2018年4月14、15日に開催されたイベント、“セガフェス2018”にて発表されるや、クラシックゲームファンを中心に大きな話題となっている新プロジェクト“SEGA AGES”。Nintendo Switch向けに今夏から展開予定の本プロジェクトだが、会場では、展開予定のラインアップから、まずは5タイトルとして、『アレックスキッドのミラクルワールド』、『ゲイングランド』、『サンダーフォースIV』、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』、『ファンタシースター』(50音順)が明らかとなった。

 “セガ年代記”とも言うべきシリーズ名は、どのような思いでつけられたのか、そして気になるラインアップや配信ペースはどうなるのか。“セガ3D復刻プロジェクト”から引き続き登板する面々に、レジェンドクリエイターを加えて、さらに豪華となった開発陣に、いま話してもらえるギリギリを聞いてきた。

新生“SEGA AGES”シリーズにかける意気込みを開発陣に訊く、リリース予定タイトルは“セガ3D復刻プロジェクト”以上に! _01

新生“SEGA AGES”のキーパーソンたち。
右からセガゲームス リードプロデューサー兼ディレクターの小玉理恵子氏、同スーパーバイザーの奥成洋輔氏、同シニアプロデューサーの下村一誠氏、エムツーの堀井直樹氏

待望の新シリーズが日本・欧米でスタート!

――今回のプロジェクトは、どのようにしてスタートを切ったのでしょうか?

下村 企画が持ち上がったのは『セガ3D復刻アーカイブス 2』が発売され、『3』の企画を進めているときなので、2016年初頭くらいです。そのときから、“セガ3D復刻プロジェクト”の後継プロジェクトとして、やはり据え置き機での展開が必要だろうという意思は持っていました。プラチナゲームズの神谷英樹さんや、ソラの桜井政博さんが「なぜ据え置き機でやらないのか」とおっしゃっていたこともあって、余計にその気持がありましたね。

――企画そのものは2年前でしたか。

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下村 はい。ですが、復刻が可能なタイトルは『3』でほぼ使い果たしてしまったし、奥成が「『3』は“ファイナルステージです”と言い切ってしまったので(笑)、どのような形にするのがいいのかを揉んでいたんです。特定のジャンルをフィーチャーした“シューティングパック”といったアイデアもあったのですが、ビジネス的な部分では、『3』よりも売上が立つとは思えないので、宙ぶらりんとなっていました。いっときは堀井さんと「VRで攻めようか」なんて話をしてエムツーさんに研究を進めてもらったのですが、それだとさらに市場が狭いうえに、「クラシックゲームファンのニーズに合わないのではないか」という社内の意見もあって、1年くらいは足踏みしていました。

堀井 VRの『スペースハリアー』は、すごくよかったですよ! 主観視点だとすごく怖い!

――いつか世に出ることを期待しています(笑)。

奥成 確かに『セガ3D復刻アーカイブス3 FINAL STAGE』に“ファイナルステージ”と名付けたのは僕なんですけど(笑)私は私でニンテンドー3DSの継続アイデアはありました。ただ、アーカイブス3が終わった後、エムツーさんに「ニンテンドー3DSで『バーチャレーシング』が完成するまではあとどれくらい必要なの?」と聞いたところ「あと2年くらいはかかります」との返事で、想像以上に長すぎた(笑)。

下村 そうして足踏みが続いているうちに、Nintendo Switchのプレゼンスが上がってきていて、クラシックゲームファンにも届いてきたので、対応ハードとしてアクセルを踏み直しました。とは言ったものの、おもだったタイトルは “セガ3D復刻プロジェクト”で貯金は使い果たしているので、もっと力を入れようということで、リードプロデューサー兼ディレクターとして、小玉に加わってもらいました。僕がビジネス面を、小玉は内容面を受け持つという役回りですね。

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小玉 2016年の年末にエムツーさんと顔合わせをして、プロジェクトに加わったのは2017年の始めごろです。そこから1年以上「タイトルはどうする、ハードはどうする、新要素はどうする」と協議と検討を続けていました。

――“SEGA AGES”というシリーズ名を復活させた経緯というのは?

下村 まず社長の松原から、「新生としてリブートをかけるなら、ブランドを立てなさい」という指示がありました。それと、これまでは国内→海外という流れだったのを、今回は日本・北米・欧州で同時展開したいという気持ちがありました。海外の皆さんからも“セガ3D復刻プロジェクト”は高い評価をいただきましたが、発売は日本より遅かったので。名前については、欧米のスタッフにも加わってもらってアイデア出しをして、その中で一番票を集めたのが“SEGA AGES”だったんです。

奥成 日本ではこれまでに“SEGA AGES”の名前を冠したシリーズが複数出ていますが、海外ではブランドがバラバラだったんです。セガサターンで『アウトラン』、『アフターバーナー』、『ファンタジーゾーン』の3本を1枚のディスクにした“SEGA AGES”というソフトが出ているだけですね、プレイステーション2版は“SEGA Classics Collection”、プレイステーション3などの『セガエイジスオンライン』にあたるゲームは“SEGA Vintage Collection”という具合で。ちなみに、“セガ3D復刻プロジェクト”も、海外では“SEGA 3D Classics”となっていたので、下村が言ったように、今回はワールドワイドで統一しようと。

小玉 海外のスタッフも“SEGA AGES”と聞けば、“セガが復刻するクラシックゲームのシリーズ”だということが、すぐにわかる名前だったということです。

堀井 エムツーとしても“SEGA AGES”という名前には思い入れがあります。なにしろ(英文字だと)上から読んでも下から読んでも同じって、ハマりすぎですからね! 今回も名前負けしないようにがんばらないと。

――そういった過去からの想いも含めて“SEGA AGES”に落ち着いた、と。ところで奥成さんの役割は?

