いよいよ2017年10月9日(月)よりテレビアニメ『Wake Up, Girls! 新章』が放送開始となる。そんな『Wake Up, Girls!』シリーズの中で、仙台を拠点に活動するWake Up, Girls!を支えるのが、芸能事務所グリーンリーヴス・エンタテインメントの社長である丹下順子と、マネージャーの松田耕平のふたりだ。『新章』放送に合わせて、ファミ通.comでは丹下順子役の日高のり子さん(※)と、松田耕平役の浅沼晋太郎さんにインタビューを敢行。WUGのメンバーを見守るふたりから見たユニットWake Up, Girls!(以下、WUG)、そしてアニメ『Wake Up, Girls! 新章』(以下、『新章』)について、その想いを語ってもらった。
※“高”はハシゴダカ。機種依存文字のため、記事中では“高”で代替表記しています。
日高のり子さん
『Wake Up, Girls!』では丹下順子を演じる。『名探偵コナン』(世良真純)、『タッチ』(浅倉南)、『となりのトトロ』(草壁サツキ)、『らんま1/2』(天道あかね)など多数。(文中は日高)
浅沼晋太郎さん
本業である脚本業・演出業を精力的に行っている一方で、声優業としては『Wake Up, Girls!』で松田耕平を演じる。代表作は、『ZEGAPAIN-ゼーガペイン-』(ソゴル・キョウ)、『生徒会役員共』(津田タカトシ)、『四畳半神話大系』(私)など多数。(文中は浅沼)
不器用な丹下社長と、いい旦那になりそうな松田は絶妙なコンビ!?
――まずは、ご自身の演じるキャラクターについてうかがえれば。
日高 私が演じる丹下順子は、元アイドルで、いまはプロダクションの社長というキャラクターです。エピソードが進むにつれて、キャラクター性や過去が少しずつ出てくるというキャラクターだったので、それをパズルのようにつなぎ合わせて組み立てながら演じました。正直、最初にこのお話をいただいたときには、とにかく…………あまりいい人ではないというか(笑)。
浅沼 初っ端から逃げちゃいますもんね(笑)。
日高 そうなんです。しかも、WUGちゃんたちに対しての愛情もどこまで深く持っているかがわからなくて、テレビアニメのころは絵のインパクトに引っ張られるままに演じていました。物語が『続・劇場版』(※テレビアニメ全12話のその後の物語を描いた、劇場アニメ、続・劇場版『Wake Up, Girls! 青春の影』、『Wake Up, Girls! Beyond the Bottom』のこと)へと進んでいくなかで彼女なりの事情や温かい気持ちが描かれていくんですけどね。ただ、一方に温かくすると、もう一方には温かくできないという、その辺の配慮が行き届かないところが丹下さんのキャラクター性なのかな、と感じています。悪い人ではなくて愛情も深いし、自分が経験してきたことを踏まえてまわりの子たちを輝かせようと思っている。だけど、マネージャー業からのし上がってきた人ではないので、自分のインスピレーションだけに頼るところがあったり。そういう意味では破天荒な感じがありますよね。だから、社長としては未完成なのかな、と思っています。
浅沼 松田は元バンドマンの現事務所マネージャーで、熱さはあるんですけどそれが空回りしてしまうタイプのキャラクターです。マジメだとは思うんですけれども、そのマジメさがうまく仕事に反映されないキャラクターだと思っていまして……。さっき日高さんが仰られていたように、マネージャーとしては松田も未完成で、なんとなくWake Up, Girls!自体……7人が未完成なアイドルなので、このふたりがその7人支えるというのは必然なのかな、というか。
浅沼 でも、社長にしろ松田にしろ、憎めない人なんですよね。
日高 明らかにふたりとも、白木さんに比べたら人間味があるよね。
浅沼 人間味ありますね。
――たしかに憎めないキャラクターというのは感じましたね。おふたりのキャラクターはどちらも元アイドルとか元バンドマンと、WUGちゃんたちと同じように、一度ステージに立つ側を経験しているキャラクターですが、そういった経験を持っている人物であるところは、演じる際に意識されていますか?
