CC2の新プロジェクト“NEXT PLAN”&“復讐三部作”の詳細に迫る松山氏のロングインタビューを公開

サイバーコネクトツー(以下、CC2)が10年先を見据えた新プロジェクト“NEXT PLAN”を発表。これからの10年をCC2はどのように闘っていくのか? 2018年2月15日号(2018年2月1日発売)の週刊ファミ通に掲載した、同社代表取締役・松山洋氏へのインタビュー完全版をお届け。

 1996年の設立から22年間、ゲーム業界を全力で走り続けてきたデベロッパー、サイバーコネクトツー(以下、CC2)が、この先の10年を見据えた新プロジェクト“NEXT PLAN”と、自社パブリッシング新企画“C5”による“復讐三部作”を発表。2月16日より23年目のフェーズに突入するCC2は、これからのゲーム業界でどのように闘っていくのか? 同社代表取締役・松山洋氏に話をうかがった。

激動のゲーム業界で長年闘い続けてきた男はどのような未来を見据えているのか

サイバーコネクトツー代表取締役 松山洋氏(文中は松山)

松山氏が22年間闘い続けて感じたゲーム業界の変遷とは

−−2月16日でCC2さんは創立22周年を迎えますが、まずはこれまでの歩みを振り返ってみていかがですか?

松山 これまで長年、ゲーム業界で闘ってきましたが、業界のニーズは時代とともに変化してきています。ゲームの歴史とは、言ってみればファミコンから始まったようなもので、当時はみんな任天堂の天下が続くものだと思っていましたよね。

−−でも、1990年代にプレイステーションが登場して、大きく変化しましたよね。

松山 プレイステーションが台頭したことでゲームの表現も2Dから3Dに変わり、新しいクリエイターも生まれました。そこでゲーム業界は遊びも商品も、作りかたの部分でも大きく転換期を迎えたと思います。そこからまた10年経つと、今度はオンラインの要素が増えてきて、人と競い合ったり協力したりといったことが当たり前になってきました。

−−『モンスターハンター』シリーズのようにアドホック通信で遊ぶものが出てきましたし、プレイステーション3以降は常時インターネット接続を行うソフトも珍しくなくなりましたね。

松山 そしてここ10年ではスマートフォンが登場してソーシャルゲームが主流になるなど、近年はゲームにとってまた大きな転換期を迎えています。その激動の中で、我々は長いあいだ家庭用ゲームを作り続けてきているわけですが、20年もゲーム業界にいると、そろそろ「また大きく変わるな」というのがわかってくるんですよ。これまでもそうだったんですから。

−−変化の激しいゲーム業界の中でCC2は20年以上開発を続けていますが、時代によって戦略も変化してきたのでしょうか?

松山 もちろん闘いかたは変えてきました。ひと口に20年と言っても、最初の10年と後半の10年ではかなり違っています。最初は10人しかいなかった小さな会社でしたが、『.hack』シリーズや『NARUTO -ナルト- ナルティメット』シリーズが生まれ、それとともに徐々に人が増え、10年経つころには100人程度の規模になっていました。

−−10年で企業規模が10倍に成長したんですね。

松山 当時のスタッフには、“作り手が選ばれる存在にならなければいけない”と言ってきました。観る映画を配給会社ではなく、監督や脚本家で選ぶように、作り手の顔が見えるようにしていかなければならない、ということです。ですので、私自身が宣伝広告塔となって前面に立って、スタッフにはクリエイティブに集中してもらっていました。そうやって10年間頑張った結果、日本だけでなく世界のゲームファンたちにCC2という会社のことを、ある程度認知していただけたのではないかと思っています。

ゲーム業界が直面する高齢化にどう対処するべきか

−−CC2という会社が認知されてからの10年間はどのように変化していきましたか?

松山 それまで開発スタッフにはモノづくりに集中してもらっていたので、クリエイターとしては成長できたのですが、そのせいでゲーム業界の仕組みについては何も知らない人間だらけになってしまいました。ですので、後半の10年間は、意識的に“バトンを渡すための10年”として動いていました。松山についていけばいい、というのではなく、スタッフひとりひとりが自立して行動できるようにしたかったんです。そこでクリエイティブなこととは別に、組織然とした部分にも力を入れた結果、後半の10年で会社も200人規模の企業になり、中間管理職が増えていきました。ただ、これはクリエイターにはよくあるジレンマなのですが、「いつまでもスペシャリストではなく、後続を育てられるジェネラリストになれ」と言うと、それが嫌になって辞めていく人も出てくるんですよね。

