Blizzard Entertainmentのアクションシューテイング『オーバーウォッチ』の国際プロリーグ“オーバーウォッチ リーグ”。その開幕初週の会場として使われた“Blizzard Arena”の舞台裏に潜入してきたので、フォトリポートをお届けしよう。
Blizzard Arenaがあるのは、カリフォルニア州バーバンク。ロサンゼルス郡の北に属するバーバンクは、ハリウッドの映画・テレビ産業の延長にある街で、かの有名な“HOLLYWOOD”の看板の向こう側に行ったところにある。ちなみにロサンゼルスの南東にあるアーバインのBlizzard本社からはクルマで1時間ほどだ。
周辺はワーナー・ブラザース系列の撮影スタジオなどが並ぶ界隈で、Blizzard Arenaが入っている建物は、もともと米大手テレビ局NBCの収録スタジオだった場所。現在はThe Burbank Studiosという複合スタジオ施設となっている巨大な敷地の一角を改装してアリーナ仕立てにしているのだが、裏手に入ると今でもスタジオとして使われていたりする。
実はBlizzard Arenaは『オーバーウォッチ』専用というわけではなく、古くはリアルタイムストラテジーゲーム『スタークラフト』シリーズや、直近ではオンラインカードゲーム『ハースストーン』、MOBA『Heroes of the Storm』など、競技性の高い対戦ゲームを数多く抱える同社の公式イベント施設という扱い。なので『ハースストーン』の大会なども行えるようになっている。
とはいえ訪れた時はもちろん『オーバーウォッチ』一色。入り口から入ると『オーバーウォッチ』グッズ満載の物販が出迎えてくれる。各チームにフランチャイズ都市が設定されているなど、オーバーウォッチ リーグはプロスポーツリーグのような方向性を目指しており、キャップやチームユニフォームといったスポーツ系でおなじみのチームグッズが多めなのもちょっと変わったところ。
スタジオ内の客席はアリーナ席とスタンド席で構成されていて、合計450席。正面には選手が戦うステージと、それを少し覆うような形で巨大スクリーンが設置されていて、スタンド席後方からでも結構何が起こっているかがわかるのが嬉しいところ。それでもまだ細かい表示は読みづらかったりするが、ゲーム画面に加えて表示を拡張することで対応している。
(この写真のみ公式素材)
例えば今回のリーグでは、中央のメイン画面の両脇に、それぞれの選手が選択中のヒーロー、そして残り体力やアルティメットのチャージ具合などをどデカく表示。倒されたヒーローは暗転するし、復活までのメーターまでリアルタイムに反映される。Blizzardの自社タイトルだからできる芸当とも言えそうだが、こういう“大会のディスプレイ用にデータを吐き出せる”仕組みを用意しておくのは、業界内でもっと広まってほしいところだ。
大会進行中にも関わらずステージ裏も見せてもらったのだが、面白かったのは選手が使用するPCについて、データ部分のハードドライブを大会側で一括管理していたこと。SSDが全選手分用意してあって、試合の入れ替えの合間にスタッフが差し替えるという方式で、こうすることによって不正防止とプロ選手だからこそこだわりたい個々の設定の保持を両立しつつ、スピーディーな入れ替えを実現しているようだ。
Blizzard Arenaはオフラインイベントのための施設というだけでなく、それを世界に発信するための発信基地も兼ねており、放送設備もかなりゴージャス(スタジオを選んだのも、機材のためのケーブルの取り回しなどが楽だからなんじゃないかと思う)。
10人の選手のゲーム映像と表情を捉えるWebカメラ、ステージを動き回るカメラに、スタンド席から捉える俯瞰カメラ、アリーナ席の後方には番組進行と試合間の解説などを収録するミニステージもあって、試合中の実況を収録する部屋はさらに別。相当な数の映像・音声ソースをミキシングして、番組として公式サイトほか、配信パートナーのTwitchやMLGなどに送出している。
またスタジオ部分には、観戦者機能を使ってゲーム内カメラを切り替えながら中継に使える映像を撮影する“オブザーバー”班や、リプレイ映像を必要な時にすぐに取り出すための“EVS”と呼ばれる班のための部屋も用意されていて、機材が山のように積まれている。
このリーグはビジネス的に始まったため、ホーム/アウェイ制はおろか、フランチャイズ制自体がまだうまく機能していなかったり(フランチャイズ都市に行ったことがない選手がいたり、その国の選手すらいないチームがあったりするんだから当然だ)、果たして長期にわたるリーグに各チームや視聴者がどこまでついていけるのかといった問題はある。それでも、オフライン/オンラインの大会視聴体験をプロスポーツ並みのものにしていこうという志は、アリーナのいたるところからしっかりと感じられた。