2018年発売予定のプレイステーション4用ソフト『Detroit Become Human』について、エグゼクティブプロデューサーであるギョーム・ド・フォンドミエール氏にインタビューを行った。

 『ファーレンハイト』、『HEAVY RAIN -心の軋むとき-』、『BEYOND: Two Souls』など、インタラクティブかつ映画的なストーリー体験を大胆に追求してきたフランスのゲームスタジオ、Quantic Dream。

 2018年発売予定の『Detroit Become Human』は、その最新作となるプレイステーション4用アドベンチャーゲームで、近未来のデトロイトを舞台に、感情を持ち始めたアンドロイドたちをめぐる物語を描く。

 現在アメリカのカリフォルニア州アナハイムで開催されているプレイステーションプラットフォームのゲームイベント“PlayStation Experience 2017”では、前夜祭のプレゼンテーションでPS4 Proでの実機デモが披露されて大いに盛り上がったのち、会場にも試遊台が出展され、注目を集めていた。

 このたび本誌では本作のエグゼクティブプロデューサーであるギョーム・ド・フォンドミエール氏にショートインタビューを行うことができたので、その模様をお届けしよう。

ギョーム・ド・フォンドミエール

コンサートやファッションショーなどナイトライフに関連した会社を16歳で設立するなど、起業家精神に長けた人物。1993年に3DCG会社Arxel Tribeを共同設立し、バンドデシネ作家のメビウスとのコラボ作品などを手掛ける。2003年よりQuantic Dreamに参加し、現在は創業者でメインクリエイターのデヴィッド・ケイジ氏との共同CEOを務める。『Detroit』での役職はエグゼクティブプロデューサー。

――最初は簡単な確認から。すべてのエピソードはデトロイトで起こるといことでいいですか?
ギョーム そうですね。ゲーム全体がデトロイトで起こることです。

――昨晩のプレゼンテーションでは、犯人を自分で撃ちました(※E3では同じシーンでスナイパーが射殺するというデモがあった)。でも恐らく救うこともできたわけです。こうした行動はどのように後のエピソードに影響するのでしょうか?
ギョーム プレイヤーに、アクションや決断を通じて物語を変える可能性を本当に与えるのがこのゲームのコンセプトです。結果として、本当にあらゆる行動に“結果”(としての影響)が起こります。

 ストーリーをネタバレしてしまうのは避けようと思いますが、例えば撃たれて負傷していた警官を救うか救わないかも結果に出てきます。コナー(主人公格のキャラクターのひとり)が死ぬとか、人質になっていた女の子が生存できなかった場合などは、もちろんドラマティックな変化が待っていることでしょう。

――そのエピソードの中だけでなくということですね。
ギョーム そうです。あるキャラクターの決断が後の別のキャラクターのエピソードに影響してくるようなこともあります。3人の主人公格キャラクターがいますが、彼らは同じデトロイトという街にいて、同じ時期に動き回っているわけですから(そういうことが起こる)。全体のストーリーが内部で繋がり合っているんです。

コナーのほかに、マーカスとカーラというアンドロイドが登場する。

――プレゼンテーションの話に戻りますが、選択肢が出るたびに観客が思い思いにあなたに選んで欲しい行動を叫んでいるのを見て、他人の意見を聞いてみるのは面白いなと思いました。配信者が視聴者の選択を目にできても面白いことになりそうですよね。そういった感じのことをサポートする機能などはありますか? その……2018年ともなれば、そういうのがあってもいいじゃないですか。
ギョーム ハハハ、その気持ちはわかります。先程も言った通りあまり多くをネタバレしたくはないのですが、ふたつのことが言えると思います。

 まずひとつわかって頂きたいのが、これがとてもエモーショナルな話であるということ。社会に関連したトピックやテーマを扱った、個人的な体験になっていきます。

 公衆の面前であっちこっちから寄せられる「こうしてくれ」という意見を聞きながらプレイしていたのも、ひとつのプレイ体験と言えるでしょう。でもそれは、実際の(意図された)プレイとは異なります。

 あなたはあなたの決断によって問題に対峙しなければいけないんです。場合によっては、非常に難しい倫理観を問われることもあります。我々としてはそういった形でストーリーがプレイされるように意図しています。

選択肢が出るたびに会場からは「魚を救え!」「ほっとけ!」といった具合に声があがっていた。

ギョーム それでも、プレイヤーがどうしたか、他の人がどう選択したかというのは興味深いものですよね。だからそこについてのコミュニケーションを促進する仕組みは考えています。自分がどう選択したか確認して、それをいくらかの他の人たちと対照的に示してみるといった感じですね。