−−クリエイティブな活動と人材育成や管理って、かなり違いますからね。

松山 そうなんです。けっきょくは向き不向きがあるんです。でも40代や50代になったときに、「俺は自分の仕事ができればそれでいい」と言った人間ばかりでは、困ってしまうじゃないですか。現場で先輩に質問をしても、自分の担当パート以外のことは答えが返ってこないということも実際に起きてきているんです。ゲーム業界全体の成長スピードが遅くなってきているんですよ。ファミ通さんにも20代、30代のクリエイターってあまり載っていないですよね。

−−ちょうど2018年1月25日号(1月11日発売)で新春企画・戌年鼎談という、戌年のクリエイターをお呼びして語り合ってもらう企画を実施したのですが、48歳、36歳の製作者の方たちはたくさんいるのに、24歳のクリエイターを見つけることができませんでした。

松山 やっぱりそうですよね(笑)。本当はその世代の人にもっと前に出てきてほしいんですよ。

−−近年のゲーム開発はより分業化が進んでいて、個々人が携わる作業内容もよりピンポイントなものになる傾向がありますからね。

松山 いまCC2ではソフトを1本作るのに、大体2年半から3年ぐらいの期間がかかっています。そうなると、20代のうちに経験できる開発本数が限られてくるんです。たとえばプレイステーション2の時代は、1本のソフトを大体1年程度で作っていたじゃないですか。いまは20代のうちに開発できる本数が2〜3本ぐらいしかありません。それがさらに分業化によって、オープンワールドのようなビッグタイトルだと、開発期間中ひたすらステージに木を配置しているだけといった人も出てくるんです。すると、ゲーム制作の全体像が見えないまま、時間だけが過ぎていってしまいますよね。そういった理由もあってか、この業界では30代前半で責任を持ってディレクションする人間があまりいないんです。40代近くになって、やっと可能性が出てくる。一般企業だったら40代はもう部長クラスですよ。このように、このままクリエイターの高齢化が進んでしまうのは、ゲーム業界にとってもあまりいいことではないなと、私は常々思っていました。そこで、こういった問題に対してCC2はこれからどう取り組んでいくべきなのか。我々が10年先を見据えた新しい施策をご紹介したいと思います。

CC2がこれからの10年を闘うための新たな戦略“Cyber Connect 2 NEXT PLAN”とは?

IPそのものに惚れてもらうため、新たな開発ラインを始動します

松山 私は形から入るのが好きなので、この先を見据えた新たなプロジェクト名に“ネクストプラン”という名前を付け、ロゴも用意しました。これからの10年間、我々がどうやって闘っていくのかについてですが、ひと言で表すと“IP(知的財産)主義”です。この言葉を掲げるうえで、まずひとつ認めないといけない事実があるのですが、10年前、20年前と違い、これから先の時代は、ゲームソフト1本で世の中が変わることはありません。ユーザーの皆さんも、“そのゲームが好きだから遊ぶ”というより、そのIPコンテンツが流行っているからゲームも遊ぶし、劇場版アニメも観に行くという時代になっていますよね。これから先、エンターテインメントを楽しんでもらうためには単一の作品としてでなく、IPそのものに惚れてもらわなければなりません。エンターテインメントはゲームだけでなく、アニメやマンガなどさまざまなコンテンツがありますが、ゲームソフトはそのIPを盛り上げる手段のひとつである。そういう考えかたのもとに、これから取り組んでいこうと考えています。

−−単純におもしろいゲームを作っていくのではなく、ムーブメントそのものを作っていくという考えですね。

松山 そうです。我々はこれまでゲーム開発会社として長年、受託という形でゲーム制作を行ってきました。これらのタイトルは開発費も膨大で、制作期間も2〜3年、あるいはそれ以上かかる、非常に大きなプロジェクトです。もちろん、世界中で我々の作る作品を期待して待ってくれているユーザーの方たちもいらっしゃいますし、いま現在進行中のプロジェクトもありますので、こちらの制作はいままで通りに継続していきます。このラインと並行する形になりますが、小規模・短期間の開発で、CC2ならではの作品をお届けする自社パブリッシングプロジェクトを今回、新たに立ち上げました。

−−ダウンロード販売が普及している現在は、大手企業でなくとも自社のタイトルを販売できる時代になっていますが、その流れに沿った考え方ですね。

松山 10年前は、簡単にパブリッシャーになるなんて言えませんでしたよね。でも、おっしゃられるように、いまは主要ハードにダウンロードゲームという選択肢があります。これなら流通コストもかからないし、在庫リスクもありません。我々のような、作品を作って勝負したいと思っている人間にとってはすごくいい市場になってきているんです。また日本だけでなく、欧米も含めた世界に向けて、同じタイミングで作品を提供することもできます。現在、大きなプロジェクト受託タイトルは3ライン動いていますが、自社タイトルも新たに3ラインが始動し、これからは6ライン体制で開発を進めていきます。

−−ライン数を増やすということですが、いまの体制で対応は可能なんですか?

