ハル研究所(以下、ハル研)が2017年8月22日に発表した新ブランド“HAL Egg”。『星のカービィ』や『ハコボーイ!』シリーズで知られる開発会社のハル研が、これまで手掛けてきたコンセプトとは趣向が異なる方向性を目指すことをコンセプトに立ち上げられた“HAL Egg”より、同ブランドの第1弾タイトル『はたらくUFO』がリリース開始された。
“カービィ”、“キュービィ”に続く新たなキャラクターが登場する最新作と、ブランド誕生の経緯について、ハル研究所のキーマンに話を聞いた。
※本インタビュー記事は、週刊ファミ通2017年11月30日号(11月16日発売)掲載記事を加筆・再構成したものです。
ハル研究所代表取締役常務
川瀬滋史氏(文中は川瀬)
<写真右>
開発本部第2開発部
『はたらくUFO』ディレクター
鈴木輝彦氏(文中は鈴木)
──まずは新ブランド“HAL Egg”を立ち上げられた経緯を教えてください。
川瀬 ハル研と言うと、『星のカービィ』をイメージされると思いますが、我々はクリエイティブな集団で、“カービィ”以外にも皆さまに見ていただきたいたくさんのアイデアが日々、生まれてきています。そういった新しい楽しさを提供するためのブランドとして、“HAL Egg”を立ち上げました。
──“HAL Egg”の発表時、タマゴから芽が出ているようなロゴマークが公開されました。このロゴに込められている意味などを教えてください。
川瀬 ハル研の企業ロゴとして、犬がタマゴを暖めている“犬たまご”という不思議なロゴがあるのですが、そのタマゴから新しいものが生まれようとしていることを意味しています。
──“HAL Egg”では、これまでのハル研究所とは異なる新しいコンテンツ展開をされるとのことですが、具体的にどのような方向性を目指しているのでしょうか。
川瀬 私は80年代のビデオゲームが大好きでした。あの当時って、どんなタイトルが出てくるかわからない、ワクワク感があったんですよね。いまはさまざまな情報が 溢れていて、ゲームシステムもこなれているので、予測不能なことってかなり減ってきていると思います。“HAL Egg”では、そういった流行や時代に左右されない、クリエイターが感じた“おもしろさ”をできるだけそのままの形で提供することで、予想できない“ワクワク感”を提供していきたいと考えています。
──ブランドの第1弾タイトルとして、『はたらくUFO』を発表されました。この作品とキャラクターは、どのようにして生み出されたのでしょうか。
鈴木 『はたらくUFO』は、物理演算エンジンを使ったアクションアドベンチャーゲームとして企画しました。最初は、クレーンを使って障害物やトラップを回避しながら、宝を持ち帰るというハードな横スクロールアクションを想定していたのですが、このクレーンを操るキャラクターとして最適なモチーフがUFOだったのです。UFOは自由に空中を飛び回れますし、モノをつかんで運ぶというのもイメージがしやすいですからね。結果、かわいらしいキャラクターのUFOくんが誕生し、いろいろなお仕事に挑戦するというカジュアルな作品になっていきました。
川瀬 見た目はかわいらしいシンプルなゲームですが、ドキドキした緊張感を持って遊んでもらえる作品になっていますよ。
──カジュアルな作品ということですが、どのようなユーザー層をターゲットにしているのでしょうか。
鈴木 いろいろなモノをつかんで運んで積み上げるだけのシンプルな作品ですので、幅広い層に遊んでいただきたいですね。子どもに遊んでいただければ、正しい労働意識が身につくかもしれませんよ(笑)。
川瀬 ゲーム開始時はカジュアルですが、パズル的な要素があったりとステージ構成がバラエティーに富んでいるので、さまざまなユーザーに楽しんでいただけると思います。
──実際に動いているゲーム画面を見させてもらいましたが、バックで流れている曲も耳を付いて離れなくなりますね。
鈴木 あれは弊社のサウンド担当が書いた曲です。あらゆるシーンで「は〜たらくゆ〜ふぉ〜♪」という歌が流れますが、あれもサウンド担当が歌っているんですよ。
──動いている映像と曲を合わせて見ると、80年代によく見られた、ポップでサイケなCG作品といった雰囲気がすごく現れていますね。
川瀬 その辺りは狙っていたところなので、そう言ってもらえるとうれしいですね。
──本作は、最初からプラットフォームをスマートフォンにしようと考えていたのでしょうか。
川瀬 企画が立ち上がった段階ではどのプラットフォームで提供するかは考えていませんでした。ですが、今作はカジュアルに積み上げる楽しさを味わって欲しいという思いがあり、操作性やゲームスタイルなどを検討してみた結果、スマートフォンに向けてのリリースとなりました。
──それでは、本作の課金スタイルはどのようなものになるのでしょうか。
川瀬 完全買い切り型で、購入後の課金要素はいっさいありません。一度購入いただければ最後まで遊んでいただけます。
──課金要素がないということは、今後追加コンテンツなどの予定もないということですか。
川瀬 いまのところは予定していません。ただ、ユーザーの反響によっては、コンテンツの追加やバージョンアップを考える必要があるかもしれませんね。
──ゲームのステージ数や、想定されているプレイ時間といったボリューム感はどの程度になりますか。
