2017年に開催された“avex×81produce Wake Up, Girls!AUDITION 第3回アニソン・ヴォーカルオーディション”で2000人の応募の中から選ばれた、林鼓子さん、森嶋優花さん、厚木那奈美さんによる声優ユニット、Run Girls, Run!(以下、RGR[ランガ])。テレビアニメ『Wake Up, Girls! 新章』で声優デビューを果たした彼女たちのデビュー曲が、テレビアニメ『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』(以下、『デスマ』)のオープニング曲『スライドライド』に決定した。
2018年2月28日にリリースされる同曲について、ファミ通.comではRGRの3人にインタビュー。楽曲の魅力はもちろん、レコーディングやミュージックビデオ撮影時の裏話なども訊いた。
林 鼓子(はやし ここ)
2002年5月15日生まれ。静岡県出身。『Wake Up, Girls! 新章』では、速志歩役を担当。文中は林。
森嶋優花(もりしま ゆうか)
1997年3月16日生まれ。京都府出身。『Wake Up, Girls! 新章』では、守島音芽役を担当。文中は森嶋。
厚木那奈美(あつぎ ななみ)
1997年10月11日生まれ。長野県出身。『Wake Up, Girls! 新章』では、阿津木いつか役を担当。『デスマ』にはマーサ役として出演。文中は厚木。
Run Girls, Run!/スライドライド MV short.ver
RGRらしいカッコよさが感じられる『スライドライド』
――まず、第3回アニソン・ヴォーカルオーディションの合格から『Wake Up, Girls! 新章』を経て、今回アニメのオープニング曲を歌うことになりましたが、いまのお気持ちは?
林 本当に、ここ半年間はいろいろなことをさせていただきましたし、自分の中でも変化があった半年だなと感じています。『デスマ』のオープニング『スライドライド』も歌わせていただくことになって、最初は「私たちがやっていいのかな……?」とドキドキしていたんです。でも、実際に『デスマ』のアニメを観て、「私たちが歌っているんだ」という実感がすごく湧いてきて、『デスマ』を盛り上げられるように私たちももっとがんばらなきゃいけないなと感じています。
――ユニットの楽曲としては、2曲目でいきなりアニメのタイアップというのは、すごいことですよね。
林 もう、信じられなくて……。
厚木 考えられなかったです。
森嶋 こんなに早くタイアップさせていただいていいのかなって……。少しの不安と驚きと、でもやっぱりうれしいっていう気持ちがいちばんでしたね。
――気合は入りました?
森嶋 デビュー曲が主題歌って、そんなすばらしいことがあるのかと思っていたので……(笑)。やっぱり気合は入りましたね。
――『スライドライド』が、どんな曲なのかを伺えれば。
厚木 「冒険が始まるぞ!」といった曲調で始まるので、何かを始める前に聴くとやる気が出る曲だと個人的には思っています。たとえば通勤、通学のときに聴いていただければ、きっと1日の仕事や勉強が捗るんじゃないのかなって。1日の始まりである朝ですとか、何か「始めるぞ!」というときに似合う1曲なのかなと思っています。
――勢いのある曲ですからね。
森嶋 私は、サビの部分がすごく力強くて、疾走感があると思っているんですけど、それまでの静けさとか落ち着きからのサビの盛り上がりとか、本当に『デスマ』の世界観に合っていますし、RGRらしいカッコよさも表わせている曲ではないかなと思っています。
林 『スライドライド』はもちろんカッコいい曲なんですけど、今回は本当に3人の声がしっかり聴ける曲になっているのかなと感じています。3人のそれぞれの歌いかたのよさだったり、『デスマ』の世界観を歌詞や音楽で表している曲だと思うので、そういう“RGR×デスマ”という部分に注目していただきたいなと思います。
――なるほど。前作に引き続いてアップテンポなサウンドになっていますが、聴いたときの感想はいかがでしたか?
林 初めて聴いたときにすぐにリズムをとっちゃったりして、早く歌いたいなっていう気持ちがすごく沸きました。私は本当にロックというか、バンドがすごく好きなんです。この曲はバンドサウンド的なところもありますからね。あと、吹奏楽もやっていたので、吹奏楽っぽい打楽器の音などもすごくカッコいいなと。
厚木 初めて聴いたときは、「変調が多くて、すごく難しい曲だな」という印象が強かったです。でも、逆に変調が多いことによって冒険のいろいろなシーンが想像できるような気がして、素敵な曲だなと思いました。
森嶋 事前に原作も読ませていただいていたので、この曲を主題歌としていただいたときはもう『デスマ』の世界観とオープニング映像が勝手に浮かんできて。そういう作品世界を想像しやすい曲だなという印象がすごく強かったです。
――収録のときに苦労はしました?
