2018年5月4日、日本サッカー協会JFAハウス、ヴァーチャルスタジアムにて“明治安田生命eJ.LEAGUE 決勝ラウンド”が行なわれた。ここではその模様をお届けする。

 本イベントはJリーグが主催するプレイステーション4版『FIFA18』のesports大会。3月~4月に行なわれたオンライン予選の通過者に、J1クラブが選出した推薦選手を加えた計15名がクラブの代表選手となり、5月にロシアで行なわれる“FIFA eWorld Cup 2018”のプレーオフへの参加権をかけて戦った。参加選手は以下の通り(カッコ内は代表するJ1チーム。※はJ1推薦選手)。

・きづな(ベガルタ仙台)
・ナスリ(川崎フロンターレ)
・翼(サンフレッチェ広島)
・よしだ(柏レイソル)
・マルコン(ジュビロ磐田)
・オラ(セレッソ大阪)
・かーる(浦和レッズ)
・マイキー(※鹿島アントラーズ)
・ファントム(※FC東京)
・あつや(※横浜F・マリノス)
・青黒豆(※ガンバ大阪)
・アヤックス ボブ(※サガン鳥栖)

『FIFA18』の日本最強が決定&世界へ挑戦! “明治安田生命eJ.LEAGUE 決勝ラウンド”リポート_01
決勝ラウンドを戦う15名。それぞれが代表するJ1クラブのユニフォームを着用して試合に臨む(※15名なのはゲーム内に収録されているクラブが2017年度のJ1クラブなため。2018年にJ2から昇格したクラブは『FIFA18』には未収録)。
『FIFA18』の日本最強が決定&世界へ挑戦! “明治安田生命eJ.LEAGUE 決勝ラウンド”リポート_02
決勝トーナメントの基本ルール。『FIFA18』内のFUTモードを使用し、6分ハーフのシングルイリミネーション、純然たる1発勝負で勝敗が決する。
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実況、解説はかつて『FIFA』シリーズの競技シーンで活躍した岸大河氏(写真左)、羽染貴秀氏(写真右)が担当。

Jのユニフォームを着用したスター選手がゴールラッシュで魅せる

 本大会はパック購入やトレードで好きなサッカー選手を集めてチームを作るFUT(FIFA Ultimate Team)モードで行なわれたため、参加者のほぼ全員が現役のトップ選手および引退したレジェンド選手、“FUTアイコン”が名を連ねるチームを作成した状態で参戦。フォーメーションは中央低めにセントラルMFを2枚置き、両サイドにMFを置く4-4-2が人気。一見すると現代サッカーでは“クラシック”と言えるぐらいスタンダードな布陣だが、『FIFA18』においてはサイドMFにメッシ、デ・ブルイネ、ロナウジーニョといった攻撃に特化したタレントが配されることが大半なため、実質的には4トップのような破壊力を有しているのが特徴的だった。加えてセントラルMFには攻撃時はパスでの組み立てや飛び出しでゴールに絡め、守勢時は強靭なフィジカルが頼りになる、ビエラやフリットといった万能なレジェンド選手が起用されており、アタッカーとの連携で多くのチャンスを作り出していた。

 守備陣で1番人気だったのはGKのデ・ヘア。『FIFA18』では図抜けた能力が設定されているようで、今大会での使用率はなんと100%。最終ラインを形成するDFはセルヒオ・ラモスやマルディーニといった選手がデ・ヘアほどではないがほぼ必須な状態。ただ、彼らをどう起用するかはプレイヤー(や対戦相手、試合の状況)によって分かれるようで、守備的にいきたいプレイヤーはサイドバックで運用。一方で攻撃的に試合を進めたいプレイヤーはセンターバックとして使い、サイドバックにはマルセロ(マルセロは高い能力を買われてセントラルMFで起用する選手も多かった)やモーゼスといった走力と攻撃センスに優れた選手を配して、攻めに厚みを持たせていた。

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攻撃陣で最も目立っていたのは、C.ロナウドとブラジルのロナウドによる“ダブルロナウド”による2トップ。
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ゲームとはいえ現役のスター選手&レジェンド選手がJクラブのユニフォームで躍動しているのもなかなかレアな光景。
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試合は1回戦から決勝まですべて1台進行で実施。

クレバーなゲームメイクを見せた“レッズ”代表がeJ.LEAGUEを制覇!