鈴木 全部で27のステージを用意しています。ステージ数は膨大ではありませんが、巨大な敵とのバトルやエンディングも用意していますし、それぞれのステージに挑戦し甲斐のあるクリアー条件も3つずつ隠されています。
──プラットフォームはスマートフォンですが、販売形式やゲームのスタイルはコンシューマータイトルのようですね。
川瀬 我々がこれまでコンシューマーで手掛けてきた経験をふんだんに盛り込んでいますからね。やり込み要素もありますし、しっかりと遊んでいただけると思います。
──対戦や協力プレイなどはありますか。
川瀬 本作はひとりプレイ専用タイトルになっています。ですので、ゲーム自体はひとりで遊んでいただくことになりますが、ステージごとにスコアーが記録されるので、それを競い合っていただくことはできますね。
鈴木 対戦や協力プレイはありませんが、クリアー時の様子をシェアする仕組は用意しています。本作には、決まった攻略方法があるわけではなく、プレイヤーごとにさまざまな積み方=クリアー方法があります。“予想外”の積み方でクリアーできたら、その画像をSNSでシェアしあったりして楽しんでもらえると思います。
──今後、キャラクターのグッズ展開も検討されているそうですが、どういったものを考えられているのでしょうか。
川瀬 まずはUFOくんのぬいぐるみを制作し、アミューズメント施設の景品や販売といったスタイルで提供できればと考えています。
──ゲームではクレーンでものをつり上げる側のUFOくんが、ゲームセンターではクレーンに吊られる側になるというわけですね(笑)。UFOくんはゲーム中でコスチュームを着替えますが、これらの衣装によって、能力が変化したりしますか。
鈴木 “カービィ”のように劇的に能力が変わるといったことはありませんが、素早さがアップしたり、慣性を抑えたりといった性能を有したコスチュームは用意しています。
──御社のIP(知的財産)でいうと、“カービィ”や“キュービィ”もシンプルなキャラクターが、さまざまな変身を見せてくれますよね。UFOくんもそのテイストを引き継いでいるようですが、これは意識しているのでしょうか。
川瀬 会社の文化としては、とくに意識していませんでした。我々はこれまで、つねに皆さまから愛されるキャラクター作りを心掛けてきましたが、それが結果としてシンプルな造形になり、シンプルだからこそいろいろなバリエーションを持たせやすかったんでしょうね。意識こそしていませんが、弊社スタッフの潜在意識下に、そういったアイデンティティーがあるのかもしれません。
──ちなみに、ハル研究所がパブリッシャーとしてタイトルを手掛けるのは、かなり久しぶりのことですよね。
川瀬 スーパーファミコン用ソフトの『スーパーダンクショット』(1992年6月26日発売)以来なので、25年ぶりになりますね。我々は長年、パブリッシング面で自ら展開していくことを積極的にしませんでしたが、この先もゲームを作り続けていくうえで、これまで以上にさまざまな知見を得る必要があると考え、今回の挑戦にいたったというわけです。
──『はたらくUFO』は久々のパブリッシングタイトルになりますが、海外展開も視野に入れられているのでしょうか。
川瀬 日本との同時リリースではありませんが、当然行うつもりです。『はたらくUFO』は、いろいろな展開ができる余地を残しているので、もっと活躍してもらおうと思っています。
──暖めていたタマゴから出た芽が、これからさらに成長していくというわけですね。最後に『はたらくUFO』や“HAL Egg”の今後の展開について、コメントをお願いします。
鈴木 『はたらくUFO』は、我々作り手も楽しみながら作ったタイトルなので、皆さまが思い思いに楽しんでくれたらと思います。ソフトのリリースと同時に公式Twitterも立ち上げる予定です。SNSへの投稿機能も盛り込んでいますので、おもしろいクリアー画像が撮れたら、ぜひ我々に見せてください。
川瀬 弊社としては、『はたらくUFO』以外におもしろいアイデアがたくさんあり、それらを世の中に発信していきたいと考えています。そのためのアウトプットの役割を担うのが、この“HAL Egg”です。“HAL Egg”はまだ芽が出たばかりですが、それがどのように育っていくのか。これからもハル研のクリエイターたちが手掛けるいろいろな作品をお見せできると思いますので、その成長に期待してください。
『はたらくUFO』とは?
『はたらくUFO』とは、地球の労働文化を学ぶために遠い宇宙からやってきたUFOくんが活躍するアクションゲーム。UFOくんは、一風変わったお仕事依頼が載っているアルバイト情報誌“ハタラクニュース”をもとに、さまざまな仕事に挑戦していくことに。
UFOくんの特技は、身体から伸びるクレーンでいろいろなモノをつかんで運ぶこと。この特技を駆使して、依頼で頼まれた条件(荷物を一定量運ぶや、一定の高さに積み上げるなど)を満たしていく。制限時間内にノルマを満たせばクリアーとなり、バイト代をゲット。仕事で報酬を得ると、ショップでコスチュームなどの買い物もできるようになる。
[タイトル] はたらくUFO
[価格] ¥480(ゲーム内課金はありません)
[配信プラットフォーム] App Store , Google Play
[対応端末] iOS 9.0以降・Android 4.4以降