2017年9月21日にリリースされて以来、ローカル、オンラインともにカジュアルな対戦アクションゲームとしてプレイされている『ぺんぎんくんギラギラWARS』。販売元のシティコネクションは、オンライン対戦のマッチングを支援する時間帯“ギラギラタイム”を連日設けるなど、精力的にプロモーション展開している。さらに12月6日には、サンソフトの名作ゲーム『へべれけ』のキャラクターたちが使用可能になる有料追加コンテンツを配信開始……と、留まるところを知らない『ぺんぎんくんギラギラWARS』の展開について、開発チームの主要スタッフに尋ねてみた。

『ぺんぎんくんギラギラWARS』開発者インタビュー やがて“ギラボール”はレトロゲームキャラクターたちの公式競技になる!?_01

参加者
松下寿志氏(文中は松下)(写真・左)
『ぺんぎんくんギラギラWARS』ディレクター

上田祐美氏(文中は上田)(写真・中央)
同 アートディレクター、グラフィッカー

山邊颯太氏(文中は山邊)(写真・右)
同 シナリオ、音楽ディレクション(一部)

なぜ、いま『へべれけ』なのか?

──先日配信が始まった『へべれけ』のキャラクターの追加コンテンツには驚きました。コンテンツの追加に関しては当初から決まっていたのですか?

松下 追加コンテンツの開発に関しては、『ぺんぎんくんギラギラWARS』のリリース直後から進めていました。

上田 何のキャラクターを追加するかは、当初は決まっていなかったんですよ。初めはご当地のゆるキャラにしようとか(笑)。

山邊 “ペンギン縛り”で、いろいろなペンギンのキャラクターを集めてみようなんて案もありましたね(笑)。

シティコネクション代表・吉川延宏氏 「もっと接近しましょ」がウリになっているところもあったので(※1980年代にリリースされた、石川秀美のアイドル歌謡曲。『ぺんぎんくんギラギラWARS』では正式なライセンス契約に基づいて制作されたアレンジバージョンがBGMとして収録されている)、最終的には当時の人たち向けのものを、ということにしました。

上田 (『へべれけ』の版権を保有している)サンソフトさんとは、以前クラリスディスクでサウンドトラックCDをリリースした縁もあって、キャラクターの使用を快諾していただけました。

山邊 “へべ”(メインキャラのひとり)は、僕としては”ペンギン縛り”の範疇だと思っています(笑)。キャラクターの頭身や雰囲気が、もともとのメンバーに近かったことも決め手になりました。

──もっと手近なところ……といったら失礼ですが、(シティコネクションがライセンスを保有している)ジャレコゲームのキャラを使うという手もあったのでは。

山邊 そういう案もあったのですが、それはもっと別の使いどころがあるだろうということで、今回は見送りました。

吉川 原作の『ぺんぎんくんWARS』自体がジャレコIPではないこともありますが、こうしたレトロゲームコラボはジャレコにこだわらず、ボーダーレスにやっていきたいと思っています。

『ぺんぎんくんギラギラWARS』開発者インタビュー やがて“ギラボール”はレトロゲームキャラクターたちの公式競技になる!?_03

あらゆるユーザーが喜べる追加コンテンツとしての調整を

──いざ『へべれけ』のキャラクターをつくるとなった時のお話をお聞かせください。

松下 サンソフトさんが「もう自由にやってください」とおっしゃってくれたので、とてもやりやすかったですね。3Dモデルもこちらで制作したものが、ほぼそのままでチェックを通りました。『へべれけ』は数々のスピンオフ作品がリリースされていますが、今回は原点であるファミコン版(1991年)の、4人のプレイヤーキャラクターを選びました。

──あ、ということは、追加キャラの4枠をどうしようかというよりは、コラボ対象が『へべれけ』に決まったから4体追加、という順番なんですね?

