爆撃が続くシリアの街、ホムス。内戦が街を粉々にし、新たな犠牲者に末の妹が加わった時、妻Nourはシリアを出てヨーロッパを目指すことを決めた。しかし夫であるMajdは、老いた母と祖母を置いていくことができない。そしてふたりは愛するがゆえの決断を下す……。
フランスのThe Pixel Huntによる『Bury me, My Love』は、安息の地を求めて遥か彼方を目指す妻を、夫としてチャットアプリで支え、見守るという一種のアドベンチャーゲーム。プラットフォームはiOS/Androidで、海外では今月末にリリース予定。
本作は、現在アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスで行われているインディーゲームイベント“IndieCade”に出展中。実際に遊んできたので、その模様をご紹介しよう。
『Lifeline』のシリア難民版
見知らぬ星でサバイバルする人物をチャットでサポートしていく『Lifeline』というモバイルゲームがあったが、本作はいわばそれのシリア難民版といったところ。
ソフトは海外でメジャーなチャットアプリの“WhatsApp”を模していて(実際に難民にも使われているという)、プレイヤーのスマートフォンがそのまま主人公である夫Majdのスマートフォンであるかのように動作する。目の前のスマートフォンが、妻との残された絆を示すものであり、また彼女を救うための最後の武器となるのだ。
また、ゲームは実時間でプレイする“リアルタイムモード”から、ストーリーの進行を優先した早送りモードまで、スピードを調整可能。リアルタイムモードでは妻Nourの移動中などに彼女が再びチャット可能になるのを待たなければならず、再び連絡があった時は一般のチャットアプリ同様にアプリ通知が入るという仕組みだ。
会場では限られた時間のため、時折リアルタイムを試しつつ、大体早送りという感じで遊んでみたのだが、案の定と言うべきか、リアルタイムモード時の待ちタイムの無力感がなかなか刺さってくる。
自分のアドバイスは正しかったのだろうか? 無事に経由地にたどり着けただろうか? 安心させるためとはいえ、絵文字なんか送ってる場合だったのだろうか?
反応のないチャットアプリの画面を眺めながらそんな心配をする人が、この地球上のどこかに今日もいるのだ。ゲームではなく、一度きりの現実で。