2017年9月16日、17日の2日間に渡って開催された“GALLERIA GAMEMASTER CUP”のオフライン決勝大会。サードウェーブデジノスが展開するゲーミングPCブランド“GALLERIA GAMEMASTER”シリーズの名を冠した、記念すべき第1回大会となる。
オンラインFPS『Counter-Strike: Global Offensive』(以下、CS:GO)においては、16日に準決勝戦が、17日に決勝戦が実施された。
優勝クランが手にするものは、“GALLERIA GAMEMASTER CUP”初代王者という栄誉だけでは終わらない。ゲーミングブランド“ZOWIE”が主催するアジア最大級のeスポーツ大会“eXTREMESLAND ZOWIE ASIA CS:GO 2017”決勝大会への参加権を得ることになる。
8月からのオンライン予選と16日の準決勝戦を勝ち抜いて決勝戦に駒を進めたのは、“ALTERNATIVE”と“SZ.Absolute”の2クランとなった。
激戦を潜り抜け、準決勝戦でもタイブレイクにもつれ込む戦いを制したばかりのALTERNATIVE。それに対するは、日本国内の大会で優勝を続け、今回の大会でもここまで圧倒的な強さを見せつけてきたSZ.Absolute。どちらも勢いに乗っており、勝敗の行方まったくもって予想がつかない。
波乱のスタートから、神業の応酬へ!
決勝戦は第1マップ“Mirage”での戦闘からスタートした。今回のルールは各マップ最大30ラウンド(16本先取で勝利)、2マップを先取した側が優勝というBO3形式だ。
第1マップ Mirage
前日までのMirageでの戦いを見るに、ALTERNATIVE(テロリスト側)は個別に動いて情報収集や裏取りを成功させていた。第1ラウンドからスモークグレネードとフラッシュグレネードをふたつずつ買い、仕掛けていく。
しかし、SZ.AbsoluteのLazが一瞬で3キルを取って出鼻をくじいた。これで第2ラウンド時点でいきなり所持金の差がつき、ALTERNATIVEはエコラウンド(所持金節約のためにハンドガンなどのみで戦うこと)となった。
観客がSZ.Absoluteが2ラウンド目も制すると思ったのもつかの間、ALTERNATIVEが第2ラウンドの奪取に成功し、エコラウンド成功という大きな戦果を叩き出した。
続く第3ラウンド、SZ.Absoluteは最後に残ったbarceがハンドガンで2キルを返す活躍を見せるも、ラウンド奪取には至らずエコラウンド失敗となる。続く第4ラウンドもエコラウンド失敗となり、SZ.Absoluteの不利が続くかと思われた。
状況が変わり始めたのは、つぎの第5ラウンドからだった。貯めた所持金で装備を整え、お互いにスナイパーライフルAWPを投入。SZ.Absoluteは不利な状況にあっても1:1交換を保ち、SakuraとLazが最後にフォローし合いつつ連続キルで取り返し、ラウンドを奪取した。
続く第6ラウンド、ALTERNATIVEはsinoとReitaの連携による強引な攻めを成功させ、5対3の圧倒的有利を生み出す。だが、SZ.Absoluteは連携で生み出した隙を生かして爆弾解除に成功し、不利をはねのけて見せた。
第7ラウンドでは、ALTERNATIVE側が開けた場所でC4持ちのプレイヤーがキルされ、落としたC4回収に手間取り、そのまま敗北。第8ラウンドのエコラウンド奪取にも失敗し、ALTERNATIVEに不利な流れになったかと思われた。しかしここで、Lazが一瞬孤立したところを逃さず倒せたことで、第9ラウンドの奪取に成功した。
続く第10、第11ラウンドと、お互いにエコラウンド奪取を成功。取得ラウンド数がALTERNATIVEが5、SZ.Absoluteが6と均衡が続いたものの、第12ラウンドから第15ラウンドまでSZ.Absoluteは4連続でラウンドを制することに成功。10本取った状況で陣営を交代し、後半戦に突入した。
ここまでのラウンド取得数は、ALTERNATIVEが5ポイント、SZ.Absoluteが10ポイント。攻守交代し、SZ.Absoluteがテロリスト側で後半戦スタート。
後半第1ラウンド(第16ラウンド)でいきなり印象的なシーンがあった。慎重に攻めるためにSZ.Absolute側がスモークグレネードで視界を遮ったのだが、そこにALTERNATIVEのsinoが突っ込んだのだ。この奇襲で敵の足並みを乱し、見事ラウンド奪取につなげることができた。
続く第17ラウンド以降、ALTERNATIVEの勢いが一気に増した。Lazの連続キルで取り返されかける場面もあったが、カウンターテロリスト側が購入すると高額になるモロトフ(火炎瓶)も積極的に使うアグレッシブなプレイが刺さり始める。SZ.Absoluteはペースを乱されたのか、いつもの連携や陽動がなかなか決めらない。
第21ラウンドまで連続勝利で会場を沸かせたALTERNATIVE。奪取ラウンド数は11と逆転に成功!