松山 いまCC2にいるスタッフ数ですが、福岡本社に170人程度、東京スタジオが20人程度、昨年の6月にオープンしたカナダのモントリオールスタジオが14名程度、総勢で約200人といったところです。現在のスタッフたちの大半は受託ラインでフル稼動していますので、これから新たなラインを増やすため、スタッフ数を増やします。今後2年で100人増やし、およそ300人に増員する予定です。

−−自社パブリッシングタイトルのラインについては、具体的にはどのようなイメージを持たれているのでしょうか。

松山 自社パブリッシングタイトルに関してですが、今回新たに“C5”というプロジェクトを立ち上げました。“サイバー・コネクト・クリエイティブ・チャレンジ・コンペティション”の頭文字を取って、“C5”です。

上記が、今回新たに公開されたプロジェクト“C5”のロゴマーク。CC2による創造、そして挑戦。それを競争しながら送り出すという決意が、“C5”の文字に込められている。

100本の企画の中から 厳選した3本を新たに製品化

−−新たなプロジェクト、“C5”でどのような取り組みをされるのか教えてください。

松山 “C5”内にコンペティションとあるように、まずは社内で全スタッフを対象にした新規タイトル企画コンペを行いました。C5自体は一昨年に立ち上げたものですが、約1年間でおよそ100本ほどの企画があがってきています。その中から「これはおもしろそうだ」と目を惹く10タイトルを選出し、そこからさらに厳選した3本をプロジェクト化しました。

−−100本も集まるのはなかなかすごいと思います。受託で作るタイトルももちろん自分たちの作品ですけど、自社パブリッシングのタイトルは100%自分たちのゲームなので、やり甲斐やモチベーションは高そうですよね。

松山 こういった社内企画って、企画提出者とは別の人間がディレクションを務めるパターンが多いですよね。仮にゲーム化しても、ファミ通に載るのはディレクターだけ、みたいなこともあると思います。でも、“C5”ではきちんと原案者も名前が作品に刻まれるという約束をしています。それもモチベーションの向上につながっているのかもしれませんね。

−−配信プラットフォームが多岐にわたる中、原案者として名前が残るというのはとくにありがたいですよね。大手企業も個人の開発者も分け隔てなく同じ土俵に立てるいまの時代に、CC2が自社タイトルで勝負を仕掛けるというのは、非常におもしろい試みだと思います。

松山 ただ、ここでひとつ、以前ファミ通さんでもお話しした“プロジェクト・ヴェノム”(※)についてご報告しないといけませんね。結論から言うと、こちらは現在凍結しています。理由はふたつあります。ひとつはMOBA(マルチプレイヤー・オンライン・バトル・アリーナ)系のゲームとして企画が進んだことで、先ほどの小規模、短期間での開発というC5の取り組みとしては合わなくなってしまったことです。そしてもうひとつは、“プロジェクト・ヴェノム”の担当者が、別の大きなタイトルのディレクターとして現在動いています。ですので、いったんこちらのプロジェクトはストップし、いま関わっているタイトルの完成後に再検討しようと考えています。

※:プロジェクト・ヴェノム……週刊ファミ通2016年5月12・19日合併号の特集記事、“新生CC2本格始動!!”で、松山氏が明かした新規タイトルのプロジェクト名。上記イラストは、その特集記事に掲載されていたイメージボードの一部。こちらのプロジェクトでは、松山氏自身もいち開発スタッフとしてイメージボードを描いていたとのこと。

サイバーコネクトツー、パブリッシャー宣言! そして新たな家庭用ゲーム機向けタイトル“ヴェノム”とは!?

2016年2月で設立20周年を迎えたサイバーコネクトツーが手掛ける新たなプロジェクト“ヴェノム”とは? 代表取締役社長・松山洋氏へのインタビューを交えて、その秘密に迫る!

−−なるほど。では改めて、C5で生まれた新規タイトルのお話をお願いします。

松山 今回発表する3本ですが、いずれも復讐をテーマにした新作タイトルで、私が勝手に“復讐三部作”という異名を付けました。タイトル名は『戦場のフーガ』、『刀凶百鬼門』、『CECILE(セシル)』です。いずれの作品も企画としてある程度まとまってはいますが、まだこれから作り始める段階のものばかりです。先ほど、スタッフを100人増やしていくと言いましたが、その中には「この“復讐三部作”をいっしょに作りませんか」といった意味合いも含んでいます。