古今東西200人を超えるマーベルキャラクターが集結し、時空を超えて活躍するという壮大なスケールのアドベンチャーゲーム『レゴ マーベル スーパー・ヒーローズ2 ザ・ゲーム』。アメコミ映画に詳しい映画評論家の杉山すぴ豊氏にマーベルの魅力を聞く!

なぜマーベルは魅力溢れるのか……

 月日の経つのは早いもので……2018年が始まったと思ったらもう2月。2018年に入ってゲームタイトルはリリースされており、2月1日にはワーナー ブラザース ジャパンのNintendo Switch、プレイステーション4用ソフト『レゴ マーベル スーパー・ヒーローズ2 ザ・ゲーム』が発売された。

 本作は、古今東西200人を超えるマーベルキャラクターが集結し、時空を超えて活躍するという壮大なスケールのアドベンチャー。“マーベル”と言えばご存じの通り、アメリカを代表するキャラクターが揃う一大ブランド。もともとはマーベル・コミックとして『スパイダーマン』や『キャプテン・アメリカ』、『アイアンマン』など人気タイトルを多数輩出。その後映画化やドラマ化などもされ、世界的に大人気を博している。近年ではマーベルキャラクターが集結する『アベンジャーズ』シリーズなどの映画が大ヒットを記録しており、ご存じの方が多いに違いないと思われる。

 前述の通り『レゴ マーベル スーパー・ヒーローズ2 ザ・ゲーム』は、マーベルキャラクーが集うゲーム。であるならば、本作の魅力を探るには、まずはマーベルのことを改めて知る必要があるのではないか……と思い立ったファミ通ドットコム編集部では、日本でアメコミ映画と言えばこの人(!)と言われる映画評論家にしてアメコミ映画のオーソリティーである杉山すぴ豊氏にインタビューを刊行。アメコミとしてマーベルの魅力と、『レゴ マーベル スーパー・ヒーローズ2 ザ・ゲーム』に関して聞いてみた。ちょっとゲームに関係のない話題もあったりしますが、アメコミ愛ゆえということでご容赦いただきたい!

杉山すぴ豊氏

映画評論家にしてライター。アメコミ関係の著述も多い。

かつてアメコミファンは一都道府県にひとりだった!?

――杉山さんがアメコミのエキスパートということで、今回お話をうかがわねば……と思ったのですが、まずはお話の入り口として、杉山さんはアメコミのどんなところに心惹かれたのでしょうか?

杉山 僕が子どものころに、日本のテレビ局で『スパイダーマン』のアニメや『バットマン』のテレビドラマが放送されていて、何となくアメコミが好きになったというのがありますね。あと大きかったのが、僕が思春期のときに『スター・ウォーズ』の大ブームが来るんですね。もちろん、『スター・ウォーズ』自体はアメコミではないわけですが、アメリカのコミック的なキャラクターが、ばっと日本に入ってきた。クリストファー・リーヴの『スーパーマン』も同じくらいの時期でしたね。やっぱり中学生くらいにハマったものって、大体好きになりますよね。

――たしかにそれはありますね。

杉山 あと、1990年代に入ると、今度はカプコンさんが『X-MEN』をモチーフにした2D対戦格闘ゲーム『エックス・メン チルドレン オブ ジ アトム』などをアーケード向けにリリースされて、ストリートカルチャーとないまぜになったようなテイストに心惹かれていきました。要は何がいいたいのかというと、日本ではアメコミって、原作コミックから入る人はほとんどいなくて、ドラマだったり、アニメや映画だったり、雑貨になったり、あとはゲームというのもじつはとても影響力があって、そういったものでハマっていく人というのはすごく多いんですね。事実、『X-MEN』が好きな人って、1990年代にカプコンのゲームをやっていた人が相当数いるんですよね

――それはものすごい影響力ですね。

杉山 そうなんです。そういった意味では、いまで言うとレゴの影響力も大きくて、レゴで『スター・ウォーズ』やマーベルに親しんで、深い人は原作コミックに入っていく……というふうになっていきますね。

――中学生くらいにアメコミにハマったとのことですが、一方で、あのころってアニメの波も来てましたよね。『バットマン』にしても『スパイダーマン』にしても、当時必ずしも子どもたちに受け入れられやすいテイストでもなかった気がするのですが、どのへんに心惹かれたのですか?

