数多くのゲーミングデバイスを手掛けるロジクールは、元レーシングドライバーのドリキンこと土屋圭一氏が駆るマシンの助手席に乗っているかのような体験ができるVR動画“Ride with Drift King”を2017年11月14日に公開。同日、今回のコラボを記念した“ドリキンと対戦! 特別イベント”が東京・e-sports SQUARE AKIHABARAにて開催された。
まずは、ロジクールでゲーミングデバイスを担当する塩谷一生氏が登壇。塩谷氏は今回のイベントで取り上げるレーシングコントローラ“Driving Force G29”を中心とした“G-Series”を開設するととともに、今回ドリキンとのコラボに至った経緯が紹介されていった。
今回、土屋氏に白羽の矢が立った経緯は、2016年夏に中国・上海の本社で開催されたAsia Pacific地域でゲーミングデバイスの担当者が集まる会議でのランチミーティングでの話まで遡る。“レーシングコントローラ”を盛り上げようというお題の元に、各国の担当と話あっていたところ、あるクルマ好きの担当者が86(※)乗りでドリフトについて語り出し、あれこれと話が進んでいった後に「ドリフトと言えばドリキンの土屋さん」といった流れになったとのこと。それから1年かけて、今回のイベントで紹介するVR動画“Ride with Drift King”の制作に至ったと、塩谷氏は語っていた。
※86(ハチロク)、トヨタが1983年に発売したFRクーペの車両型式番号、AE86から発生した呼称。ライトウェイトFRマシンということで、多くのクルマ好きから指示されていたが、1987年に生産終了。しかし、1995年に始まったマンガ『頭文字D』によってその人気が再燃。2012年にはスバルとの共同開発によって“ハチロク”を正式名称にした車両として復活を遂げている。
今回実現したコラボの経緯説明が終わったところで、いよいよ“Ride with Drift King”が初お披露目となった。こちらの動画はYoutubeで配信されており、PCやスマートフォンでも簡単に視聴可能(スマートフォンでの視聴の際には、Youtubeアプリが必用)。PCで視聴する場合はマウスで視点を360度変更できるほか、スマートフォンではジャイロセンサーなどを用いて360度方向の映像を楽しむことができる。また、スマートフォンを装着する簡易型VRヘッドセットや、PC等で利用するVRデバイスを用いるとより臨場感のある映像視聴体験が実現する。
“Ride with Drift King”の公開&体験が終わったところでいよいよ本日の主役、ドリキン土屋氏が登場。土屋氏は「秋葉原にくることなんて人生でまったくなかったんですが、ロジクールさんのお陰で来ることができました。帰りにメイド喫茶に行こうかな」と、いつものノリで軽いあいさつを披露。今回のイベントでも取り上げられている“Driving Force G29”に関しては、「ゲームの世界からレースの世界に来て、スーパーGTなどで活躍しているヤン・マーデンボロー選手を見て、最近のレーシングシミュレーターとレーシングホイールコントローラの進化には驚きました。実車と完全に同じというわけではないですが、アンダーステアやオーバーステアといった挙動やその対処法などは同じですよね。運転操作の基本は同じなので、ゲームで練習して実車に乗ったらドリフトができちゃった、なんてこともあるんじゃないですか」と、近年のレースゲーム&周辺機器の変化に驚きを見せていた。
土屋氏がドリフトに目覚めたのは、中学生の頃にテレビで見た伝説のレーシングドライバー、星野和義氏や髙橋國光氏の走りに魅了されたことがそもそものきっかけとのこと。それからしばらくしてから、星野氏の助手席に乗る機会があり、あらためてその凄さを思い知らされたそう。ちなみに、その走りを真似したところ全損の憂き目にあったという過去の出来事も披露。「G29とレーシングシミュレーターなら全損事故はないから、練習にはいいですよ」と語り、会場を賑わせていた。
続けて、今回のイベント前に募集を行っていた質問を土屋氏に聞くQ&Aコーナーに突入。以下に質問内容と土屋氏の回答を紹介していく。
Q.最近はメーカーのスクール上がりのドライバーばっかりがレーサーになってますが、走り屋からレーサーになるドライバーがいなくなっている原因は何だと思いますか?
土屋氏 メーカーが効率を考えているからですかね。最近は表だって峠を攻めてる走り屋は減ってきているのでそう見えますが、レーシングドライバーでも走り屋のように攻めてる人はいますよ。
Q.現行車で土屋さんが乗りたいと思う車はありますか? 理由も教えていただけるとうれしいです。
土屋氏 日産の“GT-R NISMO”(R35)ですね。2017年モデルは滅茶苦茶いいですね。速さは十分だけど、味があります。ブレーキを強く踏んだときにフロントに加重が乗ってリアが逃げようとするFR的な動きをするんですよね。いままでのR35はそんな動きはしませんでした。
Q.プライベートではいつも何をしていますか? ドリキンさんの趣味など教えてください!
