Wargamingがサービス中のPC用オンラインタンクバトル『World of Tanks』では、2018年3月27日にアップデート“1.0”が実施予定となっている。それに先駆け、本アップデートに関するメディア向けイベントが、2018年3月22日にタイ・バンコクの“Adisorn Cavalry Camp”にて開催された。

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 イベントでは、World of Tanks ASIA Regional Publishing DirectorのAlexander de Giorgio氏が登壇し、“1.0”の概要を説明。

 7年間サービスを続ける『World of Tanks』だが、じつはこれまでクライアントのバージョンは“0.9”のナンバリング止まりであった。このたび、“1.0”を迎えるにあたり、ゲーム内に大幅な改良・改修が行われている。その“1.0”の大きなトピックは下記のとおり。

1. 自社開発のCOREエンジンによるグラフィックの強化
2. SD・HDクライアントの統合とゲーム環境の最適化
3. 実装済みマップのHD化および新規マップの追加
4. 戦況に合わせて動的に変化するサウンドシステム

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 これら“1.0”アップデートの概要については、下記の記事を参照されたい。

 ここでは、同イベントにて実施された、メディア合同インタビューの内容をお届けする。

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Alexander de Giorgio氏(文中は、アレックス)

――今回、イベントをバンコクで行った理由は何でしょうか?

アレックス “1.0”では、ゲームの強化に加えて、アジア地域での盛り上がりをいっそう高めていくという目的もあります。ここAdisorn Cavalry Campは、戦車搭乗体験ができたり、ミュージアムが備わっていたりと、アジアの中でも特徴的な場所でしたので、バンコクでイベントを開催する運びになりました。また、『World of Tanks』には、タイのユーザーも非常に多くいますので、こういったイベントをバンコクで開催することは、彼らにとってもいいニュースなのではと思います。

――“1.0”での最大のウリ、魅力は何でしょうか?

アレックス ひと言で表すと“没入感”ですね。その元になっているのは、グラフィックの強化や戦況に応じて変化するサウンドといったテクニカルな部分です。実際にプレイしていただけると、これまでとは異なる、まるで戦場にいるかのような“没入感”が味わえると思います。

――そのテクニカルな部分の大きな基盤になっているのが、“COREエンジン”なのですね。

アレックス はい、そうです。COREエンジンの開発には4年の歳月を費やしました。開発段階の“1.0”を実際に見たときには、私自身も「ゲームがこんなにも変わるのか」と驚きました。

――COREエンジンによって可能となった技術やシステムはどういったところでしょうか?

アレックス ひとつの例をあげると、新マップの“Glacier”ですね。このマップはかなり以前から開発が進められていたのですが、雪の動きや、雪原に対する戦車のリアクション(雪の舞い上がりなど)などは、当時の技術では表現できませんでした。また、Havok Destruction Technologyという物理演算を行う技術があるのですが、以前のエンジンでは、Havokの特定の処理能力しか扱えませんでした。COREエンジンの導入により、Havokが持つ建物が崩れたり、戦車が衝突したりする際のリアルな表現が可能となりました。そして、それらは新しくリモデルしたHDマップに組み込まれています。

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――マップのリモデルによって、ゲームのプレイ感覚や操作、戦略性に影響はありますか?

アレックス いいえ。“1.0”では、グラフィックは強化しつつも、これまでとプレイ感覚が変わらないようにするという点に重点を置いています。βテストでのフィードバックでは、マップの地形が変化しているといった意見が多く寄せられたのですが、じつはマップのデザインは、これまでと同じなのです。光源の処理を変えていますので、地形の見えかたが若干異なっているだけで、これまでと同じ戦法で戦うことができます。

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――“1.0”にバージョンアップしたことで、ゲームに新たな拡張・発展がもたらされるのでしょうか?

アレックス COREエンジンの導入により、ざっくりと言うと“何でもできる”ようになりました。たとえば、Havokの物理演算を活かして、砲撃によって建物だけでなくマップの地形そのものが崩れるといったことも可能になります。ほかにも、天候の変化や、これまで実現できなかったオブジェクトの導入など、表現の自由度が増しています。ただ、何でもできるようになったとはいえ、さまざまな要素を一気に実装するということではなく、動作環境に影響しないかといったことを考慮し、検証しながら開発を進めていきます。

――ゲームモードの追加といった拡張は予定されていますか?

アレックス “1.0”でゲームの基盤は整いましたので、今後は新たなゲームモードを追加していきたいですね。それがキャンペーンのようなモードになるのか、PvEのモードになるのかは、まだわかりませんが……コンソール版の“ウォーストーリー”を追加してほしいという声もあります。ただし、もともとPvPのゲームなので、ユーザーが感じるPvEとPvPのギャップを慎重に考えないといけないとは思います。また、今後はesportsに関する部分にも手を入れていきたいです。

――COREエンジンをコンソール版や『World of Warships』などの他タイトルに使用することは予定されていますか?

アレックス 現状では、PC版の『World of Tanks』のみでの運用を考えています。

――冒頭にアジア地域での盛り上がりを高めたいというお話がありましたが、もう少し詳しく教えていただけますでしょうか。

アレックス “1.0”は重要な節目であり、新たなスタートとなります。アジア地域にとくに注力していますが、“1.0”を機に世界的に新規プレイヤーを増やしたいという考えがあります。また、過去にプレイしていた方にも、ゲームが新しくなったことを知ってほしいです。昨年には、ゲームのことを学べる“ブートキャンプ”機能を実装しました。この機能はアジア地域でとくに好まれています。そういった新規向けコンテンツも充実してきましたので、“1.0”をきっかけとして、多くの方に触れていただけれるとうれしいです。

――“1.0”では、ゲームの最適化により、SD・HDクライアントが統一され、低めのスペックのPCでも一定水準以上のグラフィックで楽しめるようになるとのことですが、そのあたりも新規ユーザーにアピールするポイントになっていますよね。

アレックス そうですね。以前よりユーザー間のPCスペックの差による垣根を取り除きたいと考えていました。“1.0”の導入によって低いスペックのPCでも安定したプレイが楽しめるようになりますので、プレイヤー層の拡大を期待しています。

――アジアの国の戦車ツリーを実装する予定はありますか?

アレックス 将来的な可能性としてはありますが、現状では今年中に実装する戦車の予定はすでに決まっています。

――国籍に縛られずに、つぎにどの戦車を開発するか、自分で選べる専用ツリーがあったら、おもしろいですね。

アレックス それはいいアイデアですね。検討したいと思います。

――“1.0”実装後の、『World of Tanks』の展望はいかがでしょうか?

アレックス 私の個人的な目標のひとつは、『World of Tanks』をもっといろいろな方に知ってもらうことです。『World of Tanks』は戦車でのPvPという、非常にニッチなジャンルと言えます。コアな戦車ファンだけでなく、さまざまな方に知ってもらえるよう、チームプレイの楽しさや、戦略性の高さ、ソロプレイでのおもしろさといった、ゲームが持つ奥深さを広く伝えていくことが今後の課題です。また、ゲーマー以外の方にも『World of Tanks』をアピールできるような活動をしていきたいですね。

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会場となったAdisorn Cavalry Campは、タイ軍の騎兵と戦車の兵科に特化したキャンプ。訓練施設や博物館を有しており、観光者向けの戦車搭乗体験、射撃体験などのアクティビティーも楽しめる。