浅沼 やっぱり挫折を知っているぶん、より強いんだろうなと思いますね。だから、昨今アイドルものが多いなか、比べるわけではないですけど『Wake Up, Girls!』は、ほかよりもツラい局面が多い作品なんじゃないかという気がしています。ぐんぐんスターダムにのし上がっていくという感じも、いまのところはまだ見えないし。スペシャリストが近くにいるのももちろん強いですけれど、挫折を知っている松田だったり丹下社長だったり、そういう経験をしている人たちが側にいるからこその、二人三脚ならではの強さみたいなものがあるのかなと。
日高 たしかに。
――それこそ日高さんは、ご自身の経歴と重なる部分があると思います。
日高 そうですね。私自身、これからデビューするという女の子たちが歌番組のために集まって、グループを組んで歌って踊るということを実際にしていましたから。当時、オーディションに受かってみんなで浮かれたり、レッスンに入って「こんなにきびしいのか」と感じたり……(笑)、作品の中で描かれていること全部に、重なるところがあるんですよね。だから、「そんなに甘いもんじゃないのよ」という丹下さんのセリフがありますけど、私自身、実感を込めて言っています(笑)。
――説得力がありますよね(笑)。日高さんから見た松田さんだったり、浅沼さんから見た丹下社長はどんなキャラクターだと感じられていますか?
日高 浅沼くんの声もそうなんですけれども、松田は絵に描いたようないい人ですよね。
浅沼 (笑)。
日高 もう一歩気が利くと最高なんですけれども、そこに至らないところがちょっと残念というか。でも、そんなに暗く落ち込むこともないし、言い返すこともなくて。社長に無理難題を振られて「ええ!?」とツッコミ入れつつも、声がやさしいからという理由もあるのでしょうけれど、松田のやさしさが前面に出てきて……。だから、そういう意味では組みやすいキャラクターではありますね。
浅沼 いい旦那になりそうですよね。
日高 うん。ブンブン振り回せそうな感じ。
全員 (笑)。
日高 2回ぐらい振り回したら、3回ぐらい回ってくれそうですよね。
――(笑)。なるほど。浅沼さんはどうですか?
浅沼 社長はきっと照れ屋さんなんだと思います、僕は。最初のときは思わなかったんですけど、『続・劇場版』が終わって『新章』になって……自分が嫌われ役を買って出ることを躊躇しない雰囲気に気付いたというか。全体のバランスをすごく見ていて、“私がこうやって言って、松田が面倒を見る係”という役割をきちんと理解しているんじゃないのかなと。でも、照れ屋だからみんなの前で甘いことをあまり言わず、必要以上には褒めないんですよね。不器用っぽさがちょっと垣間見えるのが愛らしいなと思いますね。松田はそんな社長に対して、「まったく」とか「何なんですか……」とか言いながら、呼び出されたら必ずいっしょに呑んでいたりする(笑)。
全員 (笑)
浅沼 相手のことが嫌いだったら、ふたりっきりで呑むなんて、絶対嫌じゃないですか(笑)。でも、毎回いっしょにいるんですよね。だから、何だかんだとぶつくさ言いつつも、たぶん松田は社長が好きなんだと思います。だっていま風に言うなら、ブラック企業じゃないですか、グリーンリーヴス。
日高 たしかに(笑)。
浅沼 なのに辞めないし、呼ばれりゃ行くし、みんなの面倒も見るし……。絶対、給料が高いわけでもないと思うので……やっぱり好きなんだと思いますよ、事務所も社長も、もちろんWUGも。
――そう言われると、松田さんのモチベーションってどこなんですかね?
浅沼 そこなんですよね。映画のときに、いっしょに音楽をやっていた仲間と呑んで、チラッと想いを語るシーンがありましたけど、自分が見ることのできなかった夢をこの子たちに見させてもらおうと思っているのか……うーん、なんでしょうね? そこも今後深く掘り下げられるといいですよね。でも、いまは必死すぎて、自分がどうありたいとか考えられるような状態ではないのかな、とも思っています。
――作中では、丹下社長と松田さんはふたりの掛け合いが多いと思うのですが、演じるうえで気をつけている部分はありますか?