この流れを保ったまま、ALTERNATIVEはsino、Reita、Fiskerと多くの選手がダブルキルを連発。SZ.Absoluteはなかなかこの流れを止められなかった。各ラウンドのファーストキルはほとんどALTERNATIVE。勢いは増すばかり。結果、第1マップは陣営交代から11ラウンド連続で制したALTERNATIVEの圧勝に終わった。
第2マップ Nuke
まさかの展開に精神的ダメージが大きそうなSZ.Absolute。自分たちが選択したマップ・Nukeでの巻き返しに視線が集まる。あまりピックされないNukeを選んだのは、それだけ練習量に自信があるからだろうか。
自信のほどは開始早々に証明された。第1ラウンドこそALTERNATIVEに譲ったものの、第2ラウンド以降は3連続でテロリスト側のSZ.Absoluteが奪取。Nukeはテロリスト側が勝利するのが難しいマップなのだが、1対1の状況で撃ち負けず、連続キルを取ることで着実に制していく。
その後は第5、6、7ラウンドと、交互にラウンドを取る膠着状態が続いた。
続く第8ラウンドから第11ラウンドまで、SZ.Absoluteは不利なテロリスト側でありながら連勝を重ねる。これでSZ.Absoluteはテロリスト側で8勝。非常に大きなアドバンテージを得た。
ここで審判側からのタイムがかかった。SZ.Absolute側にキーバインドに関するルール違反の可能性があったとのこと。ルール違反はなかったことが確認されたが、長時間の中断は集中力の低下を招く。それでもSZ.Absoluteはペースを乱すことなく快進撃を続けた。
SZ.Absoluteが不利なテロリスト側で12ラウンドを奪取した状態で陣営交代を迎えることとなった。その後も勢いは止まらず、SZ.Absolute側は配置の妙を見せる。待ち伏せからの一方的な射撃で、撃ち合いにすら持ち込ませずALTERNATIVEを圧倒する場面さえも見られた。
結果、陣営交代後も4連続でラウンドを取り、SZ.Absolute側がこのマップを制した。第1マップの11連敗を払拭するかのような、圧倒的な12連勝を見せつけた。
まさにシーソーゲーム! 最後の激戦を制したのは……
第1マップ、第2マップともに、いずれかのチームの圧勝という形で迎えた運命の第3マップは“Cache”。ALTERNATIVE側がテロリスト陣営でスタートした。
注目の第1ラウンドは、まずSZ.AbsoluteのSakuraが3キルを達成して奪取。チェッカー(偵察して敵の配置情報を持ち帰る役)を追ってきた敵3名を、待ち構えてつぎつぎとヘッドショットで仕留めるという神業を披露した。
ここからしばらくは、SZ.Absoluteのターンとなった。第2ラウンドはしっかりと仲間の到着を待って冷静に立ち回り、第4ラウンドからはLazがAWPを持って相変わらずの戦果を叩き出していく。
ALTERNATIVEも黙ってやられているわけではない。第5ラウンドでは中央部を制圧してから北側へプレッシャーをかけて各個撃破の形を生み出し、最後はFiskerのファインプレーもあってラウンドを奪取。続く第6ラウンドでもFiskerが4キルを叩き出し、流れをたぐりよせていく。
しかし、続く第7ラウンドではLazがAWPで開幕2キルを取り、ラウンド奪取へとつなげていく。Lazの神出鬼没な動きへの対策が、ALTERNATIVEの課題だった。
第10ラウンドで、ALTERNATIVEがファーストキルを取ってからラウンド奪取に成功したものの、SZ.Absoluteの勢いは止まらない。その後は第14ラウンド以外、陣営交代までのラウンドをほぼ制することになった。ラウンド獲得数はALTERNATIVEが4、SZ.Absoluteが11という結果で、陣営交代を迎えた。