森嶋 複雑なリズムも楽しめるというか。
林 はい。逆に複雑なリズムが楽しかったですね。この曲は音域がけっこう広くて、高いところから低いところまでけっこうあるんです。低いところから始まるけど、サビは高いみたいな。そういう部分が難しいなと思いましたが、楽しく歌わせていただけたな、と感じています。
――それは心強いですね(笑)。聴きどころだったり、こだわった部分はありますか?
林 オチサビの「その声 どこかで確かに聴こえた」というところが私のパートで、そこで1度バックの音がなくなるんです。そこで私の声が聴こえやすくなるので、曲がない中でどれだけカッコよく、エモーショナルにするか、というのをがんばりました。
――おお。いいですね。森嶋さんは?
森嶋 歌詞を見ていただいたらわかるのですが、『デスマ』の世界観をすごく表現しているんです。“流星の雨”といった単語が歌詞の中にも出てくるので、そういうところも注目ポイントだと思いますね。あと意外とこだわったところが、ふつうの歌詞に混じって英語が入っているんですけど、その英語の発音が難しくて。ディレクションでも「ちょっと違うのでもう1回」みたいな本格的なディレクションが入りまして。そういうところも知っていただければ、また違った聴きかたができるんじゃないのかなと思います。
――ほほう。ちなみに、どこの歌詞になります?
森嶋 「Yes! trust trust trust trust you!」というところなんですけど、「Yes」のリズムの取りかたが難しくて……。
厚木 一瞬なので聴き取りづらいとは思うのですが、「Yes」の部分が上がらなくちゃいけなくて、それがすごく難しくて!
林 苦戦してたよね。
森嶋 ふだん、英語をしゃべらないもんね。
林、森嶋、厚木 (笑)。
――(笑)。皆さんが苦労された部分にも注目して聴いてみたいと思います。厚木さんはいかがですか?
厚木 私はDメロがとくにお気に入りですね。3人が別々のパートを歌い上げていくんですけれど、ぜんぜん違うパートを歌っているにも関わらず、すごく調和しているというか。キレイなメロディーが奏でられているので、ここは聴きどころだと思います。ぜひ皆さんにも、ここのDメロは心を落ち着かせて、じっくりと聴いてほしいですね。
――ありがとうございます。ちなみに、先ほどのお話にも少し出ましたが、レコーディングのときにはどんなディレクションを受けたのですか?
森嶋 たぶん3人とも言われているんですけど、“「いまから冒険に出るぞ!」という気持ちで”というディレクションがありましたね。
林 ありましたね。私個人だと、歌いかたに特徴があるので、クセをなくして歌ってください、というディレクションを受けました。『スライドライド』は、『デスマ』の世界観をしっかり出すためという理由でした。本当にちょっとした細かいところにはなるんですけど、「いまの音をしゃくらないでください」とか。『カケル×カケル』のときよりもディレクションが細くて、「これがアニメを背負うということなんだ……!」と思いました。
――(笑)。でも、クセが出ないようにするというのは、なかなか急には難しいのでは?
林 そうですね。まっすぐ、それでいて力強くっていうディレクションだったのですが……すごく難しいなと思って(笑)。本当に小っちゃいころから同じ歌いかたをしていたので、苦労した部分ではありますね。
――満足度的にはいかがですか?
林 やり切れたなと思います。出来上がった音源を聴いたら、私に聴こえないというか、ちょっと大人っぽい歌いかたをしているなと感じました。
――厚木さんはいかがでしたか?
厚木 1番の終わりで「守りぬいてみせる」という歌詞があるんですけれど、そこでは「“守りぬいてみせる”意思を見せて!」といったディレクションを受けまして、「は、はい……!」って(笑)。
――お話をうかがっていると、テクニック的なところだけではなくて、気持ちの部分を乗せるみたいなディレクションが多かったように感じますね。役者さんとしては、そういうディレクションはやりやすかったりするんでしょうか?
森嶋 でも、歌に乗せるとなると、ちょっと難しさのレベルが違ってきますね。
林 そうですね。素直に難しいです。声で演技するだけでも大げさにやらないといけないのに、歌だとより大げさにやらないと伝わらないので。自分は笑って歌っているつもりでも、相手にはふつうの感情のように聴こえがちなので、そうなると「冒険に出るってどれくらいワクワクしているんだろう?」と。まずそこの想像から始めることになったので、すごく難しかったですね。
――確かに難しいですよね。でも、皆さんが声優さんだからこそ追求できる部分でもあると思うので、そこの成長も楽しみです。ちなみに『スライドライド』というタイトルを聞いたときの印象は?