浅沼 『新章』で音響監督の菊田(浩巳)さんに言われたのが、「ちょっと距離が近くなっている」ということでしたね。丹下社長がやさしくなっていたりとか、松田は松田で社長と親しくなりなりすぎちゃっているとか。
日高 そうなんですよね。(『新章』まで)あいだが空いたからか、いい感じに年月を積み重ねた雰囲気が出てしまっていたというか。
浅沼 こんなに長くごいっしょさせていただいているから、勝手に一方的に親しみみたいなのを感じちゃっているのかもしれませんが……(笑)。そういった部分は自分でも気付かなかったりもするので、ちょっと助けてもらいながら調整していきました。“マネージャーと担当しているタレント”であれば、これくらいの距離感、というのはすごくわかりやすいのですが、ふたりしかいない事務所の社長との距離感というのが、難しくて。
日高 でもたぶんね、最初は私の攻めが弱かったんだと思う。
全員 (笑)。
日高 丹下さんとして、どこまで松田に詰めよるか、という部分が甘かったんだと。「こんな感じだったかな?」と思いながら演じたのですが、わりと理性的になってしまっていたというか、最初のころの思い切りが押さえられちゃっていたかもしれないですね。
浅沼 あと『続・劇場版』のときって、乱暴な言いかたをするなら“わかりやすい敵”がいたんですよね。I-1clubとか白木さんとか。そういうところに対して強くベクトルを向けられたし、そこを踏まえての絆みたいなのができていたんですけど……。
日高 作中のWUGちゃんたちも後がなかったもんね。これが終わってしまったら、自分たちはもう解散なんじゃないか、ぐらいのところがあって。みんながギリギリの中でやっているというところで、私たちも勢いを出せたんですよね。それが今回は……。
浅沼 みんながちょっと成長して……。
日高 そうそう! グリーンリーヴス的に、みんなにもちょこちょこ仕事が入って来ていて、穏やかな流れになってきています。前は、誰かひとりが辞めちゃうかもしれないとか、そういう事件がすごくあって。そのたびに「はあ……この子たちは……」という中での会話だったんです。それが今回は流れが穏やかなんですよね。
浅沼 それぞれを取り巻く問題が、“それぞれが階段をどう上っていくか”というものになってきているんです。そうすると、我々サイドとしてはあまりわかりやすい手助けができなくなるんですよね。
日高 悩みがあれば相談に乗る、くらいな感じで。これまでのように、グイグイいく感じが、いまのところはなくて。
浅沼 「自分で考えなさい」みたいな。オンエアを観ていただけたらわかると思うのですが、本当に彼女たちが成長しているんですよね。ここからは誰かに引っ張ってもらうのではなくて、私が考えなきゃいけない問題だ、となっている。仕事はあるけど、その仕事とどう向き合うか、という部分が問題になっているのが『新章』です。
――では、丹下社長や松田さんは、一歩引いてWUGちゃんたちを見守る、という立ち位置になってきている?
日高 そうですね。あとは、たとえば「この仕事はこの子に振ります」という感じで、『新章』ではWUGの中での方向性が見え始めているんです。ただ、それがどうも丹下さんは勘だけでやっている感じがしていて……(笑)。「私の勘はすごい」、「私はわかっているのよ」という感じなので、いまはうまく転がっていますが、何か事件が起きて反発があったときに、もうひと悶着あるのかな、という気はしています。そういう意味では、いまは丹下さんも自分の思い通りにうまく進んでいるので、言ってみれば不満がない。「松田、これやりなさい」とは言いますが、その調子が「さっさとやんなさい」ぐらいで、これまでのように「あんた何やってんの!?」みたいなことは、まだないという感じなんですよね。だから、ちょっと気を抜くと物腰が柔らかくなりすぎてしまうことがあります。
――では、演じていて苦労する点というのは?
