アメリカのボストンで開催中のゲームイベント“PAX EAST 2018”で、アクションRPG『NieR: Automata』の1周年を記念したパネルディスカッションが行われ、ディレクターのヨコオタロウ氏、プロデューサーの齊藤陽介氏、サウンドを手掛けた岡部啓一氏らが登壇した。
現地3月30日にロサンゼルスで行われた1周年記念イベントに引き続き、全米からコアなファンが集まった今回のパネルディスカッション。完全に祝福ムードのなか、終始おだやかに何事もなく進行……するかどうかはわからないのは、この作品のファンの皆さんならご承知のことだろう。
当然、台風の目となるのはヨコオタロウ氏だ。先月行われたGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)でトイレから配信を行った理由を聞かれ、そこが“NieRにふさわしい場所”だからと答えたり、PAXでの思い出を聞かれ、会議室に詰め込まれて延々サインを書かされたエピソードなどを暴露。
次第にその矛先は齊藤・岡部氏はおろか、司会にまで向く有様で、齊藤・岡部氏からヨコオ氏への逆襲も開始。
好きなサブストーリーを聞かれた齊藤氏は、エミールのサブストーリーで月の涙が咲き誇る空間でのイベントで思わず泣いてしまったと振り返りつつ、「ヨコオさんの物語じゃなくて岡部さんの曲で泣いているんだと気づきました」とひと刺し。
続けて同様の質問に対して岡部氏も、悲しい曲がたくさんオーダーされた中で、気に入っていた曲の多くが(岡部氏は遊びきれなかった)サブストーリーでしか聞けないのに気が付き「怒りマックスですよね」と続ける(ちなみにヨコオ氏のお気に入りは“ロミオ達&ジュリエット達”)。
もちろん、壇上の3人がお互いをよく知るが故の、危険なじゃれ合いのようなものなのだろう。唐突に始まったヨコオ氏からの両氏への質問コーナーでプライベートに関するえぐい質問を公衆の面前でされ、「本当に失礼!」(岡部氏)「本当にそれ聞きたいの?」(齊藤氏)と呆れつつ、ノリを知っている会場が笑ってリアクションすると、気がつくと雰囲気は戻っている。ああ、この歪んだ愛の平常運転……!!
「この熱気があれば次のNieRという世界が……」
そんな中で司会やファンが聞き出そうとやっきになっていたのが、続編などの次の展開について。齊藤氏が「50%ぐらいじゃないでしょうか。(中略)私たち(齊藤・岡部)はもちろんやりたいですけど、最後はヨコオタロウが決めることだと思うので」と話を向けると、ヨコオ氏は(続編制作をあまり好まないのと、物語を書ききったため)“2Bや9Sが昆虫みたいな形に改造されたようなゲーム”なら、と逃げまくる。しかし、会場はそれでも歓声。
齊藤氏は終盤にまず“マスクで会場が見えないと言うヨコオ氏のため”という理由で、齊藤氏が会場の盛り上がりを動画を撮影することを提案。そしてこの日一番の大歓声で応える会場。大ホールは満席で、出展フロアーで最新ゲームを遊びに行くこともできるなか、絶対に逃さないように1時間以上並んだファンも少なくない。
その動画は同氏のTwitterでも公開されており、どれだけ熱心なファンが多いかは一目瞭然だ。撮影を終えた齊藤氏は続けて「この熱気があれば次のNieRという世界がひらけるのではないかと思っておりますので、時間はかかるかもしれないんですけど、楽しみにお待ち下さい」とコメント。
そして岡部氏は、ファンに感謝の言葉を述べつつ、北米でのコンサートについて興味はあるか問いかける。もう会場の反応がどうだったかは言うまでもないだろう。齊藤氏は「スクウェア・エニックス アメリカの人が観ているから、大丈夫ですよ」とニッコリ。「何か動く気がしますね、(中略)コンサートでお会いできるのを楽しみにしています」と語る岡部氏に、ヨコオ氏は「こういうのは普通やるのが裏で決まっていて、おねだりする形で言うものだと思うんですけど」と、そういうケースではないのを暴露。……この人たち、ファンの声でいろいろ動かす気だ!
満員御礼。
Thank you so much !
#NieR : Automata 1st anniversary https://t.co/YC2Ota9pJV
— 齊藤陽介 Yosuke Saito (@SaitoYosuke_Z)
2018-04-08 06:16:38
最後に挨拶を行ったヨコオ氏は、『NieR: Automata』について「ニッチで変なゲーム」だと表現しつつ、一年後もこうしてイベントを行えるような作品でいられるのはファンの支えのおかげだと感謝。「NieRみたいなゲームを好きになる皆さんなんで、ちょっと変わった人が多いと思うんですけど、そういう変わった人に感謝をしたいと思います。ありがとうございます」と締めくくった。
パネルディスカッションのラストは、会場一同でエミールの店の歌(エミール/ショップ)を大合唱。確かに変で、しかし熱いファンたちがアメリカだけでもこれだけいれば、次の何かが起こり得るんじゃないだろうか。