『レイジングループ』PS4パッケージ版が2018年1月25日に発売! キーパーソンたちに聞く、老舗ケムコがパッケージ販売に再参入する理由

2018年1月25日にPS4版『レイジングループ』を発売するケムコ。パッケージ販売に再参入することを決めた老舗ブランドの事業戦略をキーパーソンたちに聞く。

 幾度か事業の体制を変えつつも、ファミコン時代から現在にいたるまで、ゲーム業界に独特の存在感を示してきたゲームブランドがある。その名はケムコ(KEMCO)。家庭用ゲームに留まらず、ここしばらくは携帯電話やスマホ向けのゲームを主軸としてきた印象の強いケムコだが、現在のゲーム事業はどうなっているのか。ケムコブランドを運営するコトブキソリューション社のキーパーソン3人(黒川雅臣氏、黒木めぐみ氏、野吹修平氏)にインタビュー取材を敢行。2018年1月25日にPS4版『レイジングループ』の発売を控えている老舗ブランドの“いま”に迫る。

※本記事は、週刊ファミ通2017年12月28日号掲載の記事を加筆・再構成したものです。

ファミコン時代からのゲームファンにはなじみ深いケムコ。現在、その老舗ブランドのゲームソフト開発拠点は、広島県の中央部に位置する東広島市にある。

プロフィール

黒川雅臣氏(くろかわ まさおみ)

コトブキソリューション 取締役 モバイルビジネス推進事業部 事業部長

黒木めぐみ氏(くろき めぐみ)

コトブキソリューション モバイルビジネス推進部

野吹修平氏(のぶき しゅうへい)

コトブキソリューション モバイルビジネス推進部

まずは改めて振り返る、老舗ブランド・ケムコの歴史

――昔からのゲームファンにはケムコさんの名前はなじみ深いと思いますが、改めてこれまでのケムコの変遷について教えてください。

黒川 そもそもは、うちの会社の前身にあたるコトブキシステムという会社がゲーム事業を行っていたんです。海外で発売されていた『ダウボーイ』という作品をファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)向けに移植開発し、1985年にリリースしたのが最初ですね。その後も『スパイVSスパイ』やオリジナル作品の『スペースハンター』など、ファミコン向けにたくさんのゲームを出していました。当時は、他社IP(知的財産)ものを多数出していましたね。

――ファミコン時代の初期から積極的にゲーム開発をされていましたよね。

黒川 ええ。1980年代の後半くらいからはRPGを作るようになりまして。アドベンチャーに近いようなものや、『真田十勇士』のような戦国ものなど、当時の他社さんが出されていたものとは違う雰囲気のRPGを作っていました。そういったオリジナル作品と並行して、海外作品の移植開発なども行って。その後も事業は順調だったのですが、2000年代に入ると少し様子が変わってきたんです。コンソール向けは大規模なゲーム開発が主流となり、コスト増に耐えきれず、事業の見直しをすることになりました。

――ちなみに、黒川さんが入社されたのはいつごろになるのでしょうか。

黒川 僕は2001年の入社です。当時のコトブキシステムは、「携帯電話で収益を出していこう」という話になっており、ファミコン時代のゲームをフィーチャーフォンに移植して出していました。フィーチャーフォン市場も最初はドル箱市場でしたから、移植作品を出すだけでも十分儲かったのですが、とはいえ、移植作品だけを継続して出していくのは難しいですよね。

――確かに、移植できる作品も数に限りがありますからね。

黒川 そこでフィーチャーフォンでRPGを作っていくことになり、その取っ掛かりとしてファミコンでリリースした『インドラの光』を復刻版として発売したんです。お陰様で、これがかなりヒットしまして。そのまま10年くらいガラケーにRPGを出し続けていたのですが、2008年になるとiPhoneが登場して、今度はRPGよりもグローバル向けのタイトルが必要だろう、という話になりました。

――スマートフォンの登場で、路線を変更されたわけですね。

黒川 最初はフライトシミュレーションのようなゲームを作ったのですが、これはうまくいかず、「やはりうちはRPGだな」と(笑)。そこからは、スマートフォン向けに積極的にRPG作品をリリースし続け、2014年ころからは、スマートフォン向けに作ったRPGを反対に家庭用向けに移植するようになりました。

――RPGにリソースを集中したことが功を奏したわけですね。2000年代にゲーム事業の見直しをされたということですが、そのときに開発メンバーも変わられたのでしょうか?

