2018年3月23日、ニンテンドー3DSソフト『名探偵ピカチュウ』が発売された。“シネマティックアドベンチャー”として発売された本作は、失踪した父親を捜す主人公ティムが、人間の言葉を話す“自称名探偵”のピカチュウとともにさまざまな事件に立ち向かっていくというゲームだ。

 最大の特徴は、なんといってもピカチュウの声。なんと、テレビアニメでおなじみの大谷育江さんによるかわいい声ではなく、大川透さんによるダンディーな“おっさん”の声で話すのだ。さらに、コーヒーが好きで、少しふてぶてしかったりと、どこまでも“おっさん”のような自称“名探偵”のピカチュウ。このピカチュウ誕生の裏には、どんな意図があるのか? 多くのポケモンファンが気になっているであろう疑問を本作のプロデューサー陣内弘之氏とディレクターの宮下尚生氏(ともにクリーチャーズ)にぶつけてみた。

コーヒー好きの“ピカチュウ(CV大川透)”はこうして生まれた――『名探偵ピカチュウ』開発陣に直撃インタビュー!_06

陣内弘之氏(じんない ひろゆき)

株式会社クリーチャーズ 取締役
『名探偵ピカチュウ』プロデューサー
(文中は陣内)

宮下尚生氏(みやした なおき)

株式会社クリーチャーズ クリエイティブディレクター
『名探偵ピカチュウ』ディレクター
(文中は宮下)

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開発キーパーソンに聞く、『名探偵ピカチュウ』の魅力

――まずは、『名探偵ピカチュウ』の開発における、おふたりの役どころからおしえてください。

陣内 肩書きとしてはプロデューサーですが、今回はシナリオのディレクションもしています。全体のプロットを作った後、各章のシナリオのディレクションをして、最終的にゲームに上がってきたテキストのチェックをすべて担当しました。

宮下 私はゲーム全体のディレクション担当です。基本的には陣内の作ったプロットをゲームのかたちに落とし込むという仕事をしており、各章の細かいところでどこに謎解きを入れて、どういうポケモンを使うか、トリックをどうするか、というのを陣内といっしょに詰めながらゲームに落とし込みました。

――まずは、企画立ち上げの経緯を教えていただけますか。

陣内 クリーチャーズはポケモンカードゲームの制作、『ポケットモンスター X・Y』以降のポケモンモデルやモーションの制作、それ以外にも『ポケモンレンジャー』シリーズ、『ポケパーク』シリーズなどのソフトも作っています。そんな中で、デジタルの新しいゲームを作ろうといろいろと検討している際に、数ある『ポケモン』ゲームの中でも、アドベンチャーゲームというジャンルは空いていることに気がついたのです。そこで、自分がピカチュウ好きだということもあって、ピカチュウを主人公にしたアドベンチャーゲームを作ろうと考えました。

――確かに、アドベンチャーゲームは出ていなかったですね。

陣内 そうなんです。それと、『ポケモン』にはIPの立ち上げ期から携わっているのですが、22年間続くテレビアニメ『ポケットモンスター』におけるサトシとピカチュウの物語とはまた別の“ピカチュウと相棒の物語”を作れないかな、とも思っていたのです。“ピカチュウ”は“ピカチュウ”という種として生きており、“サトシのピカチュウ”のほかにもたくさんいるわけで。そんな想いがあり、本作ではティムとピカチュウの話にフォーカスして、その動きを追っていこうと考えました。

――アドベンチャーゲーム×ピカチュウと考えると、『名探偵ピカチュウ』というタイトルはストレートですし、わかりやすいですよね。ゲーム内容やタイトル名については、どんなふうに着想を得たのでしょうか。

陣内 8年前に初めて犬を飼い始めたのですが、犬というのは散歩に行くと、いろいろなところを嗅ぐじゃないですか。部屋にいても、たまに何もないところをじっと見ることもあったり、急に吠えたり。それを見ていて、犬は人間にはわからない何らかの情報を得ているのかもしれない、とずっと思っていたのです。犬との生活の中でそうしたことを考えているうちに、“自分の犬がもしピカチュウだったら、探偵のようなことをしているのかもしれない”という発想が生まれてきました。その後、アドベンチャーゲームというジャンルで企画を募集すると、うちのスタッフのひとりが『名探偵ピカチュウ』という企画を持ってきたんですよ。実際に採用した企画とは少し違う内容でしたが、私と近しい発想の人間がいたこともあって、『名探偵ピカチュウ』というタイトルはいいな、と思ったのです。そこから、推理ものということであればピカチュウが人間の言葉を話したほうがおもしろいし、どうせならピカチュウの声はイメージと真逆のおじさんの声にしたほうがもっとおもしろいだろう、というふうに社内でアイデアが展開していきました。