 ベスト4まで勝ち上がったのは、他参加者より戦力で劣るチームで勝利してきたあつや選手(※実況いわく、あつや選手はFIFA eWorld Cup 2018にはXbox部門での出場をメインで目指していたため、プレイステーション4版の戦力はやや低めとのこと)、オランダの名門クラブ、アヤックスのユースに所属し、実際のサッカー選手としてプレイ経験もあるアヤックス ボブ選手、現在の『FIFA18』FTUで日本最強との呼び声が高いナスリ選手、『FIFA』、『ウイニングイレブン』、2大サッカーゲーム両方の大会で好成績を収めているかーる選手の4名。

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ベスト4に進出した4名。左からナスリ選手、あつや選手、アヤックス ボブ選手、かーる選手。

 準決勝1試合目はアヤックス ボブ選手の攻撃が大爆発。試合開始直後の攻めであつや選手の左サイドをドリブル突破で切り崩すと、1、2回戦ではまったく使っていなかった、シンプルなクロスを放つプレイを選択(『FIFA18』のトップレベルの試合ではクロスから得点が決まりづらいようで、サイド突破後は中へ切り込むのがセオリー)。これが逆サイドから走り込んできた味方の頭にピタリと合わさり先制。これで主導権を得たアヤックス ボブ選手はゆったりとしたパス回しから速攻に切り替える緩急のついたパス回し(2点目)、ドラッグムーブ、スクープターンといったスキルムーブ(フェイント)を多用した崩しからのシュート(4点目)などで合計5得点を荒稼ぎ。まさや選手も試合終盤には攻撃の軸として使っていたペリシッチをペナルティエリア内に送り込み、アヤックス ボブ選手の最終ラインを崩しきった攻めで1点を返すも、反撃はここまで。アヤックス ボブ選手が5-1のスコアで決勝進出を果たした。

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サッカー選手としてはGKを務めていたアヤックス ボブ選手だが、『FIFA18』のプレイスタイルは超攻撃重視。3試合で12ゴールを稼ぐ派手な活躍で、決勝へ進出。

 もう一方の準決勝、ナスリ選手対かーる選手の戦いは、1試合目とは打って変わってロースコアな展開に。先制点こそかーる選手が前半開始早々に奪うも、その後は両者ともに決定的なチャンスはほとんど生まれず、そのまま時間が経過していった。試合に変化が訪れたのは前半終了間際。リード後は意図的に試合のペースダウンを図り、2試合で10得点をあげた大会随一の破壊力を誇るナスリ選手の攻めをいなしていたかーる選手だったが、前半42分ごろにボールを奪われことに。そこで、前線でフリーだったナスリ選手側のデ・ブライネ、ロナウドとパスが素早く繋がり、最後はトップスピードに乗ったロナウドが角度のないペナルティエリア左側から勢いよくシュート。一度は弾かれるも続けて放った2発目がかーる選手側のDFの体に当たってオウンゴールとなり、ナスリ選手が試合を五分の状態で折り返すことに成功する。

 前半をいい形で終えたのはナスリ選手だったが、後半に入ってから先に試合の主導権を握ったのは意外にもかーる選手だった。55分ごろに見せた猛攻を契機にかーる選手が相手陣内でボールを持つ割合が増え、後半72分過ぎには試合を決める一手を放つ。かーる選手がナスリ選手のペナルティエリアまでボールを運ぶと、中盤から上がってきたビエラを使ってゴール前でボールをキープ。これがナスリ選手側のセルヒオ・ラモスのファウルを誘発し、かーる選手にPKのチャンスを与えてしまう。千載一遇のチャンスを得たかーる選手はこれを冷静に決め、その後の残り約20分はボールを保持しつつ、時間を使ってナスリ選手の攻めをほぼ無効化。見事なゲームメイクにより、アヤックス ボブ選手の待つ決勝へと駒を進めた。

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1点取ってからのかーる選手の落ち着いた試合運びが印象的な試合だった。
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準決勝後には実況、解説のふたりがリプレイ映像を活用して、サッカー番組のように得点シーンやプレイの狙いを解説。

 アヤックス ボブ選手対かーる選手の対決になった決勝戦は、互いのセントラルMFやDFが前に出てプレスやタックルを仕掛ける、守備にこれまでの試合にはなかった激しさを感じさせる展開でスタート。しかしこの積極性が裏目に出たのか、前半5分過ぎにかーる選手がペナルティエリア内でファウルを犯し、アヤックス ボブ選手にPKを与えてしまう。これで1点は確実、圧倒的に優位な立場になったと思われたアヤックス ボブ選手だが、ここでまさかのミスショット。先制点を取ることは叶わず、試合は0-0のままで進むことになる。

 試合が動いたのは前半24分ごろ。アヤックス ボブ選手の攻めをしのいでボールを保持したかーる選手が、相手のプレスを外すパスを繋いで前線までボールを運び、ロナウドにシュートを放たせる。このシュートはデ・ヘアに防がれるものの、ボールが弾かれた先にはもうひとりのロナウド、C.ロナウドが詰めており、こぼれ球をふかすことなく確実に無人のゴールへと押し込み先制。このゲーム最初の1点は試合開始から押され気味だったかーる選手にもたらされる形となった。

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試合の流れを大きく変えたアヤックス ボブ選手のPK失敗。

