小山宏行氏

 『信長の野望・蒼天録』からシリーズに携わり、前作『創造』ではディレクターを務めた。本作ではプロデューサー。

木股浩司氏

 『戦国無双』シリーズなどにプランナーとして携わった後、『創造』チームへ。本作はディレクターとして開発現場を仕切る。

プレイはシンプルに、大名の個性は豊かに。一新されたゲームシステム

 2017年9月21日(木)~24日(日)、千葉・幕張メッセにて開催中の東京ゲームショウ2017(21日、22日はビジネスデイ)。同会場のコーエーテクモゲームスブースで試遊出展(※)されている『信長の野望・大志』について、プロデューサーの小山宏行氏とディレクターの木股浩司氏にインタビューを行った。
※事前抽選に当選した人のみが試遊可能。

初プレイアブル出展の『信長の野望・大志』 小山P&木股Dに注目ポイントを聞く!【TGS2017】_01

――今回は、11月30日の発売を前に体験版が出展されたわけですが、ゲームの完成度は現在どのくらいなのでしょうか?小山ゲームシステムの大枠はほぼできあがっていて、あとはアルゴリズムや数値のバランスなど、細かいところの調整に入っているところです。具体的な数字で表すのは難しいのですが、とりあえず“90%”ということにしておいてください。

――体験版では、どんなところを感じてもらいたいですか?

小山今回はあえて、できることを絞っていて、商圏を広げたり農業を振興しながら外交を進め、兵力を充実させていくというゲームの基本的なサイクルと、すべての元となる“志”システムについて知ってもらおうと考えています。

木股そのため、“1560年の織田家”というスタートでありながら“桶狭間の戦い”などの歴史イベントは発生しないようにしました。歴史イベントを眺めているだけで、試遊時間が過ぎるのは、プレイいただく方に申し訳ないので。

――前作までとは基本的な進めかたも大きく変わりましたよね。

小山戦争自体は起こすことが可能なので、試遊時間の範囲内で、いろいろ試していただくのもいいかもしれません。

木股といっても、織田家は初期状態だと外交的に孤立しているので、何も外交をしていないと苦戦するとは思いますが……。

――敵への“宣戦”は、外交で敵対勢力を減らしてからやれ、ということですね。さて、実際システムが大きく変わっているわけですが、これは意図的に変えたのでしょうか?

小山 いえ、変えるということが前提にあったわけではありません。『信長の野望』シリーズでは、作品ごとに明確なコンセプトを設けて開発をしているのですが、今回はそれが“志”であり、その実現に向けてシステムを構築していった結果、自然とこのような形になったんです。

――実際にプレイすると、データ量は前作までと変わらないのに、やることが非常にシンプルになっているという印象がありました。

小山 コマンドを入力する回数自体はだいぶ少なくなったかもしれません。体験版だと本当に初期の初期でのプレイで、やるべきことが少ないので、とくにそう感じられると思います。ただ、開発を進めて国力が上がってくると、次第にやれることも増えていきますよ。ぶつかる相手が増えてくると、だいぶ忙しくなります。

――たとえば、どんな要素があるのでしょうか?

小山 今回の大事な要素に“商圏”というものがあって、周囲の商圏へと進出したり、あるいは商圏に投資をして拡充させることで、自勢力の収入が増えるという仕組みになっています。ただ、商圏を領土の外に広げるには、その拠点を所有している大名と外交して通商許可をもらわなければいけません。また、商圏争いでほかの勢力とぶつかり合う事態が発生することもあります。

――経済活動に、領土争いや外交関係が関わってくるということですか。

小山 とくに外交は大事です。ふだんから周辺勢力と仲よくしておかないと、商圏進出も戦争もできなくなって手詰まりになるかもしれません。何はなくとも、とにかく周囲と仲よくしておけば、いろいろなメリットが得られるんです。

木股 織田家は地理的にも人材的にも非常に優秀ですが、“周辺勢力がみんな敵”というのが唯一の弱点かもしれません。

――そう言えば、織田家でのプレイ時に浅井家と通商を結び商圏を広げたら、いつの間にか“鉄砲”が収入で得られるようになっていたのですが……。

小山 それも商圏を広げることで得られる効果のひとつであり、他勢力も含めた争奪戦の原因にもなる要素となっています。じつは、近江の“国友”に進出すると、特産品である鉄砲が定期的に献上されるんです。

――国友と言えば、鉄砲鍛冶で有名な場所でしたよね?

木股 はい。ほかにも、堺や紀伊の根来など、鉄砲が生産される商圏はいくつか存在します。堺もそうですが、南蛮商人が訪れる商業港でも手に入ります。

小山 また、鉄砲だけではなく軍馬や金銀など、土地によってさまざまな特産品が得られることがあるので、それらを狙って商圏や領土を広げていくとよりプレイしやすくなるはずです。とくに鉄砲は希少価値が高いぶん強力なので、たくさん配備できたら部隊が相当強くなりますよ。

――なるほど。これまでは直接拠点を攻め落としたり、商人から直接購入して手に入れるものだったのが、入手方法が限定されることでより重要度が増しているんですね。

小山 そうですね。また、それを逆手に取って、特定の商圏を独占することで、ほかの勢力に重要な特産品を渡さないようにする……なんて戦術もとれるようになっています。ただし、商圏の独占にはそれなりの出費を覚悟しないといけませんが。

――これまでにはなかった戦術ですね! ちなみに、特産品がある場所というのはやはり史実にもとづいていたりするのでしょうか?