――少し話が前後してしまうのですが、陣内さんが最初に考えられていたゲーム全体の完成イメージは、どういうものだったのでしょうか。

陣内 『ポケモン』の世界観というのは非常に重層的です。ゲームフリークさんがつくられる、オリジンとなる本編ゲームの『ポケットモンスター』シリーズでは、プレイヤー自身がトレーナーとなって主にポケモンバトルをする物語が描かれています。そして、先ほど申し上げた通り、アニメではサトシとピカチュウの物語が描かれ、『ポケモン』の世界をとても豊かなものにしています。その他の『ポケモン』ゲームもそのゲーム性に合わせて新しい世界を提供しています。本作『名探偵ピカチュウ』では、本編ゲームともアニメとも違う、新しい物語を展開することで、『ポケモン』の世界をさらに豊かにしていく、というイメージを持っていました。ですので、本作ではバトルという要素をあえてなくして、ポケモンといっしょに人々が生活している暮らしをしっかり描くことに力を注いだのです。

――『名探偵ピカチュウ』のスタートに当たっては、ゲームフリークさんや株式会社ポケモンさんにも説明をされたと思いますが、感触はどうでしたか。

陣内 本作のムービー制作を担当した柳沢(柳沢康敬氏)というスタッフがいるのですが、彼にプレゼン用の映像を準備してもらいました。それをもってゲームの雰囲気やコンセプトをプレゼンしたところ、よい反応を得られまして、本格的にプロジェクトが動き出しました。

――ポケモンファンとしては最初の驚きが大きかったのですが、プレゼンの感触としては自然に受け入れられた様子だったのでしょうか。

陣内 じつは反応にも温度差はありましたが、全体の意見としては“ユニークな取組み”ととらえていただく声が大きくて、とくに強い反対が出たわけではなかったですね。

宮下 とはいえ、ピカチュウがおじさんの声で話すわけですから、演出の方向性が固まるまでは試行錯誤がありました。ピカチュウが話すときには表情の振れ幅を大きく持たせたかったのですけれども、そこはなかなか各所に納得いただける表現が見つからなくて……。

――そこは、根気よくベストな表現を探っていったわけですね。

宮下 そうですね。何度かトライしていくうちに、「あぁ、これはありかもね」という声がちらほらと出てきて、ようやく形になっていきました。

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――ゲーム性の部分で注力したのはどんなところなのでしょうか。

宮下 ストーリーありきのゲームではあるのですけれど、単純にお話だけを表現するというのはゲームとしてはもったいないと言いますか、「それなら映画を見ればいいじゃない」となってしまいます。なので、ゲームならではのインタラクション性をいかにストーリーと混ぜるかというところに注力しました。

――映画的な手法を取り入れつつも、ゲームとしてもおもしろくしていきたいと。

陣内 そうですね。アドベンチャーゲームを作るのは初めてだったので、いろいろと模索しながら開発を進めていきました。同じく、ソフトの世界同時発売もクリーチャーズとしては初めてだったので、ローカライズにかなり力を入れました。文化的な価値観や背景の違いから誤ったメッセージを伝えることがないよう、表現には細部まで注意を払いましたし、各国でより広い年齢層のユーザーさんに楽しんでいただけるように、レーティングに関わる表現についても細かく調整を入れました。

――ああ、なるほど! 探偵もののアドベンチャーゲームを作ろうとすると、どうしてもある種のサスペンス性を入れ込む必要があると思うのですが、そこは全年齢対象のゲームとして完結させるために気を遣われたのですね。

宮下 その通りです。事件やトリックに関しては、多角的な視点から注意を払う必要がありました。たとえば、ゲーム冒頭のエイパムのエピソードにしても、血を流すのではなく、舞台演出の小道具としてケチャップを使っています。それと、おもしろいところとしては、モンスターボールを出していない、ということもあります。

――そういえばそうですね。それはどういった理由が?