奥成 今回はスーパーバイザーという肩書になっています。僕がメインでプロデュースしたのは、『セガ3D復刻アーカイブス』まで。それ以降の配信版『3D ベア・ナックルII』からの2年は、一歩引いて下村との二人三脚体制となりました。今回は新規プロジェクトということでいよいよプロジェクトから離れるかと思っていたんですけど……。

下村 ガッチリ関わってもらっています(笑)。いまの社内でセガの歴史に一番詳しいのは奥成なので、僕らとしてはおんぶに抱っこですね。

奥成 「収録タイトルはアレでなく、こっちで」とか「メガドライブ版でなくアーケード版で」とか「追加仕様はこういうので」といった指示をしています。あとは社内の過去資料のある場所を教えたり。

堀井 何がスーパーバイザーなんだって話なんですよ(笑)。でも、いてくれれば大船に乗った気持ちになれるので歓迎です。代わりがきく人ではないので。

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気心の知れた間柄とあって、インタビューは笑いの絶えないものに。過去作について複雑な表情で語る小玉氏も印象的だった。

――Nintendo Switchでの展開を選んだ理由をお聞かせください。

下村 先程も言ったように、ハードの選定はかなり悩みましたが、“セガ3D復刻プロジェクト”を喜んでいただいた方々がいるのだから、つぎもまずは任天堂さんのプラットフォームだろう、と。とくに、ニンテンドー3DSのときに感じた“手の中でクラシックゲームが遊べる”ことに可能性を感じていましたので、Nintendo Switchならそれを引き継げるはずだと判断しました。

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堀井 僕らとしては、どのハードでもセガのゲームを作れるなら大歓迎だったんですけど(笑)。でもNintendo Switchというハイスペックなハードになったおかげで、今回のラインアップはけっこう攻め攻めになっています。すでに研究は進めている段階で、「よっしゃ、アレを持ち出せるようにするぞ!」と気合いを入れ直したところです。

小玉 昨年夏あたりには、セガ・インタラクティブ(セガのアミューズメントゲームを開発・販売する会社)の方々に協力をいただいて、当時のタイトルのソースをいろいろと発掘してきました。それもあって、だいたいのラインアップが決まりました。

――どの世代のハードまで再現できるのでしょう?

堀井 時間さえいただければなんでもいけます。ただ、先程下村さんが言ったように、ビジネスとしては時間の制約があるので、現実的な線引きは必要です。ひとつ言えるのは、Nintendo Switchですから、ポリゴン世代のハードが現実的な範囲で動きます。実験したら、笑っちゃうようなモノが動きましたから。

――“セガ3D復刻プロジェクト”では実現できなかった“積み残し”も……?

堀井 いけます! そこまで含めて、ラインアップを想像していてほしいです。弊社的にも3D復刻を進めていたスタッフがそのまま今回の“SEGA AGES”に移行していますので、そこはご期待してくださっていいと思います。

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奥成 『とある魔術の電脳戦機』のプレイステーション4限定版で当時の開発の思い出を書いたんですけど、プレイステーション2版『電脳戦機バーチャロン』を開発するのに2~3年、『ファンタジーゾーン コンプリートコレクション』に収録したSYSTEM16版『ファンタジーゾーン2』を作るのには3~4年かかっているんですが、あの時は、複数のプロジェクトで社内承認取って、後に出すタイトルほど開発期間をかけてじっくり作り込む時間を確保しました。いまの時代だと「プロジェクトをやるよ」と決めてからさすがにそこまで時間はかけられないのですが、今回小玉はプロジェクト開始にあたり、かなり多めのタイトルを用意しています。僕が“セガ3D復刻プロジェクト”を立ち上げた時に用意したのが8タイトルで、最終的には18タイトルを出すことができました。今回は最初から15タイトル以上の制作が決定していて、 “セガ3D復刻プロジェクト”のときみたいに数ヵ月に1本といった、やきもきしないペースでのリリースになるはずです。エムツーさんもセガのゲームを移植し続けて10年以上になりますから、その経験を活かしたペースとなってくれるでしょう。もちろん最終的には“セガ3D復刻プロジェクト”以上のタイトルを出すことを目指しています。

堀井 そうですね。そこはバリバリ活きています。ただこれまで移植したことないタイトルがあると「このプログラマーさんは、何を考えてこのコードを書いたのだろう」というのを探る作業が必要になるので、完成までの期間は少し長くなります。ただ、ラインアップの“配球”はかなりいい感じです。既存の知識だけでなんとかなるタイトルもあれば、力を注がないといけないタイトルの緩急が、しっかりとついている。