陣営交代後の最初の第16ラウンド。当然のようにハンドガン同士の戦いとなった。このラウンドを制したほうが先に装備面で優位に立てるため、非常に重要なラウンドだ。
この局面で、カウンターテロリスト(守り)側のALTERNATIVEは、チェッカーが仕入れた情報から相手の侵攻ルートを絞り込むことに成功。続くラウンドでいい装備を購入した直後に倒されるなど、危ない場面もあったものの、第20ラウンドまで連勝を重ねていった。スコアは9-11。その差、2ポイント。
配置や爆弾設置後の動きがうまくいかないSZ.Absoluteは、第21ラウンド開始時にタクティカルポーズを申請した。各マップで4回まで申請できるタイムアウトだ。SZ.Absoluteはこのポーズ中に現状の確認を行ない、冷静さを取り戻す。
この慎重な作戦が功を奏したのか、第21ラウンドではSZ.Absolute側にこれまでにない動きが見られた。時間をかけた様子見の後、あまり積極的に取らなかったセンター部分をに取りに行ったのだ。さらに南のBポイントに展開するという電撃的な動きで、見事に相手をせん滅。
第22ラウンドはSZ.Absoluteにとって重要なポイントだ。先のラウンドで所持金をかなり使っているため、ここでラウンドを落とすと、以降は装備面で非常に厳しくなるのだ。
このラウンドもSZ.Absoluteが取ったものの、敗れたALTERNATIVEは最後までAWPとアサルトライフルM4を1丁ずつ保持したままラウンドを終える。これにより、所持金不足による装備面の不利をある程度は回避できた。
そうして迎えた第23ラウンドは、キルの1:1交換が続く接戦だった。最後に2対2、お互いAWPを1丁ずつ持ったうえでの勝負は、わずかに装備面で勝っていたSZ.Absoluteが制した。
続く第24ラウンド。所持金が少なく苦しいALTERNATIVEに対して、SZ.Absoluteは速攻をしかけた。強引に攻めつつも、仲間と離れすぎず、つねにフォローを絶やさない完璧な布陣だ。装備差もあって、ALTERNATIVEは有効な反撃や敵側の武器の奪取などもできず押し切られる。
こうしてSZ.Absolute側がマッチポイントとなり、第25ラウンドを迎えた。FiskerにAWPを用意したALTERNATIVEに対し、SZ.Absoluteはアサルトライフルを揃えてセンター部分を取りに向かった。ALTERNATIVEはFiskerがAWPでファーストキルを取ったものの、このFiskerを待ち構えていたbarceが倒し、AWPの脅威を排除する。
最後はBポイントの防衛に固まっていたALTERNATIVEを2方向からの強襲でせん滅し、SZ.Absoluteがラウンド奪取。16ラウンド先取、2マップ先取を達成し、優勝を決めた。
両チームともに、連続でラウンドを取られたときのマインドセットの仕方や、そこからの巻き返しが非常にうまかった今回の決勝戦。手に汗握る場面が多く、つねに何が起こるか分からない試合となった。
第1マップでSZ.Absoluteが追い込まれたことについて訊くと、Lazは「うまくいっていなくても、やることはつねに同じ。みんなで冷静に判断して動くことを続けて、それがつぎのNukeにつながったと思います」とコメント。平常心こそが、強さの秘訣だったのかも知れない。SZ.Absoluteにはその精神を忘れることなく、上海での大会でもいつものプレイを見せてもらいたい。
アジア大会に向けて、SZ.Absoluteに訊く!