日高 これまでの丹下さんは、両極端でよかったんです。キュッと締まったマジメなことを言う場面が用意されていたので、破天荒な、ちょっと暴力的な部分でも振り切って弾けられたんですよね。最初は「こんな感じで私、大丈夫ですか!?」と思って演じていましたけど(笑)。でも、『新章』では、いまのところそういったマジメに語るシーンがないですし、しかも物事がうまくいっているので激しさもなくて。両極端に振るというよりは、ちょうどその中間をいっているような感じなんですよ。それでもセリフとしては「このカス!」と上から言う部分があったりするので、最初は少し戸惑いました。意味もなくキツい感じでモノを言ってしまうと、憎めないキャラクターではなくなるので、そのバランスをうまく取ることが難しいな、と思いながら演じています。あとは白木さんに対する思いなどが、どうなるのかも気になっていますね。I-1clubとの対立がまた描かれたりすることになると、「自分が出ていかなきゃ!」という場面も出てくるとは思いますし、そうなればまた両極端に振れるようにもなってくるんじゃないかと思いますね。
浅沼 社長のすごいところって、あんなキャラクターをしていると周囲の人たちから怖がられたり疎まれたりするものなのに、昔培ったコネクションをしっかりと活かして認めさせるじゃないですか。だから絶対、まわりの人たちからも好かれているんだと思います。そこを松田は嗅覚で感じ取っているのかなって。
日高 嘘がない人だとは思いますね。でも、私、最初(『七人のアイドル』)のお金を持って逃げちゃうあたりでは、「ホントにこの人、どうなんだろう……?」と思っていて。
浅沼 しかも、その後真相は語られますが、『七人のアイドル』の中では一切出てこないですからね。もっと早く言えばいいのにって(笑)。そういうところですよね、社長の不器用さって。
日高 だけど、たぶん目の前にいる相手に対しては、すごく真摯なんじゃないかと思うんですね。たとえば実波に対してもライブよりもおばあちゃんを優先させたり、菜々美には光塚の試験を受けて気持ちをはっきりさせなさいと促したりとか、ひとりひとりと話すときには、しっかりと向き合っているんですよね。でも、そっちを思うあまり、全方向に対して気を遣うのが不得意な感じ。とにかく前のほうばかり向いてしまう人なのかもしれないですね。目の前のことにワーッといっちゃう感じで。そんな社長の真摯な一面に触れた人たちは、きっと彼女の温かさみたいなものを受け取っているんだと思います。でも、松田に対しては、そういったシーンがあまりなかったような……気がするんですよね(笑)。
浅沼 たしかに(笑)。
――(笑)。『Wake Up, Girls!』という作品は松田さんの成長という部分も描かれていた作品だと思うのですが、『新章』では頼もしくなった松田さんなのか、いつも通りの松田さんなのか、どちらの……。
浅沼 いつもの松田です(笑)。即答します!
全員 (笑)。
日高 だけど、最初からやっている仕事に関しては、自信を持ってやっている感じはあるよね。ひと皮むけるような何か……大きな仕事を取ってきたとか、何か事件を解決したみたいなことはまだないよね。
浅沼 まだないですね。ただ、以前と違って失敗しないマシンにはなっていますよ(笑)。
全員 (笑)。
浅沼 大きな失敗はまったくしていないです。これまであったような、何かを断り切れなかったから起こる失敗といったようなことが、いまはないです。ちゃんとクルマを運転し、ちゃんと現場に連れていき、荷物を持つという……。だから、いままでダメだったところがふつうにできるようになったレベル。でも、相変わらず社長の言うことには驚かされている感じですね。
日高 結局、ふたりしかいないチームでアーティストを育てているのに、丹下さんは相談をしないですからね。「これやるわよ!」って。「もう決定事項ですか!?」という状況で松田に降る、しかも、決めておきながら、「実際に手を動かすのはあんたよ」みたいな振りかたをしてしまう(笑)。
浅沼 「じゃあ、よろしく」って(笑)。
日高 そう。松田としては「相談してくださいよ」という気持ちがあると思います。だから、そういう意味ではいつもいきなりだから、毎日驚いて新鮮なんじゃないかな(笑)。刺激的で新鮮な毎日。
全員 (笑)。
浅沼 なんか……強豪校の野球部の人みたいですよね。理由を何も告げられずに急にメニューをわたされて、それをこなしていく。
――いま思うと、あのときやっておいてよかったみたいな。
浅沼 そう。「とりあえずこのメニューやっとけ」、「ええ!? あ、はい……」と答えてとりあえず走ってくる、という感じ(笑)。
――でも、それだけ急に振られたものをちゃんとこなしていく松田さんは、わりと有能なんじゃないか、という気もしますよね。
浅沼 いい旦那になると思いますよ。何度も言いますけど(笑)。
日高 何があっても大丈夫そうではありますね。
浅沼 嫁に「ハンドバッグ買っちゃった」と言われても、「ええ!? ……そうか」で終わらせてしまうという(笑)。
全員 (笑)。
ふたりが語る『新章』の見どころとは?
――いよいよ『新章』が2017年10月9日から始まりますが、最初に『新章』の話を聞いたときのお気持ちはどんなものでしたか?