小山 甲斐の金山や石見の銀山、奥州や信州、関東の馬など、当時のおもだった産地はほぼそのままゲームでも採用されています。

木股 また、特産品だけでなく、たとえば越後や関東平野の各国では土地が豊かで農業を成長させやすいといった特徴も各地に盛り込まれているんです。

――そのあたりは“戦国マニア”にとって有利なポイントだと言えるかもしれません。

小山 地域ごとの特色が強く出るようにしているので、いろいろな大名でプレイしてみてほしいですね。

――細かいところなのですが、城の数は前作から変わっているのでしょうか。

木股 今回の体験版でも尾張の拠点が清洲と犬山の2ヵ所になっているのですが、尾張周辺に関しては、前作では城が狭い地域に集中しすぎていたところはある程度間引いています。もちろん、追加しているところもあって、全体では300強と、前作とそれほど変わりません。また“築城”で新たな拠点を増やすことも可能です。

得意分野をより鮮明にした“志”

――続いては、本作の最大の特徴である“志”システムについてもうかがっていきます。大名によってさまざまな志が用意されていますが、それぞれどのくらい違いが出るものなのでしょうか?

小山 いちばんの違いは行動方針です。たとえば、織田信長や武田信玄は基本的に京への“上洛”を狙っています。一方で、彼らのライバルである上杉謙信は領土拡大の野心は薄いです。

木股 ですから、戦争で領土を拡大しようと思ったら、周辺の大名たちの志や外交関係を確認しておくのは必須です。

――謙信のように、見えている数字からはわからない行動を採る大名は厄介ですね……。

木股 相手の狙いを考えて行動することが求められるので、対人プレイのような緊張感が味わえるんですよ。

小山 裏を返せば、そういった志を利用したり、外交を駆使することで自分に有利な状況も作りやすいということです。ただ、慣れるまでは難しく感じるかもしれません。そこで、現状ではまだ検討段階なのですが、志や外交を踏まえて「いまここを攻めると○○が援軍に来るので勝てなさそうです」といった助言を配下武将からもらえるようなシステムも入れられたらな、と考えています。

――それはぜひお願いします! そのほか、志によってどんな違いが出るのでしょうか。

小山 志にはそれぞれふたつの特色があって、それによって各大名の得意分野がより鮮明になっています。たとえば信長の場合、商業を成長させやすい“楽市楽座”と、金銭で雇う足軽が強くなる“兵農分離”という特色があって、商業を軸にプレイを進めるとやりやすくなるはずです。それが謙信だと、謙信みずからが出陣することで上杉軍全体の士気が上昇し、兵糧も減りにくくなるような特色になります。じつは、特色にはデメリットも同時に存在するのですが、それらも含めてプレイスタイルに大きな影響をもたらすほどのものになっています。

――確かに、得意分野があればそれを活かしてプレイするのが攻略の定跡ですよね。

小山 そのほか、3ヵ月に一度開催される(編集部注:本作は1ヵ月を1ターンとしてゲームが進行する)評定では、配下武将たちがさまざまな提言をしてきます。それらを採用すると得られる“施策力”を消費することで、“農業”、“商業”、“軍事”、“論議(外交や評定など)”の各分野にメリットをもたらす“方策”を設定できるようになるんです。具体的には“最大農地上昇”、“行軍兵糧消費減少”などのような効果が発揮されます。

――いわゆる追加効果の付与ですね。

小山 前作の“政策”は限られた数しか行えませんでしたが、方策はそれとは異なり、施策力を得ることでどんどん追加することが可能です。つまり、施策力がたくさん得られる大名ほど有利に進めやすいということでもあります。方策には4つの分野があり、それぞれツリー状に成長していきますが、どのように成長していくかは志によって変わってきます。

――成長していくと違いが出てくるというわけでしょうか。

小山 そうですね。

木股 もっとも、方策そのものもかなりたくさんの種類が用意されていて、ゲーム内で10年くらいプレイを重ねても、ひとつの分野に特化しないと最後まで成長させられないくらいのバランスにしています。ですから、志でも違いは出るようにはなっていますが、プレイスタイルによってもだいぶ変わってくるのではないでしょうか。

――本作は、1回あたりどのくらいのプレイ時間を想定されていますか?

木股 武田や上杉といった有力大名を使ってうまくいけば、最速10時間くらいでクリアできるのも夢ではない……かもしれませんね。今回も大半の領土を得た後に“惣無事令”を出してクリアする、ということも可能にしてます。とはいえ10時間でクリアする人はあまりいないかもしれませんが、それでもあまり長くなりすぎないようにはしています。

――スマートフォンへの対応も発表されましたが、プレイ時間にはそのことも影響していますか?

小山 いえ、そこは関係ないですね。そもそも、今回はスマホありきで開発を進めてきたわけではなく、「やれたらいいな」くらいで考えていました。ですから、基本的には“据え置き機で遊べるものをスマホでもプレイできる”という考えかたになっています。

――家庭用やPC版とスマートフォン版は、ゲーム性もまったく同じですか?

小山 同じです。ユーザーインターフェースも、もちろんスマホ向けにアレンジはしていますが近いものにしています。詳細な情報についてはこれから発表していきますので、そちらも楽しみにしていてください。

――それでは、最後にファンの皆さんへひと言ずつお願いします。

木股 『創造』でシリーズ30周年という区切りがついたので、ここで新たな一歩を踏み出せたらなということでこの『大志』は生み出されました。シリーズ作品からの変化や、新たに盛り込まれた要素など、ゲームショウで確認していただければうれしいです。

小山 ゲームショウでは試遊台を用意してはいるのですが、やはり一部の方にしか遊んでいただけないのが心苦しいところです。ですから、今後も発売までに実機プレイの公開など目に見える形で、皆さんに『大志』のことを知っていただける機会を設けていこうと考えています。ゲームショウでもWeb番組で、1時間ほど実機デモを披露しますので、残念ながら会場に来られないという方はまずそれを観ていただき、今後発表する追加情報にも期待していただければ幸いです。よろしくお願いします。