デンマークのKlassefilm製作、Trine Laier氏ディレクションによる『Cosmic Top Secret』は、iOS/Android向けの一種のアドベンチャーゲーム。アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスで行われたインディーゲームイベント“IndieCade”で本作をプレイしてきたので、その内容をご紹介しよう。

 本作は、ディレクターであるLaier氏の国立映画学校の卒業制作を原型に、商業作品へと発展させたもの。その中身はズバリ、同氏の両親が冷戦時代に諜報機関員、つまりスパイとして活動していたらしいという話の真相を探っていくという内容。もっとも身近な人物の大きな謎に迫るドキュメンタリー作品であり、親と娘の自伝的作品なのだ。

「お父さん、スパイだったの?」とぼけたアートスタイルで親の意外な過去に迫っていくドキュメンタリー『Cosmic Top Secret』【IndieCade 2017】_01
娘(ディレクター)からの取材に答えるパパが時折実写で登場。

 物語は、Laier氏の分身である“T”を主人公に、ダンボール細工風の人形や背景でくり広げられる3Dアドベンチャーに、実写で収録された本人への取材映像を織り交ぜつつ展開されていく。

 写真を切り貼りしつつ、シンプソンズのように眼球が飛び出たキャラが、モンティ・パイソンのアニメパートのようにチャカチャカ動くのだが、実はゲーム世界は3D環境になっていて、スワイプで移動させたり、カメラ操作を行うことが可能。見た目のDIY感とは異なり、かなりスムーズに小気味よく動く。

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キャラクターは、写真を貼り付けたダンボール細工といった感じ(カメラを切り替えて裏側を見ると紙丸出し)。
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▲実はスワイプ操作などでの3D移動やカメラ操作が可能。かなりスムーズで気持ちよく動くので驚かされた。

 また、普通は他人が気軽に覗いてはいけない相当プライベートでシリアスな話のはずなのだが、父娘のあっけらかんとした性格にくわえ、アートスタイルやテキストが絶妙にとぼけた味なので、深刻さを和らげてくれる。

 とはいえ、もしかするとこうしたアートスタイルも、リアルにやるより第三者目線でコミカルに描くしかない、衝撃的な事実を知ったLaier氏当初の困惑を暗示しているのかもしれないが……。

「お父さん、スパイだったの?」とぼけたアートスタイルで親の意外な過去に迫っていくドキュメンタリー『Cosmic Top Secret』【IndieCade 2017】_05
相当プライベートでシリアスな話のはずなのだが、アートスタイルのおかげで入りやすい。

 暗号の描かれたパンチカードや当時の情報処理機器の資料画像、昔の写真などをコラージュした奇妙な世界で、素っ頓狂なミニゲームと小芝居をはさみつつ明かされていく、元デンマーク諜報機関員の過去。まさか娘がインタラクティブアートを使って自分のことを世界に発信するようになるとは、現役当時は思ってもいなかったことだろう。

 会場で「どうやってゲームにすることを説得したんですか?」と聞いてみたところ、ため息とともに「ここで描写されているような簡単さではまったくありませんでしたね……」とLaier氏。

 しかし、映像中で、時折質問を冗談ではぐらかしつつも少しずつ話していく父の姿には、家族としての絆が確かに感じられる。恐らく“娘のためなら”という思いは、隠していた当時も、話すことにした今も、変わっていないのに違いない。

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お母さんも登場。直接語られる事実に、舞台設定としてのフィクションが織り交ぜられる、超現実的な世界を見せていく。

 『Cosmic Top Secret』は、海外では2018年第1四半期のリリースを予定しており、クリアーまでは5~8時間程度になる想定。また正式ローンチ後、PC/Mac版の展開も検討されている。