浅沼 とくに驚かなかったですね。まだ彼女たちには物語があると思っていましたし、純粋に「あ、来たな」という感じでした。
日高 うんうん。私もそうですね。続きがあるだろうと思っていたので、「やっと来たな」という感じです。
――ファンの方たちは、続きが見られる喜びと「続くんだ!?」という驚きとあったように思うのですが、おふたりは意外とそんなことはなかったんですね。
日高 そうですね。私たちは育てる側なので、まだここで終われないという……。WUGはまだてっぺんを取っていないので、自分たちとしては、てっぺんを取る物語まではいくだろうと。事務所としてはそう思っているよね?
全員 (笑)。
――まだ、これからじゃんと。
日高 彼女たちはもっと上を見ているはずなので。私的には白木さんに「参りました」と言わせるぐらいまではいきたいですね。
――そこまで(笑)。
日高 実際に、言う必要はないですけどね(笑)。そういう戦いではないから。ただ、自分としては、丹下さんの人生を考えたときに、それくらいのところまで上り詰めると、「自分のやっていたことは間違っていなかったんだ」と思えるんじゃないか、と。その後、「じゃあ、これからいっしょにやりましょう」となったら、またすごいですけどね。
――丹下社長は、白木さんに対して「さすがね」と認めつつも、やりかたに納得していない部分もあったり、複雑なところですよね。
日高 たぶん、丹下さんたちがアイドルとして育ててもらったときは、白木さんはもっと人間味のある人だったんだと思うんです。チームが大きくなっていくなかで、アイドル製造ロボットみたいな感じになっちゃっていますが、もっと血の通ったやり取りがあったんじゃないのかな、と。もうちょっとやさしくて、ステージに立つ人たちのわがままもある程度聞いてあげて。でも、それをうまくまとめきれなくてダメになっちゃったとか、アイドルを育てていくなかで失敗をくり返すうちに、いまの形になったんじゃないかな。白木さんのいいところもダメなところも、両方知っているのが丹下さんなんだと思うんです。だから、「白木さんとは違う育てかたをするわ」となっているんじゃないかな、と思っていますね。
――『新章』でふたりの関係性がどのように描かれるかも注目したいですね。ちなみに、『新章』になって変わったところや、逆に変わっていないところはありますか?
浅沼 やっぱり僕らって、“Wake Up, Girls!=あの7人”なんですよね。キャラクターと中の人たちの名前もいっしょだし、彼女たちが本当にまっさらな状態でスタジオに来たところも、作中の7人と被りますし、どうしたって切り離せないんですよね。だから、あの7人が大人になっていることに日々驚かされるというか。僕は花澤香菜ちゃんと、彼女が17歳のときに出会ったんですけれど、僕のデビュー作でヒロインをやっていまして。やっぱりどうしても、僕の頭の中では花澤香菜ちゃんと言えば17歳のままなんですよ。だから、ワインを飲むと聞いた瞬間「いや、ダ……あ、いいんだ」って(笑)。
日高 あるよね。
浅沼 そういうことを、いまあの7人に対してちょっと感じていて。お酒が強いのは誰だって耳にしたりとか、服の感じが大人っぽくなってきているとか。髪型やメイクが変わったらガラリと変わるのが女の子っていうもんだと思うのですけど、やっぱりメンバー全員とはしょっちゅう会っていないわけですから、やっぱり驚くんですよね。別のアニメでしばらくごいっしょさせていただいた田中美海ちゃんなんかは、わりとそのままの印象なんですよ。でも、ひさしぶりに会ったメンバーだと、「シュッとしたなぁ」とか「なんか背伸びた?」とか、親戚のおじさんみたいな気持ちになってしまって(笑)。
――(笑)。
浅沼 そういった成長に驚かされていますね。ただ、その成長が、逆にダメなときもあると思うんです。あえて言葉を選ばずに言うなら「うまくなっちゃった」というか……。
――あー。
浅沼 やっぱりWake Up, Girls!って成長過程の状態なので、突然うまくなっても変だし……。それこそ花澤香菜ちゃんにしろ僕にしろ、きっとあった壁だと思うんですよ。こなれてしまってはいけないというか、成長しなければいけないのに「うまくなっちゃった」と言われてもいけない、という。メンバーはもちろん、キャラクターとしてのWake Up, Girls!も、そういった部分で戦わなきゃいけないのかなと思います。