森嶋 RGRに合ったタイトルだなって思いました。
林 わかる! 勢いがありそうだなと思いましたね。あと、歌詞を見ると「守り抜いてみせる」とか、仲間を題材にしているんだと感じて。
厚木 そうだね。「愛する仲間だって」という歌詞もあるし。
林 そう。だから、“いまのRGRだからこそ”といった歌詞なのかなと思いました。……タイトルの“ライド”って“乗る”という意味だよね?
厚木 スライドしてライドする?
森嶋 もう勢いの塊だよね、要するに。
林、森嶋、厚木 (笑)。
――(笑)。まあ、Run Girls, Run!ですから、勢いの塊ですよね。あとミュージックビデオ(以下、MV)も撮られましたが、これは初めてのMVですよね。
林、森嶋、厚木 はい。
――やってみてどうでしたか?
森嶋 初めてだらけでしたね。ダンスシーンもいろいろな角度から撮っていただいて……。
林 MVの中に、雪の中で私たちのまわりをカメラが360度回るという演出があるんですが、てっきりレーンを使って回るんだと思っていたんですけど、カメラマンさんが実際に走るんですよ。
――ええええええええ(笑)。
林 すごく申し訳ないなと思いつつも、どんな映像が撮れているのか、すごく気になりましたね。
――いや、ぜんぜんブレてなかったですよね。てっきり、レーンが映らないように上半身だけを映しているんだと思っていました。
厚木 本当に走ってくださっていて……すごいよね!
森嶋 みんなで走っていて、「がんばれ!」って。
厚木 私たちも吹雪の中やっていたんですけど、足下が悪い中、機材を持って全力疾走してくださるスタッフさんは本当にね……。
林 MVっていろいろな人ががんばっているんだなって勉強になりました。よく言われることですけど、実際に目の当たりにしてわかるというか、本当にこんなに多くの人たちが関わっているんだなって実感しました。
森嶋 私たちだけでは絶対に作れないミュージックビデオですよね。
厚木 命懸けと言っても過言ではないくらいです。本当にみんなの命が懸かってできた作品みたいな感じでしたね。
――360度回ったシーンは、実際に出来上がったものを観ていかがでしたか?
林 すごくキレイで「こんなふうに観えるんだ! MVってすごいな」と感じました。
――なるほど。ちなみに「MVを撮ります」と言われたときはどう感じましたか?
森嶋 楽しみでしたね。
林 「うれしい!」って。ずっとその話をしていたよね。
厚木 確かに!
林 撮影する場所を調べて画像を見たりして、「こんなところだよ!」、「どんな感じなんだろうね?」って3人でワクワクしていました。
――雪が降ったのは、たまたまなんですよね?
森嶋 想定外の出来事です。
林 着いたら降っていたんですよ。移動中はみんな寝ていて、起きたらまわりが真っ白で「え? どこに来ちゃったんだろう?」みたいな。
厚木 はやまるは「雪だ!」って言って、はしゃぎながらクルマを降りていってたよね。
――(笑)。
林 静岡県はぜんぜん雪が降らなくて、雪を見たのが本当に2回目ぐらいで。まさにいま降っている雪というのを見たのが、初めてだったんですよ。いままで人工的な雪や、積もっている雪は見たことあったんですけど、実際に吹雪いている雪を見たのが初めてで、めちゃくちゃ興奮してしまいましたね。
――そんな“初めて”もあったんですね。でも、おかげでいい画になりましたね。
厚木 自然も味方をしてくれて、いいMVができました。
――皆さん的に、「ここを見てほしい」というところはありますか?
林 私的にはMVならではというか、3人で顔を見合わせるシーンがけっこうたくさんあって、撮影のときも楽しかったのでぜひ観てほしいですね。MCとかで顔を見合わせるのとはまた違うんですよ。
厚木 そうだね。
林 あと、声で演技しているのとはまた違う演技というか、表情の細かな演技にも初挑戦しているので注目してほしいです。
森嶋 MV全体を通してストーリー仕立てになっているのが見どころですね。その中でもMVの後半に私たち3人で力を合わせて剣を抜くシーンがあるんですよ。そこは3人も楽しんでできました。だって、剣を抜くなんて、経験したことないですもんね!(笑)。
――(笑)。
厚木 しかも、剣が抜けない演技をしないといけないんですけど、じつはすごく簡単に抜けるんです(笑)。
――固定されてないですもんね。
森嶋 そうです(笑)。でも、きっと味のある演技ができているんじゃないかと思います。
厚木 私的には、先ほど話した私たちが歌っているまわりを、カメラがグルグル回ってくださっているシーンがすごくお気に入りです。私たち自身もがんばったというのもあるし、雪のおかげですごく幻想的な、キレイな映像になったと思うので、そこは見どころだと思いますね。
――MVで衣装の上に着ている、緑色のフード付きケープもカッコいいですよね。
森嶋 あれ当日にいただいたんですよ。
――そうだったんですか!?