土屋氏 犬と遊んでます。現役時代は毎日腹筋背筋腕立てを1日3セットやり、夜はランニングという生活をしてましたが、いまは何もしてないです。(2017年6月に開催されたスーパー耐久第3戦で14年ぶりに実戦に復帰したことに関して)最高峰のGTマシンと比べたら、首も腰も負担が軽いですね。(乗り出してすぐにベストラップを出したことについて)毎週いろいろなマシンに乗っていますからね。
Q.レース中にハラワタが煮えくり返りそうなほどキレそうになったら、どうやって気を鎮めたらいいですか?教えてください、わりと真剣に悩んでます。
土屋氏 ぶつけてしまうと次のレースで仕返しされるので、ぶつけないようにタイヤカス(コースの走行ライン外に飛び散ったタイヤのカスのことで、ここに乗ってしまうとタイヤが汚れてしまい、一時的なグリップ低下などに見舞われる)に追い込みます(笑)。ムカっとして熱くなると、レースが終わってしまいますからね。「この野郎」と思うようなことがあったら、(戦略的に)相手を陥れます。それは今も昔も変わりません。自分のチームのドライバーにも「頭を使え」ってずっと言っています。
トークセッションがひととおり終わったところで、いよいよ土屋氏に挑戦する企画“ドリキンと対戦!”に突入。会場に訪れた参加者の中から抽選で選ばれた挑戦者と土屋氏とのガチンコバトルがくり広げられることに。対戦に使用するソフトは、10月19日に発売されたプレイステーション4用ソフト『グランツーリスモSPORT』。腕に自信のある人との対戦は避けたいと語りながらも、3人の挑戦者を選ぶ抽選がスタート。参加者が決まったところで、“Driving Force G29”が取り付けられたレーシングコックピットに座り込み、対戦が始まった。
余談になるが、ゲーマーがステアリングコントローラー+ペダルでレースゲームを遊ぶ場合、左足ブレーキを利用することが多いと思われるが、土屋氏は実車同様に右足でスロットル、ブレーキをコントロールしていたのが印象的であった(セミオートマチック車などの2ペダルレースカーなどは、右足スロットル、左足ブレーキを利用することもあるが、実車を運転する場合は大抵の人が右足でスロットルとブレーキをコントロールしている)。
ひとり目の挑戦者は地元から来られたという“マキノ”選手。初戦は“マキノ”選手がレースゲームに不慣れなため、土屋氏が途中でペースを落として追走を待つ余裕を見せる展開に。初心者相手ということで、1戦目は土屋氏が勝利を収めた。続くふたり目の挑戦者は、20年前に中山サーキットで土屋氏に勝った経験があるという“千葉のケン・ブロック”選手。ちなみに“千葉のケン・ブロック”選手は『グランツーリスモSPORT』は毎日プレイしているとのことで、急に弱気になった土屋氏の姿に会場は爆笑に包まれていた。レース展開は大方の予想通り、終始余裕の走行を見せていた“千葉のケン・ブロック”選手の勝利という結果に。
最後の挑戦者としてステージに登壇したのは、マイレーシンググローブ持参の“ミヤクニ”選手。実車でダートトライアルレースに参加している経験者だが、ゲームに関してはまったくの素人とのこと。実車経験ありでゲームは初心者という“ミヤクニ”選手との対戦だが、レースが始まると予想外の接戦を展開。最終コーナーまで勝敗がわからない展開ながら、先にゴールラインを制したのは“ミヤクニ”選手。「空気を読まないゲストが多いね」といいながら、「ゲームをしたことがない人と走りたい」との要望から、急遽もうひとり抽選を行うことに。土屋氏の泣きの最終戦で選ばれた挑戦者は、港区から来たという“クレ”選手。普段ゲームはあまりやらないそうだが、じつは富士スピードウェイで開催されている“富士チャンピオンレース”で86を駆り、活躍している現役ドライバーとのこと。思いの外、白熱したレース展開が行われたが、その模様は以下の動画にて紹介する。
イベントの最後は、土屋氏のサイン入りノベルティなどがもらえる抽選会を実施。サイン入りロジクールGパーカー、“Driving Force G29”のほかに、土屋氏が実際に装着したレーシンググローブといった豪華景品が振る舞われていた。
以上をもって、本日のコラボイベントは大盛り上がりのうちに終了。最後に土屋氏は「最初に話を聞いたときは“ゲームなんて”とバカにしてましたが、“G29”で遊んでみたところ、そのおもしろさにはまりました。これからもロジクールが開発を進めていき、魅力的な商品が登場すると思うので、これからも期待してください」と語り、本イベントを締めくくっていた。今回初公開されたVR動画“Ride with Drift King”はこのあとも視聴できるので、気になる人はVR環境でぜひ見ていただきたい。
<土屋圭市プロフィール>
長野県出身の元レーシングドライバー。1977年の富士フレッシュマンレースでレースデビューを果たし、グループA、全日本F3選手権、全日本ツーリングカー選手権などで活躍。1994年にSNXに乗り、ル・マン24時間レースでクラス優勝を果たす。NSXでの全日本GT選手権参戦を最後に2003年でレーシングドライバーを引退。現在は多方面で幅広く活躍をしている。尚、ドリフト走行を多用するそのドライビングスタイルから「ドリキン」(ドリフトキングの略)とも呼ばれている。愛車はAE86、ホンダオデッセイモデューロ仕様など多数。
Logicool G について
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