宮下 モンスターボールは、『名探偵ピカチュウ』の世界にあっても不思議ではないのですが、探偵ものに出てくる道具としてはちょっと便利すぎるのです(笑)。トリックとしては、なんでもありになってしまうといいますか……。

――確かに(笑)。ちなみに、『名探偵ピカチュウ』のトリックは、ポケモンを知っている人にとっては腑に落ちるもので、逆にポケモンを知らない人にとっても、登場するポケモンのビジュアルなどから推理しやすい作りですよね。

陣内 『名探偵ピカチュウ』は、『ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン』を遊んでいただいているユーザーさんはもちろんですが、そのほかにも、最近は『ポケモン』ゲームから離れているという方や、自分は遊んでいないけど子どもが遊んでいるというような親御さんなど、多くの方に楽しんでいただける内容を目指しました。ですので、宮下を始めとする制作スタッフには、たとえばゼニガメだったら水を使った何かができる、ヒトカゲだったら炎を使えるというように、ポケモンの見た目でわかる範囲の要素でトリックを作ってほしい、という話をずっとしていたのです。これがかなりトリックを考えるハードルを上げてしまったようですが……。

宮下 確かに、「ここは見た目を関係なくポケモンを配置できれば簡単なのに!」と思うことはたびたびありました(笑)。でも、そこは陣内の言うことが正しいと思っていて。予備知識がないと解けないトリックというのは、広く受け入れられないのではないでしょうか。

――そこは、わかりやすさを重視しつつも、ポケモンに詳しいユーザーがニヤリとできる構造になっていて、絶妙なバランスだと思いました。物語の舞台についてもファンタジーに寄せすぎず、リアル方向に寄せた街づくりをされている印象があります。先ほどのトリックについてのお話にも関わるかもしれませんが、探偵ものの舞台としては、そのほうがストーリーの魅力が高まるという判断だったのでしょうか。

宮下 そうですね。モンスターボールの話と同じく、物語の舞台にファンタジー要素が出すぎると“何でもあり”になってしまいますので。そこは、現実の都市に近い街並みを描きました。遊んでいただくユーザーさんも見覚えのあるような街並みに、違和感なくポケモンたちが暮らしているイメージが表現できればいいなと。

――先ほど、ピカチュウの演出については試行錯誤があったというお話がありましたが、改めて、ピカチュウを“おっさんみたい”にしようと思ったのはどんな理由からなのかお聞かせいただけますか。

陣内 アニメにおける大谷育江さんのかわいい声のイメージが非常に強いので、あえて真逆にしてみたいという想いが強かったのだろうと思います(笑)。それと、アドベンチャーゲームということで、ハードボイルドな探偵小説のような雰囲気を出したかったということもありますね。

宮下 探偵といえば、一般的にはパイプがセットだと思うのですが、そこはさすがにコーヒーに落ち着きました(笑)。でも、ちょっと大人っぽい、渋さは出せたと思います。

陣内 当初の予定では、じつは製品版に収録したほどおっさんっぽい動きは少なかったんです。ところが、木を登るシーンのムービーを撮ったときに、手に唾をぺっぺと吐くようなモーションを柳沢が勝手に作っていて(笑)。結果的には、「おもしろいからこの方向性でやろうか」ということになったのです。

宮下 開発初期のころは、ハードボイルドでもう少し真面目な感じだったんですよね。でも、やはりゲームとして遊んでいただく際には、もっとピカチュウのふだんとは違う側面を入れたほうがおもしろいし、魅力的になるかもしれないと考えたのです。

――本当にリアルなおっさん感があって、ちょっと笑っちゃいますよね(笑)。

宮下 ピカチュウの動きはモーションキャプチャーを用いているのですが、役者さんはちゃんと中年男性にお願いしています。

陣内 本物のおっさんの動きを取り込んで作っていますので(笑)。

宮下 動きとしては日本のおっさんのものなので、ワールドワイドにどこまで通じるのかはちょっとわからないですが、ある種の共通言語として広く理解していただけるモーションになっていると思います。

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――初めて本作の情報が出たのは、NHKのテレビ番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』だったと記憶していますが、当時のユーザーからの反応はどんなものだったのでしょうか。