日高 彼女たちは全国から選ばれて、何の経験もないところからいきなりスタジオに連れてこられてセリフを言って、という子たちじゃないですか。レコーディングがあって、イベントに出るようになって……そういう彼女たち自身が体験していることが、いままでのWake Up, Girls!のストーリーとまさにリンクしていたんですね、ピッタリと。だけど、この数年のあいだに彼女たちのプロジェクトも大きくなって、大きなホールでコンサートをやるようになって、やはり前に出る人という自覚が本人たちの中に芽生えている。だからすごくいい意味で、スタジオの中にいても動揺していないし、落ち着いていられるようになったというところがひとつあって。だけど、ドラマの中でのWake Up, Girls!は、まだそこまでいっていないから、本人たちよりもちょっとだけ前の自分を思い出して演らなくちゃいけないところがあるのかなって。
浅沼 そこはたいへんですよね。
日高 Wake Up, Girls!のよさって原石であることだと思うんです。アイドルの中でも“おイモちゃん”たちというところに魅力があって。でも、本人たちがおイモじゃなくなってきている(笑)。週末にはコンサートやイベントをして、アフレコに来て……という毎日で、売れっ子の疲労感みたいなものがちょっと出ているんですよ。
全員 (笑)。
日高 前までは、本当に「あなたたち、アフレコ前にそんなにムダにエネルギー使って大丈夫? これから仕事よ?」みたいな感じがあったんですけれど……。
浅沼 当時は、毎週キャリーケースが何台もスタジオに置かれていましたしね。地方から来ていた子が多かったから。
日高 そうそう。通っていたもんね。この数年のあいだ、私は彼女たちとぜんぜん会っていなかったので、驚くことといえばその成長ぶりです。その中でもいちばん驚いているのが、愛理ちゃんなの。
浅沼 へえ。
日高 当時は、セリフ以外ではほぼほぼ声を聴いていなかったと思うんだけど、いま愛理ちゃんがすごく頼りにされているんですよね。まゆしぃが相談していたりとか。そのたびに「大丈夫、大丈夫」と励ましたりして応えているんですけど、「あれ、愛理ちゃんってこんな子だったっけ!?」と思ったんですよ。Wake Up, Girls!として集まった7人がいろいろな仕事をこなしていく中で、年月が経ったことによってチームの中での役割分担がアニメとは別の形で、出来上がっていることがすごく感じられて。それまでは、私は彼女たちをアニメとイコールでなんとなく見てしまっていたんですけど、そうじゃないものが生まれているということにまず驚いて、その中で愛理ちゃんがこんなにしっかりしているんだ、ということですごく驚いたんです。
浅沼 ちょっと片鱗はありましたけどね。メンバーのことを電話で起こしていたり。
日高 そうね。作中で「ごめんね、私だけ下手くそで」みたいなセリフがあったでしょ? 実際の愛理ちゃんは、ダンスは下手くそじゃなかったかもしれないんだけど、そのセリフを聞いているから「愛理ちゃん、ダンス下手くそなんだ……」と思っていて。
全員 (笑)。
――むしろ、メンバーの中ではいちばん上手いと言われていますね(笑)。
日高 それくらい彼女たち自身のことを、知らなかったということでもあるんですけれど(笑)。
浅沼 僕、すごくうれしかったのが……うれしかったと言うとちょっと違うかもしれませんが、鷲崎さん(※鷲崎健さん。ラジオパーソナリティーやアーティストとして活躍)の『鷲崎健のヨルナイト×ヨルナイト』という番組に、WUGからまゆしぃとよっぴーがゲストとして出演していたんですね。その番組内で、「結成した当時、私たち超仲が悪かったんです。お互いに嫌いだった」という話を生放送でしていて。それをいま言えることに感動したというか、もうそれを笑って話せる仲になっているんだと思って。ファンも聴いている生放送で言えるって、相当信頼関係が築けていないとできないじゃないですか。
日高 たしかに。
浅沼 「あんたにだけは負けたくない」という想いがあったみたいなことをラジオで言っているのを聞いて、「いいグループになったんだな」と思いましたね。もちろん、仲よくなった時点でいいグループになっていると思うのですが、それをさらけ出せるレベルにまでなっているのは、当時のことを消化できているんだと思うので。
