2018年1月26日~28日に開催されている、格闘ゲームの祭典“EVO Japan 2018”。1日目の会場となる池袋サンシャインシティでは、『ARMS』部門の予選から決勝トーナメントまでが、丸1日かけて行われた。本記事では、決勝トーナメントの盛り上がりを、皆さんにもお届けしよう。
トーナメントはダブルエリミネーション方式を採用。各選手はウィナーズブラケットからスタートし、1度でも負けるとルーザーズブラケットへと移動。そこで負けると敗退となる。簡潔に言えば、1度負けても敗北者どうしのトーナメントを勝ち上がれば、優勝するチャンスがあるというわけだ。ただし、決勝戦はウィナーズ側は1勝すれば優勝だが、ルーザーズ側は2勝しなくてはならない(“EVO japan 2018”共通のレギュレーション)。
予選は1試合先取で行われ、トップ16以降は2試合先取(Bo3)。アームセットは自由に選択可能で、ステージは“ツインシネマ”、“バスタービーチ”、“スネークパーク”、“コンフィデンシャル”を除く11ステージが使用可能(4つのステージはギミックが非常に重要で、運の要素が多く絡む)。対戦ごとに両選手が3つの禁止ステージを選択し、残った5ステージからランダムで決定するというガチンコぶり。とくにギミックの多いステージは、禁止ステージに選択されることが多かった。
トップ8に進出したのは、Pega選手(日本)、KHU選手(日本)、すくらん選手(日本)、Mileve選手(カナダ)が、ウィナーズ。Cojora選手(フィンランド)、cuvelia選手(日本)、GoreMagala選手(アメリカ)、しゃとう選手(日本)がルーザーズ。日本の選手だけでなく、国際色豊かな顔ぶれが並んだ。中でも、Pega選手はプレイヤーのあいだで“皇帝”と呼ばれるほどの実力者。前回の全国大会優勝者ということもあり、優勝候補のひとりとして全選手から注目されていた。
そして決勝に進出したのが、マックスブラス使いの“皇帝”Pega選手と、DNAマンの身体を巧みに動かし相手を翻弄し続けたGoreMagala選手。Pega選手はここまで1度も負けずに勝ち進んできたうえに、準決勝のすくらん選手との対決では、一方的な試合で圧勝したということもあり、大きな期待が寄せられていた。
1試合目のアームは、Pega選手(マックスブラス)が“トースター”&“バーチカル”を選択。対するGoreMagala選手(DNAマン)はダブル“プレッシャー”で挑む。序盤からGoreMagala選手は、身体を伸ばしてパンチを避けながら、リーチの差を生かして一方的に殴り続けるという展開が続き、1試合目を奪取。王者Pega選手の苦戦に、観客たちからもどよめきが。
続く2試合目は慣れてきたのか、小さなチャンスをコツコツと生かしてなんとかパンチを当て続けたPega選手が、辛くも勝利。3試合目は、GoreMagala選手が今度はダブル“バーチカル”を選択し、身体を伸ばしてパンチを避けたかと思えば、身体を縮めながらインファイトを仕掛けたりと、自由自在な動きでPega選手を圧倒! ここで初の黒星とも言える試合展開となったPega選手。GoreMagala選手は2試合先取したわけだが、ルーザーズから勝ち上がってきたので、さらにもう2試合勝たなくてはならないのだ。
そして第4試合、お互いアームはそのままだが、Pega選手が“バーチカル”を主体に立ち回り始めるなど、動きに変化をみせる。衝撃波でパンチを弾きながら“バーチカル”を刺していき、この試合はPega選手が勝利。そしてPega選手の優勝に王手のかかった第5試合。Pega選手は完全に読み切ったのか、ダウンを取ってから、アームがつねにチャージ状態になるパンプアップからの、起き上がりに投げとパンチの強力な2択を仕掛ける黄金連携を決め続け、最後は圧勝! “EVO Japan 2018”『ARMS』部門優勝は、Pega選手となった。
Pega選手は「GoreMagala選手のことは、3ヶ月前から対策していました。ストレート勝ちするつもりだったのですが、とても強かったですね」と、余裕のあるコメントを披露。そして、Pega選手には、優勝トロフィーとメダル、優勝記念ジャージやチャンピオン認定証が贈呈された。
そして、12月にPega選手が返上したチャンピオンベルトが『ARMS』プロデューサー・矢吹光佑氏より、再度手渡された。……のだが、「優勝したんですけど……なんだかなぁ、こんなんじゃ全然足りない! またベルト返上します!」と、またもやベルト返上! これには思わず、会場全体からも大きな歓声があがっていた。
[2018年1月28日20時修正]矢吹氏のお名前の表記に誤りがあったため、修正いたしました。読者並びに関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。
筆者の個人的な感想としては、会場全体を巻き込むような盛り上がりが、本当に素晴らしかった。国内初開催の“EVO”ということで、どう盛り上がったら良いのか、どう楽しめば良いのか分からない観客たちの戸惑い。海外選手たちが初めて日本の“EVO”に参加する不安などもあったと思うが、それらを『ARMS』と、『ARMS』のプレイヤーたちが払拭したように思う。1日目を飾るに相応しい、素晴らしい大会だった。
皇帝にミニインタビュー!