林 そうなんです。MVのときだけ用意してもらったものなので、ライブとかでは着れないから……。
森嶋 着たい!
――ライブの最初にケープを着た状態で出てきて、ステージの上でバサッと……。
林 脱ぎ捨てる! いいですね。
林、森嶋、厚木 ぜひ、どこかのステージでやりたいです!
――ちなみに衣装の感想は?
森嶋 カッコいいなって……。
林 しかも、かわいいよね。
厚木 アシンメトリーになっているところがすごく好きで。
林 なんかグローブ着けるってかっこよくないですか?
――指抜きグローブですよね。中二病的なカッコよさ。
森嶋 そうですね!
林 『スライドライド』というタイトルだったので、バイク的なカッコよさも感じていました。
厚木 私は髪飾りがすごくお気に入りでして。
――ああ、かわいいですよね。
厚木 かわいいですよね。何気に異世界感を感じるんですよ。ふだんこういった髪飾りを着けないから、お気に入りです。
――なるほど。あと撮影時の裏話などがあれば。
林 みんな転びましたね。
厚木 どんどんスタッフさんたちが脱落していくみたいな状況になってました(笑)。
林 私たちを守るために、スタッフさんが犠牲になるという。
――本当に命懸けだったんですね(笑)。
厚木 そうなんです。
林 あとは、女性のスタッフさんたちが1回撮影が終わるたびに駆け寄ってきて抱きついてくれて、それで温まってましたね。
厚木 終わった瞬間に、私たちが着ていたコートを持ちながら「大丈夫、鼓子ちゃん?」みたいな(笑)。
――(笑)。
森嶋 スタッフの皆さんの温もりを感じながら撮影できました。
林 何枚カイロを付けていたかわからないくらいだったよね。
森嶋 ほぼ効き目がないくらい寒かったもんね。
――木さんは『デスマ』のアニメにも出演されていますが、ご自身が演じられているキャラクターがどんなキャラクターなのかを教えてください。
厚木 私が演じさせていただいているのはマーサちゃんという女の子です。セーリュー市にある“門前宿”という宿屋さんの看板娘で、設定では13歳なんですけど、13歳に見合わぬ容姿をしているというのが、マーサちゃんの魅力です。たぶんマーサちゃんも13歳だけど大人っぽいという自分の特徴に気付いていて、それを武器にしつつ看板娘をしているような子なんですね。お客さんをグイグイつかまえて、「うちに泊まってきなよ!」みたいな子です。すごく明るくてかわいい、元気な子です。
――なるほど。アニメの見どころは?
厚木 『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』というタイトルの通り、異世界もののアニメなんですけど、よくある異世界ものアニメはバトルがメインな作品が多い気がしていて。でも、『デスマ』は“異世界観光アニメ”というのがウリになっていて、もちろんバトルの見せ場もありつつですが、観光がメインなんです。第2話のマーサちゃんが登場するお話でも、門前宿の夜ご飯としてお酒やイノシシ肉の食リポが出てくるので、なかなかない雰囲気を楽しめる作品になっています。それに、放送時間的にも“飯テロ”かなと思います(笑)。
――確かに(笑)。ちなみに異世界観光アニメということで、皆さんが観光に行ってみたいところはありますか?
厚木 あったかいところに行きたいですね。最近寒いので。
林 私はぜんぜん行ったことがないところに行ってみたい!
厚木 海外とかね。
森嶋 行きたい! 3人で行きたい。
厚木 ニュージーランドに行ってみたいですね。のどかで、人よりも羊が多いんですよね?
林 すごい!
森嶋 楽園!
厚木 それこそ異世界って感じですよね。
林 ヨーロッパのお城とかがいっぱいあるところに行きたいなー。
森嶋 いいね!
――さんざん、お城で撮影してきたのに(笑)。
厚木 冒険者だな(笑)。
――森嶋さんはどこかあります?
森嶋 海外もいいですけど、私は北海道に行きたいです(笑)。
林 北海道でライブとかもしたい。
森嶋 いいね!
林 いつか日本全国でライブしたいね!