2018年5月25日発売予定の『Detroit: Become Human』を、ひと足先にじっくりプレイ。序盤からプレイヤーを引き込む本作の魅力とは。

 2018年4月23日、東京・品川のソニーシティにてプレイステーション4用ソフト『Detroit: Become Human』(2018年5月25日発売予定)のメディア向けプレゼンテーションが開催。開発会社Quantic Dreamを率いるデヴィッド・ケイジ氏(同作のディレクター兼シナリオライターを務める)が登壇した。本稿では、その模様とあわせて、当日体験できたゲームの内容をお届けしよう。

プレイヤーは未来のデトロイトで自分だけの物語を見つけ出す

デヴィッド・ケイジ氏が登場し、プレゼンテーションがスタート。

 『Detroit: Become Human』の舞台は、アンドロイド技術で反映する2038年のアメリカ・デトロイト。プレイヤーは、コナー、マーカス、カーラという3体のアンドロイドを操作して、本来は持ちえないはずの感情を有しているかのように振る舞う“変異体”と呼ばれる個体の存在と真相に迫っていく。今回のメディア向けプレゼンテーションは、本作の序盤に展開する10のエピソードを体験できる試遊ができるという内容。会場では、試遊に先立ち、生みの親であるケイジ氏のトークセッションが行われた。登壇したケイジ氏は、主人公がアンドロイドであることに関して、「物語をアンドロイドの目を通じて体験していただくということが重要でした」と語る。

コナーは変異体を追う捜査官として現場に配属されたプロトタイプのアンドロイド。人間と協力しながら、事件の現場検証や、変異体との交渉を行うことになる。
トッドという所有者のもとでハウスキーパーの役割を果たすカーラ。トッドの娘であるアリスは内気で物静かな少女だが、カーラには気を許すように。
マーカスは、カールという高名な画家のもとでライフサポートを行っている。ある日から、変異体として目覚め、アンドロイドの権利を求める運動を起こす。

 ケイジ氏は、ゲームのストーリーについても「これまでQuantic Dreamが手掛けてきたゲームの中で、もっとも分岐が多い」と述べ、プレイヤーの選択によって展開が変わっていくゲーム展開を説明した。また、分岐によって変化していくストーリー展開自体についても、「表面的だけではなく、プレイヤーの行動や選択によって、内容がまったく違ったものになる」とのこと。

 さらに、ケイジ氏は、自身の選択によって物語を進めていくことで、プレイヤーは“自分だけの物語を体験できる”ということをアピール。未来のデトロイトで何を体験して、何を感じるかは、すべてプレイヤー次第なのだという。

先行プレイインプレッション 最新作は、プレイヤーの心を映し出す

 ここからは、当日プレイできたゲーム本編序盤、チャプター10までのインプレッションをお伝えする。

 まず、本作の世界観について詳しく説明しておこう。2038年のデトロイトにおけるアンドロイドは、人類史上もっとも便利な発明品として人々に享受される物体であり、人間と同等の外見、能力を持っているものの、権利はない、奴隷のような存在だ。アンドロイドの普及によって失業者も増加したため、貧困層はアンドロイドに対して負の感情を抱いており、アンドロイドが迫害されるようなこともある。

近づいただけで人間から暴力を振るわれるという場面もあり、ついアンドロイドに感情移入してしまう。

 しかし、アンドロイドには感情がないため、人間に対して反感を抱くこともない……はずだったのだが、ある日、自我を持つかのように振る舞う“変異体”と呼ばれるアンドロイドが出現。これを機に、デトロイトの社会は大きく揺れ動いていくこととなる。

 そんな世界観の中で、プレイヤーは外見も立場もまったく異なるコナー、カーラ、マーカスという3体のアンドロイドを操作し、それぞれの視点から、変異体アンドロイドの真相に迫っていく、というのが本作の大まかな概要だ。

 操作方法は、『HEAVY RAIN -心の軋むとき-』を始めとするQuantic Dreamの作品ではおなじみとなった、行動の内容に沿うコマンドが主体の独特なもの(たとえば、窓を下から持ち上げて開けるときは、プレイヤーは“コントローラを上に持ち上げる”という操作を行う)。最初は戸惑うかもしれないが、“部屋を掃除する”など、ゲームの物語には直接関係ないような動作も、こういったコマンドで操作していく。しかし、そういった動作を「なんで自分がこんなことを……」と思いながらこなすうちに、筆者はアンドロイドたちと一体化していくような感覚を覚えた。