日高 きっと7人の中で、『Wake Up, Girls!』というアニメとは別の、7人の物語が絶対あるよね、きっとね。
――やべえ、泣いちゃう。
全員 (笑)。
浅沼 いまのひと言、絶対記事に書いてくださいよ(笑)。
――まわりでWUGのメンバーのことを見ている方々から、そういう言葉を聞くとちょっとグッときますね。
日高 でも『Wake Up, Girls!』のおもしろさってそこですもんね。7人が集まることによって、自分でもいままで思ったことがないような感情が芽生えてきて、ぶつかったり、理解しあったり……。そうやってひとつひとつを乗り越えていく成長物語が『Wake Up, Girls!』のいちばんのおもしろいところだと私は思います。
浅沼 あと最大の変わった部分は後輩(Run Girls, Run!)ができたことですよね。絶対いままで通りではいられないと思うので。
日高 7人はいま、「私たちはああいう感じだったんだな」という目で3人を見ているんじゃないかと思っていて。また、それがなんかいいですよね。
浅沼 「そこじゃ遠いからこっちにおいでよ」みたいなことを言っていたり、まだちょっと遠慮をしつつも、ちゃんと3人のことを見ている感じなんですよね。「私たちだってまだ新人なのに、この子たちに教えられることある……?」みたいな。「ちょっとおこがましいんじゃないか」という気遣いがありつつも、「このままではいけないんだ」みたいな、そういう葛藤が見えている感じです。
日高 でも、自分たちの過去の姿とリンクするような後輩たちがそばにいるというのは、つねに初心に帰れていいだろうね、きっとね。
――それは得難い経験でしょうね。『WUG』という作品の魅力とか、『WUG』らしさというのは、そういった本人たちのリンクという点も挙げられますよね。
日高 ひとりひとりの想いとか葛藤といったものがリアルに描かれているところが、観ている皆さんにとってもおもしろく感じられるんじゃないかと思います。日常の中で起こるようなことが、アニメの中でも起こっていたりして。それをどうやって解決していくのか、どうやって友情を育んで成長していくのか、というところが、私は『Wake Up, Girls!』の魅力だなって思っています。
浅沼 そうですね。あとは、すごく“時代”を描こうとしているなあと感じますね。震災をきっかけにこの企画が立ち上がったというのもあって、現実世界で起こりうるようなことが多少アレンジされていたりもしますが、きちんと描かれているな、と。アニメってどうしてもフィクションなので、現実から離れたところのファンタジーであってほしいと思う人ももちろんいると思うんですけど、現実に寄り添った描きかたというのも、またよさがあって。僕、今年の7月に別の作品のイベントで仙台に行ったのですが、空き時間に夏夜がバイトしていたラーメン屋(餃子の天ぱり)さんに行ったんですよ。
日高 ええ!? そうなんだ。
――Tweetされていましたね。
当時のTweet(ダンデライオン公式Twitterより)
せっかくだから、こんな所にも。「餃子の天ぱり」さん。仙台にお越しの際にはぜひ。まだまだがんばっぺ、東北。 (浅沼) #WUG_JP https://t.co/zkId4ESJET
— ダンデライオン (@Dandelion_Ltd)
2017-07-02 20:52:52
浅沼 そしたら当たり前なんですけど、あるんですよね、そこに。アニメの絵とまったく同じ姿で。店内には『WUG』のポスターだったり、ファンが交流しているノートがあったり、もちろんWUGメンバーのサインもあったりして。その場所に行ったら、作品の世界観を感じられる場所が多いというのは、素敵だなと思いましたね。
日高 聖地巡礼……等身大ね。
浅沼 もちろん彼女たちの名前がいっしょというのもあるんですけど、生きている感じがするんですよ。丹下社長だって松田だって、この世界にいるんじゃないかって、一瞬錯覚できるような世界観というのが、『Wake Up, Girls!』らしさなのかなと。決して全部夢物語ではない、という感覚が『WUG』らしさかなと思います。
――なるほど。これから『新章』が始まりますが、注目して欲しいポイントは?
浅沼 作中で、僕が松田以外に声を当てているキャラクターがいますので、お楽しみに。
――おお、それは気になりますね。日高さんは?