最後に、試合を終えた直後に行われた“皇帝”Pega選手へ、海外メディアなども交えての囲みインタビューが行われた。その模様をお届けしよう。
――優勝おめでとうございます。まずは、優勝した感想をお聞かせください。
Pega選手 もちろん優勝できてうれしいです。ただ、僕だけ本気度が違うような気がして、なんだかなぁという気がしています。もちろんほかの選手たちも本気だとは思いますが、僕が本気すぎるのかなと。
――印象に残っている試合はありますか?
Pega選手 僕が1度負けた、GoreMagala選手との試合ですね。GoreMagala選手への対策はしたのですが、まだまだ足りないなと痛感しました。なんとか試合中に、対策ができて良かったです。
――予選から決勝まで、海外選手たちと多く戦ったと思いますが、日本の選手と海外の選手で、違うポイントはありましたか?
Pega選手 日本勢、海外勢のトップランカーたちは同じくらいの強さだと思っていましたが、海外勢はアームの攻略が進んでいないのかもしれませんね。また、海外勢の方々は日本勢の強い選手を知らないので、アームで対策をされることがなくて、海外勢のほうが不利だったのかなと感じました。
――今回もベルトを返上しましたが、その真意を教えてください。
Pega選手 大会で優勝したい、戦いたい、ということに尽きますね。ベルトを保持すると、大会優勝者と対決して防衛戦を行うわけですが、その人だけに勝ってチャンピオンを名乗るのは、僕は納得できないです。これはもちろん僕個人の意見で、防衛戦という制度自体は面白いと思っていますよ。
――2018年2月10日~11日に開催される“闘会議2018”の大会に出場される予定は?
Pega選手 出場しますし、もちろん優勝します。
――『ARMS』がほかの格闘ゲームのように、コミュニティが大きくなるにはどうすればいいと思いますか?
Pega選手 『ARMS』はまだまだ始まったばかりのタイトルです。ですが、今回の大会のように、ほかのゲームのプレイヤーたちも巻き込んで盛り上がりをみせていますから、もっともっと人気が広がるのではないかなと。気軽に遊べるゲーム、ガチンコで対戦するゲーム、子どもたちが遊ぶゲーム、そしてeスポーツとしても、すべての要素をしっかりと両立していくことが重要ではないでしょうか。
――Pega選手は、なぜ『ARMS』を始めたのですか?
Pega選手 最初は注目していなくて、体験会などにも参加していませんでした。友だちが面白いと言うのでやってみたら、「あれ!? このゲームすごく面白いんじゃないか!?」と思い、大会などにも参加するようになったんです。そこで優勝を目指した結果が、いまの僕ですね。
――ファンに向けて、ひとことお願いします。
Pega選手 『ARMS』はとても面白いゲームです。これからプレイヤーがどんどん増えていってほしいですね。僕ももちろんやり続けますし、これからももちろん優勝し続けます。