杉山 デザイン的にポップだったというのと……あと、当時の日本のマンガってラブコメやスポ根もの、ヤンキーものが多かったからなあ(笑)。あんまりしっくりこなくて。

――そうでしたか。

杉山 アメコミはヒーローモノなんだけど、ヒーローじゃないときにけっこう悩んだり、グダグダしているんですよ。ああいうところが、僕は日本のマンガよりも共感できるなと。そういったところに共感を得られるのが、アメコミのよさだったりするんですよね。でも、僕がアメコミを好きになったときって、冗談抜きで「アメコミ好きは一都道府県にひとり」みたいなことを言われていましたね。最近では信じられないことですけども……。

――一都道府県にひとりって、47人しかいないじゃないですか(笑)。

杉山 そうなんです。肌感覚でそれくらいでした。ただ、時代が前後するんですけど、ネットの力って大きくて、バラバラだったものがつながりやすくなっていったんですよね。極端な話、一都道府県にひとりだったりすると、九州のアメコミ好きと北海道のアメコミ好きは一生会う機会がないのですが、ネットの時代になると楽しく交流できたりもする。そういう意味で言うと、アメコミが日本で定着していく過程には、ネットが果たす役割は大きかったような気がします。まあ、すべてのサブカルチャーがそうなんでしょうけど。さすがに一都道府県にひとりというわけではなかったですが、不思議と子どものころに洋楽が好きな子ってクラスに何人かいたりしましたよね。それからなんでか知らないんだけど、みんなマイケル・ジョーダンにあこがれていたりとか。

――杉山さんは、アメコミ自体も中学生のころから読んでいたのですね?

杉山 そうですね。あのころは翻訳がたくさん出ていたので……。クリストファー・リーヴの『スーパーマン』や、これはアメコミではないですが『スター・ウォーズ』などがブームになると、アメコミの翻訳が多かったんですね。

――僕も、人並みに『スター・ウォーズ』や『スーパーマン』は観ましたが、そこからアメコミに行くという発想はなかったです。そう考えると、アメコミに心惹かれる何か、本質的なものがあったのかもしれないですね。

杉山 そうですね。ゲームも洋ゲー好きな人もいましたし。そういう感じなんじゃないかなと思いますね。何でもそうですけど、好きになるきっかけは何でもいいと思っています。ゲームから好きになる人もいるだろうし。極論すると、『バイオハザード』の映画は好きだけど、ゲームをやったことがないという人もいるわけで。

――たしかに、そうですね。

杉山 コンテンツそのものなんじゃないかなと思いますね。

――それだけ、IPというものは、人を動かすものなのかもしれないですね。で、かつては一都道府県にひとりと言われていたアメコミですが、いまは日本でも受け入れられている状況があるわけですが、それに対してはどのようなご感想を?

杉山 じつは、アメコミがずっと好きな人は、このブームがなぜ起こってしまったのか、わからないんですよね。「なぜこんなにメジャーになってしまったんだろう……?」という。それはぜんぜん悪いことではないですが、街を歩いていると、ふつうに『バットマン』や『スーパーマン』、マーベルのTシャツを着た女の子がいるという状況になっていて、広がっていく何かがあったんだろうなとは思います。昔からサッカーが好きだった人にとって、いきなりワールドカップで視聴率50%を取ったり、日本代表のユニフォームを着た人が渋谷に溢れているのにびっくりするのと同じような感覚かしら。まあ、アメコミに関して言えば、映画というのはひとつのポイントとして、大きいのではないかなと思います。