日高 私自身も『新章』で、WUGちゃんたちにどんな課題が与えられるのかが楽しみで。でも絶対にあるはずなので、そのときに以前よりは成長した彼女たちが、どんなふうに乗り越えて、それを丹下さんや松田がどんなふうに支えていくのかというのところも含めて楽しみにしていただければと思います。
浅沼 あと、WUGだけが葛藤している物語じゃなくなってきていますね。
日高 そうそう! アイドル不況ということで、アイドルたちがいろいろとたいへんな局面に立たされています。「勝つんだ!」ということが目標だったWUGちゃんたちの心の中に、寂しさや不安というものが沸いてくるのかなと思って。だから、WUGちゃんたちのこれからの成長をぜひ見てもらいたいですね。
浅沼 あと大田たちです。
全員 (笑)。
日高 あの人たちは普遍的。いつまでも……たぶんWUGちゃんたちがどんなに人気者になっても、そのファンの子たちのへそみたいなところにいて「俺たちは!」ってやっているんだろうなって。
浅沼 それですね! 逆に『新章』になっても変わらないところはそこですね。
日高 そうそう! 大田組ですね。
浅沼 大田組の安心感(笑)。
日高 変な話なんですけど、大田組が出てくると安心するんです、アフレコをしていても。なぜかというと、熱さもWUGを愛する気持ちも、すべてが変わっていないんですよね。
浅沼 何ひとつ変わっていない。
日高 “俺たちがWUGちゃんたちにできることは何か?”というのをずっと追求し続けていて、ある意味進化なしでずっと追っているんですね、いい意味で。それがすごく安心材料になっていると思います。
浅沼 僕、ずっと思っていることがあって……。WUGに限らず、アイドルやタレント、ミュージシャンや俳優のファンの方の中に、この人たちに売れて欲しいと思って応援しているのに、売れ始めたら「遠くなった」という方が少なからずいる。でも決してそれは遠くなったんではなくて。いっしょに歩いていたはずなんです。それが、たとえばライブやイベントの数が増えたことでファンの方々が全部に行けなくなって、歩くのに疲れて少し休憩しちゃったことで、それぞれのあいだに距離が生まれたように思っちゃっているだけなんですよね。遠くなっているんじゃなくて、速度がキツくなってきちゃっただけなんだろうな、と。でも大田組はいっさい、WUGがどんなに売れようとも、ちゃんと喜ぶんですよ。
――たしかに(笑)。
浅沼 「あ~あ、売れちゃったな……」と思う人が少なくない中、大田組の姿はすごくまっすぐだと感じます。
日高 アフレコスタジオでも同じところに固まっていて、自分たちのWUGちゃんを応援する大田組としてのマインドを育んでいますね。
浅沼 しかも、太田組のメンバーの中でもリアルに下野くんが先輩なので、下野くんがけっこう言うんですよ。「ほら、ちゃんとしろ!」みたいな。もちろん、ふざけてやっているんですけどね(笑)。
全員 (笑)。
浅沼 「お前ら、いい加減にしろよ!」みたいに、下野くんがポーズで仕切っている感があるのがおもしろいなあと。
日高 それで、変わらず暑苦しいです、声が。
――(笑)。でも、そういうのが現場の雰囲気作りにもなっているんでしょうね。
日高 なりますなります。すごいよね。安定感が半端じゃないよね、大田組は。
――現場でもアツい大田組なんですね。それでは、最後に……ふつうはここで「読者の皆さんにひと言」みたいなものをいただくのですが、今回はWUGちゃんたちにひと言ずつエールをお願いします。
日高 なるほど(笑)。では、「てっぺん取るまで辞めるんじゃないわよ、あんたたち!」。
浅沼 「始めることはちょっと難しくて、辞めることは簡単。いま、いちばん難しい“続ける”ということに足を踏み入れたWake Up, Girls!なので、覚悟を持って笑顔を絶やさず走ろうね」。こんな感じですかね?(笑)。
Wake Up, Girls! 新章
【放送情報】
テレビ東京:2017年10月9日(月)深夜2時05分 放送開始
仙台放送:2017年10月10日(火)深夜2時 放送開始
AT-X:2017年10月11日(水)深夜11時30分 放送開始
リピート放送:毎週金曜午後3:30/毎週日曜深夜2:00/毎週火曜朝7:30
※放送日時は変更になる場合があります。
【配信情報】
2017年10月13日(金)深夜0時より随時スタート
あにてれ・dアニメストア・アニメ放題/U-NEXT・JCOM+KDDI ほか