――Quantic Dreamのゲームは、いつも超自然的な要素がつきものでした。でも今回はシリアスなSFの話ですよね。……それとも超自然的な力もあるんでしょうか?
ギョーム 今回、超自然的要素というのはありません。いくらか神秘主義的な部分はあると言えるかもしれませんけども、ストーリーはリアリティに立脚しています。

 ところでSFとおっしゃいましたけども、私としては「予測できる少し先の話」と言った方が近いかと思います。ゲームの時代設定はいまから20年以内ですので、皆さんとも地続きの世界なわけです。世界共通のテーマに踏み込んでいきます。もうすぐそこにある未来に皆さんをお連れするわけです。

 現在非常に多くの人がAI産業に従事しているわけですが、これは恐らく我々の生活に大きなインパクトを与えることと思います。いずれ我々が本当に目にするだろう、そういう近い未来なわけです。人間によく似たアンドロイドがそこら中の通りを普通に歩き始めたら何が起こるんでしょうか? 彼らが人々から仕事を奪い始めたらどうなるんでしょうか? では我々と同じぐらいの知能になったら? 我々はもっと知的になれるかもしれませんが、では彼らが感情を持ったらどうなるんでしょうか?

――本作におけるアンドロイドが置かれた状況は、ある種の社会問題に対する比喩とも考えられますよね。差別問題や対立などは、本作の開発期間のあいだに大きくなって来たと思いますが、こうした情勢を予期していたのでしょうか?
ギョーム 残念なことにそういった問題は、新しいものではない世界共通の話だと思うんですね。どんな文化でも文明でも、“我々”と“そうではないもの”の対立や恐怖があります。社会の中の特定のグループに対して、そういった感情が大きくなっていくことは常にあったと言えるんじゃないでしょうか。

 もちろん、指摘されたように我々はアンドロイドを“我々ではないもの”の一種の比喩として使っています。でもこの世界でのそれは、妙に我々に似ていて、同じような行動をするわけです。(見た目やふるまいであまり区別できないことで)これはより根本的な問いに繋がっていきます。

 つまり、人間であるということはどういうことなのか? そしてそのような状況で、人間とアンドロイドはどれだけ違いがあると言えるのか? この現代社会では、私とあなたはいろいろ違う所があって、異なる宗教や肌の色があるわけですよね。そういった具合に、本作は世界共通のテーマと繋がっています。

「きつい作業は彼女に、自由をあなたに」。奴隷市場を連想させるシーン。

――今度はローカライズに関しての質問です。本作では選択肢がシンプルな短い単語で示されますね。こういう時にたまにあるのが、翻訳でニュアンスが抜け落ちてしまって、選んでみたらキャラがまったく望んでないことをし始めたり、予期していないことを言い始めるというケースです。そういったことを避ける工夫などは考えていますか?

ギョーム オリジナルの英語と矛盾が起きないよう、各国版についてSIEと非常に密接に作業を進めています。日本語では細心の注意が必要だというのは知っていますし、谷口新菜さん(SIEローカライズスペシャリスト)が頑張ってくれていることと思います。私としてはローカライズでどんなニュアンスも抜け落ちないよう願っています……が、この記事が出たら彼女はナーバスになるでしょうね(笑)。

――では最後にあなたの考える、本作のもっとも大きな部分、過去作とは異なる新しい部分はなんでしょう?

ギョーム 技術やらなにやら新しい部分はたくさんありますが、本質的な最も大きな違いと言えば、ごまかしはもうないということです。ストーリーは本当にドラマチックに分岐しますし、初めの方から起こります。

 すでにお話したように、プレイヤーによる選択は重大な意味を持ち、キャラクターの運命にインパクトを与えます。すべてのプレイヤーキャラクターは死ぬことがありますしね。プレイヤーが真に自分の物語を持てると思います。プレイによって選択がちゃんと異なってきますしね。どれぐらい倫理的な選択があったか、具体的な数字はすぐには出てきませんが、数はとてもとても多いです。

 ですので、本作が皆さんにとって非常に面白い旅になるのではと思います。というのは、ゲームが個人としてどうするのか問うてくるからです。人間であるとは何なのか? もっと言えば、現代においてそれはどんな意味を持っているのでしょうか?

あれギョームさん、コメカミのそのマークは……。「デヴィッドからはGFB型と呼ばれたよ」(※GFBは同氏の名前のイニシャル)