決勝戦終了後、SZ.Absoluteの面々へのメディア合同による囲み取材が行なわれた。なかなか興味深いコメントもいただけたので、こちらで紹介する。
――優勝おめでとうございます。まずは優勝の感想を聞かせていただけますか。
Sakura 結果だけで言えば、すごくうれしいです。急にヘルプとしてチームに入ることになったので、不安もあったんですけど、みんなでカバーし合えて、試合が終わったときにはホッとしました。
Laz これで10連勝になりました。ミスを重ねたら負けるという接戦ばかりで、その中で勝てたのがよかったです。
――第1マップでは11連敗という悪い形になりましたが、チームの中で何が起こっていたのでしょうか。
Laz 焦り、でしょうか……ちょっとまだ分からないんですけど、普段より格段にミスが多くて、どんどん崩れていったんだと思います。
――第2マップからは連勝できましたが、どのように切り替えたのでしょうか。
Laz 第1マップの後、全体的に士気が下がっていたのをいつも通りに戻していこうと話して。仲間も付いてきてくれたのでそのまま行けた感じです。
――第3マップではさらに激戦となりました。どのような作戦を立てましたか?
Laz いつも通りですね。事前に考えに考えておいて、いちばん強いと思うパターンを選ぶという、それだけです。
――第3マップではタクティカルポーズを取りましたが、そこではどのような話し合いがあったのでしょうか。
Laz メンタルとかそういう面は一切なくて、あっちから行けるんじゃないかとか、状況をいったん整理した感じです。
――これから上海の大会に出場するわけですが、目標などはありますか?
Laz 目標といったらもちろん、優勝です。
――いけそうですか?
Laz ……行きたいです!(笑) 普段から対戦できていない強いチームばかりですが、さっき言った通りSZ.Absoluteはいまかなり強いので、行けるんじゃないかと思っています。
――とくに意識しているチームなどはありますか?
Laz アジアの中では中国が強いので、勝てるように頑張りたいです。
――アジア大会で戦うにあたり、キーとなるプレイヤーがいるとすれば誰でしょうか?
Laz 全員ともすごく重要なキーマンなので、誰かひとりががんばれば勝てるというわけじゃないですね。挙げるとするなら、全員です。
――事前に対戦経験が積めない海外のチームとの対戦を前に、どのような心構えをしているのでしょうか?
Laz 相手が何をしてくるか分かりませんので、まずは自分たちにできること、自分たちの試合をできるようにしたいと心掛けています。
――今回の大会とは少し離れた話題になりますが、eスポーツをオリンピック種目に、などという話も出ている昨今、オリンピック競技になったら出てみたいという気持ちはありますか?
Laz もちろん、オリンピック種目になったら出たいとは思いますけど、僕らは『CS:GO』をゲームとして考えています。人生のすべてや第一のものとは少し違います。競技として認められるかとか、あまりそういったところには固執していない感じです。
barce 出てみたいですけど……(他選手に向けて)いろんな人に見られるのは嫌やなぁ。俺ら隠れて生きていかなあかんよなぁ(笑)。
他3名 競技になれば出てみたいですけど、種目になってほしいか、というところはやっぱり曖昧かなぁ、と。
――では、今回の“GALLERIA GAMEMASTER CUP”への感想をお願いできますか。
Laz 大会を開催していただけることは、心からありがたいです! 続けていってもらえるならすごくうれしいですし、『CS:GO』の発展にもつながると思います。
crow オフラインという形で大会を開いてくれることが、プレイヤーとしてとてもモチーベーションが上がります。ただ、中学生や高校生が優勝した場合、学業を休んで上海の大会に行くことに理解が得られにくいということもあって、年齢制限が設けられていた点は考え直していただきたいです。eスポーツにはもはや年齢は関係ないところまで来ていると思うので、ぜひお願いします。
Sakura これだけ大きな会場、たくさんのパソコンをご用意していただいて、メディアさんもたくさん呼んでいただけて、本当に感謝しています。
――では最後に、ファンの皆さんへコメントをお願いいたします。
Laz 応援していただけるのは、非常にうれしいです。アスリートが言っているようなコメントになっちゃうんですけど、いつもありがたく思っています。これからも、応援していただけるとさらにうれしいです。