小部屋にずらりと並ぶ、444のキャラクターたち
KONAMI在籍時に“ミノタロー”名義で『ラブプラス』シリーズのキャラクターデザインを手掛け、同作を愛する紳士淑女(ファン)たちの“お義母さん”としてブレイク、退社後は改名しイラストレーター・マンガ家として活躍を続けている箕星太朗氏。
箕星氏がこれまで手掛けてきた444人のキャラクターを集めた、初のキャラクター展“888EYES ~888の瞳、気づけばこんなに産みました~”が、東京・新宿のギャラリーエルシャダイにて2018年2月6日までの期間限定で開催されている。本記事では、このキャラクター展初日の模様を、同日に来場した箕星氏へのインタビューとともにお届けする。
会場のギャラリーエルシャダイは、新宿駅から徒歩7~10分程度のビルの1室にある。来場者は、この小さな空間で飲み物(フリードリンク制)を片手にくつろぎながら、壁やテーブルの上に展示されたキャラクターを鑑賞したり、入口脇の物販コーナーで買い物を楽しむことになる。
展示には、『ラブプラス』以前の『ときめきメモリアルONLINE』、『ランブルローズXX』といった懐かしのタイトルから、最新作である『GOD WARS ~時をこえて~』や『少年マガジンエッジ』で連載中のコミック『制服ロビンソン』まで、この10数年で箕星氏が手掛けた中から10作品のキャラクターが並んでいた。
まとめて観ていると、KONAMI、カプコンなど多くのメーカーを股にかけて活躍しているだけでなく、作品に応じてイラストのタッチが大きく変わっているのにも気付く。『ラブプラス』シリーズのように、長く続けているからこそのタッチの変遷もあるようだが、近年の作品を並べてみると、意図的に大きく変えていることがよくわかっておもしろい。
場内の椅子に座って、首をぐるっと回すだけでそれらのほとんどを楽しめるというのは、美術館の緊張感溢れる静謐な雰囲気が苦手な記者にとってはとてもありがたい……なんてことを思いながら、この日来場していた皆さんと雑談も楽しんだ。お互い箕星氏のファンなので、共通の話題には事欠かない。
また、この日は箕星氏本人が来場し、今回のキャラクター展に合わせて制作された図録の購入者へのサイン会を行っていた。その盛況たるや、会場外まで行列ができていたほど。ひとりひとりと言葉を交わしながら、イラスト付きでサインを描き上げていたが、相変わらずの筆の速さであった。
せっかくの機会ということで、サイン会終了後、箕星氏に話を伺ってきた。
箕星太朗氏へのミニインタビュー!
――今回、どんなことがきっかけでキャラクター展を開くことになったのでしょうか?
箕星 某作品の打ち上げで竹安(佐和記氏、ギャラリーエルシャダイオーナー)さんに声を掛けていただいたことがきっかけです。じつはいまの時期、『制服ロビンソン』の作業などもあって首が回らない状態だというのがわかっていたので、一旦は「忙しいので……」とお断りさせていただこうとしたら、「大丈夫だ、問題ない」と(笑)。
――竹安さんだから言える殺し文句ですね(笑)。
箕星 竹安さんのほうで展示作業だとかいろいろやるから大丈夫、ということだったのですが、実際は僕でないとできないことが多かったので、けっこう自分で動くことになりました(笑)。何しろ、プライベートでは絵を描かないので、版権もの以外に絵がないんですよ。しかも、どんなキャラクターをやってきたかとかは僕でないとわからないことが多かったので……。
――最近の作品はともかく、『ラブプラス』以前のものなどデータベースがあるわけでもないから、確かに箕星さん以外にはやれないですね。
箕星 そうなんです……。でも、お願いしてみたら各社さん本当に快く「いいよ」って言ってくれて。おかげで、こんな充実した展示にすることができました。
――この数年間で、本当にいろんなメーカーさんとお仕事されていますよね。それもあってたいへんだったと思うのですが。
箕星 昔『花の子ルンルン』というアニメがあって、その主題歌で「いつかはあなたの住む街へゆくかもしれません」という歌詞があるのですが、僕のスタイルはまさにそれなんですよ。「いつかはあなたの会社にゆくかもしれません」と(笑)。ゲーム業界渡り鳥なんです。生きているうちに全メーカー制覇が目標ですかね。冗談ですけど!
