プレイヤーが密集しているエリアは、けっこう忙しいと思います。

日野 ほかのプレイヤーとリアルタイムバトルを楽しみたい場合は、つねに人がいるエリアをキャプチャーして、ひとりでコツコツ遊びたい場合は、自宅周辺や人の少ないエリアをキャプチャーしておくのがオススメです。

──場所によっては陣地の取り合いが激しそうですね。

 新宿や渋谷といった東京の中心部は激戦区になり、秒単位で陣地の奪い合いが発生するかもしれません。ですので、激戦区の完璧な占領は難しいと思います。でも一瞬でも占領に成功すると、そのブロックにクリアースタンプがつきます。

日野 スタンプは、自分がそこのブロックを占領したという印で、アチーブメント(トロフィー)的な要素です。再び敵にそのブロックを奪われても、このスタンプが消えることはありません。

──地図をスタンプで埋めていくという楽しみもあるんですね。

日野 「新宿駅周辺はすべてスタンプを押せたので、つぎは原宿駅や渋谷駅に行こう」みたいな遊びもアリだと思います。

──地図と位置情報を使ったゲームならではのやり込み要素ですね。ちなみに本作は、ソロプレイは可能でしょうか?

日野 プレイヤーが少ない地域にはNPCが頻繁に出現します。ひとりでプレイしながらモンスターを育成し、周囲の陣地を広げていくことができるんです。反対にプレイヤーの多い地域は、NPCの出現頻度が低く設定されています。

 フィールドで遊ぶタイプのオンラインゲームってすごく強いプレイヤーと、そうでないプレイヤーの差が激しいので、ゲームについていけずに挫折してしまう人もなかにはいると思うんです。でもこのゲームなら、人の少ないエリアであればNPCが多く出現するので、それを倒して「自分の家のまわりでは、俺がいちばん強い!」みたいな遊びかたが楽しめると思います。そういう風に過疎化している状況をプラスに働くようにする仕組みがあるのも、このゲームの強みだと思います。

──ということは、プレイヤーの少ない地方のプレイヤーでも楽しめるのでしょうか?

 はい。陣地を占領すればするほど、報酬をゲットできるので、プレイヤーが少ない場所のほうが、黙々と遊び込むことができると思います。ただし、強いプレイヤーと戦闘したほうが得られる経験値が多いので、たまには激戦区に足を運んで育成したモンスターの成長具合を確認してほしいです。

──それなら住んでいる場所に関係なく遊べますね。本作は基本プレイ無料ですが、どういったところに課金要素があるのでしょうか?

 本作の課金要素は、モンスターの体力を回復するアイテムと、ガチャのふたつです。

日野 戦闘で体力を失ったモンスターをボックスに入れると体力が自動的に回復しますが、フィールドに配置しているモンスターは、アイテムを使わないと回復できません。ちなみに、ほかのソーシャルゲームにあるようなスタミナの概念は存在しません。

 体力があるモンスターがいれば、何回でも戦うことができます。それなので、モンスターがいっぱいいる=たくさん遊べるゲームなんです。レベルが低いモンスターでも配置すれば手駒として使えますし、陣地の占領も可能です。

──弱いモンスターも戦力になるのは、既存のソーシャルゲームではなかなか見られないですよね。

 モンスターを育成し、強くしていくのも本作の魅力ですが、強いモンスターが1体いるよりも、弱いモンスターが10体いたほうが何かと便利だと思います。

日野 モンスターは、レベルを上げると進化することができ、モンスターによっては進化先が分岐して属性とスキルが変化することもあります。進化や育成に必要な素材は、フィールドを占領したときに得られる宝箱から入手できます。

一定のレベルに達すると、より強力なモンスターに進化することも可能だ。

(左から)マグエン/マグズリー/ベアレイド
火属性のマグエンは、火のマグズリーか、水のベアレイドに進化させることができる。

──モンスターの育成・収集も楽しめるのはうれしいです。今後、『テリトリーモンスターズ』はどのような展開をしていくのでしょうか?

 全国の主要な駅に複数のマスを占領する巨大なモンスターを配置して、数日にわたって戦うレイドバトルを開催してみたいですね。戦った人全員が報酬をもらえるようにして、忙しい人でも参加できるものにしたいです。また、最後にトドメを刺した人だけがもらえる限定報酬なんかも用意したいです。

日野 『テリトリーモンスターズ』は、レイドバトルのようなイベントとの親和性が高いので、さまざまなアイデアが浮かんでくるんですよ。例えば、山手線の動きと連動したレイドボスを登場させるのもおもしろいと思います。この時間帯であれば、この駅にボスが出現するとか、場所と時間を組み合わせた位置情報ゲームならではのイベントを、どんどん行っていきたいです。

 日本の各県にある物語や伝承と連動したイベントもおもしろそうですよね。1ヵ月単位でイベントを行い、1日目、2日目と、伝承にまつわるモンスターを順番に出現させて、敵がどんどん軍団を築き上げてプレイヤーの前に立ちはだかるみたいな。そういったプロセスを感じてもらえるようなイベントもやってみたいです。

──今後の展開が楽しみです! ちなみにシグナルトークで、現在開発中のゲームはあるのでしょうか?

 『テリトリーモンスターズ』とはまったく異なるジャンルのソーシャルゲームを弊社で開発中で、夏ごろにリリースする予定です。あと、オンライン麻雀『Maru-Jan』は、おかげさまで会員数が100万人を突破し、多くのプレイヤーのかたに遊んでもらっています。じつは現在、『Maru-Jan』の雀荘を作るというプロジェクトが進行中なので、こちらも楽しみにしていてください。

──では、最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

日野 位置情報ゲームとしては、いままでにない要素が盛り込まれており、自分なりの遊びかたを見つけられるゲームに仕上がっています。基本プレイ無料なので、ぜひダウンロードして遊んでほしいです。

 「自宅に配置したモンスターが心配……」、「今夜は会社をひと晩守り抜くぞ」といったように、いままでのゲームにはなかった感覚や遊びを味わえる位置情報ゲームだと思いますので、ぜひこの機会に遊んでいただけるとうれしいです。



(c)SignalTalk Inc./TsukishimaFactory Inc.