中田ヤスタカ氏が、自身の音楽のルーツとなったゲームを語る! ニューアルバム『Digital Native』は、“ゲーム”がキーワード

2018年2月7日にニューアルバム『Digital Native』を発売した中田ヤスタカ氏。自身のルーツにあるというゲーム音楽や、ニューアルバムのことについて語っていただいた。

 テグザー』や『ポリスノーツ』、『定吉七番』などという単語が飛び出す、コアなゲーマーの一面があったなんて!!

 音楽ユニットCAPSULEやDJとしてクラブシーンで活動を続けながら、Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅを世に送り出した日本を代表するアーティスト、中田ヤスタカ氏。氏の影響力は留まることを知らず、国際的な音楽セレモニーへの楽曲提供など、世界のアーティストからも熱い支持を集めている。2018年春配信スタートに向けて鋭意制作中のスマホアプリ、『戦国アクションパズル DJノブナガ』(スクウェア・エニックス)の音楽を全面的に担当したことで、じつはゲームに造詣が深いという人柄が明かされたことが記憶に新しい。

 中田氏が2018年2月7日にリリースしたニューアルバム『Digital Native』には、米津玄師が作詞とボーカルを務めた映画『何者』の主題歌『NANIMONO』や、日清カップヌードル、チリトマトヌードルの白い謎肉をポップに表現したCMソング『White Cube』をはじめとした10曲を収録。アルバムタイトルであるDigital Nativeが指し示すとおり、学生時代からパソコンやインターネットがごくふつうにある環境で育った中田氏は、自身の音楽のルーツにはゲームがあり、アルバムのキーワードのひとつにゲーム音楽があるとしている。

 今回は、そんな中田氏のもとにうかがい、自身のゲーム体験と音楽の関係についてや、ニューアルバムのことについて語っていただいた。

中田ヤスタカ氏

出会いはPC88。そして、PCエンジンの深い思い入れ

――中田さんが最初にゲームに触れたのはいつだったんでしょうか?

中田最初はPCゲームでした。物心ついたくらいには、親の趣味で家にPCがあったんですよ。何の機種かもわからないくらい古いやつですね。

――ファミコンが登場するより前のお話ですね。

中田家庭用ゲーム機はなかなか買ってもらえなくて、僕が小学校の高学年くらいになってやっと……。それまではゲームといったら、5インチのフロッピーを入れるPC88(※PC-8800シリーズ。1980年代に日本のパソコンゲームの一時代を築いた)でした。……もしかしたらそれより古いものだったかもしれませんけど、まだビープ音しか鳴らないようなゲームから遊んでいました。だから、きちんとした音が鳴るゲームに初めて触れたときは、「おっ」と思いました。

――どんなゲームの思い出がありますか?

中田PC88版の『ドアドア』とか『ボコスカウォーズ』……。あとは『テグザー』が好きでしたね! デザインもよかった。

――おお、どれも名作ばかりですね! それらのゲームは、もともとお父さんの趣味でもあるわけですか?

中田そうです。うちは機械が好きな家系なんですよ。パソコンに限らず、オーディオとか、いろいろいじるのが好きなんですね。

――最初に買ってもらったのはファミコンですか?

中田友だちがみんなファミコンを持っていたので、僕も「ファミコンが欲しい」とお願いしたんですよ。そうしたら、「みんなって言うけど、全員じゃないだろ? “みんな”という言葉は“全員”ということだから。持ってないヤツもいるのに、みんなという言葉を使うんじゃない」と言われて(笑)。それでも2年くらい粘ってやっと買いに行くことになったんです。親がファミコンショップに並ぶゲームを見ながら、「PCエンジンじゃなくていいのか?」と聞くんですよ。「ファミコンよりもPCエンジンのほうがスペックが上だぞ」と……。

――さすがは機械に詳しい家系(笑)。

中田そのときは、「僕のまわりはファミコン派が多いから」と言ってファミコンを買ってもらいましたが、その後しばらくして、PCエンジンも買ってもらったんですね。けっきょく僕にとって8bit機ではPCエンジンの思い入れがいちばん深いです。サウンド的にも、PCエンジンの印象が深いですね。

――なるほど、そうでしたか。

中田当時はPCエンジンとファミコン、メガドライブでよく遊んでいました。いまの自分なら、できることがハードによって違うなんてパッと見ればわかるのに、子供のころはその差にまったく気づかなくて。なぜでしょうね? グラフィックのキレイさの差も、そこまで気にならなかった……。

――ファミコンとPCエンジンでは、出せる音色も違いますからね。

中田そうなんですよ。……『THE 功夫』を遊んだときも、「人、デカっ!」とは思いましたけど。でもそれがどうというわけでもなかったんですよね(笑)。

――ファミコンで同じ年に発売された『飛龍の拳』の3倍ほどデカイですもんね(笑)。中田さんはどんなジャンルのゲームをよく遊んでいたんでしょうか?

中田ジャンルと言いますか、好きなものは、奥行があるものとか、スピード感があるものです。……僕、けっこうヘンなところに反応するんですよ。

――ヘンなところ?