――そうですね。僕もアメコミ的なものに興味を抱いたのは、映画の『アイアンマン』あたりからかなあ。

杉山 そういうところも大きいかもしれないですよね。日本の人気マンガをアニメ化したタイトルも、原作を全部読んでいる人ばかりでもないでしょうし。

おなじみアイアンマン

フィクションの世界の中に親友がいる

――今回、アメコミIPの広がりを示す好例として、『レゴ マーベル スーパー・ヒーローズ2 ザ・ゲーム』が発売されるのですが、マーベルに対する思いをお聞かせいただければ……と。

杉山 マーベルもそうですし、DCもそうですが、自分の人生観を培ってくれたものですね。大事なことを教えてくれたところかなと。

――“人生で大切なことはすべてマーベルから教わった”みたいな感じですね。

杉山 これは、マーベルやDCだけに限らないんですけど、たぶん人間って、フィクションの世界に親友って持っているような気がするんですね。フィクションの世界の中に親友がいるような感じがしていて……。

――それは素敵なことをおっしゃいますね。

杉山 基本的に、いわゆる“オタクカルチャー”って、全部そういうものだと思うんですよね。そうなったときに、僕にとっていちばんの親友がいるのは、やっぱりマーベルだったり、DCだったりするんですよ。

――おお、なるほど!

杉山 昔、アメコミの講演をしたときに、円谷プロの社長さんが来てくださったことがあるのですが、講演のあとに、「日本にはウルトラマンがいるのに、なぜスパイダーマンの話ばかりするのですか?」って聞かれたんですね(笑)。そのときに僕がお答えしたのが、「ウルトラマンって、僕にとっては幼なじみみたいなところがあって、すごく大事なのですが、自分が思春期だったときにそばにいてくれたのが、マーベルだったりDCだったんです」ということでした。つまり、“幼なじみと親友の差”みたいなものですね。

――なかなかおもしろい表現ですね(笑)。ちなみに、杉山さんにとっていちばんの親友は誰になるのですか?

杉山 自分がいちばんシンパシーを感じるのは、スパイダーマンですね。あと、自分の人生における生きかたの規範になっているのは、意外とスーパーマンだったりします

――おお。スパイダーマンにはどういうところにシンパシーを感じるのですか?

杉山 スパイダーマンって、ちょっとダメダメだったりするんですよね。優越感もあるけど、劣等感も持っているようなところがあって、そういうところにシンパシーを感じます。要するに、「僕はヒーローだからすごいんだ」って思っているんだけど、一方で「僕ってぜんぜんダメじゃん」と悩んでいることの振れ幅が、スパイダーマンはいちばんあったりするのかなと。

――わかります! スーパーマンが規範だというのは?

杉山 自分って、スーパーマンとバットマンには絶対なれないだろうなとは思うんです。あそこまでキチンとできないし、根性も信念もないし……。その点、スパイダーマンは何となく……。

――自分に近しいのですね?

杉山 そうですね。

――そうすると、スーパーマンはご自身の理想像みたいなところがあるのですか?

杉山 そうですね。やはり凛と貫いて生きているところが、すごく好きです。

――ちょっと、お答えしづらいかもしれないのですが、杉山さんはマーベルとDCだとどちらの世界観により親しみを感じるのですか? 「ウルトラマンと仮面ライダーのどちらが好きか?」みたいな無粋な質問になってしまいますが……。

杉山 ああ! それはよく聞かれるのですが、難しいんですよ。

――やっぱりそうですよね。

杉山 DCは人生のいい先輩がいて、マーベルは友だちがいる感じです。僕の中では。だから、飲み会やパーティーをやろうというときには、マーベルのメンバーを呼んで大騒ぎになるんですけど、自分が本当に悩んでいてどうしようかと思ったときに、バーとかに「付き合ってくれます?」と言って話を聞いてくれるのは、DCのメンバーな気がします。たとえばですが、バットマンとかを飲み会に呼んでもつまらなそうじゃないですか。