宮下 情報を出す前までは受け入れてもらえるのかどうか不安はありましたが、意外とおもしろがっていただく声が大きかったように思います。番組が放送された当時はまだ開発途中だったので、絵素材を公開することについてはハラハラしましたが……(笑)。

――当時からかなり話題になっていましたよね。でも、『ポケモン』はこういうこともできるんだよ、というIPの強さを提示する上ではかなりおもしろかったと思います。

陣内 『ポケットモンスター 赤・緑』が発売されて22年経っているからこそ、少し無茶をしても許される土壌ができていたのかもしれません。

――まさしく『ポケモン』だからこそできるアプローチですよね(笑)。単発の盛り上がりのコンテンツではできない企画だと思います。ちなみに、ピカチュウ以外の部分ではどんな点に注力されたのでしょうか。

宮下 今回、とくに力を入れた要素のひとつがムービー部分のクオリティです。アドベンチャーゲームの世界観を作り込むに当たっては、そこがしっかりと表現できてないとチープになってしまいますので。

――ほかの『ポケモン』ゲームとも、テレビアニメとも違った雰囲気を感じました。

宮下 雰囲気としては、海外ドラマを見ているような感じにしたいなと思いまして、キャラクターや街のデザインも『ポケモン』にしては少し大人っぽい方向に寄せています。

――陣内さんから見て、できあがった各種ビジュアルのクオリティーはどうでしたか。

陣内 いい意味で“やりすぎているな”と思いました(笑)。というのも、デザイナーたちも『ポケモン』を作るうえでの誇りとこだわりがものすごく強くて、本当に力を入れて作り込んでいるんです。それゆえに、ニンテンドー3DSのゲームとしては本体性能のギリギリを攻めているのではないかなと。それも『ポケモン』ゲームを作る以上、絶対に恥ずかしいものを世に出したくないというスタッフの意気込みの現れなのです。「『ポケモン』なんだからこれくらい当然でしょ」という感じでとんでもないクオリティのものが上がってくるという(笑)。

――確かに、プレイしていると、細かいところまで丁寧に作り込まれているのがわかります。アドベンチャーゲームということでストーリーと謎解きの部分に注目が集まりがちですが、舞台となるステージや、ピカチュウ以外のポケモンたちの生き生きとした表現も見どころですよね。序盤のあるパートで、ミノムッチの蓑が剥がれるシーンがあって、「中身って、こうなっていたんだ!?」という驚きがありました。

陣内 じつはその設定は、私も初めて知って驚いたんです。「これ、大丈夫……?」とスタッフに確認したのですが、ちゃんと設定に書いてあると(笑)。

宮下 確かに、ミノムッチの図鑑を読むとそう書いてあるんです(笑)。そんなふうにして、トリックを作るときは基本的にポケモン図鑑のテキストを参考にしています。

――ミノムッチの場面は、まさに先ほどお話いただいた、ポケモンを知っていても解けるし、知らなくても推理しやすいというトリック演出の例ですよね。ミノムッチの図鑑の記載を知らなくても、ミノムシの生態を知っていれば腑に落ちるという。

陣内 ミノムシの蓑を取っちゃうとか、子供の頃、男の子ってみんなそんなことやってましたよね?

――その体験を持っているユーザーは陣内さんが思われるほど多くない気もしますが(笑)、でもミノムッチの生態を知らなくてもビジュアルから予想しやすいことは確かですね。そういったポケモンの設定以外でも、謎解きについて工夫されたところがあれば教えてください。

宮下 遊んでもらいたいユーザー層が広いので、あまり複雑にはせず、とにかくわかりやすさを重視しました。もしわからなかったとしても、最後までクリアーできるように工夫してゲームシステムを設計しています。その一例が“てだすけモード”で。これをオンにしておけば、どうしたらいいかわからなくなっても、ピカチュウに聞けばするべきことのヒントを教えてくれます。謎解き要素を簡便にして、ストーリーだけを進めたいという方も、ストレスなく楽しんでいただけるのでご安心を。

――あまり頭を悩ませず、物語の流れの中で謎解きを進めていく楽しみかたもあるわけですね。

宮下 アドベンチャーゲームというと、どうしても難しそうなイメージを与えてしまいます。ゲームシステム的な部分でプレイを敬遠されてしまうのは我々としても残念ですので、ストーリーのテンポを阻害しないように難易度の調整に気を配りました。