中田たとえば、アーケード版の『ストリートファイターII』って、キャラが動くと床などの背景も動くじゃないですか。ああいうのが家庭用ゲーム機にちゃんと移植されているのかがすごく気になるんです。ゲームバランス自体ももちろん大事ですが、なんか、そういうところがきちんとしていると感動するんですよね。『餓狼伝説』で、手前と奥のレイヤーをキャラが行ったり来たりするときに、「これはすごい」と感じるタイプです。

――ちょっとだけ目のつけどころが違うかもしれませんね(笑)。

中田PCエンジンなら、グラフィックよりも音の違いに感動していたと言いますか。なんか、音がすごくキラキラしているんですよ。PCエンジンを持っている友だちの家に行ったときに、『魔神英雄伝ワタル』を遊んだんですけど、「聞いたことのない音がしてる!」と、けっこう食いついたことを覚えています。

サウンドテストが音作りの先生

――ご自身がゲーム音楽を意識したのもそのころですか?

中田PCエンジンに思い入れがあるのは、サウンドテストモードが搭載されているソフトが多かったからでもあるんですね。ウォークマン替わりに音楽だけを聴けますから、わざわざサントラを買わなくてもよくて。『出たな!!ツインビー』などは、効果音だけをしょっちゅう聴いていましたね(笑)。ゲームの効果音を単発で聞く機会って、あまりないじゃないですか?

――たしかにそうですね。

中田僕は高校生くらいで本格的に音楽を作り始めたんですが、そのときにPCエンジンで効果音だけが再生できたことを思い出して、めちゃくちゃサンプリングしていました。ゲームをしているときには、あまり効果音に気が回らないものですが、単独で聴くと、「こんな音を作っていたんだ!」という驚きがあって。

――多感な時期に、いろいろな発見をされたんですね。

中田そのころは、チップチューン(ファミコンなど1980年代のハードの内蔵音源チップから発せられる音で構成される音楽)を分析するのがおもしろくて。シンセサイザーの感覚では、ドを押したらドの音が鳴りますが、チップチューンはそうではありません。ドを押して鳴る音をドの音に聞こえるように、いろいろな音を連続で出して表現していたりするんですね。当時は同時に出せる音が3音とか4音なので、オクターブで同時に2種類の音が高速で交互に鳴る音があるんです。つまり、プログラム上でドに聞こえるように鳴らしているわけです。

――そういう発音の仕組みについては、何かしらの手引きがあったわけではなく、独学だったんでしょうか?

中田そうです。「こんな工夫をしているんだ」と、すごく感動しました。

――それはすごい!

中田たとえばディレイ(遅れてくる音)も、当時のゲーム機にはエフェクターが内蔵されていませんから、音をちょっと小さくして重ねていることに気づきました。それを人力で打ち込んだりするところもおもしろいと思います。

――PCエンジンのサウンドテストが、“音とはなんぞや?”を中田さんに教えてくれた存在だと言えますね。

中田けっこうそうです(笑)。僕はもともと機械音自体が好きなんですよね。

『ラストハルマゲドン』で感じた、グラフィックとサウンドの違和感

中田ゲームのメディアが、カセットからCD-ROMに替わったとき。ゲーム音楽と言いますか、音自体がすごいと言われるようになりましたよね? でも僕には違和感があったんですよ。

――違和感?

中田そうです。当時すごくお金持ちの友だちがいて。その子の家に行ったら、PCエンジンCD-ROM 2の『ラストハルマゲドン』が遊ばれているところだったんですけど、「なんか、音、CDじゃん」と、僕的にはガッカリしてしまったんです。ぜんぜんゲームをしている気持ちにならなかったんですよ。

――当時PCエンジンCD-ROM 2なんて持っていたのは、たしかにお金持ちですね(笑)。中田さんもきっとワクワクして遊びに行ったんでしょうに……。

中田グラフィックが8bit機時代のものみたいなのに、音がCD-DA(一般的なCDに収録された音の規格)だったからですね。もしも、その後訪れるマルチメディアブームに乗っかった、実写を使ったアドベンチャーゲームみたいなグラフィックだったら、まだ印象が違っていたのかもしれません。でも、僕としてはグッとこなかったんですよね。これが『リッジレーサー』ぐらいの時代になると楽しめるようになっていた気がします。

――ちぐはぐな感じが引っかかってしまったんですね……。

中田音の進化としては、まずファミコンの『スーパーマリオブラザーズ3』のティンパニーの音を聴いたときにすごいと思ったんです。コクッパのいる飛空艇で、キラーがいっぱい飛んでくるシーンで鳴っている音ですね。

――わかります、わかります。

中田どうやってあの音を出しているのかはわかりませんが、あそこでティンパニーの音が鳴るのはすごいと思いました。スーパーファミコンになると、PCM音源みたいなものが使えるようになって、ストリングスがふつうに出せるようになりましたよね。とはいえ、そんなにすごくリアルなものではなく、いわゆる16bit級の進化だったと思うんです。そのときはグラフィックも同じくらいの進化をしていたように感じています。だけど、PCエンジンのCD-ROM 2は、グラフィックはPCエンジンのままなのに、音だけすごくよくなってしまって違和感が出てしまったという。一方、メガドライブは合ってたと思います。FM音源に対して、あれぐらいのグラフィックはすごく合っているな、と。

――なるほど。音に鋭敏だからこそのご意見です。

中田僕はけっこうバーチャルボーイが好きなんですが、あれは音がすごくショボイですよね? まわりの人が「プレイステーションがすごい!」と言っている時代に、ゲームボーイとさほど変わらないイメージのサウンドをしていました。でも、僕にはすごく相性がよかったですね。

――あの、赤と黒の映像にはピッタリだった、と。

中田そうなんです! あれでリッチな音源を鳴らされたら違和感があったでしょうね。僕はマッチングがすごく大事だと思っていますので。バーチャルボーイは、スピーカーと耳が近いという環境も含めてよかったと思います。