石炭を燃やし周囲を暖める巨大なジェネレーターの炎は、その周りに放射状に広がる人類最後の街に住む、残された数少ない人々の希望の灯火だ。この街を指揮するあなたに課せられた使命は、その火を絶やさずに、人々が再び灯りの下で安定して暮らせる日を夢見てあがくこと……。

 11 bit Studiosの『Frostpunk』を紹介しよう。本作のプラットフォームはPCで、日本時間の4月24日午後10時ごろよりSteamほかで配信予定となっている。なお日本語には非対応。

 戦時下の市民のサバイバルを描いたスタジオの前作『This War of Mine』に引き続き、本作『Frostpunk』では、雪と氷に閉ざされた世界で奮闘する人々のサバイバルを、都市運営シミュレーションゲームとして実現している。

 僅かな資源をかき集め、さまざまな施設を建設し、生存確率を高めるための新たな技術を研究し、斥候を出して生存者を集め、時に苦渋の選択を決断して、人々を泣く泣く縛る新たな法を定める。その内容はさながらディストピア版『シムシティ』といったところ。

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 舞台は19世紀。メインシナリオは、ロンドンからの避難民たちが、放棄されたジェネレーターのあるクレーター状の地にたどり着いた所から始まる。

 街を運営する上でもっとも重要な資源となるのが、ジェネレーターを動かし人々を凍死させないための石炭だ。到着した日には、まずジェネレーターに火を入れるために、凍える労働者を編成して付近に落ちている石炭を拾いに行くことになるだろう。

 ジェネレーターが動き出すと、周囲の数ブロックの温度が生活維持可能なレベルになる。まずはジェネレーターの側からテントを建てていき、同心円状の街を築いていくのだ。

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最序盤の様子。まずはジェネレーターの近くから施設を作り、道を引いていく(敷設ツールは同心円状に街を作るのに最適化されている)。

 その間には、石炭以外にも必要な木材や鉄屑、そしてもちろん食料などの資源を集めることになる。狩人の基地や、彼らが獲ってきた肉を加工する厨房、医務室などの最低限の設備がテントの周囲に揃った頃には、もっとも近場の資源は取り尽くしてしまい、少し遠いスポットに労働者を派遣するようになっているはずだ。

 街を軌道に乗せるにはここからが本番だ。テックツリー方式の技術開発を行い、資源獲得や消費効率を高めたり、より大規模に資源を穫れる炭鉱などの施設を建設可能にしていく。やがてジェネレーターの強化・改良による発熱量の向上とともに、街はその半径を増していく。

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テックツリーを伸ばし、ジェネレーターの熱の有効半径を増やすことに。

 しかし、話はそう簡単にはいかない。大寒波で凍傷者が出始めてジェネレーターをオーバーロードさせることになったり(石炭消費が早まるほか、施設疲労が100%に達すると爆発しておじゃんになる)、生産効率のいいスープばかりが続く食事に改善要求を求められたり。最初のうちは、資源の備蓄と消費速度を見誤って、やむなくジェネレーター一時停止なんてことも起こりうる。

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重度の凍傷患者の命をせめて救うために、場合によっては切断も敢行する制度を強いていたのだが、ある日そのひとりが自死。彼は数日前に切断を断固拒否していたため、強行することを指示したのだが……。

 人々には“不満度”(Discontent)と“希望”(Hope)メーターがあり、街の状態やイベントによって変動していく。街の諸問題に対処するには、条例を定めてしまうというのがひとつの手。新たな施設を建設可能にしたり、凍傷の重症患者や死者への対処を決定したり、24時間の強制残業シフトを敷いたり、児童労働を法制化したりできる。

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夜間は大半の生産業務が止まるため、ヤバい時に発動したくなるのが24時間の緊急シフト。もちろん不満度が上がる。

 もちろん、新たな制度の導入によってある問題が解決可能になる代わりに、不満度が上がったりするのだが、背に腹は代えられない。「これは仕方がないんだ、皆が生き残るためだ」と自分に言い訳しながら次々と条例を出す内に、見返すとガチガチに縛ったブラック生活を市民に強いていたりして、「こんなはずじゃなかった」とうめくことにもなるのだが。

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一向に改善されない寒さに群衆が切れる。ヤバいな……。

 ハードな暮らしが続く本作では、あまり運営がうまくいかないと希望度低め&不満度高めになりやすい。この状態が続くと離反を検討するグループが現れたり、抗議活動が散見されるようになってきて、ますます強権的な策に打って出るというネガティブループに陥りがち。不満度が一定ラインを超えるとやがてプレイヤーは街から放逐されてしまう。その先にあるのは荒野での冷たい死だ。

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切れた住人たちに追い出され、トボトボと雪煙の中に消えていく筆者。

 どう考えてもジリ貧の状況下で、かすかな希望となるのが斥候を出しての探索。ビーコンを開発して打ち上げることにより、周囲の人間がまだ生存していると思わしき地域に斥候を派遣し、うまく行けば発見した生存者を街に連れてくることができる。

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ビーコンを開発して打ち上げると、付近の生存者がいると思われる場所に斥候を出せるようになる。

 当然、人が増えれば資源もそれだけ消費が早くなるが、新たな労働者やエンジニアを獲得できるし、炭鉱など一部の重要施設を作るのに必要な“Steam Core”を持っていたりするので、苦しくともやらないわけにはいかない。ちなみに目的地に到着した先でもイベントが発生し、なけなしの物資を斥候に渡して送り出した斥候が、襲撃中の熊から生存者を救おうとして死んでしまったりもする。

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探索先で生存者救出のために斥候を白熊に突撃させてみる。結果は死亡。それでも斥候が残したメモを頼りに生存者が街までたどり着いてくれたが。

 というわけで『This War of Mine』に引き続き、辛く絶望的な環境の中でなんとか希望を繋ごうと奮闘するマゾい内容。違いを挙げるならば、前作が少人数の集団のサバイバルで個人への感情移入も可能にしていたのに対し、今回はよりマクロよりになっていることだろうか。

 いずれにしても前作同様に人を選ぶとは思うが、ここまで読んだ人ならジェネレーターに火を入れる準備はできているんじゃないだろうか。

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揉め事が増えてきたあたりで、警察組織でおさえつける道と、宗教で緩和する道が示される。どちらかを選ぶと新たな制度ツリーがアンロックされ、教会などそれぞれの道に沿った建物が建設可能になる。

 なお各国プレスや配信者に提供されたプレビュー版は内容がメインシナリオに限定されていたが、製品版では“The Arks”と“Refugees”のふたつの追加シナリオが収録されるほか、発売後のコンテンツアップデートも予定しているようだ。