松下 はい。それぞれのキャラクターにはもともと固有の攻撃アクションがあるので、それらをアレンジして『ぺんぎんくん』のゲームルールに当てはめていきました。

上田 “へべ”の、顔を飛ばす技なんかはそのままですよね(笑)。あと、“すけざえもん”のお茶を飲んで体力回復……という技は、スーパーファミコン用の格闘アクションゲーム(※1994年リリースの『すごいへべれけ』)にあった技なので、ファンの人はそういう部分も楽しんでもらえると思います。

──体力回復! 従来のキャラクターにはなかった要素ですね。

山邊 『ぺんぎんくんギラギラWARS』のキャラクター特性は“スピード型”、“パワー型”、“ディフェンス型”に大まかに分かれているのですが、今回の追加キャラクターたちは一概にカテゴリわけできない、クセの強いタイプばかりになっています。

──たしか前回インタビューした時、「対戦バランスには偏りがないよう、時間をかけて調整した」とおっしゃっていましたが、その状態からさらに特殊タイプのキャラ4体を追加するのって、相当大変だったのでは。

松下 いろんな意味で大変でしたね(笑)。追加コンテンツを買った人のことを考えると、そのキャラクターが目立って強いか、操作していておもしろいかでないと納得感がないだろうし、既存のプレイヤーキャラでやりこんでいる人にとっては、新キャラが強すぎてもおもしろくないだろうし……と。最終的には、どちらのユーザーも満足できるセンを突けたと思います。

山邊 アップデートにより追加されたルールも含め、ローカル対戦とネット対戦では30種類ものルールで遊べるようになっています。ルールごとの相性もありますし、“このキャラクターでこの動きをくり返していれば絶対勝てる”というキャラクター性能による有利不利が生じないよう、さまざまな側面から調整したつもりです。

『ぺんぎんくんギラギラWARS』開発者インタビュー やがて“ギラボール”はレトロゲームキャラクターたちの公式競技になる!?_02

“ギラギラする日”はこれからも続く!

──追加コンテンツの配信と同時に行われた無料大型アップデートでは、新ルールがさらに10追加されていたりと、ユーザーにとって喜ばしい追加・変更要素が多数実装されています。大盤振る舞いというか、ゲーム開発の体制としてかなり無茶なことをしている印象があります。

吉川 Nintendo Switchソフトの追加ダウンロードコンテンツに関しては、まだまだ積極的に取り組んでいるところが少ないので、ウチのような小さなメーカーがあえて挑戦しているところがあります。

上田 12月6日から12日までは、『ぺんぎんくんギラギラWARS』のセールが行われているので、その期間に追加キャラクターのセット販売といっしょに購入すれば、ソフトの通常価格と同じ金額で『へべれけ』関連の全追加コンテンツも楽しめるので、ぜひ利用してください。追加されるのはキャラクターだけではなく、『へべれけ』のオリジナル・アレンジBGMやステージ、ストーリーデモも含まれているので、とてもお得です。

──今回の追加コンテンツとアップデートで『ぺんぎんくんギラギラWARS』は“決定版”になったと思ってよいのでしょうか?

松下 じつはキャラクターを追加しやすいようにデータベース枠を多めに用意してあります。つぎは何を……というところまではまだ具体的には考えていませんが、今後もキャラクターが増えていく可能性はあります。

──なんと! ということは、往年のゲームキャラクターたちがメーカーの垣根を越えて一堂に会し、ギラボールに興じている……という未来もありえるんですね?

上田 『ぺんぎんくんギラギラWARS』は、原作の『ぺんぎんくんWARS』をリアルタイムで遊んでいたお父さん、お母さん世代が、お子さんと対戦している……というケースが多いようですが、そういった楽しみかたをできることの認知度が、まだまだ足りないと感じています。追加キャラクターなどによって、今後も新たな層に興味を持ってもらえるのが、ひとつの理想です。

吉川 今回のアップデートに盛り込めなかった要素のひとつに、海外ユーザーとのオンライン対戦機能があります。これは来年の海外版リリース後の実装対応となりますが、現時点のテスト結果では、問題なくプレイできます。また来年以降にはNintendo Switch以外のプラットフォームでの展開も予定しているので、は今後も継続展開していきます。

──『ぺんぎんくんギラギラWARS』は、むしろこれからが本格稼働ということですね。

山邊 さしあたって今月23日には、オリジナルサウンドトラックがクラリスディスクから同時発売され、17日にはCDリリース記念のDJ&ライブイベントが開催されます。イベントには『ぺんぎんくんギラギラWARS』に楽曲を提供した全アーティストが参加し、タイトルを限定しない、幅広い意味での“ゲーム音楽”を楽しめる内容になっているので、さまざまなゲームのファンの皆さんに足を運んでもらえると嬉しいですね。

『ぺんぎんくんギラギラWARS』開発者インタビュー やがて“ギラボール”はレトロゲームキャラクターたちの公式競技になる!?_04