――それはあるかもしれません。

杉山 スパイダーマンとかアイアインマンとかが来てくれると楽しいけど、バットマンとかスーパーマンとかが来た日には、「酒はいい」とか「これでいいのか、君たち?」みたいな感じになってしまうじゃないですか(笑)。真剣なことを相談しようと思ったら、スーパーマンとかバットマンですよね。

――僕もアベンジャーズには入ってみたいけど、ジャスティス・リーグは少し堅苦しいような気がする……。

杉山 そうですね。「彼女と結婚しようと思うんですけど」みたいな人生の大事なことは、ワンダーウーマンとかにちゃんと相談したほうがいいかなとは思います。

――お話をうかがっていると、アメコミの世界を楽しんでいらっしゃる気がしますね。そんなふうに世界観に親しんでいると、キャラクターたちへの親近感も湧いて、映画を見たりゲームを遊んでいても、世界観が広がる……みたいなところはあるのかもしれない。

杉山 そうかもしれないですね。

――そういう意味で言うと、先ほども少しお話にありましたが、IPの魅力って大きいですよね。引いてはそれは、キャラクターの魅力でもあるのかもしれないのですが。

杉山 ですね。アメコミは、出版社がコミック自体の権利を持っているので、ひとりの人が描き続けるわけではないんですよね。『鉄腕アトム』は手塚治虫先生が描き続ける……みたいなわけでもない。何が言いたいのかというと、時代によって描く人が違うから、絵のタッチもストーリーも全部違う。だから、逆に言うと、ゲームになっても映画になっても、そんなに違和感がないんですよ。描き手が違うと考えるとすれば。

――なるほど。

杉山 ただし、映画やゲームになっても、そのキャラクターが持っていないといけない部分というのは、みんな守っている。だから、スパイダーマンはどこにいっても小僧だし、キャプテン・アメリカはどこでもリーダーシップを取って真面目だったりする。ソーにいたっては、いいヤツだけど、ちょっと抜けているところもあるとか(笑)。そういうことをきちんと守っているから、逆に違和感がないのかもしれないですね。

――作り手が違ってもキャラクターのテイストが守られるということは、この言いかたが正しいかどうかはわかりませんが、クオリティーコントロールがしっかりしているということですよね。それだけ、キャラクターに対する理解度が、深いということなのかしら。

杉山 日本で言うとアメコミって『忠臣蔵』みたいなもので、お話の大筋みたいなものは決まっていて、それが時代時代の解釈を取り入れてやっていくことのおもしろさじゃないかなと思うんですよね。いまのお話しとはちょっとズレてくるのですが、基本、ヒーローって正義を守る人ですよね。個々のコンセプトは変わらないのですが、時代によって正義と悪の定義って変わってくるから、そこに話の深みが出てくるような気がします。たとえば、昔の第二次世界大戦前のアメコミの正義は何かと言うと、“アメリカを守ること”で、敵はナチスだったりします。ところが、いまの正義となると、地球の環境問題だったり、極端な話セクハラだったりするんですよ。だから、その時代その時代で正しいことは何かというのは、いろいろな作者たちが“時代”の雰囲気を託しているから。その深みっていうのは、すごいと思うんですよね。これは決して悪い意味ではなく言うのですが、たとえば『鉄腕アトム』は手塚治虫先生の正義感や善良性で作られているし、『サイボーグ009』は石ノ森章太郎先生の信念で作られています。それはそれでとてもおもしろいのですが、アメコミにはいろいろな人の正義や真実の積み重ねで作り上げているところの深みというのがやっぱりあって、そこはすごくいいです。と言いながらも、根本のところでは、悪いヤツは悪いし、正義というのは人を助けることだと言っているところが、やっぱり好きですね。

――キャラクターや主張などで1本筋は通しつつも、時代に合わせた形でアレンジしていく……というところがアメコミの魅力だということですね。

杉山 はい。