――ちなみに、謎解きの難易度については陣内さんも監修されているのでしょうか。

陣内 トリックを作ることに関しては宮下が責任者ですので、私はある程度でき上がってきたものを確認するという感じでした。ひとりで考えたトリックは、得てして独りよがりな内容になりがちなので、なるべく客観的な視点でチェックを入れて、修正をお願いしました。

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――これはネタバレになるので難しいと思いますが、ストーリー面での注目ポイントも教えてください。

陣内 確かにどこまでお話しようか迷いますが……物語後半からラストシーンに掛けてのストーリーには期待していただきたいですね。そのあたりはムービーをつくってくれたスタッフが特にがんばってくれたところなので、ぜひプレイしていただきたいです。

――そういえば、本作のプロットを設計されたということでしたが、ストーリーは陣内さんがほぼゼロから考えられているということでしょうか。

陣内 初めはそれこそコンセプトを説明して、シナリオチームのスタッフにお願いしようとしたのですが、まあ……紆余曲折あって(笑)、自分でプロットを設計し、ストーリーもつくることになりました。

――実際にゲームの制作に移ったのは、ストーリーがすべて完成してからですか。

陣内 それも特殊な作りかたをしていまして。私が準備したプロットをわたすと、宮下を始めとするチームがトリックを入れ込んだシナリオを作ります。それを各章で進めながら、全体のプロットとの整合性を取って全員で組み上げていった感じですね。

――ちなみに、フルボイスのCGムービーを用いた『ポケモン』ゲームは、本作が初めてですよね。

宮下 そうですね。日本語としても初めての試みなのですが、おもしろいのが同時に英語版の音声もフルボイスで収録していることです。字幕の切り替えと音声の切り替えが別々にでき、じつは日本語版のソフトでも英語版音声で遊べるんですよ。

――英語の教材としても打ってつけですね。

宮下 もともとは日本語で作っているので当然リップシンク(口パク)は日本語に合わせてあるのですが、それを英語版では英語のセリフも全く同じ口パクなのに翻訳者のテクニックで英語もほぼリップシンクができているのがちょっとしたこだわりです。

――言語を切り替えてもセリフと口の動きが合っているというのは、言われないと気付かないかもしれませんが、こだわりポイントのひとつですね。

陣内 日本語だと少しだけジェントルな雰囲気もあるピカチュウですが、英語版だとよりおっさん感が増しているように感じるのがおもしろいです(笑)。音声を切り替えて楽しんでみてください。

――ソフトと同時発売のamiiboについてもお話を聞かせていただきたいのですが、あれはどうして特大サイズになったのでしょうか。

宮下 そこはもうストレートに、図々しいおっさんのイメージで可能な限り大きくしたのです(笑)。あれだけ大きいと、部屋に飾るにしても主張が強くていいですよね。

――かなりの存在感だと思います(笑)。もう1点。ポケモンセンターでの早期購入特典として、本編の前日譚を描いた“第0章”がついてきますが、あれは陣内さんが書き下ろされたそうですね。

陣内 その通りです。これは株式会社ポケモンさんからのオーダーです。最近よく映画の来場者特典としてエピソードゼロ的なものがありますが、まさにそのイメージで、ティムと出会う前のピカチュウが何をしていたのかという“第0章”のストーリーを書かせていただきました。Amazon Kindleストアや楽天Kobo電子書籍ストア、Apple iBook Storeなどでも無料配信しているとのことなので、興味がある方はチェックしてみてください。

――これから遊ぶ方、すでに遊んでいる方の両方がうれしいコンテンツですね。さて、最後におふたりにインタビューの締めをいただければと思いますが。

宮下 『ポケモン』ゲームとしては初めてのアドベンチャー作品になりますが、とにかく幅広い層の方々に楽しんでいただけるような工夫を詰め込みました。ポケモンファンはもちろん、そうでない方もぜひ遊んでみてください。

陣内 くり返しになりますが、スタートから22年経った『ポケモン』の世界をもうひとつ広げてもいいよね、という想いを持って作り上げました。『ポケモン』に強いこだわりを持ったスタッフたちが開拓した『ポケモン』の新しい世界を、ぜひ楽しんでください!

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