――いまのペースで仕事をされていたら夢ではないと思いますよ! それにしても、これだけ各方面で働いていて、息抜きとかはどうされているんですか?
箕星 趣味とかはないんですよ。とにかく忙しくて……。今年も3日間しか休んでいませんし。だんだん体重も増えてきたので、何とかしないととは思っているのですが。
――タマゴラス(『制服ロビンソン』で補給を運んでくるタマゴ型のロケット)に休暇を注文しましょう!
箕星 いやぁ、本当にしないとマズいですよね(笑)。僕は自宅で作業をしているので、休みがないとこういうお仕事でもなければまったく家を出ないから、運動不足になっちゃうんですよ。
――最近は“かわいい系”のキャラクターが多いですが、『ランブルローズ』のような作品もまた見たい、という声も上がっています。
箕星 この前、僕のほうからも内田(明理氏、現・ユークス所属。『ラブプラス』や『ランブルローズ』シリーズのプロデューサー)さんに言ったんですけど、忙しいみたいですね(笑)。『ランブルローズ』は、いま見ると粗い部分も多いのですが、当時はシルバーとかエナメルとかの質感が使えるということで、けっこう使い倒していました。
――あの質感がセクシーさを演出していましたよね。むしろ、服を着ていたほうがセクシーに見えるというか。
箕星 露出しているからエロじゃない、ということを世に知らしめた作品だと自負しています。表現方法はひとつじゃないんだ、と! ミニスカよりもぴっちりとしたスパッツのほうがエロいんだと。何を力説しているんでしょうか(笑)。
――さて、さわやか系に話を戻して(笑)、現在連載中の『制服ロビンソン』もいよいよ佳境ですよね。
箕星 僕は、まずシナリオを作ってからそれをネームに落とし込むという形で作業をしているのですが、どうしてもページが足りなくなってしまって、毎回苦労しています。今日も、帰ってどうしようかと内心困っているところです。
――気は早いですが、次回作でどんなものをやってみたいかは考えているのでしょうか?
箕星 図録にも収録されている、『元祖いもうとラーメン』のような世界をやってみたいですね。基本的に、やったことのないものに挑戦したい人間なんですよ。
――楽しみにしています! ちなみに、今後はどんな予定が入っているのでしょうか?
箕星 いま『制服ロビンソン』のほかには、2019年のプロジェクトに関わっています。それも3連発くらいになる予定なので、かなりすごいことになると思います。そのうちどこからか公開されるはずですので、楽しみにしていてください。「あぁ、あの時の話がこれだったのか!」と。
――すごい爆弾が投下された気が(笑)。そちらも気になるところですが、最後にひと言メッセージをお願いします。
箕星 このキャラクター展は、キャラクターデザイナーとしての僕の半生が詰まっているので、その変化を楽しみにしていただければなと思っています。僕は描き続けているとどんどん頭身が上がっていってしまうタイプなので、キャラクターデザインを制作チームに託すときは「なるべく頭身を下げるようにしてください」と頼んだりしているんですよ。あとは、たまにはゆっくりとゲームを楽しみたいですね。1年に1本くらいはクリアーできるようにがんばりたいと思っています。
【展示作品リスト】
KONAMI
『ときめきメモリアルONLINE』
『ランブルローズXX』
『ラブプラス』シリーズ
『風雲なでしこコレクション』
スパイク・チュンソフト
『イグジスト・アーカイヴ』
角川ゲームス
『√Letter ルートレター』
『GOD WARS ~時をこえて~』
カプコン
『めがみめぐり』
講談社
『制服ロビンソン』
Gatebox
『逢妻ヒカリ』