 さらに、ゲーム中の行動はほとんど制限されておらず、目に映るものを片っ端から触ってみてもいいし、物語を進めるのに必要な最低限のことだけを済ませることもできる。つまり、ゲームの中で動き回るのはアンドロイドという形を持った自分なのだ。

 また、モーションキャプチャー技術の高さで知られるQuantic Dreamの最新作とだけあって、表情や歩き方などの細部にいたるまで、キャラクターの動きが非常にリアル。とくに、登場する少女、アリスの動きは本当に子どものようで、とてもかわいらしく感じられた。それゆえに、アリスを守るために行動する3体のアンドロイドのうちの一体、カーラを操作するチャプターでは、何があってもアリスを守ってあげたいという気持ちに駆られた。筆者は男性だが、母性というものがわかった気さえしたのだ。

 そして、本作を語るうえで外せないのが、物語の分岐だ。本作のディレクター兼シナリオライターを務めるデヴィッド・ケイジ氏によると、シナリオの執筆には2年の歳月がかかったというほど膨大で、分岐に富んだものになっているという。

 プレイできた序盤の部分だけでも、十二分にそれを感じることができた。プレゼンテーション当日は、筆者と、もうひとり編集者がプレイをしたのだが、お互いが辿り着いた結末の違いに驚愕した。一方では動いているアンドロイドが、一方では破壊されているのだ。両者の差を生んだ引き金のひとつは、“引き出しをひとつ開けたかどうか”というもの。そうした小さな行動でも、物語に大きな影響を及ぼすことがあるのが衝撃的だった。

 また、今回初めて本作を通して試遊する機会を得たことで、物語は細かいチャプターごとに区切られ、連続する各チャプターを体験していくというゲームの流れも判明した。各チャプターは、コナー、マーカス、カーラという3体のシチュエーションが断片的に描かれる構成だ。このチャプターの区切りがまた絶妙で、あたかも連続ドラマの世界に入り込んだかのようなやめどきのないプレイ感覚があった。

ちなみにチャプターをクリアーすると、フローチャートで分岐点が確認できる。クリアーした後でフローチャートを確認し、「あそこが分岐点だったのか!」と驚かされるほど、自然に物語が分岐していることもあった。

 プレイ中、メインメニューで、クロエというアンドロイドが「シュレーディンガーの猫(※)をご存知ですか?」と問いかけてきたことがあったが、本作はまさにシュレーディンガーの猫的なゲームだと言える。プレイヤーが選択を下すまで、あらゆる結果は同時に存在しているのだ。

※シュレーディンガーの猫……1時間以内に50%の確率で毒ガスが発生する箱の中に猫を入れた場合、1時間後、箱の中の猫は生きている状態と死んでいる状態のふたつの状態が重なり合っているのではないか? という思考実験。

 また、ときとして、答えがつけられないような難しい選択を迫られることもある。選択の結果、主人公のアンドロイドが破壊されてしまうこともあるが、ゲームオーバーになることはない。選択肢に明確な答えというものは存在しないのだ。そのため、主人公が破壊されたり、登場人物が死んでしまったりすると、自分の選択は正しかったのかと、自問自答してしまう。

 ここまで述べてきた通り、物語の展開はプレイヤーが決断を下すことで大きな変化を見せるため、先の展開が非常に気になる。少なくとも筆者は、発売までのあと1ヵ月近く本作をプレイできないと思うと、本当につらい。プレイした序盤のチャプターから物語がどのように動いていくのかをつい考えてしまい、モヤモヤした気持ちになる。本作では、それほどまでにプレイヤーを引き込む、巧みなシナリオが展開される。

革命の指導者であるマーカスは、主人公の3体の中でも、とくにゲーム内の社会に及ぼす影響が大きい。どのように物語を動かしていくことになるのだろうか……。

 Quantic Dreamはこれまで、プレイヤーの感情に訴えかけるような作品を数多く作ってきたわけだが、筆者個人としては、歴代の作品と比較しても、本作はもっとも感情移入できる作品になっていたと言える。プレイ中に突きつけられる選択肢では、自分はどんな人間なのか、尋ねられているような感覚がしたし、未来のデトロイトに誕生したアンドロイドという人種を見ることで、“人間とは何か”について考えさせられた。とくに印象的だったのは、ゲーム中で、大人がアンドロイドをモノのように扱う場合が多い一方で、子どもたちはアンドロイドに対しても人間と同じように接していた点。人間は成長するにつれて、大事なものを失っているのかもしれないと、我が身を省みてしまった。このように、扱われているテーマは普遍的なので、きっと誰もが本作を通じて何かを感じるはずだ。

ちなみに、プレゼンの会場となったソニーシティ内にも、アンドロイドが……!?