 先制点を取ったことによってか、前半30分ごろからは徐々に試合の主導権、ボールを保持する時間自体もかーる選手が上回る展開へと変化。速攻を志向するアヤックス ボブ選手に対し、かーる選手は相手の最終ラインを抜けないようなら一度中盤に戻してパスを繋ぎ直す遅攻で対抗。これが1点目が決まったシーンと同様にアヤックス ボブ選手の積極守備にハマり、前半40分にまたしてもパスワークで敵陣を崩してからのロナウドのシュートで追加点を獲得する。

 試合を完全にコントロールしつつあったかーる選手にとって、2-0というスコアは逃げ切るには十分なセーフティーリードだった。アヤックス ボブ選手はチーム全体の攻撃意識を上げて前がかりに攻めるも、ゴールの可能性を感じさせる攻めは後半60分、70分代に1度ずつほど。かーる選手は後半45分間の大半をボールを保持した状態で終わらせ、大会随一の攻撃力を誇るアヤックス ボブ選手の攻めを封殺。この結果、かーる選手が明治安田生命eJ.LEAGUEの初代チャンピオンとなり、FIFA eWorld Cup 2018プレーオフへの挑戦権を獲得した。

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優勝したかーる選手とJリーグチェアマン、村井満氏。

明治安田生命eJ.LEAGUE優勝者 かーる選手インタビュー

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――まずはeJ.LEAGUEの初代チャンピオンになった感想を聞かせてください。

かーる どの試合であたった人も強くて、1戦1戦疲労が溜まりましたね。とにかく疲れました。記念すべき第1回目の大会で優勝できてうれしいのですが、何よりもJリーグと『FIFA』が連携して大会を開いてくれたこと自体がうれしいですね。『FIFA』は元々ヨーロッパとかアメリカ、アジアだとサウジアラビアでは人気なゲームなんですけど、日本では大きな大会があまりなくて。あと埼玉県民なので、浦和レッズの代表として戦えたのもよかったです、誇りに思います。

――ふだんはどのようにサッカーゲームをプレイしていますか?

かーる いまはSCARZというプロゲーミングチームに所属して『FIFA』シリーズをプレイしています。サッカーゲームでの実績は……ここで名前を出していいのかわからないですけど(笑)、『ウイニングイレブン』のほうでレッドブル5GやRAGEで優勝したことがあります。

――今大会はかーる選手を筆頭に、4-4-2のフォーメーションで戦う選手が多かったように思います。『FIFA18』において、このフォーメーションのどこが優れているか、かーる選手が選んだ理由を教えてください。

かーる 自分は『FIFA18』の初期から4-4-2でプレイしていたので、大会は使い慣れたフォーメーションでいこうと思っていました。4-4-2の長所は攻撃と守備、どちらでも機能するバランスのよさですね。

――守備はDF4人+ボランチ、セントラルMFで守り切れると。

かーる そうですね。サイドバックには攻撃的な選手を入れるのが一般的なんですけど、今回の大会ではセルヒオ・ラモスとマルディーニをサイドバックに置いて守備的に戦った感じです。

――攻撃に関してはスキルムーブを使っての局面打開が重要かなと思ったのですが。

かーる いえ、『FIFA18』はスキルムーブやドリブルのテクニックはそれほど重要じゃないほうですね。何が重要かは毎年バージョンによって変わりますね。それは『FIFA』に限らず『ウイイレ』もそうだと思います。

――今日は1回戦から決勝まで守備の固さが印象に残りました。ただ守備の質というか狙いは1回戦から準決勝までと、決勝のアヤックス ボブ選手のときで違うように思いました。具体的には決勝はほかの3試合より積極的にプレスやタックルを仕掛けにいってるように見えました。

かーる そうですね。ボブ相手に引いて守ってるだけでは止められないので、行くところは行かないとという意識はありました。ボブの攻めの回数を減らす狙いもありました。

――昨今のesportsはスポーツなのか? ゲームなのか? という、世間というかメディアの反応や報道をどう見てらっしゃいますか?

かーる そうですね……あまり深く考えたことはないんですけど、自分はゲームはゲームだと割り切ってやってる身なので。スポーツだ! と思ってサッカーゲームをやっているわけではないですね。試合中つねに一瞬で判断を下し続けるっていう点で神経がすり減る、強い相手と戦ったら1試合でもヘトヘトになるってことはありますけど。

――最後に今日の試合をライブ配信などで観戦した視聴者や、浦和レッズのサポーターにひとこと、あとFIFA eWorld Cup 2018プレーオフへの意気込みもお願いします。

かーる まだまだ日本では『FIFA』はメジャーなゲームとは言えない状態です。この放送を見たみなさんが『FIFA18』を手に取って、遊んでくれることを祈ります。eWorld Cup に関しては、いままで『FIFA』の世界大会は決勝トーナメント初戦敗退が最高成績なので、その成績を上回れるようにがんばりたいと思います。