黒川 じつはそのときに会社を分社しまして、少しややこしいのですが株式会社ケムコという家庭用ゲーム専門の会社と、僕が所属していたモバイル専門の株式会社コトブキソリューションという2社に分かれたんです。株式会社ケムコのほうは、『Rogue Ops~ローグオプス~』というオリジナルタイトルを出したりしていました。

――家庭用ゲーム機向けの会社とモバイル向けの会社にわかれたのですね。

黒川 そうですね。ただ、じつは当時の株式会社ケムコはプレイステーション2のメモリーカードなども作っており、むしろそういった周辺機器のほうが収益を上げている状態でした。その後、プレイステーション3になってメモリーカードもなくなり、収益が立たなくなってきたので、家庭用ゲーム系のビジネスは終了。現在の株式会社コトブキソリューションに事業を譲渡していただいた、という流れになります。

――最終的にコトブキソリューションが老舗である“ケムコ”の暖簾をブランド名として引き継いだわけですね。

黒川 そういうことになりますね。

ハイペースでRPGを作り続ける独自の路線

――そんな長い歴史を持つケムコですが、現在リリースされているゲームは、どんな年齢層の方々が作られているのでしょうか。

黒川 だいぶ若くなっていますね。いまはゲーム事業に20名程度が在籍しており、制作スタッフの平均年齢は30歳すぎくらいです。

黒木 社内にディレクターを始めとする制作チームとマーケティング担当がいて、そこを軸に、社外の開発会社さんと協力しながらゲームを作っている体制です。

――ゲームのプランニングは社内で行って、実際の製作は外の会社と協力して進めるというイメージでしょうか。

黒川 RPGタイトルについては、コンセプトは社内で考えますが、製作はプランニングも含めて協力会社さんに行って頂く場合が多いです。なので、社内にはRPGの開発者はほとんどいません。ただ、いまケムコが力を入れているアドベンチャーに関しては、自社内でほぼ完結しています。『レイジングループ』もキャラクターのイラストについては外部の方ですが、それ以外はほぼ内製ですね。

野吹 キャラクターは外のイラストレーターさんにお願いしましたが、インターフェイスと、レイジングループについては背景と一部キャラも、社内グラフィッカーが担当しています。アドベンチャーのシナリオについては僕が担当させていただいていますね(『レイジングループ』のシナリオは、野吹氏が“amphibian”名義で執筆している)。

――なるほど。ちなみに現在のケムコは、スマホゲームアプリとしてリリースしたRPGやアドベンチャーゲームを家庭用ゲーム機向けにダウンロード販売するケースが多いようですね。なぜこのような戦略を取られているのでしょうか。

黒川 長年培ってきたRPG作りのノウハウが豊富にあった、というのが大きいですね。RPGは1本目がヒットすれば、そのシリーズの2本目、3本目の収益もある程度は見込めるという特徴がありますし、ユーザーさんのフィードバックに対する改善もしていきやすいんですよ。それに企業文化としても“一発当たればいい”というよりも、連続してゲームを出すなかで中身を改善していく、という考えかたなので、RPGがマッチするんです。

――それにしても、新作ゲームをリリースするペースがめちゃくちゃ早いですよね。

黒木 フィーチャーフォンの時代には1年で23作品を発売したこともありました。さすがにスマホになるとそこまでの本数は難しいので、いまは年間6本か7本というペースです。

――それでもハイペースだと思います(笑)。RPGだと1本終わった後に、続けてプレイしてくれるユーザーさんが多いのでしょうか?

黒川 やっぱり1作目を楽しんでいただいた方の何割かはリピーターになっていただいている、という感じはしますね。具体的な数字は言えませんが、ニンテンドー3DSでのダウンロード販売でも安定した売り上げを出せているので、固定ファンの方が一定数いてくださっていると思います。よくネットでも「安定と信頼のケムコ」なんて書かれていて、まさにその言葉がうちの現状を物語っているんじゃないかな、と(笑)。

――ちなみに、年間6、7タイトルに落ち着いたのはどういった理由なのでしょうか。

黒川 いまはスマートフォンでもRPGを出すメーカーさんが増えていますから、競争相手が多くてどうしてもうちの1タイトルあたりの収益が小さくなってきているんですよね。フィーチャーフォン時代はRPGを出す会社がほとんどなくて、うちにこのジャンルの利益がほぼ集中していたんです。

――確かにあの当時、積極的にRPGを出していたのはケムコさんくらいでしたよね。

黒川 なので、当時は1年に20本のRPGを出しても、ほぼすべてが採算割れはしないという状況だったんです。そこで調子に乗って、中国に進出して失敗したりもしているのですけれども(苦笑)。前述のように、いまは競合相手が多いですし、基本プレイ無料のタイトルが大半ですから、やっぱり1タイトルあたりの収益は下がってきますよね。

――制作費自体も昔より大きくなりますしね。

黒川 そうです。なので、フィーチャーフォンに比べると、かなり利益率は下がります。そこで、海外市場でもリリースできるようにグローバル対応をするようになるのですが、そうすると今度は言語対応なども含めて開発期間が伸びるので、おのずと年間のリリース本数が減っていった、という感じですね。

――なるほど。とは言え、年間6~7本のRPGリリースは、他社さんに比べるとそれでもまだ多いですよね。

黒川 確かに、だいたい1~2か月に1本は出るようなペースですからね。でも、ちょうど1本遊び終わったら、つぎのRPGタイトルを探すことができる、というようなサイクルにはなっていると思います。いまのペースでRPGを出せているのは、すべて協力会社さんのおかげですよ。みなさん、よく次々と新しいアイデアが浮かぶな、と思います。